「いらっしゃいませ。あけましておめでとうございます」
小雪の舞う中を初詣に出かけ、友達とわかれた帰り道、ふと目に留まった「茶房」の文字にふらりと入ってしまったその店は、中国茶の店だった。
「ここの中でお茶はいただけますか?」
「はい。試飲の準備中ですのでよろしければご一緒にどうぞ」
勧められて座ったのはかわった形のテーブルの前だった。
先にその席についてた女性は、そっと脇の方へ椅子をずらして、私の分の椅子のスペースをあけてくれた。
「紅茶をいれて貰うところだったの。「九曲紅梅」名前が新年っぽいでしょう?」
楽しそうに笑うその女性は、小さなシールに印刷されたお茶のラベルを私に見えるように広げてくれた。
「このテーブルって…、木の根っこですか?」
「ええ、そうですよ。上でお湯がこぼせるように、中がこんな風に空洞になってるの」
そういって、かけてあったすのこのようなものを持ち上げると、確かに中は空洞になっていた。
しばらくすると、奥のほうから先ほどの店員が道具を持ってあらわれた。
「お待たせしました。ガラスの茶壷を使いますね」
そう言って、静かにお茶を煎れはじめた。
そうしてほどなく、梅の花の絵のついた小さな茶杯にお茶が注がれた。
こぼさないように注意しながらそのお茶を飲むと、体が内側から温まるのが分かった。
「あ〜。美味しい」
そう言って着物の彼女が茶杯を置くと、すぐに次の茶が注がれていた。
「綺麗な色ですよねぇ」
そう言うと、
「ね。梅の花みたいでしょ?名前の由来はこの色なんですよ。味で言うとね、梅占とかが梅っぽいんだけどねぇ」
との答えが帰ってきた。「バイセン」という名前はよく分からないけど、多分「バイ」って「梅」って書くのだろうな、と思った。
お正月から梅って、なんだか気持ちがいいなぁ。
「その、バイセンってお茶はこちらでも扱ってるんですか?」
そう店員に聞いてみたが、残念ながら置いていないとのことだった。
「ごめんなさいね。岩茶は毎年少ししかいれないものだから…」
申し訳なさそうに言われて、かえってこちらが申し訳なかった。
そんな話をしながら、お店で体が充分温まる頃にはすでに一時間ほどたっていた。
「それじゃあ、最初に飲んだ紅茶、5回分くらいお願いします」
そう言ってお茶を包んでもらい、代金を払おうとすると、初回だからと受け取っては貰えなかった。
申し訳ないなと思ったけど、またくればいいし…と思い直して、御礼を言って店を後にした。
雪はもうやんでいたが、まだまだ寒い。
家に戻ったら、またこの茶を煎れてみようかな。
でも、飲み過ぎかも知れない。
やっぱり明日にしよう。
そう、明日の楽しみに。

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