「これもお茶なんですか?」
「お飲みになってみられますか?」
ここは住宅街の小さな中国茶のお店。
沢山の缶が壁一面に並び、可愛らしい小さな茶器が並んでいる。
茶器の横には白いお皿があり、いくつかの乾燥した花が盛られている。
白い花、黄色い花、小さな紅いつぼみが並んでいる中に、黄色の小さな粟粒のようなものがのった皿があった。
目の悪い私にはよく見えなかったので、そっとお皿を持ち上げて眺めた後にそう聞いてみた。
「今お持ちなのは桂花です。ギンモクセイの花を乾燥させたものです。緑茶と烏龍茶にブレンドしたお茶がありますが、どちらがよろしいですか?」
そう聞かれて思わず、「烏龍茶」と答えると、店員は笑顔で窓辺の椅子を勧めてくれた。
椅子に座って表を眺めていると、先ほどの店員がお盆を持ってテーブルまでやってきた。
「こちらをお煎れします」
といって、変わった形のお皿にのったお茶を見せると、白い茶碗の中にそっと落とした。
そこへお湯を注ぐと、湯気がふんわりとたって甘い香りがした。
流れるような手つきでお茶が器に移される。
茶托に載せられたやわらかい黄色みかかったお茶は今まで飲んだ烏龍茶とは明らかにその色が違っていた。
「いただきます」
小さくそういってお茶を飲むと、驚くくらい甘かった。
香りがまず鼻にぬけ、口を開くと息が甘い香りに包まれている。
「甘いですねぇ。お砂糖とかも入ってるんですか?」
そう聞くと彼女は笑ってこう答えた。
「このお茶にはお砂糖は入ってないんですよ。勿論、お砂糖や塩を入れて楽しむお茶もあります。でも、香りで充分甘く感じるでしょう?」
それから、いろいろと「甘く感じるお茶」について彼女は話してくれた。
普段はあまり温かいお茶を飲まないのだけれど、器の小ささにだまされたのか、気がつけば30分ほどずっとお茶を飲み続けていた。
使っていた小さな器がなんだかとても可愛らしく思えてきて欲しくなったが、商品で無いので売ることは出来ないと言われて、とても残念だった。
結局「桂花烏龍」を50g買って家に戻った。
はじめてのお客様へのサービスですと言われて渡された小さな袋には、白い小さな器が入っていた。
大きさはお店で使ったのと同じ位で、ブルーの線が一本書かれている。
お店の器には赤と黒の金魚が泳いでいたが、こちらもすっきりしていて毎日使うにはいいかも知れない…。
そんなことを思いながら、お茶を煎れるためにやかんを火にかけた。

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