「これも…、飲めるんですか?」
「ええ。よろしければお飲みになってみられますか?」
「あ、あの…、でも、あまり持ち合わせが…」
「試飲はお代は頂きませんので、どうぞおかけ下さい」
笑顔で進められ、ちょっと安心して、窓辺の椅子に腰掛けた。
友達の誕生日プレゼントを探しにいこうと自転車をこいでいると、窓辺の棚に可愛いグラスの置かれた店が目に入った。
通行の邪魔にならないよう自転車を止め、そっと店内に入ると、そこは中国茶の店だった。
壁に並んだ缶の中にはお茶が入っているらしいが、缶に書かれた文字はほとんどがその読み方の分からないものばかりだった。
奥のテーブルには、小さな急須や茶器の並んでいて、その向こうにカウンターがある。
茶器を見ようと店の奥に進むと、カウンターにおいてあるグラスの中身が気になった。
ガラス容器の中には、茶葉らしきものの塊が沈んでいて、その上にポッカリと白い花が三つ並んで浮かんでいる…。
お茶なのか不安になったので、そう店員に尋ねてみたのだ。
「こちらが「錦上添花」の煎れる前のものです。お茶摘みの時にかぶる帽子をイメージしているそうです。味だけでなく、目で茶葉や花の開く様子を楽しめますよ」
平べったくて、真ん中がこんもりしているそのお茶は、麦わら帽子のような可愛らしい形をしていた。
「では、おいれしますね…」
店員はそう言って、茶葉を木の鋏のようなものではさむと静かにピッチャーの中へいれ、そっとお湯を注ぎ始めた。
最初お湯に浮いていた帽子は、少しずつほぐれ、静かに底のほうへ沈んでいった。
しばらくすると、帽子の真ん中の部分が開き、小さな花がゆっくりと浮かんできた。
「あ、浮きがついてる…」
どうして花が浮かんでくるのかと思ってよく見ると、一番上の花に小さな白い浮きのようなものがつけてあり、そのせいで花が連なって咲いているように見えるのだ。
「こんな風にいろいろな形を模したお茶があって、「工芸茶」と呼ばれています。緑茶の中に菊や薔薇などの花を仕込んだり、鳥や魚の形のお茶なんかもあるんですよ…」
店員がそういって、ピッチャーを持ち上げ、そっとグラスにお茶を移すと、中の花がゆらゆらと揺れて、とても可愛らしかった。
お茶を一口飲んでみたが、なんだか苦い…。
「少し濃いかしら…、お湯を足されてみますか?」
うなずくと、もうひとつ小さなガラスの容器が出てきた。
ピッチャーのお茶を一度そちらに移し、お湯を足してから、またグラスに煎れてもらう。
飲んでみると、今度はハーブティのような、なんだか懐かしい感じの味がした。
ミントの好きな彼女は、こういう味も好きだろう。
ピッチャーに足されたお湯で、また菊の花がふんわりの浮き沈みしている…。
「あの、プレゼントの包装ってしてもらえるんですか?」
「ええ。店においてある材料でよろしければいたしますよ」
いくつかの工芸茶とポストカードを買ってプレゼントにすることにした。
店員のアドバイスを受けながら自分でラッピングをしてみたが、出来上がりはなかなか上手だなと我ながら満足した。
お礼を言ってお店を後にしながら、ふと、お茶好きの彼女はもうこのお茶を飲んだことがあるかもしれないな…と思った。
でも、とにかく喜んでくれることは間違いないと思う

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