歓声の中へ
野球、サッカー等を中心にした総合スポーツコラムです。
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2008/10/1
「おお! 野球天国2008(1)」
野球
曇った空は、今にも泣き出しそうだった――。
2008年9月28日、広島市民球場。収容人数31,984人のこの小さなボール・パークは、そのすべての席が埋め尽くされた。もちろん、レフトスタンドの一角を除いては、ほとんどすべてが赤いブースターである。その手には「ありがとう」、裏には「必ずここへ帰ってくる」と書かれた赤いポスターが握られていた。この2つのことばに、この試合の意味がよく表されている。市民球場最後の公式戦、そしてセ・リーグ3位争いとクライマックス・シリーズを勝ち抜き、再びここで試合をするという決意が込められているのだ――。
前日の27日朝、私は半年ぶりに広島に降りた。今まで何度も訪れた広島、そして高校野球も含めて何度も観戦してきた広島市民だが、さすがに今回は感慨が深い。何と言ってもこの野球場で見ることのできる、最後の2試合なのだから。その相手は、広島・中日同様、セ・リーグ3位を争う東京ヤクルトである。二重の意味で、広島は負けられない――。
午後6時。圧倒的なホームの応援の中で試合開始。札幌、甲子園、千葉とそれぞれ独自の雰囲気をもっているが、ここ広島市民も熱狂度では引けはとらない。いや、箱が小さいだけに、外野席の声援の音量は甲子園には及ばないものの、内野席も含めたファンのほとんどがメガホンを持っているため、全体の歓声の音量は12球団一かもしれないのだ。
先発はルイスとダグラス。同じ外国人でも、広島のルイスは今期ヤクルト相手に4戦負けなし、圧倒的な強さを誇っているのだ。事実、ルイスは1・2回で3奪三振。見事なまでの立ち上がりを見せた。これに打線が呼応する。2回、栗原が四球を選び、嶋が左中間に2塁打! シーボルがきっちり犠牲フライを打ち上げて、1点を先制した。早くも大熱狂のスタンド。
圧巻は4回だ。天谷のライト前ヒットをきっかけに栗原、シーボル、小窪と1人置きにヒットを放ち、たちまち3点。球場全体に「宮島」が響き渡る。さらに5回には東出とアレックスのヒットで1点追加。長打は出ないものの.272(28日現在)とリーグトップのチーム打率を生かした波状攻撃だ。そして5点もらえば、この日のルイスにとっては十分すぎた。被安打4、11奪三振の堂々たる完封勝利。本人は「市民球場で投げるのはこれが最後だと思う」と言ったが、彼は間違いなく、もし日本シリーズに出るのなら、彼は間違いなく再びキーマンとしてここに立つはずだ。
そして28日。カープのマウンドには前田健太が上がった。エースナンバー18を背負うこの二十歳の若者は、6回まで5安打を打たれながらも得点を許さない。スコアには三振のマークは少ないものの、ゴロと飛球が目立つ。典型的な打たせてとるピッチングだ。
一方、打線はこの日も好調。初回アレックス、5回栗原、そして4回裏には何と投手前田健太のプロ初アーチまで飛び出した。前日とはうって変わった本塁打攻勢だ。6−0! 前田は7回につかまり2点を失うも、ここまで来れば後はカープの勝ちパターン。シュルツ、梅津、最後は永川とつなぎ、6−3で逃げ切った、ホーム最終戦、そしてライバル中日をリードする、何より貴重な勝利だった。
試合後、選手とコーチ陣がグラウンドを一周する。だが私の周囲には、不思議なくらい泣いている人はいなかった。むしろさわやかな笑顔があった。必ずここに帰って来るという気持ちが、そうさせているのだろうか。誰もが勝利を信じて疑わない――スポーツでもビジネスでも、そういう集団は、とてつもなく強い。そしてそんなチームこそが、不可能を可能にするというものだろう。世の中は常に、最後まで成功を信じ続けた者だけが成功しているのである。
広島
市民球場
投稿者: 生田正博
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