
『少林寺怒りの鉄拳』のサモ・ハン。
2004年の釜山(プサン)国際映画祭の韓国・香港合作映画回顧展で紹介された呉宇森の『ジャッキー・チェンの秘龍拳 少林門』(1974)、黄楓の『黒拳』(1973/香港タイトル『跆拳震九州』)の2本の映画には当時若かったサモ・ハンが出演して武術指導を担当した。9歳の時から映画に出演した彼は当時20代始めの年齢だったにもかかわらず、すでに一流の武術監督だった。 彼のアイドルでもあったブルース・リーの遺作『燃えよドラゴン』(1973)に出演した時は19歳だった。
ブルース・リーの映画に出演した時とほぼ同じ時期にサモ・ハンは韓国で撮影された胡金銓の『迎春閣之風波』(1973)で武術指導を担当した。この時彼は20歳になっていた。後の胡金銓の監督作品『忠烈図』(1975)もやはり韓国で撮影され、サモ・ハンは日本人侍の悪党役で出演し武術監督も引き受けた。 “胡金銓はブルース・リーと同じくらい素晴らしい師匠だった。彼は文学と会話に知識が豊富で、カメラを何処に置けばアクション効果が最大限得られるか天才的な感覚を持った監督だった。”とサモ・ハンは話した。 この2本の韓国ロケ映画は韓国の映画館で韓国・香港合作映画として紹介された。外貨収入が制限されていた時期に韓国で撮影された香港映画は韓国スタッフらが現地進行を引き受けて香港スタッフが映画製作を主導する形態で作られ、しばしば韓国・香港合作映画として公開されていた。韓国・香港合作映画回顧展に紹介された呉宇森の『秘龍拳』と『黒拳』も似た形態の製作方式で作られた。 サモ・ハンは“クレジットに共同監督として名前がある韓国側の監督の役割は、普通香港の主要スタッフと韓国人スタッフ間の円滑な現場進行を助ける補助的な役割だった。”と回顧した。

『秘龍拳』の助監督に韓国人監督キム・ジョンヨン(金正勇)の名前がある。

『黒拳』韓国公開時のポスター。
韓国・香港合作映画回顧展を企画した釜山映画祭チョ・ヨンジョン・プログラマーによれば、当時の香港映画界は現代化した大都市の香港でのロケ撮影に困りきっていたという。 ブルース・リーをスカウトして一瞬のうちに香港のメジャー・スタジオであるショー・ブラザースと並ぶ程成長したゴールデン・ハーベストは自社が運営する大型撮影所がなくて苦労していた。 過去を背景にした武術映画の空間を探すためにゴールデン・ハーベストはしばしば韓国の有名な場所や観光地をロケ場所として利用した。 ゴールデン・ハーベストはまたブルース・リーの死後、ブルース・リーと同じ位足技に長けた新人アクション俳優を韓国で発掘しようとした。 米国でテコンドー師範で名声を上げたイ・ジュング(李俊九/ジューン・リー)は『黒拳』に出演した。豪快な足技で有名だったワンホもゴールデン・ハーベストにスカウトされて活躍した。その当時香港と韓国を行き来しながらスクリーンに登場した多くのブルース・リーのソックリさん俳優であるコリョン(巨龍/ドラゴン・リー)、ヨ・ソリョン(呂小龍)、タンニョン(唐龍)などの俳優も韓国出身だった。
この時期、韓国との合作映画に出演した香港の俳優たちの中にサモ・ハン、ジャッキー・チェン、元彪もいた。 ゴールデン・ハーベストは売り出した新人俳優らを合作映画に投じることによって演技経験を積まさせ、尚且つ韓国内で有名になる一石二鳥の効果を狙った。 ところが『秘龍拳』に端役出演したジャッキー・チェンの姿からは未来の大スターを予感することはできなかった。 お決まりのプロットと演出の『秘龍拳』からは現在の洗練された呉宇森の演出力を探し出すのも難しかった。 ジャッキー・チェンは一時俳優生活を諦め父親がいるオーストラリアに行き、ブルース・リーの『ドラゴン危機一発』(1971)と『ドラゴン怒りの鉄拳』(1972)を演出した老練な監督・羅維の要請を受けて香港に戻るまで陽の目を見ることができなかった。 1970年代末に彼が出演した『蛇鶴八拳』(1977)『成龍拳』(1977)『カンニング・モンキー 天中拳』(1978)などの映画はすべて韓国・香港合作映画として公開され少なからずファンを得ていた。

『新唐山大兄』=『成龍拳』韓国公開時の新聞広告。
ジャッキー・チェンと同じくサモ・ハンもこの当時は有名なスターではなかった。 しかし彼は驚くべきことに武術監督の経歴を土台に映画監督まで兼業する偉業を成し遂げた。 1977年25歳で監督デビューした彼は以後も監督・武術指導と俳優を兼業した。この時期に紹介された多くの韓国・香港合作映画の中には『少林寺怒りの鉄拳』(1977)と『燃えよデブゴン10 友情拳』(1978)など彼が俳優兼監督で参加した映画が含まれている。肥った体格に似合わない素早いアクションを披露して彼は少しずつ韓国大衆に知られ始めて行った。
(資料翻訳・意訳…龍珠、龍八。他サイトへの転載・引用禁止。)