税制改正、公的控除枠削減などによる国民健康保険料の値上げに対し、新潟市でこれを下げる条例案が、市民グループの直接請求運動によって議会の案件として上程され、所管委員会での審議を経て、9月議会の最終日に採決。
この案は料率を全部前に戻せというものと、65歳以上の高齢者の減免拡大を求めているもの。僕はまず、社会保障制度枠の縮小が小泉竹中路線の「規制緩和」による、医療や福祉の市場化に起因しており、医療費が先進国と比較して国の財政の中で課題になっているわけではないことを指摘、国のでたらめな政策のツケが自治体と住民の対立構造に持ち込まれており、これは不幸なことだと述べ、その上で、現段階としては制度の持続性から言って料率を元に戻すということに無条件には賛同できない、ただし高齢者の減免枠拡大は低廉な予算で実現でき、他の政策と比較しても十分実効性があるとの観点から以下のような討論をおこないました。
条例案は一体のものなので反対せざるを得ず、賛成した共産党などの議員とは立場を異にすることになりましたが、賛成派からも反対派からも高い評価を受けました。
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■議案134号 直接請求による国保条例改正条例案について
●今回の直接請求は、市民による政治参加、政策提案を体現しようとすするものであり、条例を自ら発議して提案したり議決したりする権限を持つ議員として、その取り組みを高く評価し、心から敬意を表したい。議会は、たとえそれぞれの議員の立場にそぐわないものであったとしても、こうした市民による直接政治参加の一手法について、厳粛に受け止め、またその内容についても慎重審議する義務があるといわなければならない。その立場で、私は議案についてはやむなく反対、すなわち委員長報告に残念ながら賛成せざるをないが、あらためて見解と立場を表明したい。
●まず、本件の背景として、公的医療や社会保障制度の縮小がどのような背景でなされているか、見ておかなければならない。それは、日本の医療費や社会保障費の増大による財政圧迫と一般的には受け止められているが、これは真実ではない。
日本の医療費の対GNP比はOECD加盟国中なんと17位。日本の医療費がその突出した経済力に対し過剰に高くなっているわけではない。また、同じくGNPとの比較で、公共事業と社会保障への国庫支出額の比率を見ると、フランス、アメリカ、イギリス、ドイツなどそれぞれが公共事業より社会保障費に充てる割合がはるかに高くなっているが、逆転して公共事業費が突出して高くなっているのはこれら主要先進国の中で日本だけとなっている。日本の医療費や社会保障費は、国際的に見れば過大なものとなっているわけではない−このことをあらためて認識しなければならない。
それにもかかわらず、公的医療の範囲の縮小が画策されるのは、大企業の社会保険料負担の抑制ばかりではなく、医療や社会保障まで市場の中で金儲けの餌食にしようとする意図が働いているからだ。だからこそアメリカの保険業界は、長年にわたり日本の医療・損保などの保険分野での規制緩和を求め、実際に第三分野(医療保険、がん保険など)への進出を果たしてきた。それらの中で最も強い要求が、簡易保険の縮小・廃止であり、そうした流れの中で郵政民営化は実現されてしまった。
その結果どういう事態が起きているか。例えばテレビで盛んに放映されている「よーく考えよう」で有名なアメリカ系企業のがん保険。今や1兆円にも近い利益を上げているが、日本の公的医療制度、社会保障制度への不安が、アメリカ企業を儲けさせているのだ。
そうした民間保険が、決して国保など公的社会保障制度のようなセイフティネット機能を果たせるわけではないのにもかかわらず、最近の若者の中には、国保に加入せず、なんとなく儲かりそうだからと言ってそうしたアメリカ保険に加入する人も増えているという。その結果は、国民の財産の海外への流出、国の社会保障制度の破綻という道に陥るものであり、まさに亡国の政策が、小泉竹中路線で進められてきたのだ。
政権与党の政策が、本当に国の福祉や生活や経済の向上につながっているのか、まさに「よーく考えよう」である。新しい政権も、再チャレンジなどと言う前に、泥沼のような悲惨な状況から再チャレンジをしなければならない人をこれ以上増やさないでいただきたい。
こうしたとんでもない政策の付けが、末端で、今回のように、自治体と住民とのいわば対立構造に持ち込まれてしまっているのも、きわめて不幸なことだと言わなければならない。
●その上で、あらためて今回の議案について論じなければならない。この条例案は2つの部分で構成されており、前半は国保料率を以前に引き戻すもの、後半は付則を改定し65歳以上の増額の影響を受ける公的年金所得者の減免枠を拡大しようとするものである。
私は、先に述べた観点から、国の政策に基本的な問題があり、自治体としてはできるだけ住民負担を軽減回避するべきだと考え、2月議会での国保料率引き上げに関する議案や国保会計などに反対した。しかし今回の条例案の前半部分、料率の全部元に戻せというのは、保険制度の維持可能性から考えても、現段階では無条件に賛同することは、残念ながらできない。
しかし、議案に付された市長の意見書の中に書かれた「これ以上の繰り出しは納税者に過度の負担を求めるものであり理解は得られない」との市長の見解には反論せざるを得ない。加入世帯率で言えばほぼ半数、また現在他の政府管掌保険加入の多くの人たちもやがて国保に加入していくことを考えれば、単純に納税者の理解が得られない、とは言えないと思う。国保以外の市民にとっても、高齢者や中小事業主やその家族の生活が安定させるための政策に対し、過大な反発はむしろ無いのではないか、と私は考える。
その観点で、国保に加入している人口より低い割合の市民に対する他のサービスや施策に、本当に無駄は無いのか。そしてそれらは多くの市民が納得すると胸を張って言えるのだろうか。旧新潟市民にとってはあまり恩恵に預からない合併建設計画に対する本年度だけで300億から400億円近くにのぼる巨額の出費、これは50万人余という多数の旧新潟市民の、心から納得する施策と言えるだろうか。逆に、田園型政令市と謳いながら、港やまちなか政策に重点が置かれ、農業生産者よりも消費者に政策のウエイトの置かれた状況を、周辺旧市町村の人々は心から納得しているのだろうか。
それらの政策が新市の一体感の醸成や市全体の生活向上につながるから、というのなら、社会保障の基本的重要なインフラとしての機能を考えれば、国保への財政支出も同様だ。単に加入している世帯の割合で考えるべきだとは言えない問題だ。
●一方、「国保をよくする会」の主張も、一部一面的なところもあると言わざるを得ない。新潟市の一般財源からの繰入額を他の政令市等と比較して、「少ない」と主張しておられるが、これはそれぞれの市の個別の状況や予算組みも影響しており、国保会計が悪化することによって必然的に、料率と繰入額を多くして対処している市などもあり、単純な比較ができないこともさまざまな場で指摘されている。
だからこのままでいい、とは私も思わない。私は料率を完全に元に戻せとは言わないまでも、その引き下げや減免の拡大はなお必要だ考えるし、その立場から見ると、今回の条例案の後半の付則部分については、追加的な財政支出として約6100万円、すでに決めている額と比較すれば約4300万円で実現できるものであり、この部分については私も是非実現を求めたい。
同じ程度の支出で、市長のお言葉を借りれば「納税者の納得が得られない」と思われるような支出は、他の政策でも少なくない。例えば、例えば合併記念念事業での合併記念歌「越後絶唱」など小林幸子プロジェクトへの支出は関連予算と併せて2000万から3000万。この事業は、審議した委員会や本会議で散々に批判されており、とても全市的に納得が得られたとは言えない事業だったと思う。また、無駄だとは言うつもりはまったく無いが、今年度の議案説明要旨によれば、8000人ほどの本市職員の福利厚生費で1億円以上使うことになっている。また、旧小沢邸住宅整備には3000万、鳥屋野逆竹の藪整備事業にも3億3千万の支出が決まっている。
こうしたことから考えて、この条例案の付則部分で想定されるこの程度の支出は、市政財政の規模、全体的政策との整合性、その趣旨と効果からか考えても、十分に意義があるものだと考える。
したがって、私としては、この後半部分のみを活かした修正案を提案しようかとも考えたが、議会の1/12、すなわち7名以上による提案が必要で、力及ばず、残念ながら提案にはいたらなかったが、条例案としては一体のものであり、全体としては残念ながら反対、したがってこれを否決した委員長報告にはやむなく賛成せざるを得ない。
●その上で、現在の本市の国保の制度は、条例本体とは別に減免制度などが規定されており、市当局は、仮にこの条例案が否決されたとしても、こうした市民の声や議会の少数意見についても聞くべき点は是非聞いていただき、きめ細かい減免枠の拡大などを具体施策として実現されるよう求めておきたい。また、2年後の激変緩和措置終了後の配慮や継続的な減免などの可能性について検討を重ねるとともに、他の自治体と連携し、国に対し自治体や住民双方が苦しむような状況を改善するよう働きかけていただきたい。
●最後に、国保会計の問題は、収納と給付の、単なる金の出し入れだけでなく、医療の質の改善、他の社会保障制度の充実、税金の軽減策等と併せて考えられなければならないし、国保会計の改善のために予防医学の充実なども重要である。自治体による積極的な事業により寝たきり老人の率を低く抑えたりするなどして医療費の削減に成功しているところも少なくない。また、医学的には入院する必要の低い、いわゆる「社会的入院」の問題も、海外では住宅政策などとセットで解決が図られている。自治体レベルでも、こうした福祉や生活にかかわる政策の充実によって医療費の抑制なども可能であり、そうした可能性についても今後も積極的に検討していただきたい。(以上)