(読書)「自殺者三万人を救え!」 読書

「自殺者三万人を救え!」(NHK出版)。読書。
自殺問題について多少研究しなければならなくなったので手に取った一冊。定価1700円はこの体裁の本にしてはちょっと高い印象。
冒頭第1章で「ツレがうつになりまして。」のコンビが体験談を紹介する。また,第2章では,うつ専門カウンセラーとして働く澤登和夫さんが同様に自身の飛び降り体験を語る。第3章では,NHKで組まれた特集に寄せられた声を紹介。
第4章では,自殺対策に取り組む僧侶の会の代表である藤澤克己氏が,会の相談対応体制と寄り添う形の聴き方について説明する。
第5章では,各地の取り組みとして静岡の不眠対策からのうつ病のあぶり出しとそのための連携を,東京・足立区で行われたハローワークを通したワンストップ・サービスの相談の実情と課題を,秋田における多重債務解消への取り組みをそれぞれ紹介する。
続く2章はより広い視点で自殺問題に迫る。第6章では,ライフリンク代表の清水康之氏のインタビューを元に構成した,統計データから見る日本の自殺の実情。交通事故死者数の6倍近い自殺者がいるというのはショッキングな数値だと思う。
第7章では,自殺者を激減させたフィンランドの取り組みを紹介する。人が人を支えるという当たり前のことを行政目的に掲げている点など参考になる部分がある。
単に自殺に対する対応ということではなく,結局個々人の生活の質の改善ということが大事であるという当然のことに気付かされる。
結論が提示されている訳ではないし,雑駁な印象ではあるけれど,この問題について単純な結論を求める前に読んで置いても損はない。
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(マンガ)水域 マンガ

「水域」 漆原友紀著(講談社)。マンガ。
上下2冊。水泳部に所属する千波は,練習中に気を失い,川の中に自分を見出す。その後も意識を失っては,川のある村にやってくる。ここは一体どこなのか。
ダムに沈んだ村とその村で生活していた家族。龍神伝説のある,村の滝壺。
よい話でした。世代を超えた想いというものをうまくリンクさせています。
千波の母親和澄の少女時代,ダム建設の話が降って湧いてきて,親たちが揉め始めた時,兄の思い出が浮かんで涙に濡れながら寝入ってしまうシーンが上巻の終わり頃にあるのですが,あー分かるなーと思う。また,千波の祖母である清子らがダム建設に伴い,夫を残して一足先に移動するシーンも様々に涙を誘います。
翻案したダムは不明ですが,作中人物の会話はきっと広島弁ですね。ダム自体に対する批判的視点は乏しく,どちらかというと情緒的な面をクローズアップしていますが,まあこれはこれでやむを得ないでしょう。
そういう面も期待されている方にはやや拍子抜けかも。
冬に読むと,夏が恋しくなる一冊。
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(マンガ)水鏡綺譚 マンガ

「水鏡綺譚」 近藤ようこ著(青林工藝舎)。マンガ。
狼に育てられた修験者のワタルと帰るべき場所の分からない不思議な少女鏡子(かがみこ)。この二人の道行を描く。立派な人間になるために修行を続ける,母を知らないワタルと戻るべき場所の分からない鏡子。二人の向かう方向性は違うのですが,孤独な二人は出会い惹かれあう訳です。
設定としては,花輪和一の「天水」に似ています。もちろん花輪和一の方が情念が深く渦巻いています。
本書は,中世を舞台に二人の冒険を淡々と描きます。悪くはないですが,意外にさっぱりした印象。しかし,鏡子とはいずれ別れなくてはいけないことが予想されます。
著者はこのシリーズを書き始めてから12年目にしてシリーズを完結させます。
ある意味長い旅の終わりということなんですが,この終わらせ方にしても,やっぱり近藤ようこさんだなーと思う訳です。
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(マンガ)ゆうやけ公園 マンガ

「ゆうやけ公園」 近藤ようこ著(徳間書店)。マンガ。
近藤ようこさんの作品がよかったのでまとめ読みをしようと思っています。本作は,著者の最新作で,3.11震災前の最後の作品ということになるそうです。
タイトルにもなっているゆうやけ公園でホームレス生活を送るおじさんを起点に様々な人生模様を切り取ります。このおじさんを起点とした連作短編集という形が,本書に安定感を与えています。
「生きがい」
認知症の津島さんとホームレスのおじさんとの交流。津島さんの昔の思い出が交錯する。
「ウォーキング」
ウォーキングをしていた妻に代わり,ウォーキングを始めた夫。
「落とし物」
DV癖のある彼と暮らす若い女性。そんな彼女の落とし物。
「タイムカプセル」
旧友と埋めたタイムカプセル。好きな人の名前もお互いにこっそり書きあった。結婚を機にタイムカプセルを掘りだそうとする。
「夏休み」
両親が離婚してしまった。夏休みにいつも父親の田舎に行っていた翔太は,父に新しい妻と子がいるのを知る。子どもの気持ちとそれでも親子であるということ。
「くされ縁」
ライターと編集者の腐れ縁の二人。ライターの山村は最近事故に遭った。山村は結婚しているが,編集者の金子は未婚。仲のよい二人を見る山村の妻。こういう人間関係を描けるのはすごいと思うな。
「ナチュラル」
最愛の息子に彼女が出来て。気になってしょうがない母親。
「夢の墓」
公園で倒れて亡くなった男。息子が公園を訪れる。父親は自分が生まれたばかりの頃に離婚して妻と子を残して出て行ったが,免許証に入っていた女性の写真は見たことのない女性だった。
「詩を読む人」
家に戻らない夫と別居状態にあり何事にも関心を持てない中年女性。そんな彼女が詩集を手に入れ,昔の恋を思い出す。
「別れ」
ホームレス男性は公園を去る。施設に入った津島さんも再登場。
相変わらず,すごい描写力ですね。どの話も大人だなーと思わせられます。
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(マンガ)乙嫁語り マンガ

「乙嫁語り」 森薫著(エンターブレイン)。マンガ。
現在3巻まで刊行中。「エマ」の森さんの新作。中央アジアの若い夫婦を中心とした物語。エマの時も,こだわりを感じましたが,今回もまたやられたという感じです。そう来たかと。確かに,中央アジアは萌えますね。幾何学模様にもやられますね。そういう森さんのツボが心ゆくまで満喫できる。
何と言っても,森さんの場合はあとがきマンガですね。あとがきマンガ,熱烈なファンです。正直本編よりも好きなぐらいです。
話は次第に中東の方に向かって行くんだろうなーと考えると,独特の意匠や幾何学模様を思い浮かべるだけで,こちらもわくわくします。きっとこのマンガを楽しんだ暁には,東京国立博物館なんかが再評価されるんだろうなー,いや行きたくなってきたな,博物館ってな具合です。
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