2009/11/4
地獄・地底の足音−魍魎貸本・短編名作選 マンガ

「地獄・地底の足音−魍魎貸本・短編名作選」 水木しげる著(集英社)。マンガ。
なかなかブログ更新をする時間も取れず,レビューしなきゃいけないものも積み上がっているけれど,まずはこれ。水木しげるの貸本・短編名作選シリーズは,いずれもレベルが高いので読んでおいて損はない(ちなみに,「不死鳥を飼う男,猫又」のレビューはこちら。)。
「地獄」
宇宙から日本上空に現れた不思議な浮遊物体。なぜか怪音を発して人々を悩ませる。その正体とは?水木しげるのSF長編。
不思議な枕の発想が斬新。
「地底の足音」
鳥取砂丘から少し離れたところにある小村。妖術が伝わる不思議な村から聞こえる怪音。「ヨーグルトー」のかけ声に圧倒(苦笑)させられますね。秘伝の書物をめぐる学術的な雰囲気など、いい味出しています。
「約束」
旧友の訪問は昔の約束を果たすためだった。
「大人物」
死者を甦らせる秘法を開発した主人公は、貧乏暮らしからの脱却のために西郷隆盛を復活させるが・・・。昔の人物を持ち上げるのは,ビジネス誌なんかでもよく見るけれど,こういう形になると皮肉が効いてくる。
「おおミステイク」
アメコミ風のミステリー小編。短い中にもしっかりまとまっているのが,この頃のマンガの特徴ですね。
「壁」
こちらも画風はアメコミ風。上の作品と共に東眞一郎名義で発表されたもの。
「危機一髪屋」
開店したてのデパートの屋上から飛び降り自殺をしようとする女性が現れて・・。ねずみ男が登場する。
「大逆転」
サラリーマンもの。定年退職した男は、用務員として再雇用されるが・・。
「魔石」
三つの願いを叶える石の話。原作のある話(W・W・ジャコブズの「猿の手」)だけれど、水木作品には何度か出てくる話。
「がんばり入道」
あるマンガ家が伝授してもらった「屁式分身法」の話。
「アマゾン大明神」
河童の願掛けで、大明神が皆の顔をすげ替えてくれたが・・・。
「水虎」
短い妖怪物。
「妖怪枕返し」
妖怪物とサラリーマン物との合体は新機軸かも。
「親切な男」
ショートショート
以上,全14作品。
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2009/10/24
とろける鉄工所 マンガ

「とろける鉄工所」 野村宗弘著(講談社)。マンガ。
もうすぐ3巻が出る予定。鉄工所を舞台にしたマンガ。広島が舞台なので広島弁も織り込まれている。
各話4頁ほどの読み切りなので,溶接の現場を巡るちょっとした話といった感じ。でも,こういう形の職業マンガって少ないので貴重です。著者の鉄工所勤務経験を生かしたリアルな話の展開で,ネタの仕入れ具合もなかなかのものです。
コミカルに描いているので,いわゆる「労働者」を強調した頭でっかちな感じのマンガとは一線を画しています。富豪令嬢という設定の担当編集の欄外コメントも,まあ,ありかなという微妙な感じがなかなか。意外に楽しめます。
ネタはどこまで続くのか,ガンバレ。
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2009/10/19
ブラインドネス TV,映画
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「ブラインドネス」 フェルナンド・メイレレス監督,ジュリアン・ムーア,マーク・ラファロ,アリス・ブラガ,伊勢谷友介,木村佳乃ら出演(2008,ブラジル,日本,カナダ)。映画。
ノーベル賞受賞作家であるジョゼ・サラマーゴの「白の闇」を映画化したもの。目の前が真っ白に見え,何も見えなくなってしまう奇病が蔓延する。原因は分からず,感染性であることが疑われたため,政府は使われなくなった精神病院に患者を隔離する。
眼科医の妻は,目が見えたにも関わらず,夫のために共に施設に入る。施設には,感染予防のため職員はおらず,目の見えない者たちによる共同生活が始まる。
おそらく小説の方が出来がよいのだろうなと思います。原作は寓話として描いたということなので,映画化すれば趣旨が伝わるというものでもないでしょう。
結果としては,なんだかグロテスクな映画になってしまいました。隔離によってならず者が支配する状況が形成され,無法状態になってしまう。食料の分配を巡って,金品の要求や女を提供せよと求めたりといった状況はどうなんだろう。「28日後」にも重なりますが,リアリティに乏しいような気もします。
後は,医師の妻の描き方も少し不満。古典的な女性っぽい描き方なのですが,ジュリアン・ムーア(女優としては嫌いではないですが)ではミスキャストだろうと思います。彼女を使うならいっそのこと進歩的な女性として,もっと活躍させた方がよかったかと(全く違う映画になってしまいますが)。
施設を出てからの展開も含め,やや冗長な印象でした。日本勢ももう一つ存在感を示せませんでしたね。
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2009/10/17
ハプニング TV,映画
![ハプニング (特別編) [DVD]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51Q9AkL8T3L._SL160_.jpg)
「ハプニング」 M・ナイト・シャマラン監督,マーク・ウォールバーグ,ズーイー・デシャネル,アシュリン・サンチェス出演(2008,米)。 映画。
突然アメリカの一部地域で人々が集団自殺してしまう怪現象が発生する。テロか毒ガスか自然現象か?謎深まる中,人々は避難を開始する。
それなりに期待して見ましたが,今ひとつの出来映え。人類に対する警鐘という意味合いもあるんだろうけれど,映画として見ると,「雨降って地固まる」という感じで,ちょっとバカバカしい。
主人公は理科の先生なので,何か専門知識を持って立ち向かうのかと思えばそんなこともなく,驚異に立ち向かうというよりは,訳の分からない恐怖から逃げるという感じの話。その意味では,ゾンビに追われる「28日後」の方が恐怖としてははっきりしているし,一般的なSF映画の方が設定は秀逸ですね。
植物を主人公にするなら,もう少しその世界に踏み込むとかすればよかったのかも。もう一つひねりが足りない印象の映画でした。
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2009/10/13
むずかしい愛 読書

「むずかしい愛」 カルヴィーノ著,和田忠彦訳(岩波文庫)
イタロ・カルヴィーノの短編集。「〜〜の冒険」という形で,12の短篇を収める。カルヴィーノを読むのは,「くもの巣の小道」以来,2冊目。
「ある兵士の冒険」
冒頭の作品が,電車での痴漢みたいな感じの話である本作なので,この短篇集の先行きが不安になるのだけれど,どちらかというと本作は例外といった感じ。
「ある悪党の冒険」
追われる立場のジムが,馴染みの売春婦のところに逃げ込む。ふとしたことからトイレに隠れなければならなくなった窮屈さがよく描けている。この短篇集は,こういったちょっとした描写の連作集でもある。
「ある海水浴客の冒険」
こちらは海中で海パンが流されてしまった女性の困惑を描く。
「ある会社員の冒険」
規則的な生活を送る会社員が,人妻との一夜を過ごし,その余韻に浸るという話。
「ある写真家の冒険」
元々は写真が嫌いだったのに,いつしか写真に囚われてしまった男を描く。
「美しくみえるから写真に写される現実と,写真に写されたから美しくみえる現実との距離はきわめてわずかなものだ。」(78頁)とか,写真へのスタンスに対して,
「ところがきみたちときたら,まだ選択の余地があると思いこんでいる。
いったいどんな選択なんだい。牧歌的で,言い訳がましくて,自慰的で,自然や国家や親族と平和にやっていこうっていうのが,きみたちの選択じゃないか。
単に写真についての選択にとどまるのじゃないんだよ,きみたちのは。生き方の選択なんだ。それが,劇的な対立や矛盾のもつれや,意志と情熱と反感との強烈な緊張を排除することへときみたちを導くことになるのさ。
そうしてきみたちは狂気から身を守っていると思っているかもしれないけれど,実のところは凡庸と愚鈍に陥っているわけだ」(79頁以下)
などと鋭く批判していた主人公が自分なりのアプローチで写真に向き合うところなど,インパクトのある話。本書でも屈指の一篇。
「ある旅行者の冒険」
遠距離恋愛をする主人公が夜行列車に乗って恋人に逢いに行く日常を描く。神経質なまでに自分の流儀を守り,快適に滞在しようとする主人公の姿が微笑ましい。この短編もいいですね。
「ある読者の冒険」
泳いでは,岩場でロマン派時代の作品を読みふける主人公のとんだ邪魔を描く。
「ある近視男の冒険」
近視に気付き,眼鏡によって新しい世界を発見した主人公が故郷の町を訪れる。
「ある妻の冒険」
朝帰りの人妻は,近所のカフェへ。朝の光景。
「ある夫婦の冒険」
シフトの関係でほんの少ししか一緒にいられない夫婦の日常。
「ある詩人の冒険」
詩人とその恋人との海での出来事。洞窟をプチ探検したり。
「あるスキーヤーの冒険」
スキー場での出会い。
後半は,やや物足りないけれど,日常への視点が暖かく,悪くない短篇集でした。
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