2009/6/4

住宅政策のどこが問題か  読書

住宅政策のどこが問題か (光文社新書)
 「住宅政策のどこが問題か」 平山洋介著(光文社新書)。

 住宅政策にターゲットを絞って,新書にまとめた一冊で参考になった。著者は環境学系の人なので,システム論的な記述が多く,慣れるまではやや読みにくい。

 内容としてはいたって普通のことだけれど,確かにあまり論じられることは少なかったと思う。
 著者は,これまでの住宅政策を持家を中心とする政策であって,必然的に「標準的」なるライフステージに合わせた,景気浮揚型の対応であったとして,その姿を描いてみせた上で,現在の雇用の流動化や家族像の変化に対応ができていない現実を示し,変革を訴える。

 福祉の論議でも住宅の問題が抜け落ちがちだったというのは事実その通りですね。それに加えて,家を持つ段階になると多くの人たちは忙しさ真っ盛りで提言をするエネルギーがなく,他方で若手の研究者が自分の家を持つということもそう多くないことから,身近な問題として意識されなかったということもあるかもしれません。

 でも,考えてみれば住環境というのは,人の生存条件の中では上位に位置しますよね。

 最近思うのは,自民党の一党支配というものがイデオロギーの問題を意識させることはあったけれど,その背後に隠れている「政策判断」というものを隠してきてしまったんだなーと痛感します。年金の問題にしてもそうだけれど,所与の制度のように把握しがちな制度は,実は,というか当然なんだけれど,政策判断の結果以外の何物でもない訳です。

 そういう意味で,著者が言う,日本の住宅政策が,住宅を皆が所持するという考えで購入,建築投資を促し,あるいはこれを援助することによって,これが景気に影響するという経済的視点でのみ見られがちだったというのがよく分かります。

 住宅の問題が生存権の問題に直結しているにも関わらず,各種の助成制度の方向性が実は少数者に対しては何のメリットもないものだったというのは,国の税金の使い方としては不公平な意思決定ですよね(例えば家賃の補助制度などは基本的にないし,公営住宅の入居資格についてもカテゴリカルな制限がなされている)。
 これは,ちょうど以前に書評で述べた大企業の誘致問題に類似しますね。国費を出しても,回収できるんだからいいだろう,という発想ですね。

 本書を読んで思ったもう一点は,やっぱり縦割り行政の問題ですね。住宅というものが箱物を作るという側面があり,景気を左右する側面があると共に,国民の生活や福祉の基本でもあったりするのに,基本的な所轄は国交省になっていて,厚生労働省的なアプローチがやはり不十分になりかねない。

 この縦割り行政の問題というのは,昨今強く意識するようになりました。
 ある官庁の政策には十分な予算を使えず,他の官庁の政策はそれほど優先順位が高いとは思えないのに十分な予算がついたり,実効性はどうなんだと思うような新規プロジェクトが進められたりする。

 こういう問題にしっかり踏み込んでいくためには,やはり国会や内閣がしっかりと機能していくことが不可欠なんでしょうね。いかに省庁を超えて,真に必要な政策を考えていくか,こういう発想は不可欠ですね。
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