2009/6/8

子どもの貧困  読書

子どもの貧困―日本の不公平を考える (岩波新書)
 「子どもの貧困 −日本の不公平を考える」 阿部彩著(岩波新書)。

 「子どもの最貧国・日本」山野良一著(光文社新書)と共に,子どもの貧困問題を考えるのに最適の書。
 著者は,国立社会保障・人口問題研究所の人。なので,統計的データを駆使するという点では,山野良一さんの本を凌駕している。

 本書では,先行本を踏まえ,予算の使い方という財政的な側面により踏み込み,具体的な提言をしている点が特徴的。
 
 「子どもの貧困に対する具体的な対策として,どのような内容(所得保障,親の就労支援,教育プログラム,食料扶助など)の政府の介入策が有効であるのかを知るためには,貧困がどのように子どもの成長に影響しているのかを見極める必要がある。」(29頁)

 貧困の問題をしっかり認識することが,その後の政策の有効性にも影響してくる訳です。

 「所得にはある「閾値」があって,それを超えて所得が落ちてしまうと,生活が坂道を転がっていくように困窮に陥っていく」(202頁)
 で,こういう認識を共有できるかどうかが現実的な政策を考えることができるかどうかを左右します。

 本書では,日本版子どもの貧困ゼロ社会へのステップとして11の提言をしている(220頁以下)。ただ,イギリスの10ステップとは微妙に違っていて,同じ指摘が重複していたりする気がする。イギリス版と著者の指摘を合体させると次の感じか。

 1) 党派を超えた子どもの貧困タスクフォース(作業部会)の設置

 2) すべての政策に貧困の観点を盛りこむこと
 これは例えば,経済政策的な立法でも,貧困対策の側面からのチェックを加えるといった形が考えられる。本当は,貧困省(ネーミングはあれですが)なんていうのを設立するくらいがいいとは思うんですよね。

 3) 児童手当や児童税額控除を物価に合わせて適宜増額させること

 4) 大人に対する所得保障の制度の導入も検討すること

 5) 実効性の見地から,税額控除や各種の手当てを改革(必要なところに,必要な額を)

 6) 教育の必需品への完全なアクセスを保障すること

 7) すべての子どもが平等の支援を受けられること(子ども主体に)
 世帯構成や国籍ではなく,子どもの状態に着目するということですね。

 8) よりよい就労を〜ワーキングプアの解消
 ←労働法制的な対処か

 9) 無料かつ良質の普遍的な保育を提供すること

10) 閾値以下の世帯の不当に重い税金・保険料を軽減すること

11) 財源を事業主を含んだ社会全体が担うこと

 消費税の増税論議はあるけれど,その先に何を目指すのか,上げた消費税をどう使うのか,どういう国家を目指していくのか,この点の議論が不十分なのが日本の消費税論の不思議なところ。
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