死亡推定時刻  読書

 「死亡推定時刻」朔 立木著(光文社,2004)
 刑事事件を多く扱っている弁護士が冤罪を描いた小説。

 大富豪の娘が誘拐され,1億円の身代金が要求される。警察は,全力を尽くして備えるも,身代金の受渡しに失敗し,被害者は遺体となって発見される。ほどなく,被害者の鞄に遺留された指紋から窃盗の前歴のある小林が逮捕される。

 弁護士が書いただけあって,非常にリアルに描けています。一見地味ですが,刑事事件の現状(特に大きな組織を持たない弁護士にとってのそれ)を知るという意味でも一読を勧めたい作品ですね。
 規模の大小は,ありますが,こういう現実は非常に多いのが現状です。
 この作品では,東京高裁が大きな門として立ちはだかっていますが,現実にもそういう話をよく聞きます。

 この作品の中に出てくる高裁の判決書なんかは,物事の軸足をどちらに置くかによって見方が180度変わることをよく示しています。
 推定無罪って,言うは易しいんですが,日本の現状ではまだまだな部分が多いです。

 特に,この作品で白眉なのは,誰もが悪をなしたいと思ってそういう方向に向けた訳ではないのに,冤罪が生まれてしまうという構造をうまく描いた部分です。
 特に供述調書を巡るやりとりは,現在議論されている取り調べの過程をテープなどで録音すべきだという議論にも関連していてタイムリーでした。録音を認めたとしても,都合のいい部分だけの録音を認めていたら結局意味がありませんので,取り調べに弁護人の立会いを認めるというのが,フェアな捜査という意味では一番だと思いますけどね(とはいえ,現状では捜査官が作った調書しか残っていない訳で,後で検証可能にするために,最低限可視化を実現することは不可欠です)。

 最後に経験豊かな刑事弁護人のアドバイスが出てきます。冤罪事件だとしてもこういうことまで考えて行動しておかなければいけないところに,裁判所の問題を意識するか,あるいは,様々な可能性を考えてここいら辺まで保険をかけることに凄みを感じるか,いずれにせよ経験豊かだなーと唸らされます。

 日本語で書かれた日本の刑事裁判についての小説としては,文句なくリアルです。しかし,お金のない被告人を救うには,現在の司法予算はあまりに少ないことに気付かされます。善意の弁護人に当たるのを待つっていうのも・・・ですね。
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2006/9/19  11:14

投稿者:ちっちゃい峪

めっちゃ面白かったでーーーーーーーー


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