勝利の朝  マンガ

クリックすると元のサイズで表示します 「勝利の朝」 堀内夏子作(小学館,1993)。

 少年事件を描いたマンガ。強盗殺人容疑で逮捕され,家庭裁判所に送致された少年3人の冤罪の訴えを描く。巻末に暴走行為の冤罪を主張する「テープは語る」という短編が収録されている。著者のコメントを見たら,実際の事件に着想を得て,弁護士と接触して資料を提供してもらったそうだ。残念ながらあまり売れなかったようだけれど,なかなかよく出来ている。

 警察の強引な取り調べは,よく俎上に乗るところ。これは経験した人しか分からないだろうと思う(かく言う,ぼく自身も経験がない。)。実際にはやっていなくても,警察にこうだと断定的に疑われた場合,否認を貫くのは予め心の準備をしていないとほとんど無理だそうで,逮捕された時には速やかに弁護士を呼んでもらう(無料で派遣して貰える当番弁護士という制度がある。)のが最善だ。

 裁判員制度の導入で,今までのような人質司法でいいのかという声が高まっている。 人質司法というのは,警察の留置場等に拘束して,孤立した状況のもとで糾弾的に警察の取り調べがなされ,密室の情報のない場所で捜査官に徒手空拳でいどまなければならない状況のことだ。取り調べに弁護人の立ち会いを認める(アメリカで見られる)とか,供述状況を録画,録音するとかして,公正な取り調べが行われることを担保することが必要だ。

 本書は,こんなこともありうるんだ,ということを知る意味でも一読に値する。絶版のようだけれど,中古では手に入れることは可能な状態のよう。裁判員制度の導入は,すんなり決まったものの,取り調べ過程をオープンにし検証可能にするという「取り調べの可視化問題」の方は,まだまだモデルケース的にいくつかの警察署で試みているような状況で,あくまで捜査の都合を優先する姿勢は変わっていない。
 客観的な証拠だけで事件に迫ることは難しいことも多いだろうけれど,現代という時間軸に見合った科学的な捜査の方に重点を移すことをより積極的に行うべきだろう。


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