2008/3/6

それでもボクはやってない  TV,映画

それでもボクはやってない スタンダード・エディション
 「それでもボクはやってない」 周防正行監督,加瀬亮,瀬戸朝香,山本耕史,もたいまさこ,役所広司出演(日本,2007)。

 テレビ放送を録画して見ました。さて,内容はご存じのように痴漢冤罪事件を描いたものです。

 構成は割とシンプルで,淡々と裁判を描いています。その描写は臨場感に富んでいますので,裁判制度の勉強にはもってこいという感じですね。。今までの冤罪物に比べると,暗黒の度合いが少ないというか,単に国家権力の不当さを訴えるという作品とは違って,現代性を感じますね(かく言うdubdubは,社会派映画も好きですが)。

 痴漢事件は,そもそもが証拠に乏しい。現行犯逮捕であれば問題がないけれど,きっとこいつに違いないと思って捕まえても違うということはざらにある。そのため,大きな社会問題になり,世の通勤男性は両手を上にあげて電車に乗るとかの対応を余儀なくされているところです。
 痴漢犯人自身は,憎むべき存在ですが,これが冤罪だとなると話は別です。

 視聴者は,冤罪であることを知って,いわば主人公と一緒に逮捕・裁判を経験していく訳ですが,実際にはやっていないという情報を省いて映画を見ると,なかなか判断が難しいと思うのではないでしょうか。きっと裁判員裁判になったとしても,どう判断されるかは微妙だろうと思います。そういう裁判というものの構造がうまく表現されていると思います。

 印象的だったのは,役所広司演じるベテラン弁護士の「裁判官は被告人に騙されたくないと思っている。」という発言。この感覚が,推定無罪の原則を脅かしてしまう。
 映画の最後の方の,真実は神様しか知らないという言葉は必ずしも妥当しない,被告人のみが真実を知っているんだ,というのは言われてみればそのとおりな訳で,常に裁判所というのは,その役割や公正さが問いただされている存在である訳です。

 ところで,当番弁護士として派遣された弁護士が罪を認めた方が早く済むというアドバイスをしたことをどう受けとめるかですが,これも難問だといえます(一般的には,そういうアドバイスをすること自体は,証拠関係によってはやむを得ないのではないでしょうか。被告人の利益ということを考えると長期の身柄拘束はやはり不利益が大きいですね)。それでも,だからといって痴漢犯人になれというのは,やはり納得できないですよね。

 一番の問題は,今回のようなもともと処分の軽い事件で,否認した途端に長期の勾留を受けるということだろうと思います。
 保釈が認められたり,在宅に切り替えて取り調べをしていくということがなければ,そもそも裁判を受ける権利自身が侵害されているような気がします。

 もちろん取り調べ過程を録画・録音していくという,いわゆる可視化問題も重要だろうと思います。日弁連では,可視化問題について全面的に行うべく署名運動をしていますので,関心のある方は是非署名を。
 署名用紙などは,こちら

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