仕事と日  読書

クリックすると元のサイズで表示します 「仕事と日」 ヘーシオドス著,松平千秋訳(岩波文庫)。

 副題を「農事暦と日の吉凶」とすることから大体内容は予測できますね。ヘシオドス(こちらの表記の方が自分的にはしっくりきます)の,農作業などの仕事を通じた人生の送り方についての教訓詩という感じ。ヘシオドスは,紀元前8世紀から7世紀頃の人とされています。
 本書には作者不明の「ホメーロスとヘーシオドスの歌競べ」も収録します。

 前半は神話の話を綴り,叙事詩風の色合いを持つけれど,後半はどちらかというと教訓や農事暦に依拠した話などが続きます。ホメロスなんかに比べると,泥臭い叙事詩。
 そもそもが,相続紛争で争っている相手方である弟を名宛人にしたような部分もあり,風変わり。

 古典のよいところは,現代の文章で出てきたら絶対反発を持つようなことをすんなりと受容できるところですね。ヘシオドスの説教も,ヘシオドスが言うならと聞く気にもなります。

 「財貨はむりやりに掴みとるべきものではない,神の授けられたものが,遙かに良い。」(49頁)
 そうですとも。我々は,その稼ぎの中身を考えなければなりません。

 「不正な利得をあげてはならぬ,不正な利得は災厄(損)に等しい。」(53頁)
 この気概ですよ。

 「善き隣人に恵まれた者は,値打ちものを授かったようなものじゃ。」(52頁)
 隣人の争いというのは意外に多いですからね。

 「甕(の中身)は使い始めと,残りわずかとなった時に腹ふくらむまで使い,半ばになったところで節約せよ,底をついてからの節約は拙い。」(54頁以下)
 これはよい教訓ですね。

 「兄弟を相手に(約束ごとを)する時にも,にこやかに振舞いつつも,必ず証人を立てよ。」(55頁)
 これは紛争状態に置かれているヘシオドスの体験が出ていますね。

 比較的地味な一冊。


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