2015/7/10

7月10日  
・認知的不協和とは、2つの認知がある場合に、合わせやすい認知に合わせて協和させるという解釈で良いのか?
→違います。時間の関係で説明不足なので、詳細は類書を読んでほしいのですが、端的に言えば、自分の行動と認知が不協和を起こしたときに、行動はもう変えられないので認知を変えることによって不協和状況を解消するというものです。たとえば、DVDにあったように、つまらない作業をした後に、人に対して「面白かった」とウソを言うという行動の場合、認知の上では「つまらない」と思っていますので、行動と認知が不協和になっています。このとき、20ドルをもらった参加者は、お金のためにウソをついた(認知を変える必要はない)と解釈すればよいだけです。しかし、たった1ドルしかもらっていない参加者は、そんなはした金でウソをつくという行動は合理化できません。そこで、結構面白かったというように認知を変えれば、けっしてウソをついたわけではなくなるということで不協和が解消されるのです。不協和というのは矛盾と考えていただいて結構です。要は認知と行動の間に矛盾が生じたときに、多くの場合、やってしまった行動を変えることは無理なので、認知の方を無意識に変えてしまうということです。洗脳では、たとえば、民主主義者に拷問などで共産主義者に変えるのではなく(たとえ変わったように見えてもうわべだけです)、ただ毎日、共産主義のよい面を書いた紙を読ませたり、書き写したりさせることで(行動の面ではそういうことをしてしまったので、もう取り消せません)、認知(共産主義も良いかも)を変えていくのです(これが第一ステップです)。
・社会心理学の領域は広いと思うと同時に、私たちの生活に強く影響していることを知った。
→人と人との関係(社会)を扱っている社会心理学は実に幅広い研究分野ですし、知っておくと役に立つ原理や法則などが数多く明らかにされています。
・リーダーシップの研究と認知的不協和を掛け合わせれば人を操作するのは容易なのではないかと思いました。
→はい、容易だと思います。だからこそ、社会心理学の理論を学んでおいて、それに対応できるようにしておくことが必要です。
・認知的不協和理論をはじめて聞いたが、とても怖いものだと感じた。
→上の二人の意見とも関連しますが、まずは社会心理学の勉強を簡単でいいですからしてみてください。以下の『影響力の武器』は必読書です。

【16章に関連−社会心理学の源流】
●ギュスターヴ・ル・ボン(著)櫻井成夫(訳)(1993). 群衆心理 講談社(講談社学術文庫)
 いわゆる群集心理(翻訳書では、「群衆」という用語を使用)とは、個人とは異なった集団の愚かな行動を指す。このような用語の基礎となったとされるのが本書である(ただし、著者は必ずしも集団になれば愚かになるとは言っていない)。原著は1895年で、現在の社会心理学の関心や研究の範囲とはズレがあるものの、著者のル・ボンの関心の広さと博覧強記のため、今なお第一級の読み物として興味深いものとなっている。

●奥井智之 (2010).  社会学の歴史 東京大学出版会
 社会心理学と社会学は相互に影響し合いながら発展してきた学問領域である。したがって、社会心理学史を深く知るためには、社会学の歴史について学ばなければならない。本書は、古典的な意味での社会学者として外すことのできないコント、マルクス、エンゲルス、ジンメル、デュルケーム、ウェーバー以外に、シカゴ学派や近年の社会学者たちについても触れられている社会学史の入門書である。ほかに、フロイトや日本の社会心理学者に関する章もある。

【16章に関連−レビン】
●K.レヴィン(著)相良守次・小川隆(訳)(1957). パーソナリティの力学説 岩波書店
本書の原著はレヴィンが渡米した後の1935年の出版であるために、ドイツでの研究成果のまとめと言える。本書を読むと、トポロギー心理学やベクトル心理学と呼ばれるレヴィン独特の心理学の基本的考え方を理解することができる。具体的には、児童や精神薄弱児の行動、賞と罰などにおける「場」の重要性が何度も強調されている。第8章は実験的研究のまとめであり、未完了課題の方が記憶に残るというツァイガルニックの研究(pp.255-259)も載せられている。

●クルト・レヴィン(著)猪俣佐登留(訳) (1979). 社会科学における場の理論[増補版] 誠信書房
本書の原著はレヴィンの死後の1950年にカートライトによって編集された論文集である。翻訳は次の10章からなり、レヴィン独自のトポロギー心理学の展開の様子がよくわかる。すなわち、「心理学における定式化と進歩」「場の理論における構成概念」「“一定時における場”の定義」「場の理論と学習」「退行,後もどりおよび発達」「場の理論と社会心理学における実験」「社会心理学における研究法の問題」「心理学的生態学」「集団力学の開拓線」「全体事態の函数としての行動と発達」である。どの章も独立しているので、興味のある章だけでも目を通せばよい。

【16章に関連−ミルグラム】
●トーマス・ブラス(著)野島久雄・藍澤美樹(訳)(2008). 服従実験とは何だったのか−スタンレー・ミルグラムの生涯と遺産 誠信書房
 服従の実験(通称アイヒマン実験)を行った社会心理学者として著名なミルグラムの生涯(51歳で急死)についての伝記である。本書を読むと、ミルグラムが実にアイデアの豊富な研究者であることがよくわかり、今更ながら、もう少し生きていて後進の指導に当たってほしかったという思いを強くするはずである(この点で、同じ社会心理学者のレヴィンと同じであろう)。本書は、付録や文献をのぞく本文だけで370頁という大著であるので、興味のある部分だけでも読んでほしい。

●S・ミルグラム(著)岸田秀(訳)(1980). 服従の心理 アイヒマン実験 河出書房新社
 あまりにも有名なミルグラムの服従の実験の全容の掲載された書物である。人が実験室という空間において、権威を持つ実験者の命令にどれほど服従するかを見事に暴き出している。実験において被験者(参加者)に精神的苦痛を与えたのは明白であり、その点で現在では実施不可能なものである。しかし、純粋に実験心理学の研究手法という面から見るのならば、自らが解明したい問題(それも社会に根づいている問題)の解答を求め、(対立する理論をたたきつぶす)実験をいくつも周到に積み重ねていくプロセスは、およそ実験に関わる者なら必読の書物と言える。原著出版は1974年で、2008年に別の翻訳者によって新訳が出版されている(スタンレー・ミルグラム(著)山形浩生(訳)(2008). 服従の心理 河出書房新社)。

●クリストフ・ニック/ミシェル・エルチャニノフ(著)高野優(監訳) (2011). 死のテレビ実験―人はそこまで服従するのか 河出書房新社
 ますます過激化するテレビ業界において、テレビ番組の中で殺人さえ起こるのではないかという危惧から行われた(ミルグラムの行った)アイヒマン実験のクイズ番組の記録である。ここでの権威は、テレビという実体のない目に見えないものであり、かつ何の目的も持たない(単に面白ければ良い)もの、という点で、ミルグラムの実験とは異なっている。しかし、そのために、ミルグラムの実験よりも、はるかに多くの人間が服従しているのは恐ろしいことである。本書の内容のドキュメンタリー番組は、同名で2011年にフランス2で放映されている。

●ロバート・B・チャルディーニ(著) 社会行動研究会(訳)(2007). 影響力の武器[第二版] −なぜ,人は動かされるのか 誠信書房 ¥2800
 読者が本書を眼光紙背に徹するほど読み、同時に自分自身や他人の行動を本書の原理と照らし合わせて観察するならば、もはや誰にも騙されることはないし、他人を思いのままに説得できるはずである。本書で述べられている6つの原理とは、「返報性」「コミットメントと一貫性」「社会的証明」「好意」「権威」「希少性」である。それぞれの詳細は本書を読んで理解してほしいが、これらの6つの原理に我々が動かされるのは、幼少期からの一種の条件づけの効果であり、その意味では、ワトソンやスキナーの考えと共通する部分もあると言えよう。原著は2001年出版であり、日本では、すでに1988年出版の原著の翻訳も出版されているが(ロバート・B・チャルディーニ(著)社会行動研究会(訳)(1991). 影響力の武器 −なぜ、人は動かされるのか 誠信書房)、基本的にはマイナーチェンジである。

【16章に関連−三隅二不二】
○三隅二不二 (1986). リーダーシップの科学ー指導力の科学的診断法 講談社ブルーバックス(B655)
 三隅自身の開発したPM理論と呼ばれるリーダーシップ理論を一般向けに解説した書物。残念ながら現在は絶版。

【16章に関連−南博】
●南博 (1985). 学者渡世 心理学とわたくし 文藝春秋 ¥1000
本書は、戦後の日本の社会心理学の分野で日本人論など数々の独創的な研究を行い、日本の心理学を引っ張ってきた著者の自伝である。著者は第2次世界大戦をはさんで約8年間、「敵性外国人」留学生としてアメリカ留学を行った経験をもち、留学前の日本での活動、留学、帰国後の活動の3つが描かれている。特に、ダレンバック教授のもとで行ったゴキブリの睡眠と記憶の研究などを読むと、(少なくとも)アメリカのアカデミアの世界では、自由な研究活動が(ある程度)保証されていたことがよくわかる。また、留学中に、それとは知らずに、ルース・ベネディクトの『菊と刀』の原稿へのコメントを行った事実も書かれていて、後年の著者の日本人論との不思議な縁を感じさせられる。なお、所々に艶っぽい話が載せられているが、南自身の話が省かれているのは残念な気もする。

【ポジティブ心理学】
●マーティン・セリグマン(著)山村宣子(訳)(1994). オプティミストはなぜ成功するか 講談社(講談社文庫せー9)
 著者のセリグマンはイヌを使った学習実験から学習性絶望感という理論を明らかにし、うつ病との関連性について長く研究を行ってきた。その彼が、うつ病などのネガティブな側面ではなく、その予防も含めた人間のポジティブな側面に焦点を当てて執筆したのが本書である。絶望感が学習されるのと同様に、楽観主義も学習されるというのが著者の考え方であり、具体的な実践法も書かれている。原著出版1990年。

●マーティン・セリグマン(著)小林裕子(訳)(2004). 世界でひとつだけの幸せ−ポジティブ心理学が教えてくれる満ち足りた人生 アスペクト ¥1900
 本書は、前著(『オプティミストはなぜ成功するか』)からほぼ10年後に出版されたものである(原著2002年出版)。著者の本書出版までの10年間の研究成果をもとに、幸せになるためには、何をどうすればよいかが自己診断テストを織り交ぜながら、わかりやすく書かれている。
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2015/7/3

7月3日  
本日の授業終了後、ペットボトルや余ったレジュメ、プレゼンテーション評価用紙が散乱していて、次の授業に支障をきたしたそうです。余ったレジュメは発表者本人が必ず持ち帰って下さい。また、プレゼンテーション評価用紙が欠席などで持ち帰られていない場合、恐れ入りますが、雅のポストに入れておいて下さい。私も今後注意します。ペットボトル等、片付けておいてください。



・行動主義の原理が身近に多く使われることを知ってよかった。
→これをうまく使って自分をよい意味でコントロールしてみてください。以下の参考文献『始める力』などが有用かと思います。
・心理学者の個人史を知ることの有用性がよくわかった(類似の感想、ほか1名)。
→そうですね。結局、理論も学派も、その個人の育ってきた生活史が絶対に関連しているものなのです。少なくとも、心理学史の最初にあげた対談集のようなたぐいを読んだり、自伝を読むとよいと思います。


14章 行動主義・新行動主義
【14章に関連−パヴロフ】
●パヴロフ(著)川村浩(訳)(1975). 大脳半球の働きについて−条件反射学− (上)(下) 岩波書店(岩波文庫 青版927-1、927-2)
誰もが知っていて、それでいて、誰もが原典を読んだことのないイヌの条件づけの原典である。すべてを詳細に読む必要はないが、いくつかの実験だけでも目を通してほしい。

【14章に関連−ワトソン】
●J・B・ワトソン(著) 安田一郎(訳)(1980). 行動主義の心理学 河出書房新社 ¥2060
 本書は、ワトソン自身による行動主義の解説であり、行動主義の方法、本能、情動、習慣、思考、パーソナリティに関する行動主義による理解の詳細が理解できる。原著はBehaviorism. (revised edition). Norton & Company.である。3章と4章の人間のからだ(腺の役割など)では、パブロフの影響が強く感じられる。本書に付けられた訳者あとがき(pp.375-394)はごく短いながらもワトソンの生涯を簡潔に描き出しているので、一読の価値がある。なお、あわせて、アルバート坊やの実験の原典は、●リチャード D.グロス(著)大山正・岡本栄一(監訳)(1993). キースタディーズ心理学 下 新曜社 pp.85-99.で読むことができる。

【14章に関連−ハル】
●C.L.ハル(著)能見義博・岡本栄一(訳)(1960). 行動の原理 誠信書房
ハルは晩年の10年間に3冊の初歩的な本を執筆する予定を立てていた。その第1冊目が本書である。ちなみに、2冊目は『行動の体系』であり、彼の死と共に3冊目は永久に日の目を見ないことになった。本書を読むと、ハルがいかに精密に「哺乳類」の行動を体系化しようとしていたのかがわかる。原著は1943年出版のPrinciples of behavior: An introduction to behavior theory.である。

●C.L.ハル(著)能見義博・岡本栄一(他訳)(1971). 行動の体系 誠信書房
 ハルはこの本の原稿を出版社に渡した後、1952年5月10日に亡くなっている。原著は1952年出版のA behavior system: An introduction to behavior theory.である。したがって、本書は彼の遺作である。本書の緒言を読むと、ハルは3冊の本を執筆する予定で、本書が『行動の原理』につぐ、2冊目であった(緒言の中で3冊目は書けないだろうと明記している)。本書でも引き続き「哺乳類」の行動をいかに精密に体系化しようとしていたかがわかると同時に、ハルの心理学が歴史から忘れ去られてしまった理由(人間への適用の限界)もわかる。

【14章に関連−トールマン】
●E.C.トールマン(著)富田達彦(訳)(1977). 新行動主義心理学−動物と人間における目的的行動− 清水弘文堂
若い頃にゲシュタルト心理学の影響を受けたトールマンは、「目的」「期待」「認知」といった用語を使って行動を説明するのが特色と言われる。しかし、本書の序文や巻末の用語集を読むと、彼がこれらの用語を今日のわれわれとは異なる意味で使っていることがわかる。原著は1932年出版のPurposive behavior in animals and men.である。

【14章に関連−スキナー】
●バラス・F・スキナー(著)犬田充(訳)(1975). 行動工学とは何か−スキナー心理学入門− 佑学社
 原著は1974年出版のAbout behaviorism. Alfred A. Knopf.であり、当時、すでに言語学者チョムスキーによるスキナー批判のために行動主義は心理学の主流から引きずりおろされていた。しかし、人間行動に焦点が絞られた本書を読むと、(新)行動主義の中でもハルやトールマンが忘れ去られ、なぜスキナーだけが残ったのかが理解できる。個人的な評者の思い出を書かせてもらえれば、本書は1980年7月11日から読み始め19日に読み終えている。当時、感激しながらページをめくったことを思い返すことができる。

●B.F.スキナー(著)岩本隆茂・佐藤香・長野幸治(監訳)(1996). 人間と社会の省察−行動分析学の視点から−  勁草書房 ¥5665
 原著は1987年出版のUpon further reflection. Prentice-Hall.であり、すでに第一線から引退していたスキナーがさまざまな学会や雑誌に書いたエッセイや論文をスキナー自身の選択によって集めたものである。面白いのは3章の「『ユートピア便り』と『一九八四年』」は彼の小説『心理学的ユートピア』の続編である。

●B.F.スキナー(著)宇津木保・うつきただし(訳)(1969). ウォールデン・ツー−心理学的ユートピア 誠信書房
 幼少時から小説家になりたかったスキナーが、行動工学の原理を応用した書いたユートピアの世界像である(原著は1948年のWalden Two. The Macmillan Company.)。原題のWalden Twoは、誰もが知っているソローの『森の生活』の中のWaldenのもじりである。なお、スキナー自身が、本書の続編を『人間と社会の省察−行動分析学の視点から−』という翻訳書(勁草書房)の中の「『ユートピア便り』と『一九八四年』」で執筆している。

●スキナー(著)玉城政光(監訳)(1976). 行動工学の基礎理論 佑学社
 原著は1969年出版のContingencies of reinforcement: A theoretical analysis.Prentice-Hall.であり、原題をそのまま訳せば、『強化の随伴性』という行動主義の中心概念である。訳者のあとがきにあるように、本書はスキナーの多くの研究を理論的観点から総括してものである。巻末には、多数の文献が載せられていて、スキナー理論の専門的理解にも有用である。

●石田淳 (2013). 始める力 幻冬舎新書 ¥740
 「何をやっても続かない」という悩みを持つ人は多い。著者はスキナーによる行動分析をもとに、意志の力ではなく、目標を小さな行動に分割し、まず小さな一歩を踏み出すことの重要性を身近な事例(ダイエット、英語の学習など)を引き合いに出しながら明快に説明している。

●杉山尚子 (2005). 行動分析学入門−ヒトの行動の思いがけない理由− 集英社(集英社新書0307E) ¥660
 行動主義の強みの一つは日常生活への応用が可能であるという点であろう。本書は、日常生活にともなうさまざまな悩み事を行動主義の立場から分析し、具体的な解決法を提案している。

●佐藤方哉 (1997). 行動理論への招待 第10版 大修館書店 ¥2400
本書は月刊『言語』に15回にわたって連載されたものに加筆修正をほどこしたものであり、何よりもわかりやすいのが特徴である。心理学史にターゲットを絞った書物ではないが、本書を読めば、ワトソン、ガスリー、トールマン、ハル、スキナーについての理解が深まると同時に、行動主義の理論のエッセンスが理解できる。本書も個人的な評者の思い出を書かせてもらえれば、本書は1980年7月9日から読み始め翌10日に感動して読み終えている。

●ユーナス・ランメロ/ニコラス・トールネケ (著) 松見淳子 (監修) 武藤崇・米山直樹 (監訳)(2009). 臨床行動分析のABC 日本評論社 ¥3465
 行動主義の考えを心理療法に応用した行動療法の近年の展開を知る入門書と言える。多くの具体的な例や対応を取り上げているのが特色である。ただ、基本となる行動療法を深く理解したい者は、監訳者があとがきにあげている数冊の日本語文献を読んでからの方がよいかもしれない。

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2015/6/20

6月19日  
・ゲシュタルト心理学に関しては、「ゲシュタルト崩壊」ということばを聞いたぐらいだったが、他にもだまし絵などの形で身近に使われていることがわかった。
→はい、ゲシュタルト心理学は知れば知るほど、そして、その目で身の回りの世界を見れば見るほど、その面白さがわかります。
・ゲシュタルト心理学がなぜアメリカに根付かなかったかという点に関して、伝わりやすさ(親しみやすさ)や人脈(口コミ)の欠如ということに納得した。
→もちろん、心理学だけに限らないのですが、自分の主張をアピールする(広げる)ことにも超一流の研究者はたけています。とはいえ、やはり言語の壁は大きかったようです。
・かつて大きさの恒常性の実験を受けたことや、少しの要素が変わっても全体として同じものと認知されるものは日常にあふれ、そういった心の動きを利用した商品の開発があることを思い出し、ゲシュタルト心理学につながるのだと感じた。
→とりわけ、社会心理学の根本的な考え方(人は個人でいる場合と集団でいる場合に異なる)にはゲシュタルト心理学の影響は大きいです。
・卒論で顔のパーツが顔全体の認知に与える影響を研究する予定だが、これもゲシュタルト心理学とリンクしていると思うと深いものだと感じた。
→ぜひとも、以下のゲシュタルト心理学の文献も読んでみて、卒論の考察を深めてください。


【13章に関連−ゲシュタルト心理学】
●W.ケーラー(著)田中良久・上村保子(訳)(1971). ゲシタルト心理学入門 東京大学出版会 ¥980
 本書は訳者あとがきにあるように、1966年にプリンストンにおいて4回にわたって行った記念講義をまとめたものである。ケーラーは翌年死去したので、本書には手を入れていない。その意味で、専門的には物足りない部分があるかもしれないが、記念講義という性格上、誰にでもわかりやすく書かれている。4つの章は「ゲシタルト心理学の初期の発展」「ゲシタルト心理学と自然科学」「ゲシタルト心理学の最近の発展」「思考とは何か」であり、これ以外に、「ケーラーの人と業績」という序言が付けられている。なお、原著はKohler, W. (1969). The task of Gestalt psychology. NJ:, Princeton University Press.である。

●クルト・コフカ(著)鈴木正彌(監訳)(1998). ゲシュタルト心理学の原理 福村出版 ¥19000
 本書は、訳者あとがきにあるように、「実証的な論拠を緻密にかつ豊富に記載していることと,感覚・知覚の領域をはじめ,記憶・学習・情動・態度・自我・意志・社会・パーソナリティなど幅広い心的活動にわたって論述している点に,きわだった特徴がある」。しかし、本書が850頁という大著であるために、まず読み通すことは不可能であろう。したがって、関心のある部分を中心に拾い読みすることが現実的である。なお、原著は、Koffka, K. (1935). Principles of Gestalt Psychology. London: Routledge.である。

●Teuber, M. L. (著)本明寛(訳)(1975). エッシャーの絵の不思議な世界 別冊サイエンス 特集 視覚の心理学 イメージの世界 日本経済新聞社 Pp.6-22.
 誰もが見聞きして知っているエッシャーの不思議な絵の根本には、コフカなどのゲシュタルト心理学の考え方がある。本論文は、図と地をはじめとしたゲシュタルト心理学の原理とエッシャーの絵について一般向けに述べたものである。

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2015/6/13

6月12日  
・当時は差別的な部分が科学まで影響していて驚くと同時に、今の時代に生まれてよかったと思った。
→確かに、「今の時代」から過去を見ると、いろいろなことが見えてきます。もちろん、当時より、「今の時代」の方が暮らしやすいと多くの人が考えますが、それでもなお、気づきにくい部分でいまだに差別的なまなざしは残っています。
・ピネルや、日本では河合先生などがいなければ、臨床心理に対する差別的な見方が残っていたかと思うと恐ろしいし、彼らの思いをついでいきたいと思った。
→もちろん、少数の人々だけが頑張ったわけではないものの、上の2人は間違いなく中心となった人だったと思います。いずれにしろ、科学としての心理学に対して、もう一つの技能(や実践)としての心理学(臨床心理学)があることを理解しておいてください。


以下は、本日十分にお話できなかった事項の関連文献も含んでいます。

【12章に関連−臨床心理学】
●下山晴彦 (2010). 臨床心理学をまなぶ1 これからの臨床心理学 東京大学出版会 ¥2800
 実証的なデータに基づいた臨床心理学を目指す著者が編集した7巻シリーズの導入編と言うべき書物である。カウンセリング、心理療法、臨床心理学を明確に区別した第2章は誰もが読むべき部分である。心理学史的に見れば、第3章の「臨床心理学の近代化」、第9章の「臨床心理学の来し方」、第10章の「臨床心理学の行く末」は必読である。特筆すべきは、日本の臨床心理学の歴史について第11章「物語:日本の臨床心理学(前編)」と第12章「物語:日本の臨床心理学(後編)で、生々しく記述されている点であろう。

【12章に関連−フロイト】
●S・フロイト(著)生松敬三(訳) (1959). フロイト自伝 新潮社(新潮文庫)
 フロイト自身の手で精神分析を打ち立てるまでの技法(催眠、自由連想、夢)や苦労が記されている。その点で、精神分析に関するごく入門的な内容も含まれている。また、精神分析のアイデアを奪ったと批難されるジャネとの確執については、執拗なまでに否定している(pp.14-15)だけでなく、ジャネの行動を「卑劣」ということばを使って攻撃している(p.40)。なお、本書は、懸田克躬(他訳)(1970). フロイト著作集4 人文書院 Pp.422-476.にも訳出されている。

●W.マクガイアー/W.ザウアーレンダー(編)金森誠也(訳)(2007). フロイト=ユンク往復書簡(上)(下) 講談社学術文庫(1812-3) ¥980、¥1050
フロイトとユング(本書ではユンクと表記)の間に交わされた約360通の手紙の一部(縮小版)である。後世のわれわれが二人の悲劇的な結末を知っているという理由だけでなく、読み進めると最初から二人の違いを実感できる。たとえば、フロイトは強迫的にユングに手紙を求め、また、人種への異常なこだわり(たとえば上巻p.184のケルト人であるジョーンズへの蔑視)、自分に従わない者への過剰な怒り(たとえば下巻のアドラーへの憎悪)、などが読みとれる。一方、ユングはと言えば、文字通り偉大な父に対する息子のように対応している苦悩の姿が浮かび上がってくる。いずれにしろ、専門書や論文だけでは見えてこない二人の実像を知る好著であろう。

●小此木啓吾 (2002). フロイト思想のキーワード 講談社(講談社現代新書1585) ¥820
おそらく日本でもっともフロイトを理解していたのが著者の小此木氏であろう。その著者によるフロイト思想の解説書である。興味のあるキーワードの章だけでも読むとよい。なお、各キーワードの解説に付けられている豊富な参考文献が有益である。

●鈴木晶 (1998). 図説 フロイト 精神の考古学者 河出書房新社 ¥1800
フロイトの生涯に関して、さまざまな興味深い写真とともに簡潔に学ぶことができる。フロイトの過ごした時代のウィーンの様子や、精神分析学史上もっとも有名なアンナ・Oの事例、ユングとの関連、晩年の亡命など、写真の語るものは文字以上の迫力をもっている。

●A・フロイト(著)外林大作(訳)(1958). 自我と防衛 誠信書房 ¥1854
本書はフロイトの娘アンナ・フロイトが1936年に公刊した書物の翻訳である。訳者解説にあるように、本書は、内容的に言えば、フロイトの1930年以降の後期の思想を要領よく簡潔にまとめたものと言えよう。

【12章に関連−ユング】
●C.G.ユング(著) 小川捷之(訳) (1976). 分析心理学 みすず書房
本書はユングが1935年にロンドンのダヴィットストック・クリニックでおこなった講義をもとにしたものである。ユングにとっての夢、言語連想、コンプレックス、投影などが生き生きとした例と共に解説されていて読みやすい。

●林道義 (1998). 図説 ユング 自己実現と救いの心理学 河出書房新社 ¥1800
ユングの生涯に関して、さまざまな興味深い写真とともに簡潔に学ぶことができる。フロイトと訣別したあとの精神的危機をめぐる時代のユング自らの絵(カラー)のすさまじさには圧倒される。

【12章に関連−アドラー】
●アルフレッド・アドラー(著)野田俊作(監訳)岸見一郎(訳)(2006). 個人心理学講義−生きることの科学 一光社 ¥1800
本書は監訳者が指摘するように、コンパクトにアドラーの思想を自身のことばでまとめたものであり、どれか一冊アドラーの本を読む場合の最適の書物といえる。訳者によるアドラーの個人史を含んだ解説(pp.240-261)が末尾につけられている。

【12章に関連−エリクソン】
●R.I.エヴァンズ(著)岡堂哲雄・中園正身(訳)(1981). エリクソンは語る−アイデンティティの心理学 新曜社 ¥1500
 対話というのは目の前の人にわかるように話さなければならないので、一般に、平易でわかりやすい内容となる。本書はエリクソンの理論について、彼自身の口から語られた内容をもとにしたものである。本書の最後の部分(pp.147-177)では訳者によるエリクソンの個人史や理論の解説となっている。

【12章に関連−ロジャーズ】
●カール R・ロジャーズ/デイビッド E.ラッセル(著)畠瀬直子(訳)(2006). カール・ロジャーズ 静かなる革命 誠信書房 ¥4800
 本書は主にインタビューに答えることでロジャーズが自らの人生を語るという構成になっている。ユニークなのは若き日に行った中国や日本(富士山登山もしている!)の日記が掲載されているところであろう。

●佐治守夫・飯長喜一郎(編) (1983). ロジャーズ クライエント中心療法−カウンセリングの核心を学ぶ 有斐閣 ¥1155→聖心C書庫1階 080/Y96
 新書という性格から、全7章からなるロジャーズのわかりやすい紹介に努めている。章立ては「ロジャーズの生涯と思想」「非指示的療法」「クライエント中心療法」「ロジャーズのパーソナリティ理論」「クライエント中心療法の研究」「エンカウンター・グループとPCA」「クライエント中心療法の理論的・実践的な展開」となっている。心理学史的には第1章の「ロジャーズの生涯と思想」を読むだけでよいが、5章の「クライエント中心療法の研究」は心理療法の効果を実験的に検証しようとした珍しい試みが述べられており、本学の佐々木正宏先生が執筆されている。

【12章に関連−河合隼雄】
●河合隼雄 (2001). 未来への記憶(上)岩波書店(岩波新書新赤版707) ¥680
●河合隼雄 (2001). 未来への記憶(下)岩波書店(岩波新書新赤版708) ¥680
 日本の臨床心理学の発展に大きな功績のあった著者の半世紀の自伝。本書を読むと、日本の臨床心理学の大ざっぱな歴史も知ることができる。上巻は生い立ちからアメリカ留学前までの時間が、下巻はアメリカ留学以後(ユング研究所の3年も含む)に関して記述されている。

●大塚信一(2009). 河合隼雄 心理療法家の誕生 トランスビュー ¥2800
本書は『未来への記憶』の編集者として河合隼雄と関わった著者から見た河合隼雄の伝記である。著者があとがきに書いているように、本書は心理療法家としての河合隼雄がどのようにして生まれたのかを明らかにしている。

●今田寛 (1996). 心理学専門家の養成について:基礎心理学の立場から 心理学評論, 39, 5-20.
 世はまさに臨床心理学の一大ブームであるが、臨床心理学者が何を学べばよいかというコンセンサスは必ずしも得られているわけではない。アメリカでは1944年から48年までボールダーにおいて臨床心理学者の養成カリキュラムの検討が何度も行われた。それらの検討から出来上がったのが、いわゆるボールダー・モデルと呼ばれる科学者−実践家モデル(要するに、誰もが臨床家の前に科学者であるべきだというモデル)である。本論文は、このボールダー・モデルのその後の展開だけではなく、日本の現状についても触れられている。

【12章に関連−内観】
●吉本伊信 (1983). 内観への招待 朱鷺書房 ¥1545
 本書は、著者がどのようにして内観と出会ったか、また内観法の実際の方法について、一般向けにわかりやすく解説したものである。本書の表紙にあるサブタイトル「愛情の再発見と自己洞察のすすめ」こそが、内観の核心である。

【12章に関連−森田療法】
●岩井寛 (1986). 森田療法 講談社現代新書 ¥735
 森田正馬(もりたしょうま)によって創案された森田療法は、人間に備わっている「生の欲望」を大前提とした日本独自の心理療法である。この療法は主として不安神経症を対象にしているが、本書を一読すると、ふだんの日常生活にも応用できる範囲は広い。

【12章に関連−催眠】
●成瀬悟策 (1997). 催眠の科学−誤解と偏見を解く 講談社(ブルーバックスB1153) ¥742
 日本の催眠の第一人者である著者が、催眠に関しての誤解と偏見をわかりやすく解いた書物。暗示の本質や、催眠の歴史や利用まで幅広く述べられている。
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2015/6/6

6月5日  
・個性に着目した研究が進む中で優生学や遺伝学を提唱する研究者がいることにショックを受けた。
→良い意味でも悪い意味でも当時の「時代背景」からやむを得ない部分もあります。あえて、彼らを弁護すれば、彼らは彼らなりに人類の幸福を考えていたのです。特に「優生学」は「優秀な者たちを増やす」という部分に力点があり、「劣等な者を抹殺する」ということは言っていません(が、ヒトラーたちは、そちらにすり替えてしまったわけです)。
・シュテルンやおるポートの人格心理学は質的心理学に当たるのではないかと感じた。
→かなりの部分、その通りです。質的心理学に興味のある方は、本年度の聖心シラバス(p.514)の大学院の授業のテキストや参考文献等を参照してみてください。
・一般化とはどういうものか興味がわいた。
→いつの時代も人間のさまざまな能力、属性などに普遍性があるのか、それとも個性があるのか、は論争が行われてきました。とくに心理学史で言えば、認知心理学などは普遍性を重視しますし、人格心理学などは(どちらかと言えば)個性を重視するという立場の違いがありますので、そのあたりを勉強することが必要かと思われます。



【11章に関連−シュテルン】
●Stern, W. (1904). Wirklichkeitsversuche. Beitrage zur Psychologie der Aussage, 2, 1-31. In U. Neisser (Ed.), Memory observed: Remembering in natural contexts. San Francisco: W. H. Freeman.(U.ナイサー(編) 富田達彦(訳) (1988). 現実的実験 観察された記憶―自然文脈での想起 (上)誠信書房 pp.115-129.)
現実的問題に強い興味をいだいていたシュテルンの目撃証言の実験の抄訳であり、この時期に、いわゆる生態学的妥当性の高い重要な実験を行っていた彼の卓見を知ることができる。

【11章に関連−オルポート】
●G・W・オルポート(著)依田新・星野命・宮本美沙子(訳) (1977). 心理学における人間 誠信書房(Allport, G. W. (1968). The person in psychology: Selected essays by Gordon Allport. Beacon Press.)
本書はオルポートの論文を集めた論文集である。シュテルン、ジェームズ、デューイ、レヴィン、ビューラーなどについて書かれた章をはじめ、偏見その他の研究論文も含まれている。最後の章は、彼自身の自叙伝である。なお、巻末には、短いながらも、訳者の一人星野氏がオルポート博士の墓所を訪ねたときの話が写真とともに掲載されている。


 以下、オルポート自身の著作の書名のみ。
●G.W.オルポート/L.ポストマン(著) 南博(訳) (1952). デマの心理学 岩波書店 ¥2000
■G. W.オルポート(著)原谷達夫・野村昭(訳) (1961). 偏見の心理 培風館 ¥1800
●G. W.オルポート(著) 詫摩武俊・青木孝悦・近藤由紀子・堀正(訳) 1982 パーソナリティー心理学的解釈 新曜社 ¥5800
●G. W.オルポート(著)大場安則(訳) (1970). 心理科学における個人的記録の利用法 培風館 ¥950
●G. W.オルポート編著 青木孝悦・萩原滋訳 (1982). ジェニーからの手紙 新曜社 \2400

【11章に関連−ハイダー】
●フリッツ・ハイダー(著)堀端孝治(訳)(1988). ある心理学者の生涯ー現代心理学史の一側面を歩んだハイダーの自叙伝 協同出版 ¥3000
 本書を読むとハイダーの生涯の前半の34年間がヨーロッパ、後半の50年以上がアメリカにいたことの彼自身への影響を知ることができる(原著出版は1983年で、この訳書が完成する直前にハイダーは91歳で永眠している)。ハイダーの目を通しての20世紀初頭のドイツの心理学や関連領域の動向、第2次世界大戦後のアメリカの心理学の動向が興味深く描かれている。特に訳書には原書になかったハイダーの師弟図、交友図、移動した地図などが載っていて理解を助けている。

●F.ハイダー(著)大橋正夫(訳)(1978). 対人関係の心理学 誠信書房
 あまりにも有名な本書(原著)の出版は1958年であり、本書で述べられている対人関係を一種のバランスとしてとらえる考え方や、原因帰属の考え方は、その後の社会心理学に大きな影響を与えている。ハイダー自身はほとんど著作を残していないので、本書が彼の考え方を体系的に知るための唯一の書と言ってもよいだろう。
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2015/5/29

【重要】今後の発表に関して  
 私がしっかりコントロールしていなかったことに大きな問題がありますが、来週6月5日は2人の方が同じ11章の発表となりました。今更、変更もできませんので(当然、2人なりの違う切り口もあるでしょうから)、そのまま発表をしてもらいます。

 なお、6月12日、19日、(26日は休講)、7月3日、10日、17日に関して、来週、しっかりと確認したいと思いますので、まだ発表していない方は必ず出席して下さい。
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2015/5/29

5月29日  
・正しいと盲信されていた考えが100年後に覆されることを改めて知ったので、新しい学説に触れたときには疑いの目を持ってみようと思った。
→まったく、その通りですね。その時代の流行廃りから科学も逃れられないのです。同じことは、いわゆるベストセラーにも言えます。古典を読めというのはそのような意味です。
・バートのねつ造はなぜ生前に発見されなかったのか?
→そもそも、ナイトの称号をもらうほどの大家がねつ造をするなどと誰1人思わなかったのです。これが権威に弱い私たちの姿です。
・優生学は科学ではなく社会哲学のように思え、それを正しいと主張するのも誤っていると主張するのも自由だと思う。
→確かにそういう一面もあるのですが、科学としてどのような客観的な根拠があるかを調べる必要はありそうですね。特に、優生学で犠牲になっている人がいる場合は。  血液型と性格が関連するという主張に賛成であろうが、反対であろうが、そのこと自体は自由ですが、血液型ハラスメントなどが起こっていることを考えると、客観的な証拠を調べることが必要でしょうね。
・ゴールトンの業績が埋もれてしまうのは残念に思った。
→私も同感です。本人の意図とは関係なく、優生学がその後、悪評を受けてしまったことで、彼は不当に低く扱われていて、誰1人、顧みなくなっているのは、科学の発展にとって不幸な出来事です。

【11章に関連−ゴールトン】
●Galton, F. (2006). The art of rough travel: From the peculiar to the practical advice from a 19th-century explorer. The Mountaineers Books.
 本書の原著は1855年に出版されたThe art of rough travel: Shifts and contrivances in wild countriesである。これは、ゴールトン自身の経験(1850年からの2年間のアフリカ探検)をもとに、挿絵とともに、探検に必要な装備や心得のノウハウ(持って行く食料の選び方、野営地の設置、調理法など)を実に細かく書き、何度も自身で改訂し、当時ベストセラーとなったものである(いかだを作る際の木材の浮力の違いを種類ごとに数値化しているのは、いかにもゴールトンらしい)。本書は、1872年出版の原著第5版をもとに、その全体の3分の1を削除し、若干、章の配列や結合を手直しし、原著に出てくる探検家の注が付けられている。

●Galton, F. (1909). Memories of my life. London: Methuen.
 本書はゴールトンが死の2年前に執筆した自伝である。父の突然の死後、莫大な遺産を相続した彼のアフリカ探検をはじめとし、各地を旅行した思い出を読むと、ゴールトンが根っからの旅好きであったことがよくわかる。また、彼自身の生い立ちや家族、学生時代の友人などの紹介では、自身の優生学への信念のためか、優れた家系(遺伝)が強調されている(自身の結婚や妻のことにはごくわずかしか触れていないにもかかわらず、妻の家系に関する記述は忘れていない)。彼の生きた時代に交際した人々(この自伝の執筆時点で多くが故人)に対する情感たっぷりの思い出も書かれている(ハーバード・スペンサーをダービーに連れて行ったことなど)。優生学に関しては、19章(人間の能力)、20章(遺伝)、21章(人種改良)の中で、高齢になってもなお、優生学を信じる信念が読みとれる。なお、巻末の著作目録にある183本のタイトルや出典を見ているだけで、彼がいかに多彩であったかが改めてよくわかる。

●F・ゴールトン(著)甘粕石介(訳) (1935). 天才と遺傳 岩波書店(岩波文庫 上、下)
 優れた家系に優秀な人材(天才)が出現することを職業(政治家、科学者、宗教家、詩人、音楽家、ボート選手など)別に実証した書物である。ゴールトン特有の数量化(本訳書の付録にあるケトレの正規分布の利用)に加え、個々の家系の人物の略歴が多く取りあげられている。最後の2章(諸民族の比較、国民の自然的能力に作用する諸影響)に優生学の根本思想が書かれているので、ここだけを読めばよい。原著は、Hereditary genius: An inquiry into its laws and consequences.の改訂版(1892年出版)である。なお、別に●サー、フランシス、ゴルトン(著)原口鶴子(訳) (1916). 天才と遺伝 早稲田大学出版部もあるが、本訳者によれば、少しばかり翻訳に奔放すぎるきらいがあるという。

●C.A.ピックオーバー(著)新戸雅章(訳)(2001). 天才博士の奇妙な日常 勁草書房 ¥3000 Pp.157-204.
 本書はいわゆる天才でありながら奇人とも称された人々の物語を集めたものである。7章の「バーミンガムの挫けた脳」がフランシス・ゴールトンの小伝である。親から相続した莫大な遺産で生涯、自由奔放に生きた奇人でありながら、探検家として、また、気象学、法学、心理学、統計学などのいくつもの分野で先駆的な研究を残した彼の生涯が興味深く描かれている。なお、●ディヴィッド・ウィークス/ジェイミー・ジェイムズ(著)忠平美幸(訳)(1998). 変わった人たちの気になる日常 草思社 ¥1800にも、ゴールトンのエピソードが散りばめられている。

●岡本春一(著)大羽蓁・笹野完二・澤田丞司(編) (1987). フランシス・ゴールトンの研究 ナカニシヤ出版 ¥3500
 おそらく本書はゴールトン研究の世界一のものであろう。その理由は、著者が後半生のすべてを注ぎ込んで、何度もイギリスに滞在し、膨大な量のゴールトンの著作物をほぼすべて読みこなし、愛弟子であるピアソンの書物(Pearson, K. (1914-1930). The life, letters and labours of Francis Galton. Cambridge University Press.)の間違いまで指摘しているからである。これほどまで完全にゴールトンの著作物を簡潔にまとめ得たものは存在しないと断言できる。なお、本書は、著者の死後に、著者と親交のあった編者(うち笹野、澤田は著者の教え子)によってまとめられたものだが、優生学の部分は割愛されている。また、本書に生かせなかった膨大な未整理の資料が残されている点は惜しまれる。


【11章に関連−優生学等】
●スティーヴン・J・グールド(著)鈴木善次・森脇靖子(訳)(1998). 増補改訂版 人間の測りまちがい 河出書房新社 ¥3900
 古生物学者である著者は、納得いくまで必ず原典に当たり、深く読みこなし、見過ごされがちな小さなエピソードの中に本質を見いだし、その分かりやすく明快なエッセイの数々で世界的に有名である。本書では、人種に関するさまざまな数値化(とりわけ知能指数)の問題を取り上げ、各研究者が恣意的に結びつけているだけの数値によって、その数値が具象化(実体化)され、序列化に使われるという誤った歴史を解き明かしている。もちろん通読してほしいが、500頁を越える中で、心理学に関連する第五章「IQの遺伝決定論−アメリカの発明」(ゴダード、ターマン、ヤーキーズ)と第六章「バートの本当の誤りー因子分析および知能の具象化」(バート、スピアマン、サーストン)は読んでほしい。なお、本書は初版後、15年後に改訂されたが、本質的な改訂ではなく、それは1994年に出版されアメリカで大反響を引き起こした『ベル・カーブ−アメリカ人の生活における知能と階級構造』(社会階級によって生得的な知能が固定化されているという主張)への反論部分を付け加えたためである。なお、2008年に河出文庫(上)(下)として出版されている(各¥1575)。

●米本昌平・松原洋子・鯏膽]此ケ毀鄒醉胴А
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2015/5/23

5月22日  
・ソーンダイクの問題箱がよくわからなかった。
→これはパブロフのいう条件づけとは無関係で、試行錯誤学習の一例として紹介されるのが一般的です。ただし、この場合の試行錯誤というのは、ネコが環境に働きかけ、その環境を操作して、問題箱から脱出できる(ご褒美になります)と言う意味で、オペラント条件づけの一種と考えることも加納です(パブロフの条件づけは古典的条件づけと呼ばれます)。
・心理学に動物を対象にした心理学があることを初めて知った。
→むしろ、一昔前(40年くらい前)は動物実験ばかりでした。
・進化論がこれほど心理学に大きな影響を与えたことに驚いた。
→進化論は科学や人間の思想に大きな影響を与えました。最低限の正しい知識は持っていてほしいものです。たとえば、以下の佐倉さんの本はおすすめです。

【9章に関連−ダーウィン、進化論】
●ダーウィン(著)八杉龍一(訳)(1990). 種の起源(上)(下) 岩波書店(岩波文庫青版912-4〜5)¥800、¥760
世界中でこの書物の名前を聞いたことのない者はいないはずである。自然選択と適者生存の原理をダーウィン自身が解説した古典である。下巻の260頁に進化心理学の予言が載っている。原著は、Darwin, C. (1859). On the origin of species by means of natural selection or the preservation of favoured races in the struggle for life. London: John Murray.

●チャールズ・ダーウィン(著) 長谷川眞理子(訳) (1999). 人間の進化と性淘汰1 文一総合出版 ¥3800
●チャールズ・ダーウィン(著) 長谷川眞理子(訳) (2000). 人間の進化と性淘汰2 文一総合出版 ¥6000
 自然淘汰に比べて性淘汰という概念はあまり知られていない。しかし、本書で述べられている性による進化の違いは現在の進化心理学の土台となる考え方であり、進化心理学を学ぶ者なら、誰もが読んでおかなければならない必読書である。

●ダーウィン(著)浜中浜太郎(訳)(1931). 人及び動物の表情について 岩波文庫(青912-7) ¥1000
感情の心理学を志そうとする者の必読書である。今読んでみても、刺激を受ける部分は多い。2007年に再版されたものの、残念ながら、旧字体、旧仮名遣いのままである。原著は、Darwin, C. (1872). The expression of the emotions in man and animals. Chicago: University of Chicago Press.

●佐倉統 (2003). 進化論の挑戦 角川書店(角川ソフィア文庫298)¥660
 本書は著者の講義ノートに基づいたもので、進化論や社会生物学に関して、とにかく大枠を理解したい者に推薦できる入門書である。本書が一気に読めてしまうのは、難解な用語を使っていないことに加え、進化論や社会生物学を社会の動きの中に位置づけているからである。特に、第二章の優生学、第五章のフェミニズム、第七章の進化心理学、第八章の自然保護との関係など興味深い。

●松永俊男 (2009). チャールズ・ダーウィンの生涯−進化論を生んだジェントルマンの社会 朝日新聞出版(朝日選書857) ¥1400
 近年の欧米のダーウィンの伝記研究の進展に比較して、日本での紹介が遅れていることを危惧する著者が3年を費やして書いたダーウィンの伝記である。ウォレスとの関係がきわめて良好であったことや、娘のアニーの死が必ずしも宗教を捨てたわけではないことなど、従来の日本語で紹介されている伝記とは異なる新たな解釈(と資料)が豊富である。

【9章に関連−ロマーネス、モーガン、動物心理学ないしは比較心理学】
●R.ボークス(著)宇都木保・宇都木成介(訳)(1990). 動物心理学史−ダーウィンから行動主義まで 誠信書房 ¥7800
 ダーウィンによる人間と動物の連続性の提唱以来、動物を研究することは人間の研究につながるという認識が確立し、これまで数多くの動物を使った実験が行われてきた。本書は知能、本能、習慣、条件反射、問題解決など動物実験によって大きく発展したトピックスについて詳しく解説されている。

●南方熊楠 (1994). 十二支考(上)(下) 岩波文庫(青139-1〜2)各¥800
 この著書の中で、南方は動物の生態を描く際に、ロマーネス(「ローメンス」と表記)の『Animal Intelligence(動物の知能)』を頻繁に引用している(上巻p.28.p.362,p.394,p.395,p.397、下巻p.1,p.61,p.130,p.291,p.292,p.298)。ただし、南方自身はその博学から古今東西のすべての資料を駆使して、動物(十二支)のそれぞれに関する興味深い話を紹介している。

●モルガン(著)大鳥居奔三(訳)大日本文明協會(編)(1914). 比較心理學 大日本文明協會
 動物の行動の極端な擬人化に反対して、モーガンの公準を打ち立てたモーガン自身の比較心理学に関するテキスト。当然のように、現在、入手するのはきわめて困難である上に、旧字体、旧仮名遣いであるので読みにくい。原著は、Morgan, C. L. (1894). An introduction to comparative psychology. London: Scott.

●岡野恒也 (2005). ロマーニズ、モーガンー比較心理学の父 末永俊郎(監修)鹿取廣人・鳥居修晃(編)心理学群像1 アカデミア出版会 Pp.107-127.
 ロマーニズとモーガンの小伝と功績が簡潔にまとめられている。本書でも触れられているように、ロマーニズは逸話法による観察結果だけではなく、理論的解釈への発展を記述した著書を予定していたが、46歳という若さで死去したため、今日、批判される逸話法だけの研究者としての評価が定まってしまったと思われる。これに対して、84歳まで生きたモーガンの業績(逸話法への批判など)は、ある意味、ロマーニズが生きていたら自身の著書の中で触れることであったのかもしれない。

●オスカル・プフングスト(著)秦和子(訳)(2007). ウマはなぜ「計算」できたのか−「りこうなハンス効果」の発見 現代人文社 ¥2000
 本書は、心理学史上もっとも有名な研究であり、いわゆる「実験者効果」と呼ばれる現象として知られる利口な馬ハンスの事例の研究書である。著者のプフングストは、本書で、動物に高度な計算能力や思考能力があるのかどうかということを徹底的に実験によって検証し、それが飼い主や聴衆の「無意識的な」微少な身体運動の感知にあることを証明している。原著出版は1907年であるが、今なお、実験や研究を行う者の必読書であろう。なお、プフングストの研究以降の馬の計算能力に関しては、●大槻快尊 (1914). 計算能力ありと云はるる馬の話(一) 心理研究, 6, 108-126.●大槻快尊 (1914). 計算能力ありと云はるる馬の話(二) 心理研究, 6, 244-257.を参照してほしい。

【9章に関連−動物行動学(エソロジー)】
●W.H.ソープ(著)小原嘉明・加藤義臣・柴坂寿子(訳)(1982). 動物行動学をきずいた人々 培風館 ¥1500
 原著出版は1979年で、著者ソープはローレンツやティンバーゲンとも深い交流を持っている。心理学史的には第一部の行動学の起源(「博物学の初期の歴史」「行動学のおこり」「イギリスの行動学への貢献」「アメリカ合衆国における行動学」「大陸ヨーロッパ行動学の確立」の全5章)が興味深い。とりわけ、著者自身が実際に交流をもっていた、ロイド・モーガン(pp.36-37)、カール・ラシュレイやスキナーとのエピソード(pp.59-60)は興味深い。本書の第二部の行動学の発展(「一九五〇年当時の概念体系」「戦後の新しい研究グループと研究室」「行動学の概念と研究の現状」の全3章)は、どちらかと言えば、ローレンツやディンバーゲンを中心とした動物行動学の概念の解説と言える。

●アンタール・フェステティクス(著)木村武二・大江秀房・高橋梨里(訳)(1993). ローレンツ フォトグラフ−偉大な動物行動学者の生涯 マグロウヒル出版 ¥3200
 本書はローレンツの80歳の誕生日に弟子であった著者がプレゼントした写真集である。ローレンツの個人的な写真を含み、多数の興味深い写真が掲載されている(ただし、すべてモノクロ写真である)。

●ノルベルト・ビショッフ(著)今泉みね子(訳)(1992). ローレンツとは誰だったのかーあるサイコグラムの試み 白水社 ¥2000
 本書は単なるローレンツの伝記ではない。マックス・プランク行動生理学研究所の開設(1958)以来、15年間にわたってローレンツと個人的交流(その半分はローレンツの助手であった)を持っていた著者が、サイコグラム(心理記載)という心理学的手法で、ローレンツの人物像を解き明かそうとしたものである(原著出版は1991年)。内容は父親、母親、パートナーとの関係、などをエディプス・コンプレックスに基づいて分析するなど、興味深い(筆跡の分析まで行われている)。

●コンラート・ローレンツ(著)日高敏隆(訳)(1977). ソロモンの指環−動物行動学入門− 早川書房
 タイトルの「ソロモンの指環」とは、旧約聖書にあるソロモン王が動物たちと自由に語り合えたという故事に基づいている。本書は、ローレンツがさまざまな動物たちと心温まる(時には抱腹絶倒の)エピソードを記したものである。気軽に読めると同時に、動物と人間との連続性、動物世界から得られる人間への洞察などが得られる。なお、本書は、1998年からハヤカワ文庫に収録されている。

●ニコ・ティンバーゲン(著)日高敏隆・宮川桃子(訳)(1983). ティンバーゲン 動物行動学 実験・理論編 平凡社 ¥3400
 本書はティンバーゲンの論文集の第二集の全訳である(原著出版1972年)。第一部が室内実験であり、クロウタドリとウタヅグミのひな、ドゲウオ、イトヨに関する研究が掲載され、第二部は一般的論文が6編(「行動と自然淘汰」「なだめの信号について」「エソロジー」「人間の行動の動物的な根源の追求」「早期児童期自閉症ーエソロジー的アプローチ」「機能行動学と人間科学」)が載せられている。

●ニコ・ティンバーゲン(著)日高敏隆・宮川桃子(訳)(1982). ティンバーゲン 動物行動学 野外研究編 平凡社 ¥3600
 本書はティンバーゲンの論文集の第一集の全訳である(原著出版1972年)ティンバーゲン自身の研究として、カモメ、ハチの一種であるツリスガリ、ハイイロジャノメチョウ、キツネなどの観察研究が詳細に記されている。



10章 発達心理学
【10章に関連−ホール】
●古川忠次郎 (1957). ホール 牧書店
 ホールは心理学者であるだけではなく、教育学者でもあったため、本書は西洋教育史の一冊として執筆されている。全体は5つの章から構成され、心理学史的に特に有用なのは、第一章「ホールの生涯」と第二章「人物と業績」である。第2回目のドイツ留学の際のヴントだけではなく、フェヒナーやヘルムホルツとの交流も描かれていて興味深い。残りの3つの章は、第三章「青年期の心理と教育」、第四章「ホールの根本思想」、第5章「教育の諸問題」である。ホールを有名にしたのは『青年期』であるが、彼の著作の『老年期』にも有用な箇所は多く、彼を単なる発達心理学者というよりも生涯発達心理学者として位置づける方がよいかもしれない。著者は深くホールを尊敬しているため、随所に、大げさなほどの賛辞が認められるものの、ホールについて理解するための好著である。

□ホール(著)梅根悟・勝田守一(監修)岸本弘・岸本紀子(訳)(1968). 世界教育学選集 子どもの心理と教育 明治図書
 ホールのさまざまな著作の章の中から、訳出されたものが5編集められている。収録されている最初の2編は、「新入学児の心的内容(The contents of children's minds on entering school)」「砂山の物語(The story of a sand pile)」である。この2つは、ホール(1907)の『児童の生活の諸相と教育(Aspects of child life and education) 』の中の彼自身の論文である。なかでも「新入学児の心的内容」はアメリカにおける最初の児童心理学の論文であると高く評価されている。残りの3編(「発育期の少女」「市民教育」「踊りと無言劇の教育的価値」)は1911年の『教育上の諸問題(Educational problems)』の中からとられている。なお、巻末の11ページの訳者(岸本弘)による解説はホールに関する簡潔な伝記になっている。

【10章に関連−ゲゼル】
●A.ゲゼル(著)山下俊郎(訳)(1966). 乳幼児の心理学ー出生より5歳までー 家政教育社 ¥5670
 発達において成熟の要因を強調したゲゼルの主要な著書(原著出版1940年)の翻訳。サブタイトルにあるように、5歳までの子どもの発達の様子を彼が考案したワンウェイミラーを使った写真や映像記録をもとに解明したものである。ゲゼルの方法の独創性については、同書の訳者による付録(『ゲゼルの研究とその方法ー保育の科学化のためにー』)に簡潔に要約されている。

●A.ゲゼル(著)高木俊一郎・平井信義(訳)(1972). 青年の心理学ー10歳より16歳までー 家政教育社
 本書は10歳から16歳までの発達の様子を100名を越える被験者を対象に観察したものである。第2部では、1年ごとに分けて、全体の活動体系、身の回りのことと日常の週間、情緒、成長している自我、人間関係、活動と興味、学校生活、倫理観、哲学的な考え方の9つの側面から観察を行った結果が述べられている。そして、第3部では、これらの観察記録をもとに全体的な発達傾向がまとめられている(原著出版1956年)。

●A.ゲゼル(著)依田新・岡宏子(訳)(1967). 乳幼児の発達と指導 家政教育社
 本書は乳幼児の発達の姿を年齢を追って克明に記したもので、乳幼児に接する一般の人々のために執筆されたものである(原著出版1943年)。第1部はゲゼルの発達(成長)の信念(哲学)に即した記述がなされ、第2部では乳幼児の発達の姿が5歳まで克明に述べられ、第3部では、これらの乳幼児の発達の姿に合わせた指導法が述べられている。訳者の一人の故岡宏子先生は長く聖心女子大学に勤務し、聖心女子大学の発達心理学の礎を築いた。

【10章に関連−ピアジェ】
●ジャン・ピアジェ/ベルベル・イネルデ(著)波多野完治・須賀哲夫・周郷博(訳)(1969). 新しい児童心理学 白水社(文庫クセジュ)
 本書の原著は1966年出版で、訳者まえがきにもあるように、ピアジェ心理学を自らが要約したものである。図表は1枚もなく、入門書というには難解であり、訳者も指摘するように、何度も読み直す必要があると思われる。

●J.ピアジェ(著)谷村覚・浜田寿美男(訳)(1978). 知能の誕生 ミネルヴァ書房 ¥5000
 本書はピアジェの3人の子どもの観察記録をもとに、知能の発達段階を明らかにしようとした書物で、ピアジェの主著の一つと位置づけられる(原著出版1948年)。徹底した観察記録(ただしわずか3名)をもとに、理論化が可能なのは、ピアジェ自身の深い学識に支えられているところが大きいと思われる。500頁を越える本書を読む時間がなければ、付録3の「3人の子どもの観察例図表」(制作は岡本夏木、矢野喜夫・鈴木葉子)だけでも見ることを勧める。

●J・ピアジェ(著)中垣啓(訳)(2007). ピアジェに学ぶ認知発達の科学 北大路書房 ¥2940
本書の原著は、ピアジェ自身が自分の理論について1970年に要約したものの英訳(『Piaget's theory』)であるが、訳者がフランス語の原典と詳細に照らし合わせた上で訳出している。さらに、特筆すべき点は、難解と言われるピアジェ理論に関して、各頁において訳者による詳細な解説が付けられている点である。結果的に、訳者自身も言うように、解説の分量の方が多くなってしまったほどの力作となっている。したがって、理解しやすい日本語のピアジェの解説書として一級のものとなっている。
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2015/5/15

5月15日  
・心理学とはどのような学問なのか哲学とは何が違うのか次第に理解できてきた。
→数量化というのが一つの重要な違いですね。
・ヴントの反対者がいたことに驚いたが、さまざまな立場が対立し合うことで心理学が成長してきたのだと感じた(類似の意見、ほか1名)
→授業中にも言いましたように、対立する敵もいない学者とは極論すれば存在価値のない学者だということです。この方が指摘していますように、対立があるからこそ、心理学(や学問)は発展できるのです。その意味で、やはりヴントは偉大です。
・ヴントの考えには少し極端なところがあるようにも思える。外国からの研究者(弟子)がたくさん来ていたが疑問をもった者はいなかったのだろうか?
→当然いたはずです(正直なところ、そこまで私も詳しく知りません)。ただ、ヴントの考えを(とりわけ英語圏に)紹介したのがティチェナーなのですが、実は彼が極端にヴントの考え方をゆがめて(つまり構成主義、要素主義)紹介したという問題点があるのは事実です。ヴント自身は哲学にも通じていて、より広い観点からの研究を目指していました。事実、民族心理学(現在の文化人類学)の研究も行っていて、実験心理学の研究は彼のごくごく一部の業績です。


【6章 反応時間研究】
●R.ラックマン・J.L.ラックマン・E.C.バターフィールド(共著) 箱田裕司・鈴木光太郎(監訳)(1988). 認知心理学と人間の情報処理 T サイエンス社 pp.177-245.
 主に認知心理学の時代以降の比較的新しい反応時間の研究が解説されている。原著出版は1979年。

●ルネ・ショショル(著)萬代敬三(訳)(1971). 反応時間  J.ピアジェ/P.フレス(編)現代心理学U 白水社 Pp.87-185.
 認知心理学以前の時代の古典的な反応時間研究が解説されている。原著出版は1963年。


【7章に関連−ヴント】
●ヴィルヘルム・ヴント(著)川村宣元・石田幸平(訳)(2002). 体験と認識−ヴィルヘルム・ヴント自伝− 東北大学出版会 ¥2800
本書はヴントの遺作である(彼は本書を書き終えるとほぼ同時に没している)。一読してわかることは、彼の興味の広さであり、逆に言えば、純粋の心理学に関する記述部分はかなり少ない(特に心理学実験室の創設の話はほとんどない)。しかし、このような彼の興味の広さが、20年かけて著した全10巻の民族心理学の成立に関わっていることがよく理解できる。また、当時、彼が影響を受けたヘルムホルツ、ミュラー、デュ・ボア=レーモン、ウェーバー、フェヒナーなどの生き生きとして姿を知ることができることも興味深い。

●ウィルヘルム・ヴント(著)比屋根安定(訳)(1959). 民族心理学−人類発達の心理史 誠信書房
 ヴントが20年をかけて執筆した『民族心理学』(全十巻)の内容をもとにしたものが本書(『民族心理学要論』)である(原著は1912年出版)。ヴントの言う民族心理学とは今日の文化人類学の内容と類似している。ただし、章の目次を列挙すれば、「原始人」「トーテム崇拝時代」「英雄と神々との時代」「人類への発達」とあるように、そこに歴史の軸を入れていることが本書の特色と言えるかもしれない。

●ヴィルヘルム・ヴント(著)平野義太郎(訳)(1941). 民族心理より見たる政治的社会 日本評論社 
 本書はヴントが20年をかけて執筆した『民族心理学』の第八巻(政治的社会)の全訳である。その内容は、部族より国家への変化、婚姻と家族、所有権の進化、所有物の交換から交易への発展、国家と宗教、都市の成立と身分制度、さまざまな国家の形態に関する「民族心理学的法則」などである。



【8章に関連−エビングハウス】
●ヘルマン・エビングハウス(著) 宇津木保(訳) 望月衛(閲) (1978). 記憶について 誠信書房
世界で初めて記憶について実験的な研究を行ったエビングハウスの著書であり、詳細な実験内容について記されている。原典はEbbinghaus, H. (1885). Über das Gedächtnis: Untersuchungen zur experimentelle Psychologie. Leipzig: Duncker & Humblot.であるが、翻訳はRuger, H. A., & Bussenius, C. E.の英訳 Dover Publication, 1964に基づいている。この翻訳の序文にヒルガードが記しているように、その後のエビングハウスの研究は(『心理学綱要』によれば)意味のある材料にも発展し、30代に覚えたバイロンのドン・ファンの詩を、その後22年間、一度も見ることなく、50歳代になって再学習に要した時間を調べてみると、まだ再学習が節約できる(記憶が残っている)ことを確認している。

●エビングハウス(著)高橋譲(訳)(1912). 心理学(全) 富山房
本書はエビングハウスの手による一般心理学のテキストを翻訳したものである。校閲者として日本最初の心理学者である元良勇次郎が名を連ねている(訳者は元良の娘婿)。第1頁に有名な「心理学は長い歴史を有する。然し其の歴史は短い」という用語で心理学史からはじまり、脳との関連、感覚、感情、注意、記憶、言語、思考など、現代の心理学のテキストと同じような構成となっているが、特筆すべきことは、精神最高の働きという箇所で、宗教、芸術、道徳なども取り上げているという点であろう。原著は、Ebbinghaus, H. (1908). Abriss der Psychologie.Leipzig: Velt.で、一般には『心理学要論』と言われるものである。
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2015/5/8

5月8日  
・紀元前から心のはたらきとして、脳が注目されているのを知って驚いた。
→パピルスにも脳の記述があります。
・うつ病の患者の脳の働きは正常者とは異なることを知って興味深かった。
→多くの心の病が実は脳に関連するということが続々と明らかになっています。

【3章、4章に関連−ヘルムホルツ、フェヒナー】

●ヘルムホルツ(著)木村敏輔(訳・注・解説)(1996). 認知心理学の源流 ヘルムホルツの思想 ブレーン出版 ¥9800
 本書は、エルトマン(1921)による「ヘルムホルツの知覚理論の哲学的基礎」(pp.1-115)と、ヘルムホルツ自身の「知覚一般について」(pp.116-158)を豊富な注と解説をつけて翻訳したものである。本書を読むと、哲学者でもあるヘルムホルツの思想に関して、理解が深まるが、やや難解。

●ヘルムホルツ(著)常木実(訳注)(1961). 一科学者の回想 郁文堂 ¥1030
 本書は、70歳の誕生日を祝う祝賀会におけるヘルムホルツのスピーチである。科学に対するヘルムホルツの情熱を知ることができる。ドイツ語の対訳なので、日本語だけ読めばよいが、訳は若干読みにくい。

●ヘルムホルツ(著)三好助三郎(訳注)(1962). 自然力の交互作用 大学書林 ¥1030
 生理学、物理学への貢献の大きいヘルムホルツは26歳の軍医時代にエネルギー保存の法則を確立した。本書はエネルギー保存の法則に関する一般向けの講演の記録である。ドイツ語の対訳なので、日本語だけ読めばよいが、訳は読みにくい。

●門林岳史 (2000). G・Th・フェヒナーの精神物理学−哲学と心理学の間、精神と物質の間 現代思想, 28, 142-166.
 本論文を読むと、フェヒナーの思想全体が理解でき、精神物理学は彼の仕事のごく一部であることがよくわかる。フェヒナーの著作からの引用文が多いので有益だが、全体としては、やや読みにくい部分もある。

●グスタフ・フェヒナー(著)服部千佳子(訳)(2008). フェヒナー博士の死後の世界は実在します 成甲書房 ¥1400
タイトルがまゆつば物となっているが、間違いなく、物質と同様に心の数量化を主張したフェヒナー博士の書物である。物質と心(精神)の関係についてのフェヒナーの解釈という立場からみれば、このような書物を書き下ろすことは納得がいく(ただし、私自身は彼の原本と照らし終えるまでは、正確な訳なのかどうかの判断は留保したい)。

●G.A.ゲシャイダー(著)宮岡徹・倉片憲治・金子利佳・芝崎朱美(訳)(2002). 心理物理学ー方法・理論・応用ー 北大路書房 (上)¥3800 (下)¥4700
 本書は欧米で版を重ね定評のある心理物理学(精神物理学)のテキストである(原著は1997年の第3版)。訳者のまえがきにあるように、上巻は「心理物理学の基礎的事項を解説した章」を下巻は「やや高度な内容の章や応用的な章」(信号検出理論その他)が収録されているので、上巻の中で興味のある章を読めばよい(上巻に収録されている7つの章のタイトルは、「閾値の心理物理学的測定:弁別感度」「閾値の心理物理学的測定:絶対感度」「古典的な心理物理学的測定法」「古典的心理物理学理論」「信号検出理論」「感覚属性の測定と弁別尺度」「心理物理学的比尺度構成法」)。改めて驚くのは今なおフェヒナーの論文が引用されていることで、彼の偉大さがよく理解できる。

●ゲーテ(著)菊池栄一(訳)(1952). 色彩論−色彩学の歴史− 岩波書店(岩波文庫赤407-4)¥800
 本書は、文豪ゲーテの大著である「色彩学」三部作の中から、歴史篇を抄訳したものである。ギリシア、ローマ時代から、18世紀に至るまでの色彩学の歴史が記されている。当然、自説と異なるニュートンの色彩説との違いを述べた部分が多い。残念ながら旧字体のため、少し読みづらいが、著者の色彩学に対する興味や考え方のエッセンスを述べた「著者の告白」の部分(pp.358-381)だけでも読んでほしい。なお、本書を読む前に、●大山正 (1994). 色彩心理学入門−ニュートンとゲーテの流れを追って− 中央公論社(中公新書1169)のニュートンとゲーテの考え方の説明(pp.3-32)を読むとよい。

●L・アドキンズ/R・アドキンズ(著)木原武一(訳)(2008).ロゼッタストーン解読 新潮文庫 ¥743
 エジプトのヒエログリフ解読を成し遂げた若きシャンポリオンの最大のライバルが、意外にも、色覚の3色説を提唱したトーマス・ヤングであった。2人の抜きつ抜かれつの解読の戦いを描いたノンフィクション作品。せめて冒頭の写真だけでも見て、ヤングのプロフィールの書かれた第5章だけでも斜め読みしてほしい。


【5章に関連−脳研究】

●ヒポクラテス(著)小川政恭(訳)(1963). 古い医術について 他八篇 岩波書店(岩波文庫33-901-1)
 現代から見れば間違いもたくさんあるものの、たとえば、人体を損なうものは「熱・寒・乾・湿」などという記述などは、経験的に得られたものであると思われる。また、そのほかの健康に関した「空気、水、場所について」などは現代から見ても納得できるし、「流行病」の観察記録は詳細である。なお、有名なヒポクラテスの「誓い」(2頁)も最後に載せられている。

●Berger, H. (1929). Uber das Elektrenkephalogramm des Menschen. Arch. Psychiat. Nervenkr., 87, 527-570.ベルガー(著)山口成良(訳)(1981).−第1回−, 精神医学, 23(8), 829-838.古典紹介
●Berger, H. (1929). U ber das Elektrenkephalogramm des Menschen. Arch. Psychiat. Nervenkr., 87, 527-570.ベルガー(著)山口成良(訳)(1981).−第2回−, 精神医学, 23(9), 951-962.古典紹介
●Berger, H. (1929). U ber das Elektrenkephalogramm des Menschen. Arch. Psychiat. Nervenkr., 87, 527-570.ベルガー(著)山口成良(訳)(1981).−第3回−, 精神医学, 23(10), 1073-1081.古典紹介
 ヒトの脳波の発見と命名に関するベルガー自身の論文の訳出と解説(精神医学, 23(10), 1078-1081)。

●萬年甫(編訳)(1969). 神経学の源流2−カハールとともに− 東京大学出版会 ¥1800
 本書の中には、カハール自身の4編の論文(pp.49-177)とノーベル賞受賞講演2編(pp.187-240)の翻訳がある。なお、本書は、1992年に出版された増補版では、第5章の「カハール以後−新たな視界」の後半が修正され、ゴルジ法発見100年記念シンポジウムの見聞記が変わっている以外は、すべて同じである。

●萬年甫(編訳)(1968). 神経学の源流1−ババンスキーとともに− 東京大学出版会 ¥1800
 シャルコーを師とするババンスキー本人の論文(ヒステリー、反射、小脳の障害など)の翻訳が載せられている。特筆すべきはシャルコーのヒステリー関連の論文(pp.17-52)も訳出されていることである。なお、1992年に出版された増補版では、誰もが一度は目にしたことがあるサルペトリエール病院のシャルコーの臨床講義の絵に描かれている28名の人物の特定結果と、ババンスキーの墓所について加えられた(pp.287-308)以外は、まったく同じである。

□萬年甫・岩田誠(編訳)(1992). 神経学の源流3 ブロカ 東京大学出版会
失語症の研究で有名なブロカの論文の翻訳を中心に、関連した論文としてDaxやFritschとHitzigの論文も訳出されている。

●Broca, P. (1861). Petre de la Parole: ramollissement chronique et destruction partille du lobe anterieur gauche du cerveau. Bulletins de la Societe d'anthropologie, 1re serie, 2, 235-238.ブローカー(著)杉下守弘(訳と解説)(1980). 精神医学, 22(6), 655-663.古典紹介

■秋元波留夫(編)(1982).神経心理学の源流 失語編(上) 創造出版
ブローカの『失語症の一例にもとづく構音言語機能の座に関する考察』『第三前頭回の病変によっておこった失語症(aphemie)の新しい症例』が解説とともに訳出されている(pp.21-56)。とりわけ、失語症の症例としてもっとも有名なタンの症例は30頁以降に訳出されている。

■秋元波留夫(編)(1982).神経心理学の源流 失語編(上) 創造出版
ウェルニッケ『失語症候群−解剖学的基礎に立つ心理学的研究』が解説とともに訳出されている(pp.109-134)。

●Wernicke, C. (1900). Acute Hallucinose, Grundriss der Psychiatrie in klinischen Vorlesungen, 1. Aufl., S. 270-280, G. Thieme, Leipzig. ウェルニッケ(著)影山任佐・中田修(訳)(1978). 精神医学, 20(2), 193-202.
 急性幻覚症についての臨床講義の翻訳と解説。

●A・アール・ウォーカー(著)石島武一(訳)(2005). 神経科学創世記−脳・神経疾患と人類− 工学図書 ¥9500
 神経科学の歴史を丁寧にまとめた専門書。全590ページで医学的用語も多く、かなり専門的な知識がないと理解できない部分も少なくない。神経科学者の写真が多数掲載されているものの、モノクロで不鮮明なものが多いのが残念。

●マーク・ジャンヌロー(著)浜田隆史(訳) (2007). 認知神経科学の源流 ナカニシヤ出版 ¥3000
 図表や写真がほとんどないが、大きく5章(機能局在、高次精神機能の大脳局在、観念の連合、反射経路、大脳の堕落)から構成され、本文は全142ページで比較的読みやすい。訳者のあとがきによると、著者は動物での神経生理学的実験とヒトで局所的脳損傷から生じる結果の観察を結びつける学際的手法を使い、最近ではニューロイメージングの手法も使い、心理学と現在の神経科学を歴史的および哲学的に基礎づけるという研究も行っている。

●シャーウィン・B・ヌーランド(著)曽田能宗(訳)(1991). 医学をきずいた人びと−名医の伝記と近代医学の歴史(上) 河出書房新社 ¥3600
 第1章にヒッポクラテス、第2章にガレノス、第3章のヴェサリウスに、これら著名人たちの業績や生きざまが簡潔にまとめられている。ヒッポクラテスの章では、所々にヒッポクラテス学派の治療法や彼自身による箴言(しんげん)が織り込まれ、今読んでも感銘を受ける(有名なヒポクラテスの誓いも載せられている)。たとえば、「人生は短く、(技、芸)術は長い。機会はつかのまであり、経験は惑いを生み、判断はむずかしい。」「すべての手術において腕を磨き、両手を同時に動かせるように―左右の手を同じように動かせるように―練習すること。目標とするのは、有能、洗練、速度、無痛、正確、そして機敏である。」などの箴言は医学だけにとどまらない。ガレノスは、解剖学や生理学に基礎づけられた近代医学の基礎を打ち立てただけではなく、自他共にヒッポクラテスの後継者としてみなされていた。しかし、彼の人柄には、強烈な自負心や傲慢な部分があったようである。ルネッサンス時代にコペルニクスとともに活躍したヴェサリウスは『人体の構造について』という書物でガレノスの間違いを明らかにし、現代に通じる医学の基礎を築くまでの彼の多くのエピソードが興味深い。なお、本書の残りの章で扱われている医学者は、パレ、ハーヴェイ、モルガーニ、ハンター、ラエネックである。

●ジョール・シャケルフォード(著)/オーウェン・ギンガリッチ(編集代表)梨本治男(訳)(2008). ウィリアム・ハーヴィ−血液はからだを循環する 大月書店 ¥2100
イギリス人ハーヴィは、ヴェサリウスと同じパドゥバ大学に留学し医学博士となった。その後、開業し、イングランド王の顧問医師を務め、あのフランシス・ベーコンを診察したり、伝説のオールド・パー(152歳)の診察と解剖も行っている。その後、今日では誰もが当然のこととする血液が循環するということを厳密な実験を通して明らかにし、『心臓の動きと血液の流れ』という書物を出版した。本書は彼の評伝であり、当時の血液に関する一般的な考え方や交流のあった学者たちとのエピソードが満載である。なお、彼の書物は、●ウェリアム・ハーヴィ(著)岩間吉也(訳)(2005). 心臓の動きと血液の流れ 講談社学術文庫(1697)として日本語で読むことができる。

●ダーリア・W・ザイデル(編)河内十郎(監訳)(1998). 神経心理学−その歴史と臨床の現状− 産業図書 Pp.1-34.
 第1章の神経心理学の歴史では、神経心理学者の貴重な写真とともに、神経心理学の歴史の概略が要領よくまとめられている。原著出版は1994年で、Zaidel, D. W. (Ed.) (1994). Neuropsychology. New York: Academic Press.である。
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