Vertical Machine Chronicle でこんなお話を 5 Vertical Machine Chronicle バーティカルマシン・クロニクル <原作:ZIZY様>
Vertical Machine Chronicleのお話もとりあえず今回で一区切りでございます。
そのはずです。
では、今更ながらのイメージソングを。
このゲームやった事無いけど、このオープニングのためだけに買おうと思ってしまった。
何はともあれ、今回のお話を作るきっかけはこちらでした↓
誰-覚書-
http://blog.livedoor.jp/zizy00220022/
原作をお求めの方はこちらで購入を↓
ホビーショップ・デジラ様の購入ページ
http://www.dgla.jp/shop/index.php?main_page=product_info&cPath=18_118&products_id=6474
では、本文は「続きを読むをクリックして全文を開いてお読み下さい。
*********************
援護に駆けつけた第一・第二小隊と交代した第三小隊は、一緒にやってきた運搬用トレーラーに03号機だったものをのせて基地へと帰投していった。
整備庫に入った五体のグラウンド・スライダー(GS)は、そのまま割り当てられてる整備場に入って動力を切った。
戦闘を終えたGS達の役目はとりあえずここで終わりとなる。
あとは整備員達による手当を受ける事となる。
激しい機動の伴うヴァーティカル・マシン(VM)である。一回の戦闘で機体のあちこちに無理がかかる。それらに適切な処置を施さないと、機体の寿命を著しく縮める事になる。
今回戦闘になった事で、第三小隊のGS達は念入りな点検と整備が必要となる。
いつも以上に緊張感を漂わせながら整備員達がフェールとシュタール2に取りかかっていく。
その中をかいくぐりながらブラウアーは整備庫から外へと向かっていく。
途中小隊の面々となんとなく合流しながら待機所へと歩いていった。
全員無言である。
仲間が死んだのだから当然と言えば当然であろう。
これまで彼らが見送った戦友はそれなりの数になる。ラウルが最初というわけでもない。
それでも肩を並べた誰かが消えるというのは馴れるという事がない。
あまり衝撃を受けないようにはなったが、それでも胸に重石が入れられたような気分にはなる。
誰も居ない待機所に入った五人は、それぞれ適当な場所を見繕って横になっていく。
ソファの上、並べた椅子の上、床の上。
だらしない事だが咎める者はこの場にいない。戦闘を終えて帰還した兵士に小言をたれるような命知らずはこの基地には存在しない。
戦場、特に戦闘になれば兵士は肉体に不断の緊張を強いる。
たとえ体を動かさなくても、神経は常に張り詰めた状態になる。
意識して落ち着こうとしても、死を前にした本能が神経を鋭敏にしてしまう。
そこから帰ってきたばかりの兵士の凶暴さを知らぬ者はない。
以前、うっかり注意した高官がいたが、その男は数日後に謎の失踪をしている。
その他、大小様々な不祥事がつまらぬ正論のために発生してきた。
おかげで基地内には明文化された規律より優先される不文律が発生している。
とはいえ、全員がその特権を享受できるわけではない。
前触れもなく流された施設内放送により、ブラウアーは不本意な出頭を命じられる。
『第三小隊ブラウアー。至急警備司令部に出頭せよ。
繰り返す…………』
呼び出されたブラウアーは、不機嫌そうに顔をしかめたまま起き上がる。
どうせそのうち来るだろうとは思っていたが、まさかこんなに早くやってくるとは思ってもいなかった。
のろのろと戸まで歩いていくブラウアーの姿を隊員達は無言で見送る。
部屋の外に出たブラウアーは、ベルトに挟んだ拳銃を取り出して弾倉を確認する。
弾丸は8発ちゃんと入っている。
(やれやれ)
使わずに済めばいいが、と思いながらそれを拳銃に差し込む。
それをベルトに挟み直しポケットから携帯電話を取り出す。使うとバカみたいに高い料金を請求されるのでほとんど使ってないが、こういう時は話が別である。
なるべく物事を穏便に済ますために、ブラウアーは暗記している番号を押して相手を呼び出す。
数回のコールのあと一度録音サービスに移動する。そこで通話を切って待つ事数分。
表示拒否でとどいた電話が呼び出し音を鳴らし始める。
すぐに出たブラウアーは、かけ直してきた電話の相手に開口一番こう伝えた。
「よう久しぶり。また面倒な事になりそうなんで、ちょっくら手回ししてくれ」
そう言って事の詳細を話し始める。
必要な事を伝えて望んだ答えをえるために、時間が費やされていく。
至急と言われた出頭も、ブラウアーにとってさほど優先順序が高いわけではない。
意味のない下らない事に時間と労力を割くほど彼は暇でも寛大でも無かった。
呼び出し放送から一時間。
ようやく出頭したブラウアーに、警備司令のゆがんだ顔が相対した。
質実剛健というより飾り気が全く無いコンクリート剥き出しの部屋の中。それだけ無駄に豪勢な机に陣取る五〇歳代の男は、年齢と共に備えた大人の貫禄を微塵も感じさせない態度でブラウアーを迎える。
「先程電話があった」
開口一番そう言った司令は、憎々しげに言葉を続ける。
「『今回の戦闘の話は聞いている。すごい戦果だ。彼らにはそれなりの処遇を用意している。
また、払った犠牲に対する温情も忘れないように』
そう言ってきた」
「はあ」
気のない返事をブラウアーは口にする。
詳細な説明はありがたいが、何を言いたいのかまったく分からない。
とりあえず話を最後まで聞くしかないという事だけは何となく悟ったが。
「だが今回は独断専行により他の部隊を動かした暴挙もある。それは処罰の対象だとも述べた」
「…………」
「そしたらこう言われた。
『ならばそれは送るべき栄誉と相殺という事になるだろう。
それで終わりだ』
おかげで私は君を呼ぶ理由の全てを無くした」
「そうですか」
だから何だと言わんばかりにブラウアーは吐き捨てる。
怒りを必死になってかみ殺し、そのためにすさまじい形相になってる司令は怒声をあげかかった。
それを押しとどめたのは、肩書きと収入に固執する小役人根性だった。辺境のこんなところに流されたと思ってる彼は、これ以上無駄な失点を重ねる事を極度に嫌っていた。
だからこそ処遇の決まった相手にこれ以上怒声や罵声を浴びせるのを留まった。
「以上だ。退室してよろしい」
「はっ」
偉そうな言葉をブラウアーはつとめて聞き流した。
いい加減な態度で敬礼をし、部屋を出る。
戸を閉めたあとで室内から大きな声や派手な物音が聞こえてきたが、面倒なので気にしない事にした。
ラウフ大陸の片隅でバカをやってる男に、ブラウアーは憐れみと蔑みを一対九の割合で向けるに留めた。
かかってきた電話を切ってから数十分後。
必要な根回しは終わり、上への報告も終わった。
現場からの直接の陳情というのは面倒な事も多いが、それによってもたらされる実情を得る事ができるのが大きな利点でもある。
今回の事も、本社のオフィスにいては把握できない事の一つだった。
(まったく)
面倒な事ではある。
部隊を独断で、それもただの小隊長が動かしたのだ。それはさすがに大問題である。普通ならば決して許されることではない。
だが、それをしたのがヘルマン・ブラウアーである以上チェスター・ホーンズビーにとっては無視することは出来なかった。
現場にブラウアーを送り込んだのはチェスターである以上、彼の失敗がそのままチェスター糾弾のネタにされる可能性もある。
そうさせない為にも問題はもみ消していかねばならない。
幸いな事にブラウアーはチェスターの求めた功績を積み重ねてくれている。
問題も確かに多いが、あげてる戦果はそれ以上に多い。
サントル軍にいた頃から問題の多い所と、VM乗りとしての腕の双方を備えた男だった。
そこを見込んでチェスターはブラウアーを、ラウフ大陸南部にある資源採掘施設の警備に送り込んだ。
目論見通りブラウアーは採掘施設警備にて多大な戦果をあげてくれている。
おかげで社が保有する数少なくなってしまった現地の施設と利権を何とか確保していられる。
ラウフが独立して以来、サントルが得ていた利権の多くが失われている。
そして独立後の混乱の中で、多くの利権がフロンスの手に渡ってしまった。
社としてもサントル連合としてもこれは大きな失態であり、早急に覆さねばならない状況である。
チェスターの管轄にある資源採掘施設は、失われた数多くの利権の中で、何とか守れた貴重な拠点でもある。
生産量や品質はさほどでもないが、それがあるからこそ大陸への発言力を確保していられる。
そこを守る事でチェスターの社内・政府への影響力も自然と高まっていく。
それを面白く思わない連中が無能な男を警備司令として送り込み、チェスターの失点にしようと暗躍している。
現状を全く理解してないとしか言いようがない。
(ラウフを失ってもかまわんというのか、あいつらは)
対立する派閥の面々を思い浮かべながら溜息を吐く。
現場の状況はもはや一国・一社の中でおさまる問題ではなくなりつつある。
フロンス側の企業が現場に展開している警備名目の兵力は日増しに増強されている。
フロンスの影響力の強い現地政府も、最近はサントルに対して態度が硬直化してきている。
以前は資源採掘権や施設を巡る小競り合い…………という名目の兵器実験場でしかなかったラウフ大陸が、今やサントルの支配地になろうとしている。
驚いた事にそれに気付いている者は少ない。
誰もがラウフ大陸をいまだに代理戦争の場所としか考えていない。
確かに大陸は、資源争奪を表だって出来る数少ない場所ではある。フロンス・サントル・セーヴェル・ソリトゥスの領土に踏み込んだらそのまま全面戦争に発展してしまう。それを避けて資源を手に入れようとすれば、必然的にラウフ大陸の権益を巡って争うしかない。
現地にでている企業は事実上各国の出先機関となってるし、それらが保有している警備の人員・機材は事実上の軍隊である。それらが権益確保のために現地政府の黙認の元争いあってる状況を、ルールに乗っ取ったゲームのように思わっている人間が上層部には確かにいる。
実情を知っている一部の人間もそうみなしている。
だが、かつてはともかく今は状況ががらりと変わっている。
各国の力関係が拮抗していたころはそういう風に物事は動いていただろう。
だが大戦が終わって数十年経った今はそうではない。
列強の中でフロンスはサントル・セーヴェルを上回る国力を備えてきている。
ラウフ大陸の各国がフロンス手動で共同体を構築している事からもそれは明らかだ。サントル・セーヴェルに力があれば、ラウフの各国がフロンス一つを選ぶわけがない。
選んだということは、それだけの力がフロンスにあると認めているからである。
サントル・セーヴェルが何を言おうとも、フロンスは跳ね返す力があると。
もうラウフは各国精力が入り乱れる混沌の地ではなくなってきている。
チェスターはラウフ大陸をフロンス連邦領の一部とみなしていた。
現場から上がってくる声にも、チェスターのそういった考えを裏付ける事例があらわれてきている。
検問などにおけるフロンスのフリーパス状態やサントル・セーヴェルへの移動制限・通信制限などなど。
扱いの差となってあらわれてるそれらを、危険な兆候として受け取ってる者は少ない。
楽観視してない者達であっても、まだ大丈夫だろうという安直な見方をしている。
送られてきた資料や現場から上がってくる声を聞くチェスターからすれば、認識が甘すぎるとしか言えない。
最近のフロンスの出方は尋常ではない。
ラウフ大陸各国の用心とフロンス企業の接触の増加。
ラウフ大陸に送り込まれる人員の増加。
紛争・抗争で出現するフロンス製新型VM。
ラウフ大陸各国政府が採用するVMのフロンス製への切り替え。
要人・高官もフロンスよりの人間が増えている。
全てがまずい方向へと動いている。取り返しの付かない所まで来てるのかもしれない。
(やれやれ)
嘆きたくなる衝動を無理矢理抑えつけ、チェスターは頭を働かせる。
社の利益を確保するためにも、己の地位を安泰にするためにも嘆いてばかりではいられない。
有効と思える手段を実現していかねば事態は悪化していく一方である。
とりあえず自分に出来る事をしていくしかない。
今うてる一番有効な策。
提案書としてそれを取締役会と関係省庁・政治家などに提示するため、チェスターはパソコンに向かった。
受理されるかどうかは分からなかったが。
平和の仮面の下からにじみ出る不安と不穏。
それを感じ取る者は、まだほとんどいなかった。
(了)
*********************
というところでこのお話は一区切りとなります。
他人の設定を勝手に使って作ったお話ですが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
今回、少しだけ世界背景というか世間の裏側で行われている暗躍みたいな部分も書いて見ました。
これらは全て俺の勝手な設定なので、ZIZY様の公式ではありません。
国名とか大陸名とかはZIZY様の創作ですが。
陰謀めいた部分はすべて嘘八百のでっち上げですので、どうかご了承願います。
Vertical Machine Chronicleを購入して「こんな設定どこにも書いてないじゃねえか。この嘘吐きが」とか言わないで下さいね。
公式の世界設定などについては、冬コミあたりに出るかもしれないというZIZY様のコメントがあるので、そちらに期待しましょう。
おいらも楽しみです。
しかしVertical Machine Chronicleというのは恐ろしいもので。
同人誌即売会のとら祭りで手にした瞬間から妄想が湧くは湧く。他の事そっちのけ状態でエンドルフィンでっぱなしです。
おかげ様であと二つほどお話のネタが出てきているくらいです。それも長編ネタが。
こうやって俺はVertical Machine Chronicleに睡眠時間を削られていくのでしょう。
だれか助けてー。
何はともあれ。
これにてVertical Machine Chronicleのお話はとりあえず終わりです。
続きはいずれ書くとは思いますが、それまでしばらくお待ち下さい。
アティリーンの話も書かねばならんので。
続きが気になる方は、コメントや拍手クリックなどをお願いします。
続きが気にならなくても、コメントや拍手クリックをもらえると嬉しいです。
そして。
ZIZY様、コメント本当にありがとうございました。
ブログでの紹介にも感謝を。
では最後にもう一度。
0
そのはずです。
では、今更ながらのイメージソングを。
このゲームやった事無いけど、このオープニングのためだけに買おうと思ってしまった。
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援護に駆けつけた第一・第二小隊と交代した第三小隊は、一緒にやってきた運搬用トレーラーに03号機だったものをのせて基地へと帰投していった。
整備庫に入った五体のグラウンド・スライダー(GS)は、そのまま割り当てられてる整備場に入って動力を切った。
戦闘を終えたGS達の役目はとりあえずここで終わりとなる。
あとは整備員達による手当を受ける事となる。
激しい機動の伴うヴァーティカル・マシン(VM)である。一回の戦闘で機体のあちこちに無理がかかる。それらに適切な処置を施さないと、機体の寿命を著しく縮める事になる。
今回戦闘になった事で、第三小隊のGS達は念入りな点検と整備が必要となる。
いつも以上に緊張感を漂わせながら整備員達がフェールとシュタール2に取りかかっていく。
その中をかいくぐりながらブラウアーは整備庫から外へと向かっていく。
途中小隊の面々となんとなく合流しながら待機所へと歩いていった。
全員無言である。
仲間が死んだのだから当然と言えば当然であろう。
これまで彼らが見送った戦友はそれなりの数になる。ラウルが最初というわけでもない。
それでも肩を並べた誰かが消えるというのは馴れるという事がない。
あまり衝撃を受けないようにはなったが、それでも胸に重石が入れられたような気分にはなる。
誰も居ない待機所に入った五人は、それぞれ適当な場所を見繕って横になっていく。
ソファの上、並べた椅子の上、床の上。
だらしない事だが咎める者はこの場にいない。戦闘を終えて帰還した兵士に小言をたれるような命知らずはこの基地には存在しない。
戦場、特に戦闘になれば兵士は肉体に不断の緊張を強いる。
たとえ体を動かさなくても、神経は常に張り詰めた状態になる。
意識して落ち着こうとしても、死を前にした本能が神経を鋭敏にしてしまう。
そこから帰ってきたばかりの兵士の凶暴さを知らぬ者はない。
以前、うっかり注意した高官がいたが、その男は数日後に謎の失踪をしている。
その他、大小様々な不祥事がつまらぬ正論のために発生してきた。
おかげで基地内には明文化された規律より優先される不文律が発生している。
とはいえ、全員がその特権を享受できるわけではない。
前触れもなく流された施設内放送により、ブラウアーは不本意な出頭を命じられる。
『第三小隊ブラウアー。至急警備司令部に出頭せよ。
繰り返す…………』
呼び出されたブラウアーは、不機嫌そうに顔をしかめたまま起き上がる。
どうせそのうち来るだろうとは思っていたが、まさかこんなに早くやってくるとは思ってもいなかった。
のろのろと戸まで歩いていくブラウアーの姿を隊員達は無言で見送る。
部屋の外に出たブラウアーは、ベルトに挟んだ拳銃を取り出して弾倉を確認する。
弾丸は8発ちゃんと入っている。
(やれやれ)
使わずに済めばいいが、と思いながらそれを拳銃に差し込む。
それをベルトに挟み直しポケットから携帯電話を取り出す。使うとバカみたいに高い料金を請求されるのでほとんど使ってないが、こういう時は話が別である。
なるべく物事を穏便に済ますために、ブラウアーは暗記している番号を押して相手を呼び出す。
数回のコールのあと一度録音サービスに移動する。そこで通話を切って待つ事数分。
表示拒否でとどいた電話が呼び出し音を鳴らし始める。
すぐに出たブラウアーは、かけ直してきた電話の相手に開口一番こう伝えた。
「よう久しぶり。また面倒な事になりそうなんで、ちょっくら手回ししてくれ」
そう言って事の詳細を話し始める。
必要な事を伝えて望んだ答えをえるために、時間が費やされていく。
至急と言われた出頭も、ブラウアーにとってさほど優先順序が高いわけではない。
意味のない下らない事に時間と労力を割くほど彼は暇でも寛大でも無かった。
呼び出し放送から一時間。
ようやく出頭したブラウアーに、警備司令のゆがんだ顔が相対した。
質実剛健というより飾り気が全く無いコンクリート剥き出しの部屋の中。それだけ無駄に豪勢な机に陣取る五〇歳代の男は、年齢と共に備えた大人の貫禄を微塵も感じさせない態度でブラウアーを迎える。
「先程電話があった」
開口一番そう言った司令は、憎々しげに言葉を続ける。
「『今回の戦闘の話は聞いている。すごい戦果だ。彼らにはそれなりの処遇を用意している。
また、払った犠牲に対する温情も忘れないように』
そう言ってきた」
「はあ」
気のない返事をブラウアーは口にする。
詳細な説明はありがたいが、何を言いたいのかまったく分からない。
とりあえず話を最後まで聞くしかないという事だけは何となく悟ったが。
「だが今回は独断専行により他の部隊を動かした暴挙もある。それは処罰の対象だとも述べた」
「…………」
「そしたらこう言われた。
『ならばそれは送るべき栄誉と相殺という事になるだろう。
それで終わりだ』
おかげで私は君を呼ぶ理由の全てを無くした」
「そうですか」
だから何だと言わんばかりにブラウアーは吐き捨てる。
怒りを必死になってかみ殺し、そのためにすさまじい形相になってる司令は怒声をあげかかった。
それを押しとどめたのは、肩書きと収入に固執する小役人根性だった。辺境のこんなところに流されたと思ってる彼は、これ以上無駄な失点を重ねる事を極度に嫌っていた。
だからこそ処遇の決まった相手にこれ以上怒声や罵声を浴びせるのを留まった。
「以上だ。退室してよろしい」
「はっ」
偉そうな言葉をブラウアーはつとめて聞き流した。
いい加減な態度で敬礼をし、部屋を出る。
戸を閉めたあとで室内から大きな声や派手な物音が聞こえてきたが、面倒なので気にしない事にした。
ラウフ大陸の片隅でバカをやってる男に、ブラウアーは憐れみと蔑みを一対九の割合で向けるに留めた。
かかってきた電話を切ってから数十分後。
必要な根回しは終わり、上への報告も終わった。
現場からの直接の陳情というのは面倒な事も多いが、それによってもたらされる実情を得る事ができるのが大きな利点でもある。
今回の事も、本社のオフィスにいては把握できない事の一つだった。
(まったく)
面倒な事ではある。
部隊を独断で、それもただの小隊長が動かしたのだ。それはさすがに大問題である。普通ならば決して許されることではない。
だが、それをしたのがヘルマン・ブラウアーである以上チェスター・ホーンズビーにとっては無視することは出来なかった。
現場にブラウアーを送り込んだのはチェスターである以上、彼の失敗がそのままチェスター糾弾のネタにされる可能性もある。
そうさせない為にも問題はもみ消していかねばならない。
幸いな事にブラウアーはチェスターの求めた功績を積み重ねてくれている。
問題も確かに多いが、あげてる戦果はそれ以上に多い。
サントル軍にいた頃から問題の多い所と、VM乗りとしての腕の双方を備えた男だった。
そこを見込んでチェスターはブラウアーを、ラウフ大陸南部にある資源採掘施設の警備に送り込んだ。
目論見通りブラウアーは採掘施設警備にて多大な戦果をあげてくれている。
おかげで社が保有する数少なくなってしまった現地の施設と利権を何とか確保していられる。
ラウフが独立して以来、サントルが得ていた利権の多くが失われている。
そして独立後の混乱の中で、多くの利権がフロンスの手に渡ってしまった。
社としてもサントル連合としてもこれは大きな失態であり、早急に覆さねばならない状況である。
チェスターの管轄にある資源採掘施設は、失われた数多くの利権の中で、何とか守れた貴重な拠点でもある。
生産量や品質はさほどでもないが、それがあるからこそ大陸への発言力を確保していられる。
そこを守る事でチェスターの社内・政府への影響力も自然と高まっていく。
それを面白く思わない連中が無能な男を警備司令として送り込み、チェスターの失点にしようと暗躍している。
現状を全く理解してないとしか言いようがない。
(ラウフを失ってもかまわんというのか、あいつらは)
対立する派閥の面々を思い浮かべながら溜息を吐く。
現場の状況はもはや一国・一社の中でおさまる問題ではなくなりつつある。
フロンス側の企業が現場に展開している警備名目の兵力は日増しに増強されている。
フロンスの影響力の強い現地政府も、最近はサントルに対して態度が硬直化してきている。
以前は資源採掘権や施設を巡る小競り合い…………という名目の兵器実験場でしかなかったラウフ大陸が、今やサントルの支配地になろうとしている。
驚いた事にそれに気付いている者は少ない。
誰もがラウフ大陸をいまだに代理戦争の場所としか考えていない。
確かに大陸は、資源争奪を表だって出来る数少ない場所ではある。フロンス・サントル・セーヴェル・ソリトゥスの領土に踏み込んだらそのまま全面戦争に発展してしまう。それを避けて資源を手に入れようとすれば、必然的にラウフ大陸の権益を巡って争うしかない。
現地にでている企業は事実上各国の出先機関となってるし、それらが保有している警備の人員・機材は事実上の軍隊である。それらが権益確保のために現地政府の黙認の元争いあってる状況を、ルールに乗っ取ったゲームのように思わっている人間が上層部には確かにいる。
実情を知っている一部の人間もそうみなしている。
だが、かつてはともかく今は状況ががらりと変わっている。
各国の力関係が拮抗していたころはそういう風に物事は動いていただろう。
だが大戦が終わって数十年経った今はそうではない。
列強の中でフロンスはサントル・セーヴェルを上回る国力を備えてきている。
ラウフ大陸の各国がフロンス手動で共同体を構築している事からもそれは明らかだ。サントル・セーヴェルに力があれば、ラウフの各国がフロンス一つを選ぶわけがない。
選んだということは、それだけの力がフロンスにあると認めているからである。
サントル・セーヴェルが何を言おうとも、フロンスは跳ね返す力があると。
もうラウフは各国精力が入り乱れる混沌の地ではなくなってきている。
チェスターはラウフ大陸をフロンス連邦領の一部とみなしていた。
現場から上がってくる声にも、チェスターのそういった考えを裏付ける事例があらわれてきている。
検問などにおけるフロンスのフリーパス状態やサントル・セーヴェルへの移動制限・通信制限などなど。
扱いの差となってあらわれてるそれらを、危険な兆候として受け取ってる者は少ない。
楽観視してない者達であっても、まだ大丈夫だろうという安直な見方をしている。
送られてきた資料や現場から上がってくる声を聞くチェスターからすれば、認識が甘すぎるとしか言えない。
最近のフロンスの出方は尋常ではない。
ラウフ大陸各国の用心とフロンス企業の接触の増加。
ラウフ大陸に送り込まれる人員の増加。
紛争・抗争で出現するフロンス製新型VM。
ラウフ大陸各国政府が採用するVMのフロンス製への切り替え。
要人・高官もフロンスよりの人間が増えている。
全てがまずい方向へと動いている。取り返しの付かない所まで来てるのかもしれない。
(やれやれ)
嘆きたくなる衝動を無理矢理抑えつけ、チェスターは頭を働かせる。
社の利益を確保するためにも、己の地位を安泰にするためにも嘆いてばかりではいられない。
有効と思える手段を実現していかねば事態は悪化していく一方である。
とりあえず自分に出来る事をしていくしかない。
今うてる一番有効な策。
提案書としてそれを取締役会と関係省庁・政治家などに提示するため、チェスターはパソコンに向かった。
受理されるかどうかは分からなかったが。
平和の仮面の下からにじみ出る不安と不穏。
それを感じ取る者は、まだほとんどいなかった。
(了)
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他人の設定を勝手に使って作ったお話ですが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
今回、少しだけ世界背景というか世間の裏側で行われている暗躍みたいな部分も書いて見ました。
これらは全て俺の勝手な設定なので、ZIZY様の公式ではありません。
国名とか大陸名とかはZIZY様の創作ですが。
陰謀めいた部分はすべて嘘八百のでっち上げですので、どうかご了承願います。
Vertical Machine Chronicleを購入して「こんな設定どこにも書いてないじゃねえか。この嘘吐きが」とか言わないで下さいね。
公式の世界設定などについては、冬コミあたりに出るかもしれないというZIZY様のコメントがあるので、そちらに期待しましょう。
おいらも楽しみです。
しかしVertical Machine Chronicleというのは恐ろしいもので。
同人誌即売会のとら祭りで手にした瞬間から妄想が湧くは湧く。他の事そっちのけ状態でエンドルフィンでっぱなしです。
おかげ様であと二つほどお話のネタが出てきているくらいです。それも長編ネタが。
こうやって俺はVertical Machine Chronicleに睡眠時間を削られていくのでしょう。
だれか助けてー。
何はともあれ。
これにてVertical Machine Chronicleのお話はとりあえず終わりです。
続きはいずれ書くとは思いますが、それまでしばらくお待ち下さい。
アティリーンの話も書かねばならんので。
続きが気になる方は、コメントや拍手クリックなどをお願いします。
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そして。
ZIZY様、コメント本当にありがとうございました。
ブログでの紹介にも感謝を。
では最後にもう一度。
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2010/7/15 18:21
投稿者:zizy
2010/7/5 10:13
投稿者:zizy
おもしろかったです!
睡眠時間を削るほど書いていただけたのはほんと幸せです。
冬までには年表的なものを作ってみようかと思います。
いろいろ後付できるようにざっくりな感じにw
あとは用語辞典的なものとかパイロットスーツのイラストだとかその辺も載せれればいいなぁ。と。
2つの長編もたのしみです!
睡眠時間を削るほど書いていただけたのはほんと幸せです。
冬までには年表的なものを作ってみようかと思います。
いろいろ後付できるようにざっくりな感じにw
あとは用語辞典的なものとかパイロットスーツのイラストだとかその辺も載せれればいいなぁ。と。
2つの長編もたのしみです!

設定というかメモをほんのちょっと追加したんで参考にしていただければ。