ビートルズのリマスター狂想曲が続いているようだ。
それにしても今年は,20世紀少年を読み(そして映画を観て),村上春樹の1Q84を読み,秋にはビートルズのリマスター漬けになり・・・とその都度世間的なブームに乗っているようでなんだかいやな感じw)ついでに遅ればせながらPerfumeのマイブームというのもあった。
ビートルズの未発表音源を集めたアンソロジーシリーズがリリースされたときも大変な話題となったが,ある種マニア受けな未発表音源のときと異なり,今回のブームはビートルズを知らない人にも彼らの音楽の良さをストレートに分かってもらえる機会なのでそれはそれで良い印象だ。アンソロジーブームのときはオリジナルアルバムを聴かずにいきなりボツテイクの詰め合わせを聴いて「ビートルズなんてこんなもんか」と思った人も多かったらしいから。
今回のビートルズリマスターの本丸はやはりステレオ盤だと思うが,僕はまだ聴いていない。手に入れたのはモノ盤のボックス(輸入盤)だけだが,これは本当に買ってよかったなあというものだ。ステレオボックスなんていつでも買えるし,バラで買うのとたいして値段も違わないし,どうしてみんなボックス盤に群がるのかちょっと理解できない。そのうち中古屋で廉価で山積みになるのではないだろうか(さすがにビートルズはそこまで落ちぶれないかw)。むしろ,リマスター盤のアナログが年末か来年に出るという噂もあり,こちらを待ちたいなあという気持ちもある。モノでアナログが出たらこれも買ってしまいそうだ。
僕のビートルズ歴は,中学のときに買ってもらったビートルズの8枚組LPボックスが最初だ。これはほとんどがステレオ音源だった。
このビートルズ・ボックスは文字どおり聴き倒したという感じだが,そのうちボックス未収録の曲も聴いてみたくなり,レンタルや友達から借りてオリジナルアルバム全部を聴いた。これもステレオ盤。
80年代後半,満を持してビートルズがCD化されたころはお金もなく,いまさらビートルズにお金を払うのもなあ,ということで,中古で買ったりして少しずつ集めていった。そのときにプリーズ・プリーズ・ミーからフォー・セールまでの初期のアルバムのモノ盤を初めて聴いた。これはこれで新鮮だった。
最近では,それなりに大人買いもできるようになったし,アナログを聴く環境も整ったので,イギリスのオリジナル盤をネットオークションなどで少しずつ集めるようになった。
そんなわけで僕が持っているプリーズ・プリーズ・ミー(以下,PPM)のレコードは,1965年ころのセカンドプレスで,非常に高価な値段で取引されているゴールド・パーロフォン盤ではなく,レーベルはイエロー・パーロフォン盤である。しかし,これが大変に良い音で,これまで聴いてきたPPMはいったい何だったんだというくらい。
僕はそれまでこのアルバムがそれほど好きではなかったのだが,このレコードを聴いて評価が一変したのだ。
というわけで,今回のモノボックスの中からPPMを選んで,UK盤のレコードとの聴き比べをしてみた(ただし,A面だけ)。
リマスター盤モノは,実に素晴らしい音質で,昨今のCDとしては十分満足できるレベルに達していると思う。UK盤レコードとの音の肌触りというか,音楽自体の感触には非常に近いものを感じる。
しかし,UK盤は,いわばライブハウスのような狭いハコではち切れんばかりのパワーをまき散らしながら演奏しているような印象を受けるのに対し,リマスター盤はホールのような場所で座って鑑賞しているような大人しい印象を受ける。たこ焼きやラーメンのようなB級グルメだがメチャクチャに食欲をそそるのがUK盤だとすれば,リマスター盤は,デパートの地下で購入した料亭の弁当や老舗の菓子折のようにかしこまっている。音楽の本来の魅力からすればUK盤レコードの方が正しいのかもしれないが,21世紀に聴くビートルズとしてはリマスター盤の雰囲気は十分にアリだと思う。彼らも本当に一流になったのだなあと実に感慨深い(えらそうだが)。
PPMは,1963年2月11日にほとんど一日でレコーディングされたアルバムで,以後の多重録音を駆使した緻密なアルバムとはひと味もふた味も違うアルバムである。そこにはクラブでならしたラテン・バンドのような乾いた明るさがある。こんなアルバムだからこそ,聴くならばモノラルで聴きたい。別にギターやベースのフレーズを緻密に研究しても仕方がない。ビリビリするようなジョンとポールのハーモニーを含めた音の固まりをでかい音で楽しむのが正しい聴き方だと思う。
デビュー曲のラブ・ミー・ドゥなんか本当にショボい曲だと思うが,このアルバムの中に収まっていると違和感がない(逆に「1」とかベストに入っていると収まりが悪い気がする)。そういえばこの曲,決めのフレーズ「ラァブ・ミー・ドゥー♪」という部分は本当はジョンが歌っていたらしい。レコーディングのときにジョンがこのフレーズを歌いながらハーモニカの間奏も吹いていたのを聴いたジョージ・マーティンが「それじゃあ決めフレーズが最後まで聞こえないから,そこはポールが歌うべし」と指示を出して,レコーディングでいきなりポール指名となったようなのだ。このエピソードは,ビートルズのコンプリート・レコーディング・セッションズなる本に収録されていたポールのインタビューで読んだのだが,この本はとても面白い本であり,ファンなら持っていて損はないと思う。

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