「なくなるボーダー・増えていくボーダー(インターネット上のエロネタを考える・6)」
回想系
ずいぶん以前に私はここで99bb(裏ビデオネット配信サービス)に入会した話を書いた。それ以来その方面の話はほとんどしていなかったが、今でも引き続いて入会しており、ダウンロードと鑑賞を続けている。加えて、その当時書いた「裏ビデオは性器を見せることに偏重している」という主張を取り下げていなかったが、配信の裏ビデオは性器偏重とは必ずしもいえないというふうに発言を修正させていただきたいと思っている。「わかっている」人が運営に携わっているのだろう。とにかく入会している間にダウンロードできるだけの動画をいただいておこうと躍起になっていたりもするのだ。
99bbの配信元サーバはオランダにあるそうだ。入会した後の決済はユーロ建て。クレジットカードを持っていなくても国際郵便送金で入会できる。サイトも大元は当然オランダにあるのだが、全編日本語での説明が載っている。
さて、こういう前提での素朴な疑問なのだが、入会して恩恵を受けておきながら言うことではないのかもしれないが、この一連の99bbの行為は法には触れないのだろうか?
日本国内では、不特定多数の人が閲覧できるサイト上に性器が見える画像(静止画も動画も含む)を置く事は、猥褻物陳列罪に該当すると聞く。
では、サーバはオランダにあるにもかかわらず日本人向けに特化して運営されているこのサイトの場合どうなる?
あくまでもサーバのあるオランダの法律にのっとって判断される? それとも実サービス地域の日本の法律にのっとって判断される?
いまだに結論は出ていないが、限りなくグレーな白というのが今のところの判断らしい。
一応はログインの際に言語が選択できるようになっており、デフォルトの日本語のほかに中国語と韓国語が選べるのだが、しかし動画で登場する女性はほとんどが日本人か欧米人かなので中国語と韓国語のサイトは言い訳のような気もしないではない。
性器の画像は本当に全く公には出回っていないのだろうか。
医学書のような特殊な出版物の場合はどうやらスルーのようだ。前のシリーズの中で、私が入手した医学書の中に女性器の写真があったことを書いたが、少し前に小さく話題になった「女性器の解剖研究」のような500以上の女性器の写真が羅列されている本であっても目的が目的なのでOKのようだ。私はその本を真剣に欲しいと思ったのだが、その本のことを記事にしている雑誌などにも肝心の出版社名が一切明記されておらず、医学書店の伝を使った入手は断念せざるを得なかった。
2002年にアテナ映像が出した「代々木忠コレクションDVD」の中の1作品に、1箇所だけ男性器のモザイクを掛け損なった箇所がある。私はVHSでその作品がリリースされた当時にモザイクのかけ忘れに気づき、もろに出ている男性器をダウンな気分で見た覚えがある(女性と絡んでいない男性器など見たくないからだ)。DVD化されるにあたって新たにモザイクがかかっているかどうか確認したが、またもや当時の私と同じダウンな気分になる結果に終わった。このDVDの売り文句は「新たな編集を施さない当時のままのスタイルでお届けします」だった。確かにそのとおりだった。ビデオ倫理委員会の審査も多分ここには気づかなかったのだろう。一度そういう所のお墨付きがついてしまうと意外とあっさりスルーされてしまうようでもある。
正確な時期がうろ覚えなのだが、確か1993年か1994年ごろ、KBC九州朝日放送(福岡県福岡市・テレビ朝日系)の製作によるローカル深夜バラエティ番組「ドォーモ」で、リポーター役の女性が妊娠したことを機に、その出産までの細密なドキュメントが取材され、不定期で放送されたことがある。最終的に放送された出産シーンにはモザイクなどの加工は一切入っていなかった。つまりリポーターの外性器の形が深夜の娯楽バラエティ番組ではっきりくっきりと放送されたということである。
出産にいたるまでのドキュメントも不定期に放送されていたということもあってか、この出産シーンには賛辞の声が多く寄せられ、何回も何回も再放送され、挙句VHS1本にまとめられて出版された(当然入手した)。この一連のドキュメントが民放の何かの賞を受賞したらしく、全国的にも放送された。もちろん出版されたVHSにも、全国放送に乗ったときにも、モザイク類は一切入っていない。番組のプロデューサーは放送用に編集された出産シーンのVTRを上司に見せて指示を仰いだ際に「全く問題ない」という判断を頂いたと、VHSと同時期に発売された書籍に書いている。
ちなみにこの番組は今も続いており、出産したリポーターは現在同番組の総合司会の立場で毎日生放送のスタジオを仕切っている。福岡のローカルテレビ界ではかなりの有名人で、KBCだけではなく多くの局の多くの番組に出演している人物である。
前出の代々木忠コレクションDVDの中に、「ザ・ドキュメント 出産」という作品が収録されている。この作品も一人の女性が出産にいたるまでのさまざまなシーンを映し出し、最終的には出産シーンになる。しかしこの作品は元がAVベースということもあり(妊娠中のセックスをどのようにしているのかというシーンがあったりもする)、出産の際も性器の部分にはモザイクがかかる。2001年12月30日から2002年1月1日にかけてTBS系で放送された「SAMBA STATION」でも出産の様子を生放送するという試みがあったが、当然母親側の性器は放送には乗らなかった。番宣のVTRには出産直後の母子の様子が出ていたが、母親の性器部分はモザイクがかかっていた。
かなり極端ではあるが日本での性器露出について実例を挙げてみた。
こうして見てみると、かなり限られた特殊な状況ではあるが、日本国内でも堂々と女性器を公にさらすことはできそうである、不可能ではない、と私は判断する。
かつて女性器については陰毛ですら公開できない時期が続いた。「四畳半襖の下張り」や「愛のコリーダ」といった映画に一部映っていたからという理由で上映できないなどという判例があり、それら映画の監督が、これらは芸術だと言って提訴して泥沼化していくという事件が数件続いた時期があり、それ以降なんとなく面倒を避けるために陰毛を映さずに映画が製作されてきたようである。
転機は樋口可南子の写真集「Water Melon」だろうか。堂々と陰毛が写っていると言う事で社会現象に近い話題になった。その後すぐ宮沢りえの「Santa Fe」が同じシリーズの1作品として出版され、どちらかというと話題になったのはこちらのほうであった。私は当時の知人が入手したSanta Feを見たのだが、陰毛が映っているというだけでなぜこんなに話題になるのかがよく理解できなかった。後に小林よしのりが「ゴーマニズム宣言」の中でヘア論争を「くだらない」とばっさり切り捨てているのを読んで胸の痞えが取れた覚えがある。
なぜ樋口可南子の写真集から陰毛が解禁されたのかはわからない。というか、出版物で陰毛を出すことはそもそも禁じられていたのだろうか。映画の世界で映倫が陰毛を禁じていただけ、ということはないのだろうか。出版の世界ではただなんとなく周囲が陰毛を出してはいけないような雰囲気だから大事をとって出さずにおこうか、と判断したぐらいのゆるい状況ではなかったのだろうか。
ネットの中では無修正の動画が一生かかっても見尽くせないぐらい流通している。Winnyなどで流通しているものは多分ほとんどが日本国内のPCに保存されているものだろう。キーワードを入れるだけで簡単に入手できるようなシステムになっているものは果たして猥褻物「陳列」罪に問われることがあるのだろうか。
おそらく、今は、過渡期なのだろう。
今後ネットの世界では、より一層ボーダーがなくなり、性器やセックスに関する情報があっさり簡単に入手できるようになっていくであろうことは想像に難くない。
しかしその反面、ぷららネットワークスがWinnyで使用するネットワーク帯に関して流量制限をかける、という事象も発生した。紆余曲折あって制限は撤廃される方向のようだが、このような新たなボーダーが発生する可能性も多くあるのがこれからの日本のインターネット社会であるのかもしれない。
そして、これが恐らく一番重大なところなのだろうが、いままで慣例でグレーゾーンだった各種の制限に白黒はっきりとしたラインが引かれる傾向が強まるのではなかろうかと思う。
今でも出版の世界では「おまんこ」とストレートに表現されていない。しかし15年ほど前の原律子の漫画の中では、はっきりと「おまんこ」と表現されていた。一般的な放送の中では放送禁止用語として「おまんこ」があるのだろうが、放送ではないところのそういう基準は今もって曖昧なようである。先の代々木忠コレクションDVD(20年ほど前の作品である)の中ではセックスをしている女性が口走る「おまんこ」という表現は一部無音になり「お__こ」しか聞こえない。更に女性が絶頂するときの「いく」という声も編集されて「_く」だけしか聞こえないのだがもしかしたら当時は女性の本当の絶頂の声も猥褻とみなされないように自主的に無音化していたのかもしれない。現在市場に出回っている多くの表もののDVDの中では「いく」という声も「おまんこ」という声も全くぼかされていない。これもなくなったボーダー(あるいは、もともとなかったことに気づいたボーダー)の一つであろう。個人的に、可能であるならば、あの当時無音化された部分を復活させたものを新盤として出してもらえないだろうか。Athena Century 1「ドキュメント ザ・オナニー」の特典ディスクに収められている冨田まゆみ嬢の「おまんこ」や「いく」の実際の声がちゃんと聞こえたらどれだけ興奮できることか。いや恐らく私個人の勝手な希望ではあるのだけれど。

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