歓声の中へ
野球、サッカー等を中心にした総合スポーツコラムです。
一切の無断転載を固くお断りいたします。
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【プロ野球】旅の終わりに−−WBC2009観戦記(4)
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2009/7/17
「お知らせ」
以前から寄稿しておりましたOhMyNewsが廃刊となったため、老舗のインターネット新聞であるJanJanに「移籍」しました。すでの数本の記事が掲載されております。下のURLから入って「生田正博」で検索してください。ぜひよろしくお願いします。
http://www.janjan.jp/
なおこちらのブログがまた休眠状態になってしまいましたが、書きたいことは山ほどあります。また数日中に更新の予定です。どうもすみません。
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投稿者: 生田正博
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2009/6/10
「【プロ野球】旅の終わりに−−WBC2009観戦記(4)」
野球
一夜明けた。ダウンタウンの安ホテルはメインストリートに直面している。空は、今日も晴れだった。心地よい目覚めである。時差の影響も消え去り、本当に気持ちよく眠れた。飛行機の切符が取れずに1日長い滞在となったこの日は、予定通りステイプレス・センターで世界フィギュアの初日を観戦する。
コンパルソリーダンスとは、指定されたリズムとテンポの音楽を用い、規定されたステップパターンを滑走するダンス。だからカップルによって曲は違うものの、多くはかぶることになる。こなさなければならない課題は同じだし、その課題をこなし終えたところで音楽はストップする。正に表現力よりも技術そのものを競う競技だ。といってもスケートに関してまだまだ勉強不足の私には、細かい技術力の違いは見抜けない。スポーツの世界は、本当に奥が深いのである。日本から出場したのはキャシー・リードとクリス・リードの姉弟。このペアは父親がアメリカ人、母親が日本人で日米両方の国籍を持つ。この二人初日は24ペア中18位だったが、後のオリジナル・ダンスで点数を稼ぎ、最終順位は16位まで上げることになる。
ここのホットドッグは「ダウンタウンドッグ」と言って、ドジャードッグよりやや小ぶりだ。ガラガラのスタンドには、それでも熱心なファンがそこここに詰め掛けている。スケート会場というのは氷が溶けないように室温を下げているため、ここではビールは似合わない。両手にコーヒーとダウンタウンドッグを持って、選手たちの演技に見とれる私――。
野球の話に戻ろう。今回本当に良かったのは、野球世界一の称号を再び取り戻したことである。いやあんなヘボ監督・コーチ陣で負けをさらしたオリンピックなど本来の力とは言えないのだから「取り戻した」というより「維持した」と言うべきだろう。それでも、去年の秋は本当に空しかった。世界で惨敗した競技の国内大会に、いったいどれほどの意味があるのだろう、と思ってしまったのである。野球だけではない。サッカーやラグビー、バレーボールで「W杯/オリンピックで活躍した選手のプレイを見よう」と言われても空しいだけだ。ましてオリンピックにすら行けなかった某競技などはなおさらだ。国内でいくら勝ったところでそれは井の中の蛙に過ぎない。もちろん所属クラブこそが選手を鍛える場なのだから、その意味で国内リーグは最重要なのだが、世界でいくら負けても平然と国内リーグが開幕するところに、私はどうしようもない違和感を感じてしまうのだ。
だが、世界一となれば話は違う。我々は日本にいながらにして、世界最高水準のプレイが見れるのだ。世界一の選手を生んだ世界一のリーグに参戦できるのである。同じ野球を見るにしても、誇らしさが違うのだ。センバツも、セ・リーグも、パ・リーグも、東京六大学も、都市対抗も、すべては野球世界一の国の選手が見せる野球なのだ。野球ファンとして、これ以上の幸せがあるだろうか。世界最高峰のリーグはMLBとしても、世界最強リーグは間違いなく日本の2つのリーグである。
だから野球日本代表は、本当に強くなければならない。昔セレソンがW杯で負けたときに、ブラジルでは自殺者が出たというが、野球では、日本はサッカーのブラジルみたいな国だ。その辺の弱小国(失礼!)と異なり、代表の勝敗は単なるチームとしての勝ち負けを超えて、国のプライド、国民の士気、競技の普及、プロチームの観客動員、そしてサポーターの誇りすべてに影響するのだ。もちろん勝負事だから必ず勝てるとは限らないが、最終的にはどこよりも強くあること、少なくとも表彰台は絶対に外さないこと――これが宿命として求められるのである。
もちろん選手は大変だ。それはわかっている。だが我々だって大変なのだ。その我々の「代表」なのだから、何とかがんばってもらいたいものだ。しかも選手は、プロのトップ選手として日ごろ莫大な報酬を得ているし、何よりも当事者として栄冠を手にすることができる。ハードさやプレッシャーが嫌なら、全日本などとっととやめて、二軍でタバコでもふかしていればいいのである。今回、コンディション等を理由に、多くの選手が代表を辞退した。この時期に開催するのは、調整が大変だという声もある。時期については検討が必要としても、いずれもサッカーでは考えられない話だ。元日にシーズンが終わり、1月末に代表が公式戦をすることなど当たり前の話なのである。それでも誇り高きジョカトーレたちは、競ってブルーのジャージに袖を通そうとするのだ。
ところで、この野球日本代表を「常設」しようという動きがあるという。何を今更寝ぼけたことを……という感じだ。しかもその理由が「代表戦は人気があるから」すなわち金になるからというのだから、開いた口が塞がらない。
世界の常識は球界の非常識。代表常設など、他の団体競技では当たり前の話だ。バレーボールなど、リーグが行われていない期間のほとんどは代表としての活動期間である。どの競技でも専任の代表監督を協会が雇い、一貫した強化方針を持ち、合宿や国際試合のセッティング等を含めてすべて協会の専門部署がアレンジする。もちろんその目的は日の丸のプライドと、その競技の強化・発展・普及、最終的にはスポーツの栄光のためだ(そもそも協会はそのためにある)。
球界患部(幹部)には、そんな基本的なことすらわかっていない。今まで国内での金儲けしか視野になく「世界」が目に入らなかったのは野球の歴史からして仕方ない側面もあるが、ものには限度というものがある。球界のお偉方は今からでも御茶ノ水のJFAハウスに行って、協会と代表のあり方について教えを請うて来い。何なら俺が教えてやるぞ!
次のWBCは、既に始まっている。韓国など、4年後を視野に入れて強化に励んでくるだろう。日本もそのつもりで選手を、代表を鍛えていかなくては、4年後も王座を取れるとは限らない。「試合終了の笛は、次の試合に向けての準備開始の合図だ」とは日本サッカーの父、ディトマール・クラーマー氏のことばだ。
すべての演技が終了したのを見届けてステイプレス・センターを後にする私。翌朝は帰国の途につく。だが私の旅の終わりは、4年後に向けての旅の始まりなのである。(この項終了)
1
WBC
日本
世界フィギュア
投稿者: 生田正博
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2009/6/4
「【プロ野球】連覇!!−−WBC2009観戦記(3)」
野球
決戦を前に、妙に落ち着いている自分がいた。もっとも、自分が焦っても仕方ない。今日は満を持した岩隈がやってくれる。逆に、ちょっと速いだけの金廣鉉はやっつけた。後は奉重根だけだ。このレフティを倒せば、韓国の息の根は止まる――。
この日はまず、7thを西に歩いてなつかしのステイプレス・センターへ。かつてレイカーズとクリッパーズの試合を堪能した最新式のアリーナだ。だが今日はバスケットボールのためではない。翌日から始まる世界フィギュアのチケットを買うためだ。そう、WBCと入れ替わりに、この魅力的な大会が始まるのだ。しかし滞在期間はあと2日。最終日は帰るだけだし、物騒な夜道を歩く気にもなれないので、見れるのは初日のマチネだけだ。アイスダンスのコンパルソリー――それだけでも見れれば十分ではないかという話もあるが、せっかくLAにいるのに、真央を始め世界のトップスケーターは揃っているというのに、このフラストレーション。スポーツマニアというのは、わがままなのである。
さて、このステイプレス・センターの北に、オリジナル・パントリー・カフェというレストランがある。ここは1924年の創業以来、いつどんな時でも食事を提供することを約束し、以来嵐の日も雪の日も1日も欠かすことなく営業を続けてきた超有名店だ。しかも24h営業。LAに来たらここに寄らない手はない。
久々の入店。何も変わっていない。嬉しくなってくる。ただし、雰囲気は最高だが、この店に限らず、アメリカのステーキがうまかった試しがない。何せミディアム・レアで頼んでもガチガチのウェルダンで出てくるのだから。そこで今日は思い切って「レア!」と言ってみた。結果は……
甘かった。やはり、ここはアメリカだった。まず、肉が固い。白身は嫌いだが、脂肪がなく固いというのも困る。アメリカのビーフは、概して大味だ。ロースやランプは固く、バラは赤身と白身が極端に分かれている。カウボーイが広大な牧場で追い回して育てるのだから無理も無い。日本のように牛小屋に入れて丁寧に面倒を見た霜降肉など望むべくもない。そして、焼き方も大雑把。出てきたステーキは、外側がガチガチに固く、内側は赤い色のまま。味付けもほどんどされていないから、テーブルの上のA1やHEINZをかけるしかない。ところが、これがまたまずいのだ。結局塩胡椒で食べる私。
野球もステーキも、どちらもアメリカ生まれだ。しかし、どちらも日本の方が圧倒的に「うまい」という紛れもない現実がある。アメリカのステーキ職人は、全員日本に修行に来るべきだ。野球選手も。だがそれは、まず実現することはないだろう。何せ国内選手権を「ワールド・シリーズ」と言ってはばからない国民性なのだ。これが改まらない限り、アメリカのステーキがうまくなることはなく、WBCで日本に勝つこともない。ここでも宿敵は韓国か。野球も、焼肉も。
ドジャースタジアムは、この日も快適な陽光と風に満ちていた。試合開始は18:30。決勝戦とあって、フィールド上には全参加国の旗が並ぶ。その中央に日本と韓国。そして国歌はスペシャル・アレンジ――何もかも3年前と同じだ。そして結果も。日本の優勝は変わらない。変わるはずがない。
そしてそのためのキーワードは、またも「一巡」だった。3回。まずは2番の中島がショート内野安打。3番青木はセカンドライナーだったが、これを高永民がはじく! 4番城島サードゴロの間に1死1・3塁となり、ここで小笠原が先制タイムリー! 見たか奉重根、おまえの棒球なんぞ、せいぜい日本の打者の目が慣れるまでなんだよ!
だがもちろん、韓国も粘る。5回だった。この回先頭の秋信守が、いきなりセンターオーバーのホームラン! そこは向こうも五輪王者としての意地がある。そう、この試合は前回王者対五輪王者によるリアル世界一決定戦でもあるのだ。スタンドも当然ヒートアップ。私の周囲には、韓国サポーターが大勢観戦している。そもそもリトルトーキョー同様、LAにはアメリカでも珍しい大規模なコリアンタウンがあるのだ。
彼らの応援はシンプルで、コールは4種類しかない。東京での第一ステージでの日本の熱い応援は記憶に新しいが、楽器の使えないメジャースタイルの会場では、一気にトーンダウンしてしまう。そこへ行くと韓国の応援は、シンプルだからこそ力強い。例の「テーハンミングク」の大合唱、加えてあの「銅鑼」である。
だが選手同様、サポーターにもスポーツマンシップをわきまえていないボケナス野郎はいる。”Dokdo is Korea’s”というボードを掲げた激馬鹿サポーター。テメエらの主張はどうあれ、スポーツに政治を持ち込むな。そうかと思うと、「ニッポン」コールにかぶせて大声で「ハングッ」と叫ぶ汚らしいメタボ中年。明らかに嫌がらせだ。野球を楽しむというより反日感情をむき出しにして憂さを晴らしているこうした輩は、もはやスポーツの敵でしかない。所詮この程度のサポーターにはこの程度の代表チーム。彼らに負けることは、野球という競技の地位を貶めることになる。絶対に負けるわけにはいかない(ただ私の隣の韓国人男性はきわめてマナーがよく、かつ熱いナイスガイであったことは付記しておきたい)。
そんな日韓米その他合わせて54,846人というWBC新記録の観衆が見つめる中、日本は再びリードを奪う。7回だ。この日ラストバッターに入っていた片岡が、韓国2人目鄭現旭からレフト前ヒット。すかさず二盗を決め無死2塁だ。去年の日本シリーズで出塁後3球で1点取った自慢の走りが炸裂した。ならばと続くイチローが三塁船にセーフティ・バント! 元祖核弾頭は俺だとばかりに、砂塵巻き上げイチローが走る。これが見事に決まって無死1・3塁! この「足の競演」に酔いしれる日本サポーター。気落ちする韓国サポと、そして鄭現旭。中島がレフト前タイムリーを放つのは、簡単なことだった。これで2−1! 韓国は8回から3人目柳賢振に代わる。だがもはや、誰が投げても結果は一緒。日本はこの回、1死2・3塁から岩村がレフトへ犠牲フライを打ち、3−1!
だがそれでも、それでも試合は決まらなかった。日本はその裏、岩隈がつかまる。この回先頭の6番李机浩が、右中間に二塁打だ。そもそも決勝戦の球数制限は100球なのだが、これで8回まで来た所に岩隈の投球術の優秀さがわかる。対する韓国の奉重根はわずか4回で94球を使い果たし、フェードアウトしているのだから……だが岩隈は7番高永民を遊ゴロに切って取ったものの、これが進塁打となり、代打李大浩(この打者が残っていた!)にセンターに犠牲フライを打たれてしまった。韓国の必死の反撃が、この得点経過からわかる。日本はここで97級に達した岩隈に代わり、杉内が1番李容圭をレフトフライに討ち取り、チェンジ。決勝戦は、死闘の様相を帯びてきた。
9回裏。カクテルライトを浴びてマウンドに上がったのは、昨日に引き続いてあの男だった。ダルビッシュセファット・ファリード・有――前日21球という絶妙な球数(決勝ラウンドの連投条件は30球以下)で見事クローザーを勤めあげたMAX154km/hの快速右腕にとって、勝利までの3アウトはパンケーキを食べるより簡単なことのように思えた。だが――。
代打鄭根宇、空振り三振。しかしダルビッシュはこの後金賢洙、金泰均に連続四球を与えてしまう。敬遠気味か緊張からか、あるいは気圧されたのかはわからない。だが打者アウトを取ればそれでいいわけだ。5番秋信守は空振り三振。後一人――。
ここで迎えたのが6番李机浩。8回に韓国反撃の狼煙となる2塁打を打たれた男だ。だが消耗した岩隈と出てきたばかりのダルビッシュでは球威が違う。事実、李机浩の打球は詰まらされたように見えた――。
打球は、三遊間を抜けてレフト前に同点タイムリー・ヒット!
金賢洙の代走李鍾旭がホームを駆け抜ける。あちこちで抱き合い、跳ね回る韓国サポーター。だが、まだ同点にされただけだ。ダルビッシュは7番高永民を空振り三振に切って取る。サヨナラのピンチは、免れた。だがここからが勝負所だ。いざ、延長戦――。
韓国の投手は9回から林昌勇に代わっている。そう、ここはこの男しかあるまい。このスワローズのクローザーは、MAX160km/hと滅法速いが、意外と脆い側面も見せる。その結果が54試合で1勝5敗33S、防御率3.00という数字だ。自責点は17。3試合に1回は必ず失点するという計算になる。今日が、その時だ!
10回表、日本の攻撃。まずは先頭の6番内川がライト前ヒット。それを稲葉が送り、8番岩村がレフト前ヒットで1死1・3塁。お膳立ては整った! ここで代打川崎はショートフライに倒れ、2死1・3塁。そしてここで登場したのが、イチローである。
鈴木一朗。今大会に入ってからずっと不振が続き、負け試合では戦犯扱いされてきたが、精神的支柱として、また守備のレーザーキャノンとして、この男を外すわけにはいかない。ただ本人の悩みは相当深かったはずだ。だがそのイチローも「地元」アメリカに来てようやく調子を取り戻し、この決勝戦では既に3安打を放っている。最後の最後で、イチローが間に合ったのだ。この8年連続200安打・100得点というMLBレコードを更新中の男にとって、韓流ツバメなどものの数ではなかった。センター前へ2ランタイムリー! 5−3日本勝ち越し!
後は、任せた、ダルビッシュ! だが10回の裏、ダルビッシュは、先頭の8番姜王民にフォアボールを許してしまう。無死1塁。だが、ここからがこの男の本領発揮だった。朴基赫の代打崔延を空振り三振! そして1番李容圭をセンターフライ! 姜王民鎬はまったく動けなかった。そして最後の打者鄭根宇を、カウント2−1から空振り三振!! ジャスト4時間の激闘を制し、日本、WBC2連覇!!
胴上げを見ながら、私は、残ったビールを一気に飲み干した。うまい。3年前の興奮がよみがえる。野球という私が愛するスポーツで、歴史上初の世界選手権優勝、そして2連覇。この2つの感動を現地で味わえた日本サポーターは、球界広しといえどもそうそういるものではない。もちろん様々なものを犠牲にしてここまで来たが、それに変えられない喜びを得ることができたのだ。そしてそれを与えてくれたのが、わが代表チームなのである。
いや、この表現はよそう。何度も繰り返すが、私はサポーター、つまりチームの一員なのだ。この連覇は、ある意味自分でつかみとったものでもある。それは選手の千分の一、一万分の一の力かもしれない。だがそんな無名のサポーターが集まってこそ、選手に匹敵する力が出せるのだ。そして我々が必死で韓国サポーターに対抗したからこそ、最後の一投一打で少しだけ相手を上回ることができたのではなかったか。
「ナイスファイト!」私は引き上げようとする隣の韓国人男性に声をかけた。笑って握手を求めてくる相手。試合中はどんなに熱い戦いをしても、終わってしまえばノーサイドなのである。
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WBC
日本
韓国
投稿者: 生田正博
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2009/5/30
「【プロ野球】USA! USA!−−WBC2009観戦記(2)」
野球
LA滞在2日目の朝を迎えた。いよいよ準決勝の日米決戦である。今大会に入ってから今ひとつ精彩を欠いている米国代表ではあるが、こと野球に関する限り、いつの時代も、アメリカをなめてはならない。
ホテル近くの中華ダイニングで朝食を済ませると、昨日と同様7thから2ndまであるく。京都なら地下鉄で2駅なのだが、LAではそうはいかない。どうせ歩くならとこの日は現代美術館に寄ってから、リトル・トーキョーに向かった。
ドジャー・スタジアムは、じっくり探検すると、結構面白い。たとえば1958年にブルックリンからLAに移転してきた時、当時はこのスタジアムはなく、オリンピック・コロシアムで試合が行われた頃の写真。柱にジャッキー・ロビンソンを始め歴代の名手の写真があしらわれた廊下等、訪れる者を飽きさせない。そして今日も、ドジャー・ドッグとビール。
入場者数は43,630人と発表された。地元米国が出るというのに、昨日とほとんど変わらない――というより、昨日の人数が多かったのだ。韓国サポーターもさることながら、アメリカ人は本当に野球が好きなのだと実感する。私と同様に通し券を買ったであろう客が周囲にいる。彼らはアメリカが今日敗退したとしても、決勝戦は見に来るだろう。後ろは陽気な3人組、前は30代の夫婦である。彼らとはすぐに仲良くなった。しかし、今日はアメリカ戦である。一塁側スタンドには、アメリカサポーターがそこかしこに集まってきた。
先発は、満を持した松坂である。だがこの見え見えの起用は、完全に研究されていた。初回、いきなりロバーツが先頭打者ホームラン! 2回に日本は城島の犠牲フライで同点とするも、3回にはライトのタイムリー2塁打で再び突き放される。失投だろうって? 違う違う。どちらもよくコントロールされた、松坂特有の力のあるボールだった。スイングスピートが明らかに違うのだ。歓喜のアメリカサポーターあちこちで星条旗が揺れ、USAコールが鳴り響く。
だがパワーで対抗できないなら、そこは伝統のスモール・ベースボールだ。日本がそれを爆発させるまで、打者一巡が必要だった。しかし、先発オズワルドのボールに慣れさえすれば、後はもー容赦しない。
4回。日本はまず因幡・小笠原が連続ヒット。続く福留の当たりは2ゴロだったが、ロバーツが打球を後逸する間に稲葉が生還。無死1・3塁となって、城島がまたも犠牲フライで3−2と逆転! そしてパワーでは負けないメジャーリーガー岩村がライトオーバーの3塁打を放ち小笠原生還4−2! 負けじと川崎もタイムリーで5−2! そしてイチローは「例によって」倒れたものの、中島がとどめのタイムリーを放ち6−2! オズワルドをKOし、日本はこの回一気にビッグイニングとした。
だが、アメリカ人は野球が好きと書いたが、それは何もファンだけの話ではない。選手は、もっと好きなのだ。そして好きな野球では絶対に負けない、負けてこなかったという実績と自負を持っているのが、メジャーリーガーなのである。日本は堂々たるピッチングを見せた松坂から杉内−田中とつないだが、8回表に馬原がつかまった。ブラウンに2塁打を打たれ、マキャンには四球。そして続くデローサはレフト線に2ラン2塁打! さらに青木が打球の処理を誤る間にデローサは3塁へ! 6−4となってなおも1死3塁!
56,000人収容のドジャースタジアムが沸き返る。ひっきりなしに起きるUSAコール。1球ごとに起きる大歓声。本場アメリカの、これがアウェイ環境だ。前の席の奥さんが「がんばって日本を応援しろ」と身振りで示すが、もちろん私の叫び声はかき消される。だが、馬原は最後の力を振り絞ってくれた。代打ロンゴリアを変化球で空振り三振! 日本の投手に慣れていない選手を起用したジョンソン監督の作戦ミスだ。そして1番ロバーツをピッチャーゴロ!
試合は一気にわからなくなった。だがここで相手に付け入る隙を与えないのが王者というものだ。その裏、アメリカの5番手ハンラハンから福留が四球を選ぶ。城島が送り、代走片岡は2塁へ。さらに岩村のゴロの間に3塁へ。続く川崎の当たりはショートゴロ。だがこれを名手ジーターがエラー! 片岡生還し7−4!
アメリカはここで、気落ちしたハンラハンに代わり6番手シールズを送り込む。総力戦だ。だがその代わり端を、イチローが捉えた。ライト前タイムリーで8−4! 続く中島も2塁打で9−4! 勝負は決まった!
後は9回表を抑えるだけ。藤川? いや、藤川は前回大会でアメリカに打たれている。ダルビッシュだった。日本シリーズ等でもそうだが、短期決戦ではローテーション投手を抑えにつぎ込むことが、往々にして威力を発揮する。特に点差をつけてリードした時にこの手を使うと、相手の戦意を喪失させ、息の根を止めることになる。エースはこうやって使うものだ。わかったか黒星野。
ダルビッシュはまず、アメリカのチームリーダー・ジーターをショートゴロに切って取る。”Go! Darvish!”という私のアメリカ風の応援が、今度はスタンドにはっきりと響く。”Good!”と前の席の奥さん。心が広いというか、本当にアメリカ人は野球が好きなんだと実感する。
ダルビッシュは続くロリンズにヒットを許すが、4番ライトを空振り三振! そして、5番ダンも見逃し三振!
3時間15分の激戦を制したのは、我々だった。2つのビッグイニングが示すように、地力は完全に我々が上だった。この試合を制したのだから、地元のビッグチームを倒したのだから、あのジーターをわずか1安打に抑えたのだから、もはや韓国など敵ではない。しかも日本チーム、試合を重ねるごとに仕上がりが良くなっていく。甲子園の優勝チームが持つ、あの状態だ。覚悟しろ韓国、実力に経験が加わった我々に、もはや敗北はありえない。
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WBC
日本
アメリカ
投稿者: 生田正博(管理人)
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2009/5/29
「【プロ野球】LAの空の下で−−WBC2009観戦記(1)」
野球
時差というのは面白いものだ。東京を出たのは3月21日の夕方なのに、LAXに着いたのは同じ日の昼過ぎである。日付変更線を超えたフライトが、多忙な中での3連戦観戦を可能にしてくれた。
思えば3年前、私は成田の搭乗待合ロビーでやきもきしていたのを思い出す。メキシコがアメリカに、しかも限られた条件で勝った場合にのみ許される準決勝進出。しかも審判はあの史上最悪のイカサマ八百長糞審判のボーク・ボケナス・デビットソンだった。案の定この野球を知らないペテン師野郎は、メキシコのホームランを取り消し、何とか母国を勝たせようとしてきたが、これが逆にメキシコの闘志に火をつけ、ほとんど日本のために、奇跡的な勝利を飾ってくれたのだった。それが、今日は安心して出発できるのだ!
3年前と同じNWA、同じ9時間のフライト、そして待っているのは同じ結果、すなわち優勝の2文字であろう。根拠はある。1つは、投手陣の好調さ。1つは、イチローの復活をはじめとした打撃陣の健闘。そしてもー1つは、前回を上回るこれ以上ないスタッフの充実ぶりだ。何しろ新球団を1つ作れるほどのコーチ陣であり、その中には伊藤、山田といった監督経験者もいるのだ。もちろん北京の黒星野スタッフなどとは比較にすらならない。
左投手に右打者が少ない、なぜ斉藤隆を入れないんだ等という不満は私の周辺にもあったし、私もそう思うのだが、とりあえず充実きわまるわが国家代表チームは、東京でのファーストステージを難なく突破。なつかしのペトコ・パークでのセカンドステージでもキューバ・韓国に圧勝。首位で準決勝にコマを進めたのだった。この状況で優勝しなければ、いつ優勝するのか。ただ唯一の問題は、宿敵韓国とは今大会2勝2敗であることだ。そしてスポーツマンシップの欠落した半島のたわけ者どもは、日本に勝ったあと、またもあのゴチャゴチャした模様の旗をマウンドに立てるという愚行をやってのけた。だが彼らは、そのツケを払うことになる。それがとりあえずは、あの6−2という第二ステージ決勝での結果なのだ。
LAは、私にとっては3度目である。3度目ともなれば、土地勘もできてくる。鉄道マニアとして、地下鉄もすべて乗りつぶした(笑)そんなわけで空港から地下鉄に乗って、旅行代理店でもらった地図の通りの場所に行くのに、大した苦労はしなかった。が・・・
そこにはホテルはなかった……
おかしいと思ったのだ。地図の場所は、東京で言えば霞ヶ関。街の雰囲気も建物も、典型的な官庁街である。安宿があるような場所ではなかった。案の定、地図の場所にあったのは大きなお役所。だが私にとって幸いだったのは、そこがLA警察本部だったということだ。ネタとしか思えない。
土曜日だったが、もちろん警察だから職員はいる。地図に書かれた住所を示して場所を聞くと、そこからメインストリートをひたすら南に下がった所だった。京都で言えば二条烏丸から七条烏丸まで歩くようなものだ。
まあ街歩きの好きな私のこと、愛用のキャリーバッグをひきずりながらダウンタウンを歩いた。土曜の午後だからできる芸当だ。夜ならとても怖くて、歩けたものではない。
ホテルは安宿の割には立派である。何でも数年前にリニューアルしたそうで、部屋もとても最安値とは思えない。ただ例外なくこういう宿はシャワーの出が悪かったりするのだが、そこはご愛嬌だ。
荷物を置き、最低限の観戦用具だけを持って、露天で買ったホットドッグをかじりながら、ふたたびメインストリートを北上。この日の夜から試合だが、3日間共に送迎ツアーを予約したためだ。ドジャースタジアムはダウンタウンから2kmほど離れた所にあり、公共交通機関ではいけない。シーズン中ならドジャートロリーなるバスも運行されているようだが、WBCでそれは期待できない。そこで調べて発見したこのツアー、送迎のみでも受け付けていて、特に帰りは各自のホテルまで送ってくれる。物騒なLAでは好都合に思えた。
集合はリトル・トーキョーの都ホテルである。3回目のLAにして初めてのリトル・トーキョー。スーパーマーケットが完全に日本の店と化していることには驚いた。ここにある日系人博物館に行くと、かつての日系移民がいかに苦労してきたかがよくわかる。そしていよいよ、バスでドジャースタジアムへ!
Will Call Officeでチケットを受け取り、いよいよ夢舞台へ。今回私が買ったのは3試合で$180のフルプライス・ストリップ、場所は1塁側の2層目ベース後方。東京ドームならB指定席、神宮なら学生応援席だ。ただ残念ながら、日本はいずれも3塁側だったのだが……。
受け取ったチケットは”Think Blue”と刻印されたドジャースバージョン。3年前と同じファンシーチケットは今回も売られていたのだが、それでなかったのが残念だ。だが、これはこれで財産だ。
3塁側4層目から入場。階段を上がった所がトップデッキだ。ここからのダウンタウンの眺めはLA一と言われている。そして反対側の丘には”THINK BLUE”。傾きかけた落陽と、心地よい風と、緑のフィールド。天国だ。試合2時間前の野球場をここまで心地よく感じたのは、生まれて初めてだ。
グッズショップでお土産や記念品を買い、そして飲食売店で名物のドジャードッグ。ソーセージがパンからはみ出るほど長いソーセージの上にセルフでタマネギを載せ、ケチャップとマスタード。そして$10の特大の生ビール。これをまだ人気のまばらなトップデッキで、春風に吹かれながら豪快に食べ、飲む。もーいい。これだけあれば、どんな一流レストランの料理もいらない。
初日のカードは準決勝第一試合の韓国−ベネズエラ。自分の席に戻った私がエンジ色のシャツを着てベネズエラの応援をしたことは言うまでもない。そもそもベネズエラは今大会、第一ステージC組でアメリカに大敗したものの敗者復活戦で勝ちあがり、1次決勝では逆にそのアメリカを破ったチームだ。そして第二ステージでは今大会の台風の目・健闘したオランダを蹴散らし、優勝候補のプエルトリコまで破り、さらに地元開催の執念で再び這い上がってきたアメリカに再び一撃を食らわせたのだ。2次決勝のスコアは10−6! アメリカの誇る投手陣などひとたまりもなかった。このチームなら、打倒韓国を託しても何の不思議もないだろう。ところが、ところがである。
開始いきなり、韓国の青いユニフォームがフィールドを切り裂いた。先頭の李容圭が四球、2番の鄭根宇がエラーで出塁するや、3番金賢洙、4番金泰均が連続タイムリーである。
「速い!」――これが韓国の第一印象だった。日本のプロ野球では広島やヤクルトが、こうした速攻を得意とする。ヒットが出るや一気に走者が突っ走り、あっという間に塁が埋まる。そして相手投手の動揺が収まらないうちに栗原が、ガイエルがホームラン――これが勝ちパターンだ。そして、韓国もそうだった。6番秋信守が、センターへ3ランホームラン! 1回の表に、韓国何と5点先制!
こうなってはベネズエラは、もはやなす術がなかった。そもそもノッてくれば手のつけられない強さを発揮するが、一度崩れだすとガタガタと崩壊してしまうのがラテン気質だ。たとえそれが世界のセミファイナルでも同じこと。今大会でもドミニカが、プエルトリコが、狂った歯車を修正できずに、フィールドの藻屑ならぬ芝屑となって消えている。2階に2点、4回に1点、そして6回に再び2点――試合は韓国のエクササイズの場と化した。もちろん、周囲にいた韓国サポーターは大喜びだ。終わってみれば10−2! 韓国が、その強さを存分に発揮した試合だった。
試合後。都ホテルで送迎バスからミニバンに乗り換え、自分のホテルへ。時間は既に23時を過ぎている。今回の宿の難点は、何と言っても近くに24hのコンビニがないことだ。お約束のハムとビールが買えない。仕方なしにロビーの自販機でパンとジュースを買って、自分の部屋で食べる。だがストレスよりも、期待感が上回った。韓国のようなチームには、ラテンの国では勝てない。緻密な作戦と状況判断、そしてそれを支える技術と対抗できるスピード――そう、われわれしかいないではないか。見てろ韓国、第二ステージ決勝の時と比べて、日本にはさらに強力な戦力が加わったのだ。他でもない、広島の栗原と、この私である。
12
WBC
韓国
ベネズエラ
投稿者: 生田正博
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