2011/12/19
やはり美しく、かつ強かった。直前の3決とは、いやサントスとも次元が違った。
こんな強烈な印象は久しぶりだ。
だが、一見異次元のこのフットボールも、よく見ると実に基本に忠実であることに気付く。
たとえば、あのパスワーク。それを可能にしているのはパススピードと卓越した技術だが、その技術をことばにすれば「早く、正確に蹴る」「しっかり止めるだけでなく、次のプレイを考える」「もらいやすい位置に動く」「視野を広く保つ」ということになる。何のことはない、俺たちが指導の時に口にすることばとまったく同じなのだ。つまり彼らは小学生でも習う、サッカーの最も基本的なことを究極レベルで身につけていることになる。
あるいは、メッシ。あれだけ執拗にからまれ、タックルを受けても倒れない、ボールを離さない、そしてあの2ゴール。これも超絶技巧に見えるが、それを可能にしているのは「ブレイン」「ボディバランス」「ボールコントロール」というサッカーの「3B」だ。つまりメッシという選手もまた、究極の基本を体現した選手といえるだろう。
ならばなぜ、サントスとこれだけの差がつくのか。基本というならサントスだってブラジルのチームだ。技術レベルではバルサにひけはとらないはずだ。いやJリーガーだって、一部(あえてどことは言わないが)(笑)を除いて、技術はしっかりしているだろう。
答は「イマジネーション」ではないかと思う。これも言わばサッカーの基本だ。持てる技術をすべて発揮して、どんなサッカーを作るのか、どんな組み立てをしたいのか、するとどうなるか、そこでどうするか、そんなことがバルサの選手は一瞬のうちに、しかも多くの選択しの中から選べ、同時に以心伝心でそれが仲間に伝わる、それができているのではないだろうか。少なくとも4回の得点シーンは、すべてそうだった。そしてそれは、クライフ以来の(もっと言えばミケルス以来の)トータルフットボールがクラブ全体に(下部組織までも−−だから選手が入れ替わっても影響を受けない)一つの文化として浸透し、選手に血肉化され、一種のオートマティズムとなっているからではないのか。
だとすれば、そんなチームに勝つのは、容易ではない。メッシに勝つのではない。そこれにいる11人に勝つのでもない。100年の歴史と何万人というソシオに支えられた名門クラブという、1つの意志を持った巨大な文化的存在に勝たなければならないのだから。
「基本抜きでは何もできない。基本さえあれば何でもできる」というクラーマーさんのことばを、俺は改めて思い出す。そしてその「基本」というものは、それ自体は簡単でも、それがイマジネーションと、さらにはクラブ文化と融合した時に、何十倍、何百倍の威力となって発揮される。サッカーというものの奥深さ、果てしなさに、改めて畏怖の念すら覚えた試合だった。


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