2006/7/2
今日は思い出話です。僕は20歳の頃、高山で木工の勉強をしていて、当時はアパートで1人暮らしをしていました。大家さんのお宅は近所で、毎月、家賃の支払いは大家さんのお宅にお伺いして直接支払いに行っていました。
大家さんのおばあちゃんはとても元気な方で、この家賃を支払いに行く時も、大体、30分〜1時間ほど世間話をするのがパターンでした。話題は大家さんの若かった頃(女学生時代)の学校の話や、昔から高山に住んでいた人ですので、昔の高山の話などの話題が多かったです。
別にこの世間話、僕としては嫌ではありませんでしたが、誤解恐れず言いますと、まあ、僕はほとんど「はあ。」「そうなんですか。」という相槌を打っていただけなんですが(^^ゞ…お話は僕の経験外のことがほとんどですから面白かったです。
この大家さんが高山の小学校に通っていた時(時代にして戦前ですね)、ちょうど学校の机と椅子が新調されたらしく、とても木工の本場らしく、その机・椅子は全て「漆塗り」だったそうです。さすが高山♪
と、まあこの漆塗りの新しい学習机。導入されてから何日かたって、学校の生徒の約半数が漆の“かぶれ”によって学校を休んでしまったそうです(笑)。漆恐るべし…
漆(うるし)は木工に使われる塗料の中でも塗膜強度も強く、何より摺り漆、拭き漆と言われる仕上げは、他の塗料では見られない高級感のあるツヤが木目を際立たせる特徴的な仕上げです。ただ、この漆の塗装は、その性質上、塗膜が固まる条件(一定の温度と湿度)が限定され、なにより完璧な乾燥には長い時間がかかってしまいます。そして、完璧に硬化して無い漆に触れると、体質によっては「かぶれ」の症状が出てしまいます。
この「かぶれ」、軽い症状ですと「痒いな〜」程度で済みますが、ひどい時は体中に発疹が現れ、強烈な痒みと発熱に襲われます。漆が体質に合わないのに、漆工房の手伝いに行った人などは、その後、現場復帰に数週間を要するほど、重い症状に苦しんでいる例も実際に見たことがあります。
大家さんの小学生時代のこの症状。現代で言うところの「シックハウス症候群」そのものなんじゃあ…(汗)
漆というのは一定の温度、湿度の条件下においてしか硬化しません。漆を塗った作品は「室(むろ)」と呼ばれる温湿度管理がされた場所で漆を塗るごとに入れられます。塗装が乾いたら、再び表面を研磨して、漆を塗り重ねていきます。これも、工程管理の都合上、「室」で漆を乾かす時間は一晩程度で、1日ごとに塗装を塗り重ねていくのが僕の入った作業場では普通でした。
漆工房の職人さんの話しでは、「とうてい一晩くらい室に入れたくらいでは、漆は完璧に硬化しない」という事です。ただ、注意してもらいたいのは、一晩の室での硬化によって、大多数の人はかぶれの症状など出ない程度の硬化はしています。ただ、とても漆の症状が敏感な人では症状が出る可能性は否定できない〜という事です。
大家さんの小学生時代の事件も、当時の漆の硬化、技術が甘かったのかもしれませんが、敏感な子供の肌には、完全に硬化しきらない「漆の刺激」は強烈に症状に出てしまった〜という事なのかも知れません。
僕は実体験、大家さんの経験談などからして、シックハウスなどの出ない天然塗料=低刺激、無公害、健康的という単純公式は若干違うような気がします。なにより、
低刺激のシックハウス対処塗料=天然塗料=植物性オイルフィニッシュ
はまだしも
低刺激のシックハウス対処塗料=天然塗料=漆
などと言う記述には???という風に感じます。
科学薬品に対するアレルギー反応=シックハウス症候群=不健康
天然素材に対するアレルギー反応=かぶれ=健康的
これはちょっと違うような気がします。かぶれはけっこう恐ろしいですよ…。
漆製品も実際の市場には「一見漆製品」のようなモノもたくさんありますが、本物の漆はアレルギー症状出ますからね〜(普通に使っていれば半年〜1年で完璧に塗膜は硬化するそうです)。よーく検討、使い方を考えて漆製品の購入は考えましょう〜。
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