仕事の合間に家へ帰ろうとすると電話が
『ハヤトが自転車に乗って友達の家に遊びに行きたいと言ってる』
さよちゃんからの電話だった
「直ぐに帰る」
帰るとハヤトが待っていた
『ケンノスケ君とアキラ君の家へ遊びへ行くから自転車良い?遠いから』
自転車に関して
小学校3年生まで友達と遊びに行く時は使用禁止!と以前決めていた
小学校3年生で交通講習があると聞いていたからだ
『ねぇーケンノスケ君と約束しちゃったから良いでしょ〜』
ハヤトはケンノスケ君との約束を強調した
確かに友達との約束は守れ!とも言ってあった
子供同士遊ぶ時は同じような環境を作ってあげないと
仲間外れになりまたいじめられそうな気もする
1人だけ自転車で行けなければ置いてけぼりになる
そうなると可哀想
でも親との約束は破って良いのか?
臨機応変に対応する事も良いだろうが
最初に決めた事を最後まで守ると言う事も大切なのではないのか?
そんな考えが頭の中を駆け巡る
どうしたものか・・・
その時の答えは自転車を許してしまった
ハヤトが帰ってくるまでにもう少し考えなければいけないと思ったが
友達を待たせてもいけないと思い自転車を許可した
ハヤトが出て行った後に悩む
はっきり言ってまだ自転車を乗りこなすというレベルではない
ブレーキも甘いし
交通ルールをどこまで理解しているかも疑問
いくら傷害保険に入ったからといっても
それで他人に迷惑が掛かる可能性が高いまま自転車を許可するのも
あまりにも無責任なような気がする
何よりもハヤトが二度と帰ってこない可能性がグンと上がる
ハヤトの身を考えれば今はより安全な選択肢を取るべきではないのか?
確かに友達との関係を考えれば同じ土俵に立たせるべきなのだと思う
しかし我慢させる事も重要な気もする
でもやっぱり命が一番大切
結論は命という事にした
考えれば簡単な事なんだけど
ハヤトの要求を出来るだけ聞き入れてあげたいものの
やっぱり生きて欲しい!
さよちゃんに許可を取った
ハヤトが帰ってきて玄関でハヤトに言う
『今はお父さんは怒っている。どうしてだか分かるか?』
「・・・・分からない」
『お前は自転車に乗る時に約束した事を破ったからだ』
『その約束を覚えているか?』
「覚えてない・・・」
『そうか』
『もう一つ。家の電話番号を覚えているか?』
「あっ・・・覚えていない」
期待していた答えは一つもなかった
バッシ!バッシ!!と右と左の頬を平手で一発づつ叩いた
叩かれたほっぺたは一気に真っ赤になり
指の跡がしっかりと出た
『お父さんもお母さんもお前が一番大切なんだ』
『お前が居なくなったら凄く辛いんだ』
『自転車の約束は3年生になるまで大人が居ない時は乗っちゃダメ!』
「あっ」と言って思い出したみたいだった
『何かあった時に連絡が取れないと困るから電話番号は絶対に覚えろ!』
『これは以前約束した事だぞ!』
「はい」とハヤトは返事をした
叱られてもしっかりこっちを見て返事をしていた
叩いた手がジンジンしていた
ケースケが死んでから変な事をよく考える
遊んでいる時や喋っている時など不意に
こいつが居なくなった辛いな・・・
ケースケは突然居なくなった
人間誰だって突然居なくなる可能性がある
一期一会
大切にしないといけない
ハヤトが二十歳になった時
一緒に酒を飲むのが夢みたいになっている
ハヤトは自分の子供でもあるけど
友達だとも思っている
ハヤトが大きくなり自立できるまで最善の選択をしないといけない
だけど子育てには必ず一長一短があり
どの判断が正しいなんて事はなかなか言えない
一番重要なのは大人になるまでしっかり育てる事なんだ
今日そういう考えが湧いた
先週に続いて今週もビンタしたが
今日のビンタはかなり効いたと思う
男なんだから殴られても泣かないくらいが良い!
なんて都合良くまとめちゃいそうだけど
さよちゃんとも決めた事だから良いという事にしておこう
ハヤトと悠介が居なくなる生活は考えられない
みんなで早くキャンプへ行きたい!
本当はワシじゃなくてさよちゃんが叩く方が良いと思うんだけどね・・・

0