ここまで来るとAKBのジャンケン大会の様相を呈し、もう誰がセンターになってもおかしくない状況になった。3敗で栃煌山、旭天鵬、稀勢の里が並び、それを追走する形で4敗の白鵬、碧山、隠岐の海が続く。
しかし、第一の番狂わせは意外なところにあった。それは、今日の栃煌山戦が組まれていた琴欧洲の休場である。昨日の旭天鵬戦で足の指を痛めて歩けない状態だと言われるが、これで栃煌山は不戦勝で3敗を守ることになり、本割前に4敗力士達の優勝の可能性が消えてしまった。館内の客のテンションが下がっただけでなく、逆転優勝を狙っていた横綱までも一気に気持ちが覚めて土俵入りの仕方までいつもと違うダレたムードに。展開によっては、3敗の旭天鵬と稀勢の里が共に本割で負ければ、栃煌山は相撲を取らずして優勝してしまうことになる。
これだけはどうしても避けたい。相撲ファンの誰もが思ったことだろう。旭天鵬は、先場所の千秋楽で鶴竜の優勝にブレーキをかけた豪栄道との対戦。相手の出足に圧倒され、土俵際で右に回り込みながら右上手投げを打った。この勢いに押され豪栄道の左のつまさきが蛇の目を掃いた。審判の手が挙がっているのを当事者達は気付かず、そのまま豪栄道が上手投げを打って旭天鵬を転がした。旭天鵬本人は自分が負けたと思って顔面蒼白だったが、行司が自分に向き直ると「信じられない、ラッキー」といった表情で勝ち名乗りを受けた。これで優勝決定戦は行われる。
日本人のファンは俄然大関・稀勢の里有利と見て大声援、三役そろい踏みの時などは場内アナウンスが聞こえないほどだった。取りこぼしさえなければ、今頃自分が優勝していたはずなのに――そんな後悔も抱えながら、匕首が4-18と悪い把瑠都との一番。立ち合いから攻める姿勢で右四つになると、渾身の力で巨体を寄り立てた。俵のかかとが外に出そうになったところで、「日本人に優勝させてたまるか!」と言わんばかりの把瑠都の粘り腰。右上手をガッチリ引くと力任せに上手投げを打った。投げの打ち合いの瞬間、あの1秒が稀勢の里にとってはキャプテン翼のゴールシーンのような長さに感じられたに違いない。土俵下に落ちた姿を見たファンは全ての期待を裏切られた。
優勝決定戦は、旭天鵬と栃煌山の史上初の平幕対決となった。すでに1番取って身体が温まっている旭天鵬に対し、栃煌山は汗が見えず緊張している面持ちに見えた。とはいえ、消耗していない点では有利なはずだ。立ち合い、頭を下げた栃煌山が旭天鵬を正面土俵へと押し込み、一気に押し出せるかと思いきや、旭天鵬の懐の深いハタキが炸裂!一瞬で栃煌山は土俵に這った。かくして、37歳の史上最年長の優勝者が決まった。日本国籍を持つ力士の6年ぶりの賜杯である。
白鵬も、まさか自分の太刀持ちが賜杯を抱くなどとは夢にも思わなかったことだろう。パレードでは、モンゴルの先輩をねぎらう演出で旗手を買って出た。7-7の日馬富士との当たったが、やはり温情措置を取って10-5の昇進以来最悪の成績で忌まわしい場所を終えた。
殊勲賞は豪栄道、敢闘賞は旭天鵬と栃煌山、技能賞は4大関に勝った妙義龍。横綱を初日に破って、全ての番狂わせを生じるきっかけを作った安美錦は7-8で負け越した。十両優勝は12-3の玉飛鳥。序の口は大砂嵐。

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