▼ ネオコンバブル崩壊
政府は11月にデフレ宣言を発した.日本がデフレで苦しむのは,バブル崩壊後の混乱以来である.私はリーマンショック直後に,歴史的に日本が経験したバブルとその後の展開について解説した.
わが祖国日本 1〜7
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いわゆる平成バブルは,戦前の大正バブルと酷似していた.大正バブルの後遺症として,満州などへの対外進出,日中戦争,太平洋戦争へとつながり,破滅的な結末を迎えることとなる.
さて,今回のバブル崩壊はいかなるパターンを示すのか?
まず2002年から2008年のリーマンショック以前までの景気拡大のネーミングから考えたい.この景気拡大は,いまだにネーミングが一定していない.私は,この景気拡大を「ネオコンバブル」と名付けたい.なぜなら,2002年からの景気拡大は,米国のネオコンの政策が大いに影響していたからである.
@ 米国の減税と財政の大盤振る舞いで米国消費者の購買力が向上した
A 一国単独主義により,敵味方がはっきりと分かれ,味方には恩恵が大きかった
B 小泉さんは,早期から米国の一国主義を援助し,それを国内の景気拡大に結び付けることに成功した
C ウォールストリート重視により,債権国有利な状況が生まれた(キャリートレード)
D 異常円安によって,輸出産業が活況となった
日本だけの事情ならば,「円安バブル」と名付けたほうがしっくりくるかもしれない.しかし,大本は,ネオコンによる様々政策が,有利に働いたのだから,ネオコンバブルと称したほうがよいと思う.
さて,このネオコンバブルは,今後いかなる経過をたどるのか?
リーマンショック直後は,100年に一度の不況といわれ,1929年の世界恐慌と対比された.しかし,今回は世界各国が金融政策と財政政策で協調行動をとったため,恐慌への突入は回避されている.しかし,約1年の世界協調対応も,ここにきて各国の体力や成績に差がみられるようになった.
▼ 欧州の危機は変わらず
日本のメディアやコラムニストは,米国の苦境ばかりを記事にしているが,当初から危機の深刻さは欧州のほうがずば抜けていた.このことは私も何回か記事にしている.オーストリアなどは,自国のGDPの8倍近く貸し込んでいて,その大部分が回収不能であった.米国は曲がりなりにも,不良債権の処理を断行しているが,欧州は手つかずである.
今年の春のG20において,IMFの強化と,東欧に対する融資が決定して,貸し倒れリスクの高い欧州の金融機関は,一息つくことが可能となったが,それにしても償却そのもは遅々として進んでいない.米国は,毎日のように地銀が倒産しているが,これは裏を返せば,不良債権処理のハードランディングが進んでいることを意味する.
米国は5合目、欧州はスタートライン
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/1130
国際通貨基金(IMF)が4月下旬に公表した「世界金融安定報告書」によると、2009年から10年にかけての欧州の銀行の損失見込額は9500億ドル(ユーロ圏7500億ドル+英国2000億ドル)で、米国の5500億ドルを大幅に上回る。銀行がコア自己資本比率4%を維持するために必要となる資本調達額は、米国の2750億ドルに対して、欧州は5000億ドル(ユーロ圏3750億ドル+英国1250億ドル)にもなる見通しだ。
米大手経済通信社ブルームバーグの集計でも、危機発生から足下までの銀行の実現損は、米州(北・中南米)が9700億ドルに達しているのに対して、欧州(英国も含む)は、半分以下の4500億ドルにとどまっている。 発足間もないオバマ政権が切れ目なく経済対策を打ち出したことで、米国の銀行の損失処理は5合目を越えつつある。これに対して、欧州はようやく長い山道の登り口に入ったところという印象だ。
欧州の対応は,不良債権処理を先送りして,景気対策によって,実体経済の回復を優先するというものだ.これは日本がバブル崩壊直後に採った対策と同じであり,非常に安易な策である.私はこれまでの記事で口を酸っぱくして主張してきたが「不良債権処理なくして景気回復なし」なのだ.
米国が銀行の倒産を含む暗いニュースに満ちているのは,不良債権処理を断行しているからである.田中宇氏は,このような米国の苦境については,積極的に記事にしているが,欧州のように地下深く潜在化した危機については,あえて記事にしないようである.これでは「表層しか見ていない」と評されても仕方ないではないか.
銀行の損失の半分が明らかになっていない可能性=IMF専務理事
[パリ 24日 ロイター] 国際通貨基金(IMF)のストロスカーン専務理事は、銀行の損失の半分が依然明らかになっていない、との見解を示した。また、IMFはユーロがやや高過ぎる可能性があると考えていると述べた。
25日に掲載される仏フィガロ紙とのインタビューの一部が24日公表された。
専務理事は銀行に関する質問に対し「公になっていない重要な損失が依然存在する」と指摘。「(銀行の損失の)50%がバランスシートに隠されている可能性がある。この比率は米国よりも欧州の方が高いとみられる」と述べた。
通貨に対する質問に対しては、通貨の強さについて最も苦情を訴えているのは欧州諸国と指摘。「IMFもユーロが恐らくやや高過ぎると考えている。しかし疑問の余地なく通貨の均衡が取れている水準を見極めることは非常に難しい」と述べた。
その上で「今後20年間、米中に世界的な議論を独占させたくなければ、欧州諸国は経済戦略をよりしっかりと確認する必要がある」と語った。(ロイター11月25日)
欧州は,EUという政治統合が不利に働き,域内でまとまって果敢な対策を打てない状況だ.そこで「EU大統領」の出現である.今回の選出プロセスは,透明化とは程遠い密室での選考であった.本命と言われていたブレアが破れて,ベルギーのファン・ロンパウ首相が選ばれた.これは,ロンドン金融街の代表で,伝統的な米英型政治勢力のブレアではなく,EU域内の調整型であるベルギー首相がふさわしいと判断されたからだ.
繰り返すが,欧州各国は金融機関の不良債権は処理せず,ローンの借り手であった東欧や南欧諸国自体をIMFなどを利用して救済することで会計処理も含め損失処理を先送りしている.しかし,このような方法が長続きするはずもない.現在の米国のように,大胆な不良債権処理を迫られる時期はそう遠くない.
これまではEU各国の足並みが揃わず,身動きが取れない状況だったが,EU大統領の新設と,権限強化で域内の一致団結した政策を可能とする手はずだったのだ.もし,EU大統領が強権的で強いリーダーだったら,あるいはオバマのように高い支持率と果敢な対応のとれる人物が選定されていたら,今後のEUを巡る評価は変わっていただろう.
ところが・・・
EU大統領選出 加盟国間の警戒浮き彫りに 「強い代表」排す
【ロンドン=木村正人】欧州連合(EU)の新基本条約、リスボン条約の発効に伴って新設される「EU大統領」(首脳会議の常任議長)と外交安全保障上級代表(外相)に国際的に無名の2人が選ばれたことに域内では失望感も広がっている。加盟27カ国の人口や経済規模はすでに米国を上回り、8カ国が加盟を希望して門前に列をなすEUだが、英紙フィナンシャル・タイムズは「EU自身が新たな船出を前に、(EU本部のある)ブリュッセルへのさらなる権限委譲を拒否してみせた」と指摘した。
「欧州と話をしたい時、いったい誰に電話すればいいのか」
1970年代に米国の国務長官を務めたキッシンジャー氏がこうぼやいた話は有名だが、現在も状況は変わらない。
EU同様、ブリュッセルに本部を置く北大西洋条約機構(NATO)幹部は「ライス氏が国務長官に就任した際、EUに加盟する25カ国(当時)から昼食か夕食か、紅茶だけかという違いこそあったものの、会談を申し込む電話が一斉にかかった」と打ち明ける。
このため、リスボン条約では、米中首脳と直接交渉できるEU大統領と上級代表を選ぶ構想が描かれていた。
しかし実際は、「影響力のある指導者」より、域内の主要国が影響力を行使しやすい指導者が選ばれ、統合強化への警戒が加盟国間に根強く残ることも露呈した。
ミリバンド英外相は、一時、最有力候補と目されたブレア前英首相を念頭に「EU大統領にはワシントンや北京の交通を止めるぐらいの大物が必要」と訴えた。しかし、「ファンロンパイ大統領」と「アシュトン上級代表」の組み合わせに「彼らの出身地でも交通を止めるのは至難の業だったろう」(フィナンシャル・タイムズ紙)との皮肉も聞かれた。
加盟国間のポスト争いは今後も続きそうだ。フランスは欧州委員会の経済関連委員ポストを、ドイツは欧州中央銀行(ECB)の次期総裁を狙っているとされ、英国に上級代表を譲ったのはこのためだとの観測もある。
英誌エコノミスト前編集長のビル・エモット氏は「欧州経済は今後も成長するが、(欧州が)人口構成が若く国民国家の強さを持つ米国に匹敵するような時代は来ないだろう」と、EUが米、中と並ぶ国際社会の主要プレーヤーに躍り出るとの見方に疑問を示した。(産経MSN)
この大統領が,独仏を説得して中東欧の不良債権処理にカネを出させるのは無理であろう.そもそも銀行のストレステストでさえ満足に受けさせられないEUに,これ以上のまとまった行動は無理である.一応,EUは10月に域内22行のストレステストの結果を報告したが,はっきり言ってお笑い草であった.短いレポートには,「EUの銀行は健全である」と結論づけられていた.これはG20において米国のように,銀行のストレステストが必須であることを国際的に確認したため,形式的に体裁を保ったに過ぎない.それはECB自体が認めている.
銀行への健全性審査を強化する必要=オランダ中銀総裁
[アムステルダム 25日 ロイター] 欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのウェリンク・オランダ中銀総裁は、金融危機によって、銀行に対する一段と厳格かつ適切なストレステスト(健全性審査)を一層実施する必要があることが示されたとの認識を示した。
総裁は講演の準備原稿で、監督当局にとってシステミックリスクについての見識を深めることは重要だと指摘した。
田中宇氏が以前に記事にしていたが,世界は統合よりも分裂へ向かっている印象がある.たとえば米国の連邦制にしても,国内の利害対立がむごく,連邦離脱の議論が見られる.そして,EU統合による経済効果で我が世の春を謳歌していた欧州も,域内対立が深刻化し,その対立を乗り越えようと,もがいているが,私の見たところ,むしろ事態は悪化している.これから危機が表面化した時に,EUは有効な対策をとれないであろう.
そして分裂の最有力候補が中国である.中国は高い経済成長によって,国内の統一を維持し,権力闘争による不安定化を予防してきたが,ここにきて史上最大の経済対策が息切れを見せ始めた.来年は上海万博を控えているが,先に富める華南江南地区は,均衡ある成長を掲げる現政権に反発している.ここで一気に経済成長率が落ち込んだら,中国は南北分裂へ向かうだろう.実はそのことを望んでいるのは,他ならぬ中国人自身である.広東省政府や上海市は,自立を望んでいるのだ.
統合から分裂・・・それが今回の世界恐慌のキーワードであろう.多極化とは,米国一国主義からの決別だけではなく,各地域においてもまた,細かく分裂することを意味する.それが本当の「多極化」である.
いや,むしろ多極化ではなく,世界は分裂化していると表現した方が適切であると考えられる.

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