今日は彩の国さいたま芸術劇場で、蜷川幸雄演出&平幹二朗主演の「リア王」を見てきました。
もともと1/20のチケットを取っていたのですが、具合が悪かったので母に譲りました。母は最近劇場や映画館で寝てしまうことが多く、このときも爆睡してしまったそうです。
今回は見るのを諦めようかとも思ったのですが、「蜷川&平コンビは今回が最後かもしれない」という噂を聞き、長年の平幹ファンとしては行かねばなるまいと思いました。
ヤフオクで落札しました。10000円のS席を5000円で買えました。楽日のチケットです。蜷川&平幹を見られるのはこの日が最後かもしれない!と思いました(大阪公演ありますけど)
一昨日は大雪が降り、そんな天候では行けませんでしたが、幸い今日は快晴で、病院で3日間静養していたので体力もありました。
今年初の電車に乗って行ってきましたよ、与野本町まで! しかし相変わらず何にもないところですよね。
さて、肝心の感想です。
平幹ワンマンショーという感じで、平さんの大ファンの僕は大いに感動しました。ただ、持病(ここ半年ほど)の目のショボショボが出て、舞台をしっかり見られませんでした。せっかくの名舞台が台無しでした。それに前半1時間半でかなりくたびれてしまい、休憩中に帰ろうかという気にもなりました。しかし平さんの勇姿を見逃すわけにはいかないので何とか頑張りました。
俳優はほぼみなさん素晴らしかったですね。問題は懸念していた内山理名と渕野俊太。内山理名はもともと声量が小さいのでしょう、常に声を張っているのですが、セリフが自分の言葉になってません。それに抑揚がなく一本調子で、感情表現が下手なので、セリフが聞きづらかったです。
渕野さんは平さんの愛弟子で、平さんの舞台には必ず出てますが、凡庸な俳優だと思います。今回も感情表現が下手で、セリフが空ろに響きました。
でもそれ以外のみなさんは素晴らしかったです。
平さんはセリフ回しが国宝級の芸になってます。王としての貫禄十分、そして老いの醜さとかたくなさを実にはっきりと表現していました。
平さんに続いてはエドガーの高橋洋とグロスターの吉田鋼太郎が助演男優賞ですね。後半にリアとエドガーと目をつぶされたグロスターが荒野をさまよう場面は白眉で、これほどの役者で見られることの幸福を感じました。哀切というのか、胸につまる場面でした。目のトラブルがなければ涙を流していたはずです。
ゴネリルの銀粉蝶、リーガンのとよた真帆、エドマンドの池内博之も役を完全に自分のものにしていました。特にとよたさんは特別声を張ってないのにセリフが明瞭に聞こえて素晴らしいと思いました。
この三人はいわば悪キャラですが、実に人間味豊かに演じてました。
ケントの瑳川哲朗はやはり蜷川組常連だけあって安心感がありますね。ただちょっと声を張りすぎかなと思いました。
道化役の山崎一も立派でした。全然笑えないセリフばかり吐く道化なんですが、シェイクスピアの難しいセリフをよく咀嚼してました。
で、肝心の演出なんですが、これがまずかったです。最近の蜷川幸雄は演出力の衰えを感じてしまいます。
今回も松の絵が描かれた能舞台のようなセットでした。それに所々能楽のBGM(横笛、小鼓、地謡“いよ〜”ってやつ)を使ってました。エドガーとグロスターが荒野を歩く場面にも使ってましたが、能の雰囲気を出すことで様式美と和の雰囲気や静けさを表現したかったのでしょうか。まったく場面と合ってませんでした。
能楽はラストシーンにも使われてました。前回RSC(ロイヤルシェイクスピアカンパニー)でリア王をやったときの演出を踏襲しているようですが、イギリス人キャストで能楽を使うとエキゾチックな感じがしていいかもしれませんが、今回は違和感がありました。
それに嵐の場面で上からドンドン落ちてくる石のかたまり。なんですか、あれ。完全に演出力の低下を露呈してました。
舞台に敷いた土や役者たちがみな着ている毛皮のコートもあまり意味があると思えませんでした。最初着ていた毛皮をやがてみな脱いでいくのは、人間は地位や身分を毛皮のように纏っているけど、毛皮を脱いだら裸の獣と同じ、とでも言いたかったのかなぁ。
残念ながら時間がなくなりました。
今回は平さんの大熱演に一番感動しました。74歳ですからね。率直に言うと、生きる勇気をもらいました。平さん演じるリアのように、運命に翻弄されても一生懸命に生きてゆきたい、そう思いました。
高橋洋、気違い乞食の演技が素晴らしかったです。吉田鋼太郎の声をひそめた演技、素晴らしかったです。
それに比べて蜷川幸雄の演出力にまた疑問符を感じた舞台でした。

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