自作小説目次集 「クラーケン」/「白石経一の一生」/オルウェスノ風ハ哀愁ヲ運ブ/Fiction Of Nonfiction/ 神託/

 

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「オルウェスノ風ハ哀愁ヲ運ブ」完結しました→再改編作業を行う予定です。

新連載は「Fiction of nonfiction」です。
2013年7月23日 第十話更新しました。
2013年7月25日 第十一話更新しました。
2016年9月9日 新作・神託 一気公開しました。

自作小説目次一覧
クラーケン⇒完結
白石経一の一生⇒完結
オルウェスノ風ハ哀愁ヲ運ブ⇒完結
Fiction of Nonfiction⇒最新11話
神託⇒完結
小説は↓から始まります。
以上
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2016/9/9  1:18

神託 最終話  神託

――老人は一通り語り終えると、大きくため息をついた。私は出されたお茶を飲むのも忘れて老人の話に聞き入っていた。


「のどが渇いていないか?」


老人に促され、自分の渇きに気付いてお茶を飲みほした。空になった容器を机に置くと、老人がゆっくり話し始めた。


「この国も随分変わった。ケサンの統治が始まり、トニャックの進言で何度かガバン討伐隊が編成されたが、ガーンズが死に、オルウェイが死に、ほかにもたくさん死んだ。


国内で反戦運動が起こったのもそのころだ。すでに国内へのガバン人流入は止められなくなっていた。


騎士王ドノバン、腹心ランバートは討死、策士クレート、大領主マーカスは捕らえられ、処刑直前に釈放されて対ガバン人外交を任された。


猛将マガランとルレンは国王ドルウィックの死を察して敵の包囲を蹴散らし、サグソバの元へ戻ろうとしたが、ルレンが討ち取られ、マガランは逃げ延びたものの手傷を追って戦列復帰は不可能だった。

忘れ去られたものに仕えた者たち、彼らの存在が今のこの国を作ったともいえるな」


老人はそう言ってゆっくりとお茶を飲んだ。


異民族にあれだけ不寛容だったローランド王国は、第一次征伐の失敗と、第二次征伐の失敗の後、ケサン王の暗殺が起こって、甥のマクル・ローランドが王位につき、クレート、マーカスらの釈放によって和平政策に切り替えた。


ア―マルクの神託は以前ほど重視されなくなり、それを認めない一部の者たちはローランド王国内で独立し、小国家ア―マルク教国を形成している。


老人の言う通りローランド王国は変わった。寛容化により北部諸国とも和解し、ハルバス帝国に対する共同戦線を張り、侵攻を阻止し続けている。私のような異民族がこの国で調査活動ができるようになったのも、このような寛容化のおかげである。


老人の話した内容は、もはや諸外国にも知られているローランド王国の第一次異民族征伐の話だが、我々が教科書で習うものは、ただ単に異民族に不寛容なセルク人国家ローランド王国が、異民族を追い出そうとして失敗した程度の話でしかない。


当時の国王はケサンと記録されている。
その歴史の中に、本来の国王に関わるドラマがあったことは、外国はおろか、ローランド国内にも知られていないことのようだ。


史料が残っていないので、真実かどうかはまだ疑わしかったが不思議時にならなかった。老人の語りが私にそれを真実だと思わせていた。


大変貴重な話を聞かせてもらったと老人に礼を言った。



老人はにこやかにうなずくと、忘れられた人物の話を、最後に誰かへ話しておきたくてね。と言った。


なんの最後ですか?と尋ねたが、老人は答えてくれなかった。


行くところがあるということで、今日はありがとうと右手を差し出してきた。私は老人の手を握り返した。深くしわの刻まれた、大きな手だった。


私はふと老人の話とのつながりを考えてみた。どうしてこの老人はだれもが忘れた人物の話を、このように細かく知っているのだろう。ローランド王国による第一次異民族征伐は、もはや150年ほど前の話だ。


もしやご老人は騎士でしたか? そのお話の中に出てくる騎士のご子孫とかと言ってみたが、老人は笑ってこう答えただけだった。


「真実は神のみぞ知る。私の神も知っているし、あなたの神も知っている」
 

そういうと老人は手を放して、それまでかぶっていなかったフードを深くかぶった。


「今日はあなたに出会えてよかった。ありがとう」


そういうと軽く礼をして、老人は食堂の喧騒に消えて行った。
 

私は何か不思議な気分でしばらくその場にたたずんでいた。「私の神」という言葉を何度か反芻してかみしめてみた。
 
私の神は、私にどういう役目を命じているのだろう。もしかしたら国土地理院からの「世界地誌」編纂命令は、神に与えられた私の使命なのかもしれない。そう考えて、ふと笑った。
 

もしこの「世界地誌」編纂のための調査がそうなのだとしたら、いや、そうでないとしても今与えられたことをこなすことにしよう。自分が信じた道が、すなわち「私の神」の神託なのだ。


これは使えるフレーズだなと一人でニヤニヤしていると、先ほど老人のもとに案内してくれた宿主がそばを通った。私はお礼を言いたくて宿主を呼び止めた。


「すみません。先ほどはどうも、ご老人から貴重なお話をお聞きすることができました」


そう伝えたのだが、宿主は怪訝な顔をしていた。私は何かおかしなことを言っただろうかと思
い、先ほど私に話したいことがあるといって、席まで案内していただいたご老人ですよというと、宿主はすみませんという言葉に続けてこういった。


「貴方にそのようなご案内をした覚えがないのです」


私は驚いた。確かに案内してもらったのはその宿主だったのだ。


そのことを伝えても宿主は不思議そうな顔をしている。埒が明かないので一緒にいた仲間たちに確認してもらうことにした。すると、仲間たちが口をそろえて言うのは、お前が急に、この国の歴史で面白い話をしてくれる老人がいるんだが一緒に来ないかと言い出して、誰もいかないと言ったら、後悔するなよなどと言いながら席を立ったんじゃないか、ということだった。



私は拍子抜けしてしまった。私の中では確かに宿主に呼ばれ、あの老人に会っていたのだが、どうも実際は私が勝手に席を立ち、老人に会いに行ったらしい。酒も入っていたが記憶が飛ぶほど飲んではいなかったはずだった。


「酔っぱらってたんだよお前は。宿主に迷惑かけるな」


仲間のからかいで急に恥ずかしくなり、宿主に謝ってその場はおさめた。


セルク人の宿主は「悪魔にとりつかれたんですかね」と言って笑っていた。


仲間たちは笑っていたが私はあまり笑えなかった。



ここに書いてきたことは「世界地誌」の編纂調査で立ち寄ったローランド王国で確かに聞いた話だ。


酒を飲んでいたから信じてもらえないのも無理はないが、私は確かに老人からこの話を聞いた。そして老人と交わした握手の感触も覚えている。
 

この出来事は最後まで解決せず、反逆王とされたドルウィック・ローランドについても史料が出てこない。


腹心ランバートらについては史料があったが、ドルウィックに関わる部分が見事に見つからず、すべてケサンの廷臣となっている。


彼らの子孫を探してみたが、すでに断絶するか、存続していても史料が満足に残っていなかった。トニャックらによって焼かれたのかもしれないと思った。命を落とした彼らの死も、第一次異民族征伐で討死としかなっていない。


私は今、調査活動を終えて「世界地誌」の編纂作業に入っているが、なかなか骨が折れる。しかし、これは「私の神」が与えた「私の宿命」なのだと信じてこれをやり遂げるつもりだ。


ドルウィック王の謎も、いずれ解明できればいいと思う。この使命が終われば、きっと「私の神」は次の使命を与えてくる。たとえそれがどんなものであろうと、私はやり遂げるつもりだ。
 

「神の存在は人間一人一人が決める」。万物に対して唯一絶対の神は存在しないのだと書くと、既存の宗派、とりわけアーマルク教会からは命を狙われそうだが、そう主張することは「私の神」による「私への神託」なのだと信じたい。


それぞれの神、それぞれの神託。ドルウィック王は常に忠実であろうとし、忠実でないとされた。私はどこまで忠実でいられるだろうか。


追記:そういえばあの老人がフードをかぶる際に少しだけ見えた手の甲には、大きな傷跡があった。長いひげを生やし、気苦労からか深く顔に刻まれた皺……                   
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2016/9/9  1:16

神託 第十八話  神託

一人の男が、頼もしい部下達と、優秀な「悪魔」達を前にして、迫りくる黒色旗を眺めていた。


黒髪で、黒く長いひげを生やし、気苦労からか、すでに顔に深いしわが刻まれていた。赤いマントを羽織り、顔は甲冑で覆わず、アーマルク神のエンブレムを首から下げていた。王者の風格が自然と漂っていた。


その男は、顔をまっすぐ前に向けて、命令を出すタイミングをうかがっていた。


「神の存在は人間一人一人が決める」


 何度か同じ言葉を口にしていた。それまでたった一人の神を信じていた男が、その神に背いたとして同じ神を信じる者に殺されようとしている。


「一人一人の中に」


迫る黒色旗と、自軍に上がる白色旗を見てふと笑いがこみ上げてくるのがわかった。


「私の神は、お前たちの神ではなかったようだな」


誰に言うとでもなく言ったが、隣にいた将兵が笑ったのが聞こえた。彼の顔を見ると、恐怖か期待かわからないような顔をしていた。


「怖いか?」


と尋ねると、まさかと返ってきてそれだけだった。男はにやりと笑うと


「私もだ」


といって、息を大きく吸い込んだ。名主セリックの旗が黒色旗を伴って迫ってくる。


お前たちの神と私の神、どちらが勝つか試してみるか。


心の中でそうつぶやき、男は馬を疾駆させた。






元ローランド国王。不迷王にして反逆王、ドルウィック・ローランド。名主セリックを自ら討ち取り、城兵の放った弓が右手に命中したところを目撃されたのを最後に目撃証言が無い。


乱戦の中、国内に侵入するも討死したもよう。国内で遺体とされるものが発見される。背信者としてその存在は抹消され、人々はドルウィックの名を忘れていった。

続く⇒最終話
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2016/9/9  1:13

神託 第十七話  神託

国王は自分が置かれている状況を瞬時に把握した。同時にサグソバの言葉を思い出していた。


「神の存在は人間一人一人が決める……」


黒色旗を眺めながら独り言をつぶやいていた。策士クレートは悲しみとも怒りともつかない顔をしていた。


国王は城門に動きがあるのを見つけた。竜の印をつけた旗。名主のセリックが率いる騎士団だった。よく見ると帰国させた僧侶クレイドル、鋼鉄ガーンズ、獅子王オルウェイの騎士団らしき旗印も見えた。


「やつら。我々を殺すつもりですよ」


クレートがかすれた声でいった。同胞を殺すのか。ともつぶやいていた。


国王はしばらく遠くに見える騎士団の様子を見ていたが、やがて全員を呼び集めろと言って陣に引き下がった。クレートが後に続いた。

 

国王は彼のもとに集っていた騎士たち、サグソバからの大使猛将マガランとルレンも交えて会談を行った。


国王は自らが国に反逆者とされたこと、無理に自身に付き従う必要はないこと。自身の私兵も含めて国の方針に従うものは黒色旗を掲げてセリックら討伐隊に合流するよう告知し、マガランとルレンはサグソバの元に戻り、トニャックらの侵攻に備えるか西方へ逃げ延びるようにということを伝えた。


重苦しい空気の中、最初に口を開いたのはマガランだった。


「我々は国王サグソバよりあなたのもとでローランド王国と親善を結ぶ努力をするように仰せつかっている。それが私の使命だ。達成するまでサグソバ王の元に戻るつもりはない」


ルレンが後に続く。


「これは侵攻ではない。私は「あなたを守る悪魔」だ」


セルク人通訳が彼らの言葉を伝えた。それを受けたのは騎士王ドノバンだった。


「私は国王の下で騎士王になったものです。国王に従います」


続いて大領主マーカス。


「トニャックは個人的にいけすかんのでね。それに今だから言いますが、私は領内で悪魔どもを内緒で働かせていました」


マーカスの言葉には全員が驚いた。ローランド王国から「悪魔」ガバン人は全ていなくなったと信じられていたからだ。


ここでとんでもない告白をしたマーカスに少し笑いが起こった。場が少し和んだところでクレートが続く、


「私は悪魔たちにも人間のような優しさがあることを知りました。そして奴らの王は、我々は「人間」といいました。姿かたちが似ているだけではないのかもしれません。私は奴らを……彼らが人間と思えるで、彼らと戦うのは控えたい」


クレートはそれ以上何も言わなかった。国王は士官たちの意見を一通り聞いた後、兵卒ら全員
に、将軍たちに伝えたのと同じ内容を伝えた。黒色旗を携えて城へ向かうものはほとんどいなかった。



「いよいよか」

会談を終え、陣の外に出ると、名主のセリックが率いるメイソン騎士団を先頭に、討伐軍が国王のもとへ向かってきているのが見えた。
 

腹心ランバート、騎士王ドノバン、大領主マーカス、策士クレート。彼らはそれぞれの部下を率いてクレートの指揮のもと討伐軍を迎え撃つように布陣した。猛将マガランとルレンはそれぞれ国王の指揮下にはいった。

続く⇒第十八話
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2016/9/9  1:10

神託 第十六話  神託

クレートからの報告を受けた国王は盗賊にやられたか、と言ったがランバートは嫌な予感がしますと答えた。


クレートも何やら不穏な空気を感じるといって偵察を出すよう進言してきた。


国王は当初味方を疑うのかと怒りをあらわにしたが、クレートの真剣さに押されて偵察を許可した。
 

国王は一向に停止を命じ、偵察が戻ってくるまで待機するように伝えた。


クレートは部下の中から俊足のもの数名を選んで王国の様子を見に行かせた。


命令を受けた偵察兵は城壁に向かって草原を駆けだした。


そして二度と戻ってこなかった。


国王はクレートの隊に合流し、国の様子を直接見ることにした。


ランバートを伴い、クレートの陣に着くと、クレートが浮かない顔をしていた。


どうしたと尋ねると、少し迷ったような様子を見せてからクレートが答えた。


「城壁に黒色旗が上がっています」




ローランド王国は国旗が二つある。


一つは白色旗で、もう一つは黒色旗だ。


建国時、アーノルド・ローランド伯爵は白色旗を作り、代々国の旗印として受け継ぐようにといった。


同時に、ローランド伯爵は黒色旗を作らせた。


その意図は、もし、白色旗を使う王が国を滅ぼしかねないと思った時、その廷臣たちは黒色旗を掲げ、国王を放逐し、新たな国王を立て、以後の国旗を黒色旗とせよ。


また、その逆に黒色旗の王が国を滅ぼしそうになれば、以前の白色旗を再び掲げ、黒色旗の王を放逐せよというものだった。


これは、ローランド伯爵が神から受けた神託に基づいていて、廷臣による王の更迭を神の名のもとに認めたものだった。狂信的なローランド王国民はこの考えを遵守することを是としていた。


宰相トニャックも忠実な国民だった。


サグソバとローランド国王の会見を目にしてわめき散らした例の僧侶、彼はランバートの伝令より先に王宮へ帰還し、トニャックらに事の次第を報告した。これは神に対する反逆だ。国王はこの国を亡ぼすつもりだ。というわけである。


トニャックは「追放交渉」の段階で、虐殺を許さない国王に不満を感じていたこともあり、この報告をいい機会だと判断した。  


トニャックは異民族の存在を全く認めていなかった。奴らは人間のふりをして我々の権利を奪い取りに来ている。奴らは我々よりも数を増やし、我々を追い出すだろうというのが彼の主張だった。


「国王め、敵地で悪魔に食われたか」


トニャックは文部大臣キシュレイと軍務大臣カーマックを呼び寄せ、新国王としてローランド国王の弟、ケサン・ローランドを擁立、黒色旗を掲げて反逆の白色王を駆逐せよと命じた。


その動きは実に手早いものだった。国王の弟ケサンは領主としてのんびりした生活を送っていたが、気が付くとトニャックらに王宮へ連れられてきていた。


兄の反逆を聞いてケサンは驚いた。驚いたが兄に対する哀れみはなかった。彼が放った言葉は、


「兄が悪魔に食われたのならば、殺して楽にしてやらねばならぬな」


であった。

続く⇒第十七話
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