2017/2/21

春の訪れ  公演情報

桃の節句も間近となり、日ざしの明るさに春の気配を感じるようになりました。
皆様にはお変わりなくお過ごしでしょうか。
2月1日の私の誕生日には、たくさんのメッセージやお花なども頂戴し、有難うございました。今月は東京二期会とグラインドボーン音楽祭との提携公演『トスカ』の公演が東京文化会館で行われ、ロビーでは懐かしい顔ぶれにもお会いすることが出来ました。3月12日の深夜には、はやくもNHKプレミアムシアターで放送が予定されているようです。

グラインドボーン音楽祭との提携公演となる7月公演『ばらの騎士』も最新リーフレットが完成しました。
6月に私が演奏する新日フィル定期演奏会「天地創造」も発売開始となりました。
https://www.njp.or.jp/archives/930


■放送予定
NHK-FM  N響 ザ・レジェンド
http://www4.nhk.or.jp/nkyolegend/

2017年3月11日(土)午後7時20分〜午後9時00分

- ドボルザークのレクイエム(1990年) -
岡本由季
【解説】池辺晋一郎

「レクイエム 作品89」 ドボルザーク作曲
(1時間32分10秒)
(ソプラノ)佐藤しのぶ
(アルト)伊原直子
(テノール)川上洋司
(バス)多田羅迪夫
(合唱)国立音楽大学
(管弦楽)NHK交響楽団
(指揮)ハインツ・ワルベルク
〜NHKホールで収録〜
(1990年12月12日)
http://www3.nhk.or.jp/netradio/player/index.html?ch=fm&area=tokyo
らじる★らじるでもお聴きいただけます。


■新日本フィルハーモニー交響楽団 2016/2017シーズン
定期演奏会トパーズ<トリフォニー・シリーズ> 第574回
ハイドン:オラトリオ『天地創造』Haydn: Die Schöpfung  
☆6月2日(金)19:00開演(18:15開場)☆6月3日(土)14:00開演(13:15開場)
指揮:鈴木秀美 新日本フィル
中江早希[ソプラノ]櫻田亮[テノール]多田羅迪夫[バス]
コーロ・リベロ・クラシコ・アウメンタート[合唱]
*託児サービスあり
お問合せ 新日本フィル・チケットボックス 03-5610-3815


■二期会創立65周年・財団設立40周年記念公演/
グラインドボーン音楽祭との提携公演
リヒャルト・シュトラウス『ばらの騎士』
オペラ全3幕 日本語字幕付き原語(ドイツ語)上演
台本: フーゴー・フォン・ホフマンスタール
東京文化会館 大ホール
2017年7月26日(水) 18:00/ 27日(木) 14:00 /29日(土) 14:00 / 30日(日) 14:00

開場は開演の60分前 上演予定時間:約4時間(休憩2回含)

指揮:セバスティアン・ヴァイグレ
http://www.sebastianweigle.com/
演出:リチャード・ジョーンズ・読売日本交響楽団 二期会合唱団

(出演 7月26日・29日)林正子 / 妻屋秀和 / 小林由佳 / 加賀清孝 / 幸田浩子 / 栄千賀 / 大野光彦 / 石井藍 / 斉木健詞 / 吉田連 / 畠山茂 / 竹内公一 / 菅野敦 / 大網かおり / 松本真代 / 和田朝妃 / 藤井玲南 / 芹澤佳通 / 大川信之 ほか

(出演7月27日・30日) 森谷真理 / 大塚博章 / 澤村翔子 / 清水勇磨 / 山口清子 / 岩下晶子 / 升島唯博 / 増田弥生 / 清水那由太 / 土師雅人 / 松井永太郎 / 加茂下稔 / 前川健生 / 田崎美香 / 舟橋千尋 / 金澤桃子 / 斉藤園子 / 加藤太朗 / 新津耕平  ほか


http://www.nikikai.net/lineup/rosen2017/index.html 
『ばらの騎士』公演詳細

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2017/1/22

元気になりました  雑感

久しぶりのブログ更新です。
2017年は、私にとって節目の年だと思っています。

東京藝大入学のため、香川県坂出市離れ上京上してから、はや半世紀以上が過ぎ、その間、イタリア、ドイツ時代を経て、演奏を通じ、国内各地のみならず、ポーランド、フィンランド、イギリス、中国(北京、上海)、台湾など、いろいろな国でたくさんの出逢いがありました。

毎年、12月は一年うちでも最も忙しく、慌ただしい時期ですが、昨年末に高松で体調を崩し、あらためて健康のありがたさを思い知りました。
その間、親しかった方の急な訃報などもあり、生かされていることへの感謝と自分にとって積み重ねてきた演奏生活の大切さ、そして今後自分にできることは何かを考えています。

ご心配をおかけしましたが、お蔭様で体調も快復しすっかり元気になりました。
休養にかこつけて年賀状など失礼してしまった皆様には申し訳ありませんでした。

食事にも気をつけるようになり、体重も理想体重まであと一歩まで減らすことが出来たので、声の状態や体調全般が改善され、医食同源を実感しています。

自転車でサウナに入りに行ったり、買い物をしたりで、脚力が戻ってきたし、太腿の太さも回復してきているようです。水泳も200メートルから再開し、徐々に長距離を泳ぐようにしています。

まだまだやりたいことがたくさんありますから、これからの未来に思いを馳せ、夜更かし睡眠不足の長年の習慣も反省しながら日々精進してゆく所存です。

ご縁のある皆さまの健康とご多幸を祈りつつ。

今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。




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2016/12/11

インターネットラジオ  音楽

林田直樹のさんの「カフェ・フィガロ」 
多田羅迪夫登場回 更新前にお聴きください。
https://www.blue-radio.com/program/cafe/
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インターネットラジオで、日曜夜6時の更新です。
林田直樹さんとは長いお付き合いになり、映画監督の故実相寺昭雄監督演出のオペラ『魔笛』の際には、監督もまじえていろいろ語り合ったことも懐かしい思い出です。

この「カフェ・フィガロ」、私は9月に2回出演し、林田さんと楽しい音楽談義を
させていただきました。放送日から3ヶ月間公開されていて、私の出演回バックナンバーの2回目がまだかろうじて聞くことができます。この回では「第九」第四楽章の歌いだし部分の聴き比べなども放送しています。3か月過ぎると聞けなくなってしまうので、お時間あればお聴きください。
※無料ですが会員登録が必要になります。


放送内容▽
後半の今回は、ベートーヴェン作曲の『交響曲第9番「合唱」第四楽章』の最初のバリトンソロの聴き比べからお話をお聞きしていきます。これまでの300回以上の公演で歌われた多田羅さんに歌う前の心境や指揮者によっての違いなど…様々なお話を伺いました。

お蔭さまで11月公演『ナクソス島のアリアドネ』
eぶらあぼ ゲネプロレポート
http://ebravo.jp/archives/30683

http://ebravo.jp/archives/30762
ご来場くださったお客様、関係者の皆様に深く御礼申し上げます。
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演出のカロリーネルーバーと。

今、故郷の香川県におります。東京にくらべ空気が澄んでいるような気がします。

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2016/11/16

水曜エッセー「オペラ羅針盤」第5回  文化・芸術

2016年10月16日から5回にわたって水曜エッセー「オペラ羅針盤」を、「しんぶん赤旗 文化・学問欄」に掲載して頂きました。

数年前から時々、作曲家についての原稿を依頼され書いたのがご縁で、「オペラについて、何か面白いエッセイを書いてください!」と、今回の連載のお話を学術・文化部の大井民生さんから頂きました。短い随想ってなかなか難しいものですね。あれも書きたい、これも書きたいと、つい長くなって削るのに苦労しましたが、とても楽しい経験でした。
さて、今月は、いよいよリヒャルト・シュトラウスのオペラ『ナクソス島のアリアドネ』(11月23日・24日・26日・27日 於 日生劇場)の上演が迫ってきました。
エッセイにも記しましたが、ヴィジュアル的にも声楽的にも身体能力的にも非常に優れた若いオペラ歌手が揃っています。その中に加わることの出来る喜びをかみしめながら、公演へ向けて、日々の稽古に励んでいます。

皆様、ぜひ劇場へお越しいただければ幸いです。私はシングル・キャストなので全日出演しております。

【関連WEBページ】
オペラの散歩道〜二期会blog
11月公演『ナクソス島のアリアドネ』〜執事長役・多田羅迪夫インタビュー
才能豊かな新しい世代の歌手たちとともに
http://www.nikikai21.net/blog/

http://www.nikikai.net/lineup/ariadne2016/index.html 公演詳細
東京二期会オペラ劇場 NISSAY OPERA 2016 提携
リヒャルト・シュトラウス作曲『ナクソス島のアリアドネ』
プロローグと1幕のオペラ 日本語字幕付き原語(ドイツ語)上演
台本:フーゴー・フォン・ホフマンスタール
指揮:シモーネ・ヤング  演出:カロリーネ・グルーバー 管弦楽: 東京交響楽団
2016年11月23日(水・祝) 17:00  24日(木) 14:00  26日(土) 14:00  27日(日) 14:00
会場: 日生劇場
プロローグ40分  休憩20分 オペラ85分  2時間25分
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オペラ羅針盤 多田羅迪夫(たらら・みちお 声楽家・東京藝術大学名誉教授)

オペラ歌手は太っている方が良いのか?

ドイツの歌劇場の専属歌手時代を経て、30歳前半で帰国した私は、日本国内での仕事にも恵まれ、幸いなことに途切れることなく 現在も演奏を続けています。歌手は自分の身体自体が楽器ですから、身体全体が健康である事が一番大切です。特に心肺機能と、声帯の健康を維持する事が重要だと分かっていても、それがおいそれとはいかない事も身にしみて感じています
私は学生時代には痩せていて胸幅も薄かったのですが、ドイツ滞在中にプールに通って身体を鍛えた結果、胸囲が15pも増え、従来に比べて歌う事が随分楽になりました。つまりこの経験は、歌手にとって肺機能が優れた方が有利である可能性を示唆しています。
また、役作りで過度なダイエットをした際には、一時的に声までも痩せたと体感したことから、「太っている方が声帯も厚みを増して、結果的に充実した声が出しやすい」と感じる経験もしました。しかし、世界的にもスレンダーな体型を保ちつつ、素晴らしいオペラ歌手である方たちが多い事も事実ですし、舞台姿が美しいに越したことはないのですから、声のためとはいえ、むやみに肥満を推奨してはならないのです。
身近な例をあげると、私の出演する二期会オペラ公演「ナクソス島のアリアドネ」(11月23日・24日・26日・27日 於 日生劇場)には、ヴィジュアル的にも声楽的にも身体能力的にも非常に優れた若いオペラ歌手が揃っていて、日本のオペラ界の人材が育ってきていることを実感します。
来年7月に東京二期会は、グラインドボーン音楽祭との提携公演で、R,シュトラウス「ばらの騎士」を上演し、私は公演監督を務めます。「オペラ」という芸術は、その発祥がイタリアであり、ヨーロッパを中心に発展していったとしても、今や世界共通の総合芸術として認知され、アジア各国に国立歌劇場が次々と建設されるまでになっています。日本の「二期会」というオペラ・カンパニーが、世界のオペラハウスと共同制作や連携公演を日常的に行っているのです。私の拙文を通して、一人でも多くの方々が「オペラ」に興味を持って、劇場にお越し下さることを祈って筆を置きます。

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2016/11/16

水曜エッセー「オペラ羅針盤」第4回  文化・芸術

オペラ羅針盤 多田羅迪夫(たらら・みちお 声楽家・東京藝術大学名誉教授)

オーケストラ・ピットの話

ヨーロッパには各地にロココ様式の室内装飾で飾られたオペラ劇場が多く残されています。客席内部は馬蹄形になっていて、多くは中央の平土間席があり、周りに壁に沿って2、3階の観客席を備え、その2階正面にはロイヤル・ボックス(王侯席)が造られていて、オペラ芸術のパトロンが王侯貴族自身であった歴史を知ることが出来ます。
オペラの舞台と客席との間には一段と低くなった窪みがあり、そこにオーケストラ団員が譜面台の前にそれぞれの楽器をかかえて座っている空間があります。これが「オーケストラ・ピット」又は「オーケストラ・ボックス」と呼ばれる場所。多くは壁も床も真っ黒に塗られていてとても暗いので、ドイツの劇場で「オーケストラの墓穴」と呼ぶくらいです。ところがオペラが始まると、そこからは美しいオーケストラによる音楽が奏でられ、その伴奏によりオペラ歌手たちが歌うのです。
なぜオーケストラ・ピットは、客席平面でなく、建築構造的にもわざわざ面倒な一段と低い深い場所に造られたのか?理由は、二つ考えられます。
一つには、オーケストラ奏者が客席平面上の舞台前面で演奏すれば、舞台上の出来事を鑑賞するのに視覚的に邪魔。二つにはオーケストラの規模が大きくなればなるほど、歌手の声をかき消す可能性が出てきます。オペラ発祥の初期であるルネッサンス期にはほんの数名に過ぎなかった奏者の数も、弦楽器が増え、木管楽器(オーボエ、フルート等)が加わり、金管楽器(トランペットやトロンボーン、ホルン等)が加わる様になれば当然、音量もかなりのもの。その音量と歌手の声とのバランスを取るためにもオーケストラ・ピットは深く地下に潜ることになったと考えられます。
その頃に、前回お話したカストラート歌手たちが、専門化した高い技能をもって、その機能を拡大していったオーケストラとの競演を可能にしたのです。カストラート歌手以外の男性歌手たちは、カストラート歌手たちの陰に隠れてはいたものの、当初は脇役としてその歌唱技術を高めていき、やがて女性歌手と男性歌手がそれぞれの個性を発揮しながら共演する現代オペラの基礎が出来上がったのです。

2002年東京二期会『フィガロの結婚』伯爵役の筆者 撮影:鍔山英次
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2016/11/16

水曜エッセー「オペラ羅針盤」第3回  文化・芸術

オペラ羅針盤多田羅迪夫(たらら・みちお 声楽家・東京藝術大学名誉教授)
                       
魅力的なオペラの「ズボン役」

日本の伝統芸能「歌舞伎」には、男が女を演じる女形があり、「宝塚歌劇団」では、倒錯的魅力の男装の麗人たちが、共に人気を得ていますが、宝塚の「男装の麗人」のルーツが実は「オペラ」にあることをご存じですか?
オペラには、女声歌手が若い男性に扮して歌い演じる「ズボン役」があり、その起源は、中世ヨーロッパの「カストラート」の時代にまで遡ります。ヨーロッパの教会ではかつて女性が聖歌隊で歌うことを許されなかった時代の名残として、今でも聖歌隊のソプラノとアルトは少年が担当する伝統が続いていますが、その少年たちの未熟さをカヴァーするために、「カストラート」が存在していました。少年時代に手術によって去勢された男性歌手で、大人になっても声変わりせず、驚異的な歌唱技術と音域を保ち、妖しい魅力を放ちながら男性役と女性役の双方を演じてカリスマ的人気と勢力を誇っていたのです。19世紀以降、カストラートは非人道的として廃れてゆくのとは逆に、世俗の劇場(芝居とオペラ)では禁制が解かれた女性たちが進出。それまでのカストラートに代わって女性歌手が若い男性を演じ、倒錯的魅力を放つ「ズボン役」が登場するようになりました。モーツァルト「フィガロの結婚」で伯爵夫人に恋する若い小姓ケルビーノがその代表的な例です。
私が11月に出演する、リヒャルト・シュトラウス「ナクソス島のアリアドネ」にも魅力的なズボン役である「作曲家」が登場します。台本は、詩人で劇作家のホーフマンスタール。
このオペラは、ウィーンの金持ちの邸宅の祝宴で、新作オペラを上演するはずが、イタリアの道化師たちの出し物と同時に上演せざるを得ないはめに陥るという設定です。
シュトラウスは、芸術の理想を掲げる感受性豊かな若き「作曲家」役に、かのモーツァルトのイメージを重ねていたのでしょう。
私の役は執事長で、金満家のパトロンのきまぐれな無理難題を、芸術家たちに大仰に伝える語り役。ウィーン国立歌劇場の看板歌手として活躍したエーリッヒ・クンツや、2012年バーデン・バーデン祝祭劇場では、往年の名歌手ルネ・コロが演じていました。


追伸
リヒャルト・シュトラウスが、自分の夫婦間の浮気疑惑に基づくいざこざをオペラにした「インテルメッツォ」に主演した際には、その歌詞の多さに驚かされましたが、今回は日々愉しみながら台詞と格闘しているのです。

2004年『インテルメッツォ』(日本初演)ロベルト・シュトルヒ役 撮影:竹原伸治

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2016/11/16

水曜エッセー「オペラ羅針盤」第2回  文化・芸術

オペラ羅針盤 多田羅迪夫(たらら・みちお 声楽家・東京藝術大学名誉教授)

オペラの訳詞上演と、字幕スーパーによる原語上演

近年、劇場に字幕が普及し、知らない原語のオペラも気軽に楽しむことができるようになりましたが、私がドイツの歌劇場で歌っていた70年代は、オペラは多くの観客の母国語である、ドイツ語の訳詞上演で上演されることが当たり前でした。
私の滞欧した時代は、字幕スーパーの技術が現れる前でしたから、国際化の進んだ大都市では原語上演、地域に密着した地方都市は母国語のドイツ語による訳詞上演と、上演方式が混在していて、演目によっては訳詞上演も成果をあげていたのです。
しかし、専属歌手として在籍した劇場で、ある時プッチーニの代表作のひとつ「ラ・ボエーム」を上演することが発表されました。「ラ・ボエーム」は、貧しい芸術家達とお針子ミミとの青春群像を描いた叙情溢れるメロドラマ。私たち歌手にとってドイツ語で上演するのには大いに抵抗がありました。「蝶々夫人」をはじめ、甘く流麗な旋律で、後期ロマン派のイタリア・オペラを代表するプッチーニの作品を、ごつごつした言葉のドイツ語で歌えば、音楽との密接な効果が伝わりにくいことが歴然だからです。
私たち歌手は、劇場支配人に掛け合い、イタリア語で歌わせて欲しいと団体交渉し、支配人は、各幕の前にドイツ語による寸劇を挿入する事で妥協してくれました。
その事が後になってドルトムント歌劇場「ラ・ボエーム」にゲスト出演した世界的プリマ、ミレッラ・フレーニさんと共演できるきっかけになったのですから、あの時、原語のイタリア語で歌うように掛け合って良かったなぁと思います。彼女の名唱を間近で聴けただけでなく、公演後ご一緒に食事をしたり、様々な話をすることが出来た幸せな体験となりました。
 帰国後も小澤征爾指揮「ヴォツェック」は、訳詞上演で標題役を歌い、同じ小澤指揮のヘネシー・オペラ「さまよえるオランダ人」では、ジョゼ・ヴァン・ダムとのダブル・キャストでの原語上演と、訳詞上演と原語上演の過渡期を経験しました。先般亡くなった蜷川幸雄さんの演出で、終幕の昇天の場面でオランダ人とゼンタが手に手を取ってピアノ線で吊り上げられたことなども懐かしい思い出です。


写真¬ 1992年3月『さまよえるオランダ人』 東京文化会館
指揮:小澤征爾 演出:蜷川幸雄
 オランダ人:多田羅迪夫 撮影:林喜代種

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2016/11/16

水曜エッセー「オペラ羅針盤」第1回  文化・芸術

2016年10月16日から5回にわたって水曜エッセー「オペラ羅針盤」を、しんぶん赤旗
文化・学問欄に掲載して頂きました。
数年前から時々、作曲家についての原稿を依頼され書いたのがご縁で、「オペラについて、何か面白いエッセイを書いてください!」と、今回の連載のお話を学術・文化部の大井民生さんから頂きました。短い随想ってなかなか難しいものですね。あれも書きたい、これも書きたいと、つい長くなって削るのに苦労しましたが、とても楽しい経験でした。


オペラ羅針盤 

多田羅迪夫(たたら みちお)東京藝術大学名誉教授・声楽家 
たたら・みちお(声楽家・バスバリトン)香川県出身。東京藝術大学大学院修了後渡伊。M.フレーニなど著名歌手と国際舞台で多数共演しドイツの歌劇場専属歌手時代を経て帰国。オペラ、
オラトリオのエキスパートとして内外で活躍中。東京藝術大学名誉教授。二期会会員 


一筋縄ではゆかない役

「オペラ歌手!」というと皆さんは誰を思い浮かべますか?伝説の歌姫マリア・ カラス、キング・オブ・ハイCとして活躍したルチアーノ・パバロッティ。世界的スター歌手プラシド・ドミンゴは、声種をテノールからバリトンに移し、75歳を過ぎた今も現役でオペラを歌い続けています。
私の声種はバスバリトン。『カルメン』の闘牛士エスカミーリョやドン・ジョヴァンニのような色男役もありますが、オペラの中では、主に血気に逸る若者を諫める賢者、恋敵、悪役など一筋縄ではゆかない陰翳深い役を担当します。
私がドイツの歌劇場の専属歌手を経て帰国し、83年に二期会オペラで最初に歌ったのは、ワーグナー『ジークフリート』アルベリッヒでした。 地底に住むニーベルンゲン族の主で権力の指環を手に入れる激しい役です。弟ミーメ役にベルリン・ドイツオペラでも活躍したホルスト・ヒースターマンも招聘された密度の濃いプロダクションが話題となり、翌年には故朝比奈隆指揮『ラインの黄金』アルベリヒや『神々の黄昏』でも悪役のハーゲンに出演。小澤征爾指揮『ヴォツェック』では、精神異常をきたし殺人を犯すヴォツェック役、故若杉弘さんの指揮では、ヴォツェックに人体実験をする医師役を歌いました。その間、ポーランドで『袈裟と盛遠』の盛遠、フィンランドで『お蝶夫人』の領事シャープレスなども歌いましたが、当初は強烈な性格俳優の印象が強かったかもしれません。
マイク無しの生声で歌うオペラには、強大な音量のオーケストラを突き抜ける鍛錬した声が必要です。92年小澤征爾指揮『エディプス王』で共演したソプラノのジェシー・ノーマンの声は、それまでに経験したことのない超弩級の声でした。あの立派な体躯から発せられる豊かな声を聞くと、天賦の才とはいえ、人間の声の限界を忘れさせてしまうものです。しかし、大多数のオペラ歌手の声は、長い忍耐の時間をかけて広い音域とムラのない共鳴を訓練によって獲得するのです。
これから私のオペラの経験をもとに、オペラについての様々なお話しをすることにしましょう。


1996年東京二期会『ワルキューレ』ヴォータン
撮影:鍔山英次

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2016/10/22

リヒャルト・シュトラウス「ナクソス島のアリアドネ」  公演情報

 オペラといえば、『魔笛』『カルメン』『椿姫』『蝶々夫人』等を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、ドイツ後期ロマン派の作曲家リヒャルト・シュトラウスは、音楽と台本を見事に調和させた傑作を沢山残し、中でも1911年 に初演された音楽の色彩と抒情豊かな『ばらの騎士』は、世界的にも根強い人気です。

 私が今年11月に出演するオペラは『ナクソス島のアリアドネ』。台本は『ばらの騎士』で成功を収めた、詩人で劇作家のホーフマンスタールで、欧米で大活躍の女性指揮者、シモーネ・ヤングと気鋭の女性演出家、カロリーネ・グルーバーとタッグを組む、二期会とライプツィヒ歌劇場との提携公演です。 

このオペラの傑出した面白さは、何と言っても作品の中にオペラの舞台裏が描かれているところにあるでしょう。新作オペラがどうやって創られてゆくのか、前半の作曲家やプリマドンナや歌手たちの、舞台裏での臨場感あふれるやりとりが40分ほど目の前で繰り広げられ、色彩溢れる美しいアリアや重唱の数々、そして「人は変容し再生することができる」という作品に込められた テーマが余韻となって記憶に残る名作です。細部まで見逃したくない作品は、客席との距離が遠すぎないことが大事なので、会場の日生劇場の大きさはちょうどいいですね、

 今回、私は演出家の希望もあり、執事長役で出演します。
舞台は、金持ちの伯爵の邸宅。祝宴でのオペラ上演に際し、金満家のパトロン(舞台には登場ないご主人様)のきまぐれな無理難題を、芸術家たちにおおぎょうな態度で伝えます。

 登場の音楽からして、いかにも偉そうなのですが、「悲劇的オペラ『ナクソス島のアリアドネ』と道化たちの演じる喜劇『浮気なツェルビネッタと4人の恋人達』を同時上演するようにとご主人さまはご希望です。花火の打ち上げまでにきっちり終わらせないといけませんぞ。」などと言い出すので、登場人物たちは、おおわらわ。
ドイツでは役者や往年の名歌手が出演することが多く、ウィーン国立歌劇場の看板歌手として活 躍したエーリッヒ・クンツや、2012年 バーデン・バーデン祝祭劇場では、オペレッタやヘルデ
ン・テノール としても一世を風靡したルネ・コロが演じていました。

 いろいろな演出がありますが、今回の東京二期会とライプツィヒ歌劇場 との提携公演では、執事長というのは仮の姿で、ご主人様が執事 長に扮しているという設定です。癖のある個性的なキャラクターを演じるので、久しぶりに口髭をはやしはじめています。

そういえば、リヒャルト・シュトラウスが、自分の家庭生活に着想を得て、自身を主役に登場させたような『インテルメッツオ』で、ローベルト・シュトルヒのときも口髭をはやしていました。

リヒャルトウトラウスも口髭をたくわえていましたね。
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R.シュトラウス


東京二期会『ナクソス島のアリアドネ』字幕付き原語(ドイツ語)上演
11月23日(水・祝)17時開演 11月24日(木)・26日(土)・27日(日)14時開演 
日生劇場 上演時間約3時間(休憩1回含む)
開場は開演の30分前 上演予定時間:約3時間(休憩1回含む)

http://www.nikikai.net/lineup/ariadne2016/index.html  公演詳細

http://www.nikikai.net/enjoy/vol306.html
 オペラを楽しむ
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2016/10/8

秋涼の候に想う  公演情報

9月24日(土)國立臺灣師範大學(National Taiwan Normal University)での「Morzat&Italian Pre-Vrdi 」 演奏会や、10月1日に、バッハの「コーヒー・カンタータ」のシュレンドリアンや「ミサ曲ト短調」を歌った「二期会バッハ・バロック研究会」15周年記念コンサートも無事終わり、季節は実りの秋を迎えました。
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2016年9月24日 台北にて

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10月1日 Hakuju Hall にて

今月からは、オペラのリハーサルが本格的に始まるので、役作りなどいろいろと研究しているところです。

リヒャルト・シュトラウスの作品をこよなく愛した故若杉弘さんとともに、1986年の日本リヒャルト・シュトラウス協会第11回例会で、 演奏付き講演 で、モリエールの「町人貴族」から「ナクソス島のアリアドネ」に参加した時のことを思い出していました。

その後、2004年にやはり若杉弘指揮・東京交響楽団の演奏でリヒャルト・シュトラウス『インテルメッツォ』ー(交響的間奏曲を伴う2幕の小市民喜劇ー(日本初演)の ロベルト・シュトルヒ役を歌いました。
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撮影:竹原伸治

今回参加するプロダクションは、シモーネ・ヤングが日本ではじめてオペラを振ることでも話題となっている、東京二期会とライプツィヒ歌劇場との提携公演/リヒャルト・シュトラウス『ナクソス島のアリアドネ』です。
私は演出のカロリーネ・グルーバーの希望で、シングル・キャストの執事長役に出演します。
(彼女の演出では2005年にツェムリンスキー『フィレンツェの悲劇』シモーネを歌い、その後も何度か来日来いてます)。

執事長役(Der Haushofmeister)は、語り役。
ウィーンの金持ちの邸宅での祝宴で行われるオペラ上演に際し、金満家のパトロンのきまぐれかつ無理難題の意向を、舞台には登場しないパトロンに代わり、芸術家たちに大仰に伝えるという役どころです。ドイツでは役者や往年の名歌手が出演することもあり、ベーム指揮ウィーン国立歌劇場公演では、ウィーン国立歌劇場の看板歌手として活躍した美声のエーリッヒ・クンツや、クリスティアン・ティーレマンが、2012年バーデン・バーデン祝祭劇場でシュターツカペレ・ドレスデンを指揮した際にはオペ レッタでも活躍し、ヘルデン・テノールとしても一世を風靡したルネ・コロが執事長を演じていました。

この作品の魅力は何と言ってオペラの制作過程を垣間見るようなプロローグも含め、音楽と哲学が融合した活き活きとした展開の妙にあります。
ツェルビネッタの超絶技巧を駆使したアリアや、ギリシャ神話に登場するアリアドネやバッカスの名唱、ヘルマン・プライなども好演した道化師ハルレキン等、選りすぐりの旬の歌手たちが共演し聴きどころも沢山!
シュトラウスは、この作品の中に出てくる作曲家役は、若きモーツァルトを想定したいたようで、女声のズボン役が登場します。リヒャルト・シュトラウスの『ばらの騎士」がお好きな皆さまもきっと楽しんでいただけることでしょう。
会場は日比谷の帝国ホテル向かいの日生劇場です。1300席と舞台との距離も近いので、臨場感あるオペラ体験にはもってこいです。オペラ初心者のかたもオペラ通の方も、ぜひこぞってご来場いただければ幸いです。

東京二期会『ナクソス島のアリアドネ』字幕付き原語(ドイツ語)上演
11月23日(水・祝)17時開演・24日(木)26日(土)27日(日)14時開演 
日生劇場 上演時間約3時間(休憩1回含む)

http://www.nikikai.net/lineup/ariadne2016/index.html  公演詳細

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◎インターネットラジオ 林田直樹さんの「カフェ・フィガロ」に出演 させて頂きました。
登録頂けると2週分の放送を無料でお聞きいただけます。


https://www.blue-radio.com/program/cafe/index.aspx?genrename=160911

https://www.blue-radio.com/program/cafe/index.aspx?genrename=160904


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