2012/2/11
『ペントハウス』 映画
ブレット・ラトナー『ペントハウス』
『ニューイヤーズ・イブ』といい、『ステイ・フレンズ』といい、最近ニューヨークを舞台にした映画では、実際の大イヴェントをそのまま模して、大量エキストラを使ったロケーション撮影を、しばしば見せるようになってきた。
今回も、実際に行われたメイシーズの大パレードにそっくり便乗し、ベン・スティラー以下、ケイシー・アフレック、エディ・マーフィ、マシュー・ブロデリック、マイケル・ペーニャといった、“見せ方”を心得た面々が、大富豪からの大金奪還作戦を繰り広げる。
北米でも最高級とうたわれる超高級高層マンション。実際のトランプ・タワーをモデルにした、ここの管理従業員たちは、超高額所得者である住人たちのプライバシーに一切関与せず、しかもそれを熟知することで、限りなく快適な住空間を提供することが使命だ。
ベン・スティラーはそこの腕利きマネージャーであり、住人たちはもちろん、従業員一同の信頼も厚い、CSとESを両立させた理想的な管理人だ。
しかし、住人のひとりである投資家アラン・アルダに、自分を含めた全従業員の積立年金をそっくり託したことで、一同は全財産を失ってしまう。不正投資の嫌疑にかけられ、資産すべてを凍結されたのだ。
それもこれも、「財産を3倍にしてやる」という彼の甘言に乗ったからなのだが、これほど知恵の回る、有能マネージャーであるベン・スティラーをして、こんな愚かな誘惑に目が眩むとは、現代アメリカ市民の金融感覚がどれほど地に堕ちているか、察するに余りある。
リーマン・ショックは、一概に金融会社の強欲がもたらしたものでなく、市民全体の見通しの甘さによるのだということが、容易に想像できる。

写真:『ペントハウス』より。ベン・スティラーと仲間たち。どこか『MI4』の面々を思わせる。 画像元:allcinema.com
かくして、自分と従業員たちの財産を取り返そうと、ベン・スティラーが慣れないながらも周到な計画の下に仲間を集め、奪還作戦を展開する。ターゲットはアラン・アルダが自室のどこかに隠した財産だ。
建物内部なら、管理マネージャーの自分が誰よりも詳しい。それを生かしたクライマックスが、冒頭に書いたNY市大パレードの真っただ中で展開する。
こうしたプロットは最高に面白い。が、残念ながらブレット・ラトナーの演出の切れ味がもう1つ足りず、脚本は悪くないのにエピソードの進行が、畳みかからない。
宙づりの車や、エレベーターのワイヤを使った、『MI4』を思わさぬでない、高層アクションも、もう少し何とかならなかったものか(ブレッド・ラトナーは『ラッシュ・アワー3』のエッフェル塔アクションの不手際をまた繰り返してしまった)。
キャラクター造形も不徹底だ。エディ・マーフィのダイアログは薄く、彼の真骨頂が引き出されているとは言い難い。
何より、不運にも財産は失ったが、有能なトレーダーという設定のマシュー・ブロデリックを生かせてない。ここぞという時に、投資家としての冴えた知恵を授けて事態を好転してみせる、という胸のすく場面が1つでもあればよかったのだが、暗算が速いという程度の扱いではもったいなさすぎる。だから、最後まで役立たずのままで終わってしまう。
最悪なのは、FBI捜査官のティア・レオーニで、職業柄ベン・スティラーに肩入れするわけにもいかないが、心情的には理解できるので、陰から援助しようとはしているが、脚本の 書き込みが足りないので、どっちつかずで終わっている。
いつもくたびれた顔で、せっかくの美人が台無しなのは、描き方次第で設定のせいだと納得できるはずなのだが、これでは彼女も地で老けこんじゃったな、と思わされてしまう。
そんな中での見どころは、やはりベン・スティラーだった。『ペントハウス』は必ずしも、手放しで面白いと強弁できる作品では、残念ながらなかったが、この人の主演作品としては、大いに楽しめる。
背筋のよく伸びた、てきぱきとした身のこなしと、キレのいいセリフ回し。瞬発的な行動の早さとその持続は、ことによると、アクション・スターとしての可能性を秘めているのではないかと思わされる。
何より目力が強いので(カメラもそう思ったか、彼の眼をしっかり覗き込むよう撮ってくれている)、行動に説得力があり、画面が引き締まる。
何より、自分のでなく、守るべき部下たちの財産を取り返すため、という動機がすべての行動を促す、その男気がいい(こういう設定が、いかにもイマジン作品だなあと思わされる)。
「これでよし」と言わんばかりの、ラストの彼の無言の表情など、そのスターオーラに、思わず握り拳を固めてしまう。
終わりよければすべてよし。
『ニューイヤーズ・イブ』といい、『ステイ・フレンズ』といい、最近ニューヨークを舞台にした映画では、実際の大イヴェントをそのまま模して、大量エキストラを使ったロケーション撮影を、しばしば見せるようになってきた。
今回も、実際に行われたメイシーズの大パレードにそっくり便乗し、ベン・スティラー以下、ケイシー・アフレック、エディ・マーフィ、マシュー・ブロデリック、マイケル・ペーニャといった、“見せ方”を心得た面々が、大富豪からの大金奪還作戦を繰り広げる。
北米でも最高級とうたわれる超高級高層マンション。実際のトランプ・タワーをモデルにした、ここの管理従業員たちは、超高額所得者である住人たちのプライバシーに一切関与せず、しかもそれを熟知することで、限りなく快適な住空間を提供することが使命だ。
ベン・スティラーはそこの腕利きマネージャーであり、住人たちはもちろん、従業員一同の信頼も厚い、CSとESを両立させた理想的な管理人だ。
しかし、住人のひとりである投資家アラン・アルダに、自分を含めた全従業員の積立年金をそっくり託したことで、一同は全財産を失ってしまう。不正投資の嫌疑にかけられ、資産すべてを凍結されたのだ。
それもこれも、「財産を3倍にしてやる」という彼の甘言に乗ったからなのだが、これほど知恵の回る、有能マネージャーであるベン・スティラーをして、こんな愚かな誘惑に目が眩むとは、現代アメリカ市民の金融感覚がどれほど地に堕ちているか、察するに余りある。
リーマン・ショックは、一概に金融会社の強欲がもたらしたものでなく、市民全体の見通しの甘さによるのだということが、容易に想像できる。

写真:『ペントハウス』より。ベン・スティラーと仲間たち。どこか『MI4』の面々を思わせる。 画像元:allcinema.com
かくして、自分と従業員たちの財産を取り返そうと、ベン・スティラーが慣れないながらも周到な計画の下に仲間を集め、奪還作戦を展開する。ターゲットはアラン・アルダが自室のどこかに隠した財産だ。
建物内部なら、管理マネージャーの自分が誰よりも詳しい。それを生かしたクライマックスが、冒頭に書いたNY市大パレードの真っただ中で展開する。
こうしたプロットは最高に面白い。が、残念ながらブレット・ラトナーの演出の切れ味がもう1つ足りず、脚本は悪くないのにエピソードの進行が、畳みかからない。
宙づりの車や、エレベーターのワイヤを使った、『MI4』を思わさぬでない、高層アクションも、もう少し何とかならなかったものか(ブレッド・ラトナーは『ラッシュ・アワー3』のエッフェル塔アクションの不手際をまた繰り返してしまった)。
キャラクター造形も不徹底だ。エディ・マーフィのダイアログは薄く、彼の真骨頂が引き出されているとは言い難い。
何より、不運にも財産は失ったが、有能なトレーダーという設定のマシュー・ブロデリックを生かせてない。ここぞという時に、投資家としての冴えた知恵を授けて事態を好転してみせる、という胸のすく場面が1つでもあればよかったのだが、暗算が速いという程度の扱いではもったいなさすぎる。だから、最後まで役立たずのままで終わってしまう。
最悪なのは、FBI捜査官のティア・レオーニで、職業柄ベン・スティラーに肩入れするわけにもいかないが、心情的には理解できるので、陰から援助しようとはしているが、脚本の 書き込みが足りないので、どっちつかずで終わっている。
いつもくたびれた顔で、せっかくの美人が台無しなのは、描き方次第で設定のせいだと納得できるはずなのだが、これでは彼女も地で老けこんじゃったな、と思わされてしまう。
そんな中での見どころは、やはりベン・スティラーだった。『ペントハウス』は必ずしも、手放しで面白いと強弁できる作品では、残念ながらなかったが、この人の主演作品としては、大いに楽しめる。
背筋のよく伸びた、てきぱきとした身のこなしと、キレのいいセリフ回し。瞬発的な行動の早さとその持続は、ことによると、アクション・スターとしての可能性を秘めているのではないかと思わされる。
何より目力が強いので(カメラもそう思ったか、彼の眼をしっかり覗き込むよう撮ってくれている)、行動に説得力があり、画面が引き締まる。
何より、自分のでなく、守るべき部下たちの財産を取り返すため、という動機がすべての行動を促す、その男気がいい(こういう設定が、いかにもイマジン作品だなあと思わされる)。
「これでよし」と言わんばかりの、ラストの彼の無言の表情など、そのスターオーラに、思わず握り拳を固めてしまう。
終わりよければすべてよし。
2012/2/12 22:41
投稿者:Incidents
2012/2/12 3:05
投稿者:アイカワ/jennjenn
≫そんな中での見どころは、やはりベン・スティラーだった。
ベン・スティラーは素晴らしかったですね。エディ・マーフィは不発でしたが、悪役・アラン・アルダとの会話はよかったです。いまのアメリカ映画で、ベン・スティラーとスティーヴ・カレルの主演作は、ちょっとはずせないですね。
ご指摘の点はいずれもその通りで、犯罪コメディーとしての出来はイマイチでしたが、オープニングで、ラロ・シフリンそっくりの音楽(『ラヴ・アゲイン』のクリストフ・ベック)にのって、ヘリコプター撮影で屋上プールの映像が映し出された時点で、ぼくはもう満足してすべてを許してしまいました。あとは細かいことは言いっこなし(笑)。
http://d.hatena.ne.jp/jennjenn/
ベン・スティラーは素晴らしかったですね。エディ・マーフィは不発でしたが、悪役・アラン・アルダとの会話はよかったです。いまのアメリカ映画で、ベン・スティラーとスティーヴ・カレルの主演作は、ちょっとはずせないですね。
ご指摘の点はいずれもその通りで、犯罪コメディーとしての出来はイマイチでしたが、オープニングで、ラロ・シフリンそっくりの音楽(『ラヴ・アゲイン』のクリストフ・ベック)にのって、ヘリコプター撮影で屋上プールの映像が映し出された時点で、ぼくはもう満足してすべてを許してしまいました。あとは細かいことは言いっこなし(笑)。
http://d.hatena.ne.jp/jennjenn/
ほんとですね、細かいことは言いっこなしってのが一番正しいです。
でもエディ・マーフィのキレの悪さと、マシュー・ブロデリックの鈍重さは残念でしたね〜。この3人が組めば、うまくすると、抱腹絶倒のかけひきが作れたはずなのですが(笑)