水の分子は、「H
2O」です。
水素原子は、もっとも小さな原子核と、一個の電子でできています。
だから、電子を引き寄せておく力が弱く、すぐに奪われてしまい、陽電荷を持ったプロトンになり勝ちな性質を持っています。

一方、酸素原子は、最外殻電子軌道に二つの空きを持っていて、そこに水素から奪った電子をはめ込むと、より安定した状態になります。そこで二個の水素原子と相談し、それぞれと電子を「共有」することでより安定になろうとします。これが「水」です。
だから、「水分子」の中央の酸素は、水素から借受けた余分の電子によって、負の電荷を帯びやすくなり、逆に両端の水素原子は陽電荷を帯びがちになります。
その辺にある「普通の水」は、ちゃぽちゃぽと大変流動性が高いのですが、それにもかかわらず表面張力が非常に高い、すなわち、水分子同士はバラバラでなく、しっかりと手を結び合って離れない、という性質があります。これは、熱を加えて水分子をバラバラにする、すなわち水蒸気にするための「気化熱」がとても大きいという特徴とも共通しています。すなわち、水分子同士の結合が、結構強いために、それを切るのに大きなエネルギーが必要だというのです。

では、水分子同士はどうやって結合しているのでしょうか?しかもちゃぽちゃぽと自由に動き回るのに・・・
水分子は中心の酸素原子がマイナスの電荷を帯びやすく、両端の水素原子はプラスの電荷を帯びやすい、と上述しました。水分子はブーメランのようにちょっと「へ」の字に曲り、中心がプラスで両端がマイナスの、「双極子」という形を取っています。すると、当然プラスとマイナスが引き合うので、中心の酸素と端の水素とがなるべく近くなるように、しかもできるだけ隙間が少ない、「細密構造」をとった三次元配列のときに、水分子が全体としてもっとも安定した、低エネルギーの状態になります。このように、原子がきちんとした特定の並び方をして、安定しているとき、「結晶構造」と呼びます。水原子同士の結合は非常に弱い「水素結合」なので、自由に形を変え、動くことができるので流動性は保たれますが、水の中ではあちこちで、このような「安定した結晶構造」ができています。しかも、「水の安定した結晶構造」はひと通りの組み合わせ方だけではなく、8通りくらいあるそうです。だから、いっぱいの水の中にも、様々な結晶構造で寄り集まった何種類かの塊が、ふわふわと漂っているわけです。
これが水分子の物理学的特徴のひとつです。
これを踏まえて、水中の電気を考えてみましょう。
純水の場合、分子内で電荷の分布に偏りができて、「双極子構造」をとりますが、分子全体としてみると、電気的中性になっています。だから、電流を流そうとしても、電荷を運んでくれる担体がないので、電気は流れにくい、抵抗が高い、ということになります。

さて、水の中に食塩を少量入れてみましょう。陽性のナトリウムイオンは、水分子の一戸の水素原子と置き換わり、もう一個の水素をくっつけた酸素の部分(水酸イオン)と電気的に結合します。弾きだされた陽電荷をもった水素原子、すなわちプロトンは通常はマイナスの塩素イオンと結合します。近くに塩素イオンがいないときには、とりあえず水分子の酸素に近づこうとします。弱い結合ながら、水分子に余分にプロトンがくっついた陽電荷を持った分子を、ヒドロニウムイオンと呼びます。ヒドロニウムイオンは、余計なプロトンがくっついているので居心地が悪くて、すぐに隣の水分子に押し付けようとします。水の中で、ヒドロニウムイオンができると、余分なプロトンがふらふらと漂った状態になります。
ところが、右の図を良く見てください。特定の、余分なプロトンがうろうろしているのではなく、実際に移動しているのは、余分は陽電荷だけで、水素原子自体は動かずに、結合状態が入れ替わるだけで、余分な陽電荷が移動していくのです(プロトンジャンプと呼ぶ)。

これは、まさしく金属中で電気が流れるときの、電子の玉突きとそっくりですね。水中にヒドロニウムイオンができると、水分子の水素と酸素の結合を入れ替えるだけで、実際に物が移動しなくても電荷だけが動くのです。これが水中の電流の正体です。
水中に、多くのヒドロニウムイオンができると、この流れがあちこち沢山できるので、電流が流れやすくなります。だから、塩濃度が高いほど電流が流れやすいのです。
水中ではイオンが電荷を運ぶ、と習って、「ナトリウムイオンやカリウムイオンがビュンビュン飛び回っている」なんて想像していたのではないでしょうか?電流を流れやすくする原因にはなりますが、水という物質は、こういうマジックをするので、非常に特別な物質なのです。

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投稿者: nonkihooten@yahoo.co.jp
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