まず初めは言葉の意味から考えましょう。
[分極(polarization)]

細胞は、細胞膜を境にして、内部がマイナス。外部がプラスの電位差を持っています。
この状態は、「膜を挟んで電気的に+と−の極に分れている」と表現することができます。
電気的に+の極と−の極に分かれている、即ち「分極」しているという訳です。

(磁石や地球は、S極とN極に分極している、といいます)「分極」という言葉には細胞の内外は含まれていませんから、細胞内が(細胞外部に対して)プラスであってもかまわないのです。
[脱分極(depolarization)]

+と−に分かれているのが分極状態ですから、電位差が0の状態は「分極していない」と言います。
分極した状態から分極していない状態に向って変化する事を「脱分極」と呼びます。
[過分極(hyperpolarization)]
「分極し過ぎる」ということで、ある分極状態からもっと強く分極した状態に向って変化することを「過分極」すると呼ぶことも納得できますね。
ちなみに、一旦脱分極した状態から、もう一度分極し直すことを「再分極(repolarization)」といい、過分極と同じ場合もありますがニュアンスが少し違うことが判りますね。
[静止(膜)電位(resting membrane potential)]
生きている細胞はすべて、静止状態で「内側がマイナスで、電位差がおよそ50〜90mVに分極」していて、この電位差を「静止膜電位」と呼びます。
おまけのコラム
ちなみに、電位というものは、どこか任意の場所を基準点として測定するもので、この宇宙空間に絶対的なゼロ電位というものは存在しません。したがって不特定多数の細胞にとって共通の部分、すなわち細胞外空間を基準点、0電位としてそれぞれの細胞内部の電位差を測定すると、−50〜−90mVになります。昔々、細胞の電位を測定し始めた頃には、細胞内部を基準点にしていたため膜電位はプラスで表現されていました。共通の基準点の方が合理的なので、いつの間にか変わっていました。
もう一度[脱分極]

何らかの理由でこの電位差(静止膜電位)が小さくなり、0の方向に変化することを「脱分極する」と言うのです。
したがって、「静止膜電位が0に向って変化する事を脱分極と呼ぶ」は正しい表現です。
しかし、「静止膜電位がプラスに向って変化する事を脱分極と呼ぶ」は、厳密には正しいとは言えません。
元の膜電位がマイナスであれば、プラスに向って変化する場合でも初めのうちは0に向って変化しますから、そのときは確かに「脱分極」です。
しかし、その先、0を超えてからは、より大きな電位差(ただし今度は正負が逆です)に向って変化するので、0から先は「分極」または「過分極」することになります。
ただ一般的には、活動電位のようにマイナスからプラスに向って一気に変化する現象を説明するときに、「ゼロまでは脱分極でその先は過分極、戻るときは初めは脱分極(−方向に向けてゼロに近づく)でゼロから先は再分極」なんて言ってられない(講義するときに舌を咬みそう)ので脱分極と再分極にまとめてしまっているのです。
意味をきちんと理解して使ってくださいね。