今、何を作れば売れるのか、どのように売れば良いのかを悩んでいる企業家や社員は多いだろう。そのためには消費者のニーズを掴み、尚且つ、消費者の生活水準を知ることが大事である。
ニーズという側面から見たとき、売買を通じて川上(生産者)と川下(消費者)の情報を融合して新たなニーズを予測し製品化し消費者に訴えるしかない。いわゆる、それに見合った仕掛けを行うしかない。消費者は前もって何が欲しいかを言ってはくれないからである。それだけにBtoB(企業間取引)でもBtoC(企業と消費者間取引)でも情報の精密化が重要になり、営業能力やそれを聞き取る技術者能力が重要になる。
「異端者たち」(日本経済新聞4月12日付け「成長を考える」より)は、組織の規律を乱す者たちを描いている。
サンスター文具の高畑正幸(32)への評価は最高のAから最低のEまで分かれる。営業部門から総スカンを食ったこともある変わり者である。今売れに売れているシュレッダーはさみの開発者である。社長のお気に入り者ではあるが、社長が交代すれば「立ちどころに追放されかねない異才」である。
トヨタ自動車には「スカンクプロジェクト」なる社内チームがある。まさに異臭を放つスカンクで、強い個性で嫌われる人材たちである。「独創性に富むが、協調性に欠ける」ため、「内部ではその存在そのものが否定されることもある」。
「そんな大企業型の社内ベンチャーで目ぼしい成果を上げたものはほとんどない。今となっては『異端児を組織の外に追い出す体のいいリストラの面があった』と見る向きが多い」が、「異端を異端と思わない社会こそが柔軟な産業構造による成長を可能にするだろう」とこの記事はまとめている。
消費者ニーズを感知するのは、取引関係からだけではなく、通勤社内で見聞きするものや普段の生活の中で感じる空気も大きい。そこには「環境異変」への切実な恐れや「経済格差」による将来不安を感じる消費者の目を感じ取るとき、今までと違った商品開発をする者とそれを利用する消費者との共有感覚が新たな消費市場を開発し始めている。
ダサイはずのエコ商品が浸透し、有機野菜・無農薬野菜・無添加加工品が消費市場に存在感を占め始めている。「反温暖化」や「反原発」をあえて言わなくても、心と身体が癒されないこの社会の空気への抵抗感が新しい消費市場を作り始めている。
最近、様々な経済ニュースで、0と1の間で示される「ジニ係数」という言葉が出てくる。社会全体を収入で見たとき上下二分されている層という前提で計量的に計算したものである。0は全く格差のない社会で、1に近づけば「格差」が最大になる。
2002年の日本の数値は0.4941(当初所得−税金)で、0.5に極めて近づいている。ジニ係数0.5の統計は25%の上層と75%の下層に分れ、この上層が下層の所得の9倍を所有していることを意味している。言い換えると、上層の25%の富裕層が日本の全所得の90%を握り、75%の下層がその残りの10%を分け合っている構造である。
また、日経NEESの一部上場企業1608社の統計では、バブル崩壊によって売上高・営業収益は下降するのだが、それ以上に損益分岐点売上高は下降している。
売上高 損益分岐点 損益分岐点比率
93年 369.8兆円 334.1兆円 90.35%
04年 294.1兆円 251.3兆円 85.44%
結果として、損益分岐点比率は一層下がり、バブル崩壊以後大企業はいよいよ利益を増大させている姿を明らかにした。言うまでもなく、人員削減や賃金カットによりバブル崩壊の嵐は庶民を直撃し、大企業の損益分岐点を下げ、売上が下がっても一層利益を増大させたことを明確にした。
この事実は「経済格差」を拡大させ、非正規雇用を増大させ、「ワーキングプア」という言葉を一般化させたことと一致している。
大手企業の07年3月決算が史上空前の利益を出した、とメディアは伝えている。しかし、その内容は国内消費低迷の中で輸出利益がそれに貢献している。国内の下層化した消費者に期待しきれない大手企業の行動がここに見える。
ついでながら(主題と離れるが)言えば、海外進出の大企業を決して武力で支援しない「日本国憲法」は、大企業にとって無駄なものと映る。膨大なる税金投入による強固な軍隊が海外で利益を上げる大企業を守り、尚且つ、この軍隊へ部品等の商品を気ままに納品できる新憲法が是が非でも欲しいと考えている。この考えは、海外市場で収益を上げ、そして、軍隊という新市場を獲得できる大企業の本音であり、それを後押しする安部政権の狙いでもある。
一週間前に2泊3日で
「スロービジネススクール(SBS)」の合宿(清里)に参加した。
SBS公式サイト
http://www.slowbusiness.org/
そこに集まる人たちは、自然や身体の保全に向けて新たなビジネスを構築しようと議論を沸騰させた。この人たちのビジネス構想を自分の問題として相互に議論し、実現に向けて互いに助け合う構造がこのSBSの狙いである。
今までのファストな生き方をスローに変え、持続可能な自然・心・身体を造りだそうとする試みが行われている。
このような“場”が要求される市場の変化を感じる。自分だけではなく、子どもや孫のことを考えたとき、今できることから始めたいという欲求が湧き出ている。そんな彼らも同時に消費者であり、市場を形成している。
環境破壊が進み、それでも未だに利益だけを追い求める企業群と商品群、投資に夢中になり金が金を生み出す社会が相も変わらず存在しているときに、何かがおかしいとビジネスを立ち上げる人たちとこれだけは買わないと決意を固める消費者が新たな市場を形成しようとしている。言うまでもなく、この市場に大手企業も食指を伸ばそうともしている。それだけこの市場の現実味を感じさせる。
環境破壊に抵抗し、環境に優しい商品を開発し、利益最大を狙わないゆったりを受け容れるビジネスこそ「異端者」を受け容れられる可能性を秘めているのではないだろうか。そして同時に、このビジネス志向者はスローな生活を目指し、心も身体もそして地球にも優しい商品を買う消費者にもなる。このようなビジネスと消費者のコラボレーションによって新市場が生まれつつあると予想ができる。
この新市場に
関係性を深め、売る側と買う側の深層を探りたい。
しかし、唯一気がかりなことが消費市場に起こる。生活破壊させられた下層化した消費者はこの新市場で消費者になれるのであろうか。なぜなら、新市場での商品が有機野菜・無農薬野菜・無添加加工品などに代表される手間のかかる物であるなら、当然その価格は高価となり、下層化した消費者には手が出せない可能性がある。例えば、普通のダイコン1本は大手スーパーで100円であるが、有機野菜専門店舗では200〜250円する。
「富裕層は高級・安心志向」(朝日新聞5月21日付け朝刊「ニセ食品 中国苦慮」より)が一面に掲載された。中国の食品や薬品から毒性物質が検出される中で、「高くても安心して口にできる食品を買いたいという富裕層」について書かれ、記事の最後に「ただ、低所得層は安い食品を口にせざるを得ない」と。
このように見たとき、
下層化した消費者をもこのスロービジネスとその消費市場に巻き込めるかがこれからの課題である。そうでなければ、永遠に下層化した消費者はファストで不健康な生活を持続させるしかない。

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