今月初めに
「みずほFORUM-M定例講演会」が東京のイイノホールで開かれた。
講師は
寺島実郎(三井物産戦略研究所所長、日本総合研究所会長)である。「2007年の世界潮流と日本」という演目で、
日本の資本主義がアメリカやイギリスを追ってグローバル化とマネーゲーム化に突き進んでいることを述べた。
なかなか普段から経済の大枠での統計数字を見ることに慣れていないが、寺島氏の提示した数字を理解することから始めよう。経営者のみなさん、労働者のみなさん、主婦のみなさん、この統計数字にしばらく付き合ってください。
この講演の聴衆者(ほぼ経営者)との
共有項目(前提条件)は二点あった。
T.21世紀に入って6年間の世界潮流を大枠の数値で見ると、次のようになる。
実体経済(世界経済の実質成長率):3.5%/年
物流経済(世界貿易の実質伸び率):7%/年
金融経済(世界株式市場の時価総額伸び率):14%/年
グローバル化という名の金融肥大化を指摘した。要するに、金融部門だけが突出した経済である。金が金を呼ぶ経済である。日本でのホリエモン・村上ファンド問題がこのことを明らかにあぶりだしている。
U.イラク戦争は「間違った戦争」「不必要な戦争」であり、ブッシュ米国と小泉外交への省察が必要である。これからの国際関係をどのようにすべきかを創造しなければならない。
そして、上記二点についての論拠を様々な側面から実証した。
[世界経済について]
3つのE(Economy、Environment、Energy)のバランスのとれた持続可能な成長の重要性が叫ばれる中で、石油価格高騰が進んでいる。06年/99年=3.5倍以上の値上がりを示し、需給関係で説明がつかない。明らかに、マネーゲーム化が進んでいる。
ドル/バレル 円/バレル
99年 17.2ドル 1928円
04年 36.4ドル 3941円
06年 60.5ドル 7447円
[米国について]
アフガン攻撃からイラク戦争の累積戦費7100億ドルとなり、ベトナムの5700億ドル(現在価格換算)を上回っている。
・相変わらずの双子の赤字(経常収支赤字、財政赤字)
・外貨準備わずかに649億ドル(07年1月末)
日本8953億ドル(06年12月末)
中国1兆663億ドル(06年12月末)
韓国2402億ドル(07年1月末)
・イラク戦争での米軍兵士の死者3468人(07年5月28日)
・ブッシュ政権の産軍複合体への回帰
00年 04年 07年 08年(見込み)
軍事費(億ドル)2945 4559 5719 6065
[日本について]
石油や金属(素材原料)の価格は高騰し、ここに係わる大手企業はボロ儲けをしているが、小売店等の消費者対応企業の製品(最終材)価格はデフレ現象が進んでいる。その容認は、「ワーキング・プア問題」等の格差拡大が大きい。
また、日米貿易に代わって、日本アジア貿易に比重がかなり移っている。
・企業物価指数(各生産工程での商品価格)
00年を100とする。
素材原料 中間財 最終材
00年 100 100 100
05年12月 158.9 105.7 91.7
07年4月 180.2 113.2 91.8
・ワーキング・プア問題
非正規雇用者が33%を占め、自営業者も含めた年収200万円以下の「ワーキング・プア」は労働人口の34%に上昇している。
・法人企業経常利益
98年21.2兆円から06年58.4兆円へと急増している。
・国際収支構造の変化
05年には、所得収支11.4兆円が貿易収支10.3兆円を上回り、06年には13.7兆円:9.5兆円とその差は拡大している。金融取引(額に汗しない利益)が一層大きくなり、マネーゲーム化が進んでいる。
・日本の貿易総額
米国 大中華圏 アジア 中東
06年 17.5% 27.8% 45.7% 10.5%
対米貿易額が20%を大きく割っている。大中華圏とは中国、香港、シンガポール、台湾の総体をいう。
・太平洋側港湾の空洞化(表日本・裏日本という志向が否定されている)
95年から05年までの10年間で、外貿コンテナ貨物量平均伸び率を見ると、全国平均が4.6%に対して日本海11港が12.6%と圧倒している。
明らかに、対米(太平洋側)関係が縮小し、対アジア・ロシアに向けた貿易が拡大している。
(注)「表」と「裏」は対比する言葉として用いられ、「裏」に対して侮蔑的な意味を少なからず持つ。しかし、外的な経済的環境の変化が侮蔑的をひっくり返す大きな意味を持ち始めている。
以上の1時間半の講演には、経営者は新しい視点を求めて食い入るように聞き入っていた。そして、満員の聴衆の拍手で幕が閉じられた。
政治がアメリカ一辺倒の志向を示している中で、経済はアジアやロシアに向き、このギャップが大きくなっている。しかし、アメリカとの共存は軍事優先の新たな市場を獲得しようとする大企業の志向があり、自衛隊の強化や防衛省化がそれを示している。
また、旧来からの市場の合理性(需給の均衡)はなくなり、オイルマネーも含めたグローバル化とマネーゲーム化が進んでいる。その中で、日本の国内消費の低迷が際立っている。
寺島氏から「企業物価指数」を示され、石油価格上昇にもかかわらず、最終材(小売)だけは2000年より低位に止まっている不自然さを数値で明らかにされた。未だにデフレ状態である。企業の側面から考えると、小売を中心とする流通業の収益は落ち込み、大手輸出製造業との格差を受けている。これは明らかに、「ワーキング・プア問題」の消費市場での大きさがそうさせていると思われる。
労働者や消費者を軽視した新自由主義はマネーゲーム化を進め、このマネーゲームによって上澄みだけを一部の上層が手にし、消費市場は荒廃し、そこで生まれた廃棄物を「経済格差」で虐げられている下層庶民に押付け続けている。
私たちは、触覚を鋭くし、提示された数値からも読み取り、現実が置かれている有様を明確にしなければならない。その上で、何と誰と
関係性を深めるべきか考えよう。そして、
来月の参院選での各党のマニフェストのウソをここに提示された統計数字から読み解こう。これ以上騙され続けないために。

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