前週のエントリーで、「円安」問題を書いた。そして
「売るに売れない外貨の山」(日本経済新聞7月9日付け朝刊)で、「九千億ドル(百十兆円)を越す日本の外貨準備」を示している。
一方で外貨というお金が大量に眠っていて、他方で予算を削られる福祉分野がある。
コムスンによる不正問題が出て、介護ビジネスで働く人たちの待遇劣化が背後に隠されてしまう可能性を恐れる。コムスンの不正行為は庶民の保険や税金の搾取だけではなく、現場で働く人たちの労賃搾取の二面がある。しかし、コムスンの折口雅博会長がテレビに映し出され、他の大手介護企業へのこの業務移転が語られれば語られるほど、この介護関連で働く人たちの「真面目さ」と「ワーキングプア」ぶりが背後に隠される恐れを感じる。
そこで、
「介護地獄」(『週刊ダイヤモンド』5月19日号)という特集を読み直した。特に、介護される側ではなく、ここでは介護する労働者に焦点を当てることにする。
この特集の主な狙いは、介護利用者の「家族にのしかかる負担とカネ」について実態を解説している。「“終の住み家”として需要の多い特養は、04年度までは建設コストの4分の3まで国や地方の補助金で賄われていた。ところが、05年度から補助金が廃止された」。
これは総量規制を狙ったものであり、大幅な施設増が期待できなくなり、「介護難民」を大量発生させることになる。また、05年10月から介護保険制度改革が導入され、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設の居住費と食費を自己負担に変更した。いよいよ「終の住み家は永遠の夢」となり始めた。
そして、
この背後で人気職だった介護が“3K”へと押しやられた。
この記事で示した実態を列記すると次のようになっている。
・介護関連職全般の有効求人倍率は1.98倍(全産業の正社員求人倍率は0.64倍)
・ホームヘルパー資格者の8分の1しか実働していない
・新規求人の平均給与(夜勤や排泄ケアなどの重労働が多い)
ホームヘルパー:164,600円
施設で働く介護職員:169,000円
ケアマネジャー:205,600円
「低賃金に福祉悲鳴」「年収200万円台、ボーナスゼロ、進む非正規化・・」「まるで官製ワーキングプア」「人材逃げ 崩壊危機」(朝日新聞6月26日付け朝刊)という大見出しと小見出しの大きな記事が載った。
この記事では、都内の通所介護施設で働く西川学氏(介護福祉士46)の事例が書かれている。
「4年近く時給制の非常勤職員だった。昨年5月にやっと正職員になったが、年間2カ月分の賞与の約束は守られず、月の手取りは16万円台だ。・・同社のケアマネジャーだった30代女性によれば、専門職のケアマネでもボーナスなし。・・『年収は手取り200万円台。生活できないって、みんな悩んでいました』」と。
また、東京都昭島市の知的障害者が働く「リサイクル洗びんセンター」の職員・黒澤英明氏(33)は「06年度から月収が1万円減り、賞与カットも含め年収が30万円ダウンした。・・障害者自立支援法の06年の施行後、補助金が年間1200万円近く減少。雇用を維持するための給与カットを迫られた。黒澤さんの月収は手取り約18万円。仕事に誇りとやりがいを感じるが、共働きでも家族3人の生活は厳しい。・・『今のままでは職場はもたない。一体どうすれば・・』」と。
ここに、働く人たちの賃金を切り詰めて成り立つ介護・福祉関連が見えてくる。
「制度改正 業者を翻弄」「訪問介護、自転車操業だ」「『総量規制』の壁」(朝日新聞7月5日付け朝刊)という見出しが載った。
訪問介護の収益性の低さからコムスンの不正問題が出始めた。
コムスンは03年から「売上のほとんどを介護報酬に依存する訪問介護の比重を小さくし」、有料老人ホーム事業に乗り出した。これによって、一人当たりの保険収入は訪問介護の約3倍になる。
04年の秋に「厚生労働省は一部の有料老人ホームや特別養護老人ホームなどの利用者数を国が決めた水準以下にするようにと、全国の自治体に示した。ホーム開設を抑制する自治体が続出。コムスンも計画見直しを迫られた」。
06年の春に「『三位一体改革』の税源移譲に絡んで、施設サービス分の公費負担で、都道府県の負担割合が12.5%から17.5%に引き上げられた。同時に都道府県は、地域の計画利用者数を上回る場合は、特定施設を新たに指定しない権限を持った」。
以上の「制度改正」に揺さぶられたコムスンの悪行である。
「消耗する福祉の現場」(朝日新聞7月7日付け朝刊)の記事には涙も出ない。
夜勤明けの母の体調を気遣って小2の娘は「寝ないで一生懸命働いているのに、なんでお金ちょっとしかもらえないの?」と。この母親は特別養護老人ホームで働く介護福祉士で、いまだにパートのままである。月給手取り15万円台で、今春の契約で「契約期間中でも解雇できる」という内容が含まれた。「サービス残業を断ったとき、上司がいった。『ボランティア精神ないんだね』」。
訪問介護ヘルパーとして働く60代の女性。年金だけでは暮らせず、ここでの収入にかけている。高齢者の入院や死去などによるキャンセルが相次ぐと、1万〜2万円の目減りはよくあるという」。「ヘルパーの善意が利用されているようで、割り切れないですよね」と。
朝日の社説に
「高齢者の介護・この賃金ではもたない」(7月8日付け朝刊)ではいくつかの実態を示している。
・一つの職場で介護福祉士の勤続年数は平均3年
・事業所で働く介護職員の平均年収は200万円あまりで、半数近くは非正社員
・訪問介護ヘルパーは、8割が非正社員
・登録型ヘルパーは、月収10万円未満が少なくない
「介護を『ふつうの仕事』にできなければ、担い手はいなくなる」。
上記の記事を通して、この日本に生きてきて、余りに情けない実情の中にいることを知る。
上から下への「しわよせの構造」である。
アメリカの経済を維持させるためにドルを貯め込み、日本の大手企業のために「円安」を誘導し、新聞紙上で好景気を叫ぶが我々にそれが感じられない。まさに下への「しわよせ」である。「格差拡大」と「ワーキングプア」を実態と違うと言い張る権力。その一方で、低賃金で消耗する「介護労働者」を救うには庶民に「応分の負担」を平然と要求する御用学者。
ここから、「消費税増税」を参院選後に本格的に言い出す権力者が透けて見えてくる。
このような連中と
関係性を切る生活姿勢を追及しよう。