―非核講演会から―
神奈川県保険医協会の後援を得て、医師や関心のある一般の人を対象に
、「日本の核政策と深刻化する危険」と題する小出裕章氏(京都大学・原子炉実験所・助教授)の講演が20日(土)にあった。
この講演に出席した朝日新聞記者は「米の原子力空母『安全性に疑問』」(朝日新聞10月21日付け)を掲載した。「小出氏は、08年夏に米海軍横須賀基地に配備される原子力空母も取り上げ、米軍が主張する安全性に疑問を投げかけた」と。
小出氏の講演概要
@ 東海村事故(1999年9月30日)での悲惨な死
茨城県東海村の核燃料加工工場(JCO)で、臨界事故を起こした。この時。作業に当った3人の労働者が大量の被爆をした。
従来の医学的知見によると、およそ4グレイの被爆で半数が死に、8グレイで絶望と考えられている(「グレイ」とは、物体1s当り1ジュール=0.24カロリーのエネルギーを吸収した時の被爆量が1グレイ)。
この3人は18グレイ、10グレイ、3グレイの被爆をし、高い被爆を受けた2人は東大病院に送られた。感染防止や水分・栄養補給はもちろん、骨髄移植、皮膚移植、輸液、輸血などありとあらゆる手段が施された。彼らは造血組織を破壊され、全身に火傷を負い、皮膚の再生能力を奪われていた。そして、「天文学的な」鎮痛剤(麻薬)と毎日10リッターを超える輸血や輸液を受けながら苦しい闘病生活を送ったが、被爆して3ヶ月後と7ヶ月後に亡くなった。
A 原子力発電所が生み出す死の灰の量は厖大
広島原爆で燃えたウランは0.8s、長崎原爆で燃えたプルトニウムは1.1sであった。それに対して、100万kWの標準的な原子力発電所の場合、1年間の運転で約1000sを燃やし、広島や長崎の原爆に比べて1000倍の死の灰を放出している。
上記の原発から放出するセシウム137の量は約300万キューリーである。この量は広島原爆の1000倍で、チェルノブイリ原発事故の1.2倍となる。
チェルノブイリ原発事故は未曾有の被害を起こした。広島原爆の800発分の放射能を放出させた。そして、その汚染地域は日本の本州の6割に相当している。中部電力の浜岡原発に事故が起きれば、東京がすっぽり入る計算になる。
B 地震と原発
2006年末で、世界に429基の原発があり、そのうち日本には55基がある。しかし、圧倒的な数を保有しているアメリカやフランスは地震地帯を回避しているのに、日本だけはその地震を軽視し、地震国日本の政府は安全性の主張と推進をしている。
今年の7月に、地震が柏崎・刈羽原発を襲った。活断層があるとする住民の主張を東電と政府は押さえ、マグニチュード6.5以上の地震は起らないとしていた。しかし、実際には6.8の地震が起き、地震の規模を尺度とすると、東電と政府が想定した最大地震の3倍規模であり、発電所は惨憺たる有様となった。

ブログ「Hamaoka report」より転載
http://blog.so-net.ne.jp/senza_fine_annex/
C 横須賀(神奈川県)の原子力空母の母港化
原子力潜水艦入港回数
横須賀 佐世保 沖縄 合計
60年代
18 17 18 53
70年代
107 5 51 163
80年代
226 35 32 293
90年代
281 99 106 486
合計 632 156 207 995
東電は新潟県の柏崎・刈羽原発(7期、821万kW)、福島第1原発(6基、470万kW)と福島第2原発(4期、440万kW)を持ち、関西電力も福井県の美浜、大飯、高浜の3箇所に11基(980万kW)を持っている。
明らかに、原発事故を恐れて、地方に設置したことが分かる。
しかし、米軍の核艦船は動く原発であり、横須賀に66年米原潜「スヌーク」が入港して以来、今年の2月までに756回、通算滞港日数は5586日となっている。横須賀こそ日本最大の核艦船寄港地で、近々、原子力空母「ジョージ・ワシントン」の母港とされようとしている。
原子力空母「ジョージ・ワシントン」は東海原子力発電所よりも巨大な60万kW程度の原子炉を2基搭載し、日本の何らの審査も受けないで入港できる(日米地位協定)。戦後60年経った現在も沖縄の米軍の占領という事実から、横須賀も同じ状態になる。
すでに、母港化に向けた浚渫工事が進み、日常的な放射能汚染に直面している。「戦争こそ最大の環境汚染」である。
この講演を日本経済新聞から知り、申し込んだ。参加者は20人ほどであった。
しかし、医者、市民運動化、学生、新聞記者などが熱心に聞き入っていた。かなり技術的にも専門的な話ではあったが、私にも十分理解できた。
そして、気掛かりな東海地震の想定震源域のど真中にある「浜岡原発」(静岡県御前崎市)を思うと、身の毛がよだつ。同時に、動く原発の米空母の横須賀母港化。地震の恐さを遥かにしのぐ「放射能汚染」が迫っている。
そして今、
「浜岡原発の運転差し止め訴訟」で住民側の「停止」請求棄却のニュースが入った。
講演後の質問では、原潜入港後の放射能調査の仕方、サンプリング、データ解析の問題もあり、小出氏はできる限りお手伝いすると約束していた。
自らの物理学の知識を庶民社会に役立てようとする小出氏に感激した。
そして、このような人たちと
関係性を持続的に結ぶ大事さを学んだ。