―地震と原発事故がもたらす
報道の二つの流れ(1)―
原発を考えるとき、ウラン採掘による鉱山労働者の被爆から原発稼動による地域への放射能汚染まで、様々な環境破壊を続けていることを考慮に入れる必要がある。
原発による被害者(自分とは遠い存在に思えるかもしれない)を見ずに、国家と企業にもそれなりの稼動論理があるとする見方を私は容認したくない。
私たちは広島と長崎の被爆体験を持っている。それも余りに悲惨な体験である。言うまでもなく、アメリカによる
マンハッタン計画によって濃縮ウランを使用した広島原爆とプルトニウムを使用した長崎原爆の実験であった。それが今では原子力の「平和利用」と称して原発稼動と新規設置を推し進めている。
しかし、原子力の「平和利用」の事故が1979年3月28日に起きた
スリーマイル島(米ペンシルバニア)の事故であった。報道機関は「放射性蒸気漏れる米の原発 冷却水ポンプが壊れ」、「炉心破損の疑い 五百人汚染の恐れ 安全装置作動せず 十キロ先でも放射能」,「史上最悪の原発事故に 冷却水漏れで拡大 従業員が放射能汚染か」,「核燃料とけ出す」という見出しを載せた。
これを中尾ハジメ氏(京都精華大学)は「大事件を期待しながら新聞を手にとる読者の貪欲と,自分は安全圏にいるという思いこみという,私たちの例の皮肉な二重構造が顕在化しただけのことではない。原子力発電という,まるで巨大な機械装置のような社会制度に最初から組みこまれているかたよりではないのかと私は思う。たしかにこれはただの直観だといえばそれまでなのだけれど,この制度では人間が主人かどうかはまったく疑わしい」と彼のウェブサイト「スリーマイル島」で語っている。
http://www.kyoto-seika.ac.jp/nakao/index.html
また、1984年4月26日未明、ウクライナ共和国にある
チェルノブイリ原子力発電所(原発)の4号炉で、大きな爆発事故が起った。チェルノブイリから約8000キロ離れた日本でも、野菜・水・母乳などから放射能が検出された。
原発事故後の消火作業や放射能の除去作業に従事した人々は放射能を浴びたがれき瓦礫(がれき)の処理などを手作業で行った。また爆発した4号炉の放射能を閉じ込めるために「石棺」の建設を始めた。従事者の総数は正確には把握されていないが、60〜80万人と言われている。モスクワ・ミチノ墓地では、消火作業に従事した27名の従事者が永眠し、彼らの身体はあまりにひどく被曝していたため、鉛の棺に埋葬され、二度と土に還ることはない。
放射能による汚染は広い範囲におよび、原発周辺だけでなく、200km以上離れたところでも高濃度汚染地域が広がっていた。事故によりさまざまな放射能が大気中へ放出された。
チェルノブイリ原発事故後、1990年頃からこどもたちの間で甲状腺ガンが急増した。爆発により放出されたヨウ素131が子どもたちの甲状腺に取り込まれ、被曝をもたらしている(「チェルノブイリ医療支援ネットワーク」より)。
http://www.cher9.to/index.html
原子力の「平和利用」は今では、濃縮ウランからもプルトニウムからも劣化ウランおよび減損ウランを否応なく作り出し、
劣化ウラン弾として現在の紛争地帯に活用されている。これも「平和利用」らしい。
このような中で、今年、7月16日に新潟県中越沖地震が起きた。
これによる柏崎・刈羽原発事故が起り、その内容が未だに明確になっていない。
しかし、この事故を受けて、報道には二つの流れがある。
その一つが、夏の消費電力量増加への対応と温暖化対策の議論が新聞紙上で活発化した。
「温暖化対 原発頼み」(朝日新聞7月26日付け朝刊)は次のように述べている。
政府は原発稼働率を87〜88%という高目に設定していたが、トラブル隠しなどの影響で03年には60%、昨年も70%と低かった。このような中で、中越沖地震を受け柏崎・刈羽原発が止まり、京都議定書の温室効果ガスの削減目標は「非現実的」と。
「電力カット要請 23件」(朝日新聞8月23日付け朝刊)は、東電の電力供給の綱渡りを表現した。
真夏の午後1時前後の気温の高さと電力供給量の多さは連動している。
このことは例年言われていることだが、今年の高温続きと地震を受け柏崎・刈羽原発の停止が重なり、東電と「随時調整契約」を結んでいる23件の顧客に対して、22日の午後の電気使用を控えるよう要請し、一部企業は生産ラインを停止した。

同時に、緊急時だけ使用が認められている栃木県の塩原発電所(揚水式水力)を稼動させた。そして、生産ラインを停止した企業は「商機逃がす」と不安をのぞかした。
「国内の工場では、原油価格が安かった数年前までに、電力会社を通さず重油を燃料として自家発電するシステムの導入が進んだ。・・しかし、昨年、今年の原油高で発電コストが高騰。電力会社からの購入に戻す例が相次」いだ。
「三菱重工 中国の原発市場に参入」(日本経済新聞9月28日付け朝刊)が載った。
「中国の原発は今後二十年で十兆円市場とされ、東芝傘下の米ウエスチングハウス(WH)や仏アレバなど原発大手が激しく競合している。三菱重工は中国政府が求める原発機器の国産化に全面協力し、米国と並ぶ巨大市場で足場を固める」と。
「原発世界戦略の柱に」(日本経済新聞9月28日付け朝刊)で、上記記事の補足を述べている。「三菱重工は今後十年で海外を軸に原発事業を現在の三倍の六千億円に増す計画。米国向けの大型原子炉の拡販のほか、主に新興国向けとなる中型原子炉の開発では仏アレバグループと提携した。さらに国産化路線を進める中国市場への本格参入には、ハルビンとの提携が重要になる」と。
以上の記事は、原発事故の危険性よりも、原発を稼動しなければならない状況を私たち庶民に押付けているように思える。
世界の投資資金が自由気ままに動き回っている。それが原油高に結び付き、庶民の生活に圧迫を加えはじめている。同時に、投資資金は原発にも投入されている。
しかし、この問題を原発で賄うのはお門違いである。ウラン利用で、世界中に放射能汚染をまき散らすのを無視して、CO2削減や原油高そして私たちの電気使用量の増加を理由に原発推進としている。地震と原発事故を隠して、私たちに対する脅しとして“お前達のために危険な原発を推進しているのが分からないのか”と、新聞記事は語っているように見える。
国家と企業にもそれなりの稼動論理があるとするなら、それは「資本の論理」であり、政府・官僚・資本の「利権癒着構造」である。
このような構造から自由になり、受け入れざるを得ない原発現場での否応ない「貧困」に理解し、反対者も賛成者も被害者となっている事実を明らかにしていきたい。地方の農・漁民や中小零細企業との
関係性を深め、現状把握をしていきたい。
じっと耐えて自らの仕事や楽しみにだけ夢中になっている間に、この「資本の論理」と「利権癒着構造」は深化していく。そしてこの中で生かされているだけになってしまう。

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