現代バレエの振付家
モーリス・ベジャール(Maurice Béjart)が11月22日スイスで亡くなった。80歳であった。

1927年、フランスのマルセイユに生まれた。
最初は舞踊家として舞台に立ったが、1955年の『孤独な男のためのシンフォニー』で振付家として認められ、1959年の『春の祭典』で独自のスタイルを編み出し、世界中に衝撃を与えた。1960年に「20世紀バレエ団」をブリュッセルで結成。1987年にスイスのローザンヌに本拠を移し、現在は「ルードラ・ベジャール・ローザンヌ」を主宰。これまでに映画化された『ボレロ』をはじめ、『火の鳥』、『ペトルーシュカ』、『さすらう若者の歌』、『イサドラ』、『ニーベルングの指環』、歌舞伎の『忠臣蔵』から発想した『ザ・カブキ』、作家の三島由紀夫からイメージを得た『M』や、『シェヘラザード』、『リア王=プロスペロー』、『愛が私に語りかけるもの』などの革新的な振付作品を発表している。
とくにストラヴィンスキーの名曲に乗せた『春の祭典』は、バレエに音楽と演劇の要素を巧みに織り混ぜて独自の総合芸術的世界をつくり上げた。
1993年の演劇・映像部門で世界文化賞を受賞した。

(ロミオとジュリエットより)
そして、彼と切り離せない
ジョルジュ・ドンの存在が大きい。
「ベジャールという名の私の一部は、ドンとともに死んだのだ」(『モーリス・ベジャール回想録 誰の人生か?―自伝・』)
故ジョルジュ・ドンによるエロティシズムただよう名作『ボレロ』は、もともと女性ダンサーによって踊られた作品だった。それを男性であるドンが踊ることによって新たな深みに到達した。「舞踊には男も女もない。性にこだわらない」と言う。
抽象的なイデアを感覚的なかたちとして表現するベジャール美学は宗教、哲学、人種を問わず我々の感性を揺り動かしてくれる。(小田孝治氏より抜粋)

(ボレロより)
私は1990年前後にパリでジョルジュ・ドンの『ボレロ』を見るために、ヨーロッパ出張を仕事に設定したことを思い出した。
高さのある赤い丸い板の上で単調な繰り返しのステップを踏むジョルジュ・ドンと一段下の床でこの丸い板を囲んで徐々に多くなる人たちとのコラボレーションが音楽のボリュウムが大きくなるのに従って盛り上がっていく。徐々に前のめりになる観客の鼓動の一体感がそこにあった。
それから数年して、映画になった『愛と悲しみのボレロ(Les uns et les outres)』のLD(レーザーディスク)を手に入れ、パイオニアのレーザーディスク再生機を買い入れた。この再生機もすでに3台目で、毎年末にディスク全5面を通して第二次大戦の壮大な人間関係を夫婦で観るのを楽しみにしている。

(『愛と悲しみのボレロ』のジャケット)
ラスト場面のラベルのボレロによって、多くの傷付いた人たちは戦後の平和への祈りを捧げている。
4人の音楽家たちヘルベルト・フォン・カラヤン(ドイツ)、グレン・ミラー(アメリカ)、ルドルフ・ヌレエフ(ソ連)、エディット・ピアフ(フランス)の戦争に揺らされた激動の人生を描いている。
1992年11月30日ジョルジュ・ドンはエイズにより世を去った。
モーリス・ベジャールの振り付けを継いでいるバレー団のストラヴィンスキー『春の祭典』ももう一度見てみたい。

(春の祭典より)
私は“生”の美しさを表現するバレーとの強い
関係性を持ち続けたい。

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