―目前の世界的災害―
1992年の国連会議で、「気候変動枠組条約(地球温暖化防止条約)」の締約国会議が行われた。COP1の1995年から毎年開催され、COP3の1997年、すなわち京都会議で先進国に平均5.2%のCO2など温室効果ガス削減を義務づけた「京都議定書」が採択された。
この議定書から米国やオーストラリアは離脱している。
議定書は2012年までの削減措置しか規定しておらず、13年以降の削減措置「ポスト京都議定書」は何も決まっていない。議定書は先進国のみに排出削減義務を課し、中国やインドの発展途上国には課していない。
そして、京都議定書が採択されて10年、COP13のバリ会議が閉幕した。しかし、CO2削減の数値目標は先送りされ、09年末までを交渉期限とする行程表「ロード・マップ」を採択した。
CO2削減の数値目標に最後まで抵抗した三首脳がいた。世界的災害が目の前に迫っているのに、この目標を設定できないまま閉幕を強いられた。
インドネシアの英字紙ジャカルタ・ポストに、米国のブッシュ大統領、日本の福田康夫首相、カナダのハーパー首相の顔写真を並べて、国際合意を妨害する三国を批判する意見広告が掲載された。会場で広告を広げる人の姿も見られた。

意見広告は、タイタニック号を思わせる船に三氏が乗り込み、温暖化で氷山が解けるのを待っているかのような構図である。「私たちは、米国とカナダ、日本に対して、2020年までの(温室効果ガス)排出削減の目標を阻むことをやめるよう強く求めるとともに、ほかの国に対してこれ以上の譲歩を拒否するよう強く求める」というメッセージが添えられている。
国際政策研究グループ「アバズ(ヒンディー語、ウルドゥー語などで“声”の意味)」がよびかけたメッセージに、掲載直前の24時間で178カ国、53,139人が賛同した(
しんぶん赤旗12月15日付け)。
「エミッション経済−5」(朝日新聞12月14日付け朝刊『経済気象台』)で、日本政府の無策を嘆いている。
「・・今年は環境問題の記念すべき年であった。1環境汚染を告発した『沈黙の春』の35周年、その著者レイチェル・カーソンの生誕100周年、・・4オゾン層を破壊するフロンの規制を定めたモントリオール議定書20年、・・6温暖化ガスの削減数量目標を定め、削減メカニズムを開発した京都議定書10周年
残念なことに、世界は有効な対策を見いだせないまま今年も終わる。
それでも、人類が抱える数多くの環境問題の一つに過ぎないとはいえ、地球温暖化では遅々ながらも前進を遂げた。例えば、アル・ゴアらにノーベル平和賞が与えられ、EUの排出権取引は拡大を続け、オーストラリアは政権交代後直ちに京都議定書を批准した。
米国ですら州政府や上院は温暖化規制派に向かい、ブッシュ政権は孤立を深めている。わが国政府は、唐突に『美しい星50』という提案をしたが、環境NGOからは不名誉な『化石賞』を贈られた。環境問題では解決よりは、多く被告席に立ち、断罪されてきた日本政府は、その無策を見透かされ、取り残されようとしている」と。
「細る氷河」「山村に大洪水危機」(朝日新聞11月25日付け)は、ネパール・ヒマラヤの氷河が縮小し、ふもとには、氷河湖の決壊による大洪水の危機にさらされている。氷河はやせ細り、氷河が解けてできた湖が肥大化し数百メートル拡大し、その水圧が増して決壊の恐れを見せている。
この実態を
「地球異変 氷河と生きる」(12月8日〜14日付け夕刊)は、6回の写真でそこでの生活を表現している。
1.集落のみ込む灰色の水(8日付け)

標高4350mの氷河湖サバイ・ツォは決壊して9年が経ち、貯水量の半分をはき出した。そして、その直下には今も荒れ地が広がっている。以前は緑の放牧地であった。水は決壊2時間後には下流30kmに達していた。
温暖化で氷河が解け続けている。そのためネパールにある2323の氷河湖のうち20の湖に決壊の危険性がある。
2.洪水鎮める祈りが日課(10日付け)

氷河湖サバイ・ツォの下流5qにあるコテという集落。洪水で川原には巨木と大小の岩がゴロゴロし、中でも高さ7m、直径10mの巨大な岩の割れ目30pに僧(チベット仏教)が身をよじりながら入り込んだ。岩の割れた壁の両面に経文がびっしり彫り込まれ、この僧は洪水被害がないように祈っている。
そして、彼は「温暖化についてはよく知らないが、自然とともに生きている私たちの暮らしぶりは間違っていない」と。
3.雪男信仰にも世代格差(11日付け)

氷河湖ツォ・ロルパの下流10km。農家の男性がイエティ(雪男)に遭遇したのは76年であった。村の半数がその存在を信じている。10〜20代の若者たちの十数人は「信じていない、足跡さえ見たことない」と。村の僧は「近年は雪が減り、イエティを見る機会がなくなった」と。
4.電気なしで暮らせぬ(12日付け)

トレッキングの拠点村、ナムチェバザールは人口1800人。標高3440mの傾斜地にホテルや商店が立ち並ぶ。「世界最高地の店」。
85年8月、ネパール政府が建設し、完成まであと1ヵ月だった発電所が洪水で破壊された。川の上流にあった氷河湖ディグ・ツォの決壊が原因で、14の橋も流された。それから10年以上経って、住民が総工費の85%を出資して近くの村に造った発電所が00年に始動した。
しかし今、村の上流30kmの氷河湖イムジャ・ツォが拡大し、その決壊を村人が心配している。
5.やせて踏まれる神の山(13日付け)

10月下旬、エベレストに端を発するクンプ氷河の末端で、白く荒れた土石流の痕跡を見つけた。9月に小さな氷河湖が決壊した。氷柱が縮小し、なだらかになった影響で、アイスフォールのルート工作に70年代に100基を必要としたが近年では70基で済む。
05年に欧州のヘリコプターが無許可で山頂に接触し、「最高地点着陸の新記録」を主張。
06年にはネパール人が山頂で裸になって「世界最高所のヌード」を誇示。
今年、オランダ人が短パン1枚で登頂に挑戦。
このような珍事が続いている。
6.最高峰近くでも湖拡大(14日付け)

氷河湖イムジャ・ツォは世界自然遺産に指定されたサガルマータ国立公園の中にある。この下流にはわずかな平地に集落とイモ畑が広がる。
夏に雪が降るヒマラヤは、欧州アルプスよりも温暖化に敏感とされる。「湖も村も国立公園内なのに政府は無策だ。外国人客の多くも、山の雪が減り、氷河湖が太っていることを知らない」と山小屋の経営者は言う。
ヒマラヤで清掃登山を続ける野口健さん(34)は「来年は洞爺湖サミットがあります。氷河、氷河湖問題の解決を一歩でも進めてほしい」「気候変動に国境はない。氷河湖対策で、ぼくにも、日本にも何かができるはずだ」と。焦燥感を抱えつつ、野口さんは25日、またイムジャ・ツォへ向う。
このような環境変化が急激に進み、強烈な生活環境に直面している人たちが世界中にいる。それにも拘らず、COP13妨害3人組を容認する国家がある。そして、未だに戦争で利益を上げようとする企業やそことの癒着で甘い汁を吸う官僚や政治家がいる。彼らはそれでも国家・国民のためと平然と言う。
この構造を許さない人たちとの
関係性こそ大事である。
(つづく)

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