私も企業経営者として金融機関との係わりも多く、金融機関の汚さも知っているつもりである。それだけに、金融機関を利用するが利用されないようにすることを心がけている。特に、営業での粗利益率を圧迫しない金融機関金利を常に望んでいる者である。
朝日新聞の声欄に「銀行のPRも都知事考えて」(2月25日付け)が載った。
「東京都は新銀行東京に400億円を追加支援すると発表しました。銀行をつぶせば元も子もない、との石原知事の考えを支持しますが、ただお金を追加するだけでなく、都民に向かって新銀行東京を積極的に利用するようにPRをしてほしいと思います。
都民がそっぽを向いていれば、業績は上がりようもないと思います。私たちに積極的に預けてほしいのか、借りてほしいのか、他の銀行と比べての利点、どういう商品があるのか、少しも分かりません。
石原知事は記者会見などで、新銀行東京に新口座を開き、とりあえず1000円ずつ預けて欲しいと訴えれば、知事を応援する多くの都民が新銀行東京のためと思って口座を開くかもしれません。
そうなれば銀行の基盤が固まり、営利活動が軌道に乗り、知名度も上がるでしょう。まずはそういう都民への働きかけが必要と思います」と。
これを投稿した女性が石原氏を応援しているかどうかではなく、新銀行東京が都民のための銀行であると思って述べたものである。
そこで、この銀行の中身と他の銀行、ノンバンク、カードローンと比較をしていきたい。
ここで、先ず
設立経緯と現状と石原答弁(「ウィキペディア」「東京新聞」「しんぶん赤旗」「朝日新聞」「日本経済新聞」より)を見て置きたい。
2003年、東京都知事石原慎太郎の主導で東京都が策定した「東京発金融改革」を旗印に「資金調達に悩む中小企業を救済すること」を理念として誕生した。
中小企業向けの融資、一般顧客のICカードの活用を中心とした利便性の高い金融サービスを東京都内で提供できる銀行として、BNPパリバ信託銀行(1999年設立)を2004年4月1日に買収し、2005年4月1日に開業。
創立時の経緯から信託銀行に区分されているが、金融庁の分類では「新たな形態の銀行等」として、ネット銀行(ジャパンネット銀行、セブン銀行、ソニー銀行、イーバンク銀行、住信SBIネット銀行)など、新規参入銀行とともに位置付けられている。
石原氏の選挙公約(中小企業対策)に基づき、そのリーダーシップの下で肝煎り同然に設立されたことから、「石原銀行」とまで評される。2008年2月現在、東京都の出資比率は84.22%を占めている(
ウィキペディア)。
2007年11月30日に、2008年3月期の中間決算を発表した。同時に、森田徹から後任に東京都港湾局長の津島隆一を代表執行役に選任したことが発表された。
この中間決算では、累積赤字が936億円まで膨れあがり出資金全体の8割に迫った。外資系投資ファンドと都が200億円ずつ折半出資することで事態の打開を進めていたが、外資系ファンドが出資を見送る公算が大きくなり(
東京新聞2月13日付け 朝刊)、民間の出資企業も監査法人の指摘で引当金を積む事態と認定され、結局、東京都単独で400億円の追加出資を中心とする経営救済策を実施する方向になっている(
東京新聞2月14日付け 朝刊)。
2008年2月20日には、都への400億円の増資要請などの再建策を発表し、拠点を1箇所に集約する方針を固めた。
本来は中小企業を救済するはずだったが、貸出総額に占める中小企業の比率は、2006年3月(開業初年度末)の62.5%をピークに、2007年3月は51.5%、2007年9月末時点の貸出残高2218億円に対して中小企業向け融資は1046億円と貸出金全体の47.2%と半分を切るまでに低下している(
しんぶん赤旗1月17日付け)。
このような中で、都議会で石原知事は400億円追加増資以外に「ほかに選択肢がない」と述べ、「追加出資は現状では認められない。条件は再建計画の信頼性」(公明)、「経営悪化を旧経営陣に責任転嫁している。知事の責任は?」(民主)、「資材を投げ打ってでも責任を取るべきだ」(共産)と厳しい批判がでた(
朝日新聞2月27日付け)。これに対して、「今とるべき最大の責任は、新銀行東京について最悪の事態を招来しないこと。追加出資は苦渋の選択」と石原知事は述べた(
日本経済新聞2月27日付け)。
新銀行東京は既に中小企業向け融資が1046億円と貸出金全体の47.2%と半分を切っている事実から、金融機関としての底知れぬ利潤追求の思想が入り込み、結果としてそれに失敗したことを示したに過ぎない。
先ず、各銀行の貸出金利(08年2月時点)を見ていく。
新銀行東京の融資金利は年率14%(融資額は500万円まで)である。
ちなみに、中小企業が
国民生活金融公庫(国金)から普通貸付という名目で借入する金利は
2.2%(返済7年以内)である。およそ、
大手都市銀行や大手地方銀行の貸付金利は国金金利を上下して
1.5%〜8.0%である。中小企業の経営状態によってこの金利は異なる。私が知る中小企業で聞く限り、2.0%〜4.0%(返済期間は1年〜5年)が中心金利である。
では、
ノンバンクやカードローンの金利はどの位か示す。
金融機関名 実質年率 貸付限度額
住信SBIネット銀行 6.0〜16.0% 500万円
オリックスVIPローンカード 5.9〜15.0% 500万円
キャッシュワン(三菱系) 12.0〜18.0% 300万円
オリックス信託銀行ローン 10.0〜14.5% 500万円
アットローン(三井住友系) 15.0〜18.0% 300万円
モビット(三菱系) 15.0〜18.0% 300万円
プロミス(三井住友系) 7.9〜17.8% 300万円
武富士 13.5〜18.0% 300万円
ディック(シティバンク系) 12.88〜17.88% 300万円
DCキャッシュワン(三菱系)12.0〜18.0% 300万円
アコム(三菱系) 12.0〜18.0% 300万円
みずほ銀行カードローン 7.6% 200〜500万円
三井住友銀カードローン 6.0〜12.0% 10〜500万円
東京スター銀おまとめローン 10.5〜14.5% 50〜1000万円
日本振興銀ローン 5.0〜15.0% 100〜4000万円
新銀行東京の融資金利14%(融資額は500万円まで)は上記ノンバンクやカードローンの金利と同等金利である。
ここで
重要な視点を二つ挙げたい。
第一に、中小・零細企業の経営でどれだけの粗利益率があるのか、を考えなければならない。これは業種やポジショニング(製造業か卸業か小売業か)によって異なる。
卸業で見ると、小売店の在庫を抱えながら20%以上の粗利益率を確保し、在庫回転率が2ヶ月以内であると銀行から優良として融資が受け易い。私が調査した範囲では、中小・零細企業の粗利益率は8%〜25%である。
そこで、新銀行東京やノンバンクやカードローンを利用せざるを得ない企業の粗利益率は8%〜15%位だと考えられる。ただし、発行手形などの支払日に現金が用意できない場合に急遽これらの金融機関から借りてその後即座に返済するときに用いざるを得ない。他方で、わが社にも毎日のように上記以外の聞いたことがない金融機関からFAXが入り、即座に融資をするというものも多くある。そこに示された金利は上記と変わりはないが、上記金融機関への返済に困っている人たちからもう一度骨の髄まで吸い上げる仕組がそこにある。
もし、この種の金融機関に質問したら、“俺たちは本当に困っている中小企業の救いの神だ”と言うだろう。
商売を続けていれば、間違いなく、発行手形などの支払日は毎月やって来る。この高利の返済を終えても直ぐに次の融資を受けざるを得ない。
粗利益率が十数%の中小・零細企業にとって、ノンバンクやカードローンの金利は稼ぎの全てを取り上げる金利である。金利のために働き続ける中小・零細企業がここにある。
「新銀行の金利に見合う利益を出せる企業がほとんどない」(
朝日新聞2月29日付け朝刊「中小企業融資5割弱」より)のではなく、この金利を受け入れざるを得ない中小・零細企業の切羽詰った状況に付け入る新銀行東京が見えてくる。
第二に、ノンバンクやカードローンの背後に隠れて大手金融機関の飽くなき利潤追求が見えてくる。これが青息吐息の中小・零細企業をターゲットとしている。これと同じ動きが都民の血税を利用した新銀行東京であった。「市場経済がグローバル化する中で、世界を駆け巡る巨大な投機的資金、株主・投資家の期待に応え企業価値の最大化を目指す企業経営、それらの帰着先としての業界再編と超巨大企業による価格支配、これらが重く消費者にのしかかり始めた」(
朝日新聞2月28日付け朝刊「グローバル化と消費者」より)。
企業価値を上げ続ける大手金融機関は合併・統合をしながら利益を集中する。この「美しい行動」の背後で泣かされ続ける中小・零細企業とそこで働く人たちの犠牲はより一層大きくなっている。
新銀行東京の最近のニュースから上記二点が浮かび上がってくる。「現代大手銀行の錬金術」(
しんぶん赤旗2月28日・29日付け「投機マネーの暴走を考える」より)の真似事の失敗が新銀行東京であろう。この銀行を生き返らすには、大手銀行と同じ陰湿な行動を背後において
新銀行東京のサラ金化しかない。そして、取り立て業務を暴力化させなければならない。こんな行動を都民は認めるのであろうか。
「資金調達に悩む中小企業を救済すること」を理念として誕生した新銀行東京は、この金利水準を見た限り、零細企業の生き地獄を推し進める効果しかない。
この銀行の生き残りのために、投書で言う「とりあえず1000円ずつ預けて欲しいと訴えれば、知事を応援する多くの都民が新銀行東京のためと思って口座を開くかもしれません」などというレベルの話ではない。
中小・零細企業の実態を把握した政府施策が求められる中で、政府の弱者切捨て政策が弱者をいじめる新銀行東京として表現されてきた。この実態を知りつつ、もしくは知ろうとしない口先だけの都議会与党の責任は重大である。
このような政党の責任を追求する立場の人たちの
関係性を強め、怪しげな銀行に関わる必要のない中小・零細企業を応援したい。

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