ついに、バブル後の株価最安値更新をしてしまった。そして、株価少し戻すも景気悪化がヒシヒシと生活を脅かしていることを感じない者はいない。
わが社のやる気十分の若い社員が次のようなことを言い出した。
社員:社長さ! この景気や販売不振は俺のせいじゃないよね
社長:そりゃそうだ
社員:くだらねえオヤジどもがカネに狂い、ギャンブルをして大失敗をしたのに、何で俺たちが責任を負わなきゃならないんだ
社長:・・
社員:それに、古舘一郎(テレビ朝日、報道ステーションのニュースキャスター)が連日経済のマイナス面ばかり強調しているから、いよいよおばさん達は買わなくなるんだよ。ああいうカスを外して、明るく景気の良いニュースを流さなければ誰もモノを買わなくなるよ。
こんな会話が突然飛び出した。
50前後の社員はみんなニヤニヤしながら聞いていた。
この若者は、高校中退で今の仕事に真剣に向かい合って20年を超えた。彼は自分が犯していない犯罪を押し付けられたという印象を受けている。まさに、「冤罪」状況を言い当てている。仕事一筋の彼が、今の世相に腹立たしく肌で感じているのだ、と社長は感じた。
ところで、「Yahoo!掲示板」に株のデイ・トレーダーが書き込みを連日大量に行っている。
この中に、株価が落ちる度に「古舘が悪い」という書き込みが半月前まで多かった。しかし、今はいない。それは客観的に真実であり、すでに常識となったからである。
この論理は、古舘氏が景気の悪さを言わなければ株価は落ちない、ということらしい。同時に、真実を言うことは株価下落を推し進めることをデイ・トレーダーは知っている。だから、みんな黙っていてもらいたい、自分だけの情報に留めておきたい、という安易さの表れである。誰かを責めることで、自らの損失に溜飲を下げようとする行為でもある。
サブプライムの問題から発した株価暴落であるが、内需の落ち込みはそれ以前からあるのに、アメリカの無謀な消費を企ててきたギャンブルが崩壊して外需が落ち込むことによって内需の弱さが露呈してきたに過ぎない。
「ゆがみ解消へ市場動く」(朝日新聞10月28日付け朝刊)で、この状況を三国陽夫氏(アナリスト)は「東京市場は日米の政策で極度にゆがめられてきた・・。ゆがみは二つ。日本経済の極度の外需依存と、東京市場を『日本の金を使う米国』が支えてきた」。「
80年代までは輸出企業の成長が賃金に反映されて内需も拡大した。だが90年代以降、低賃金国が台頭。輸出で成長したい日本は賃金の伸びを抑えた。輸出に悪影響を与える円高を避けるため、稼いだ資金をドルのまま運用することで、過剰消費を続けたい米国に戻した。日米は一緒にバブルのダンスを踊った」と。
この根源は、真面目に作り、真面目に販売し、安心して消費するという構造を抜きにした、カネがカネを生むという虚業の巨大化である。
「経済格差」や「地域格差」をなくさない限り、弱者を犠牲にしたギャンブルは続く。中層や下層から吸い上げた貯金や低賃金で次から次へとギャンブルを続けてきたのだ。カネ余りが次から次へとガソリンの値上げや穀物の値上げや金の値上げを作り出し、その終焉は新たな投資先を探して右往左往している。そして、ニュースでは、このカネ余りは新たな行き先を探しているという。このカネは弱者に返すべきものであるとメディアは言わない。そして、このカネ余りが抜けた穴を税金で埋めようとしている。より一層消費意欲が減退するのは当然である。
相変わらず危ない食品が市場に出回り、「偽装」も続いている。
「その食べ物、国産にこだわる?」(日経新聞10月25日付け朝刊「日経PLUS1」より)で、緊急調査を行っている。
国産に できれば こだわらない
こだわる 国産がいい
ホウレンソウ 61% 28% 11%
ウナギ 47% 35% 18%
冷凍ギョーザ 50% 30% 21%
冷凍インゲン 40% 29% 31%
1月に農薬混入問題で未解決の輸入冷凍ギョーザがあった。そして、この調査で「こだわらない」と答えた人たちの割合は、冷凍インゲンの30%はあるもののその他は20%以内である。
「では、どのような条件なら輸入品で代替するか。調査対象のうち砂糖を除く五十三品目で『国産より品質や味がよければ』が五割を超え、『価格が安ければ』を上回った。輸入品でも価格より品質を重視する姿勢が浮かんだ」とこの記事は述べている。
しかし、この統計の解釈には怖さがある。
「国産にこだわる」人が50%前後いるが、実際に購買行動を起こすときに必ずしもこだわれない人が同時に50%前後いると解釈ができる。要するに、「できれば国産がいい」と「こだわらない」を合わせると50%前後で、「こだわりたいが金銭的にこだわれない」ということだ。
実際に、身の回りの人と安全な食品について語ると、誰でもが“国産がいい”と言うが、実際には国産を買い続けることはできない。子供の分だけは国産を買うという人が多くいる。毎日の家計に追われている人たちが『価格が安ければ』について行くしかないのである。ましてや、無農薬野菜や有機野菜に手を出せる人たちは裕福である。
先日の「農と平和の祭典」で宅配をしている生協職員と話したとき、経費的に“無農薬野菜や有機野菜を買い続けることは難しい”と伝えると、彼女は“そのように言う方がとても増えています”、“一部分でいいですから利用してください”、“この野菜たちを育てている農家の人たちを応援しないと危険な食物だらけになります”と言われた。もっともであるが、根幹の「貧困」をどうにかしないと頑張っている農家も応援できなくなりそうである。もしくは、富裕層にしか売れない物を貧乏な農家が作っているという構造が固定化しそうである。
このままでは、無農薬野菜や有機野菜を生産する農業は庶民にとっては虚業になってしまう。
「乱獲続き やせ細る海」(朝日新聞7月23日付け朝刊「環境元年第4部食料ウォーズ」より)は水産資源の枯渇の深刻さを伝えている。

トロール船で取られた魚には、大量の小さい魚が交ざる(7月23日asahi.comより)
「欧米や中国を中心に魚の需要が伸びる一方、保護や管理が行き届かない。世界の主な水産物の4分の3以上が、今後も漁獲を維持できるかどうか限界に達している。水産物の乱獲は、日本の食卓とも結びつく」。規制の緩い海にしわ寄せが行き、タイの水産関係者は「規制を守るようにすべきだが、漁民は生活がかかっているし、小さな魚でも必要とする工場がある。どうしようもない」と語り、「タイ湾で、以前5日ぐらいで取れたのと同じ魚の量を取るためには、今は10日かかる」と。
この記事の中で、総務省調査の資料から、日本人一人当たりの家庭での消費量が示されている。
65年 07年 増減
マグロ 574g 881g ↑
サケ 438g 964g ↑
ブリ 339g 697g ↑
アジ 1924g 570g ↓
イワシ 379g 304g ↓
この表から明らかなように、養殖が行われているマグロ、サケ、ブリは養殖が行われ、アジ、イワシは行われていない。言い換えればまさに「やせ細る海」なのである。

トロール船で取られた魚には、大量の小さい魚が交ざる(7月23日asahi.comより)
ところが、
「冷凍サバ輸入量12倍」(日本経済新聞9月26日付け朝刊)は驚くべき事実を記事にしている。
最近、日本でクロマグロの養殖が拡大している。そのエサに中国産冷凍サバが利用され、大量に輸入(1月〜7月)されている。
06年 07年 08年
中国産冷凍サバ輸入量 674トン 506トン 5885トン
ただし、エサ用のサイズは10〜20cmほどの小型サバで、中国近海で漁獲される。小型であるために一般食用ではなく、クロマグロ養殖のエサに利用されている。ちなみにマグロ1kg太らせるのに15〜16kgのエサが必要とされ、ブリ養殖の7kg前後を大幅に上回る。大手水産会社はこのような養殖施設を増やしている。サバの輸入平均価格は昨年が350円/sであったが、今年は39円/sで10分の1となっている。以上の事実を小さな記事で述べている。
この輸入価格急落の実態は食用ではなく、エサ用として輸入急増がされていると解釈できる。
大手資本の利益獲得競争は「やせ細る海」を知りつつ、平然と“漁獲量の減少に対応して養殖事業を拡大する”と言うに違いない。それはエサ用として成魚にならない小さな命を犠牲にして成り立つ事業である。一層「やせ細る海」を進める。
養殖という新たな生産量を生み出す画期的事業に見せて、実は本来の水産資源の12倍を台無しにしている、まさに虚業である。カネがカネを生む虚業である。
「日経平均 26年ぶり安値」「東証 バブル後最安値」などが各紙28日付け朝刊1面であえいでいる。
そして、それへの対処法として、政府は「証券優遇税制」の延長を言いだした。定期預金の金利には税金が20%かかるが、証券による売買利益や配当利益は10%ですむように仕組まれている「証券優遇税制」である。
そして、
「日本単独でも為替介入必要」(朝日新聞10月28日付け朝刊)を御手洗富士夫(経団連会長)は言い出した。これによって、キャノンもトヨタもアメリカで売上を伸ばすことができる、と考えるからである。まさに、三国陽夫氏(アナリスト)が言う「ゆがみ」の是正への抵抗である。
経団連の言うことは政府への圧力行動である。すでに日本は1兆ドルを保有し、毀損し続けている。日本と中国が米ドルを買い支える以外にこの状況を逃れることはできないという評論家がテレビでいっぱい出現している。またまたアメリカのバブルを作り出そうとする狙いであり、このために税金は投入するが内需の拡大にソッポを向く超大手企業の言い草である。言い換えれば、この企業群はリストラを進めて低賃金を固定化しようとする分かり易い言動である。
未だにこの虚業を推し進めようとする超大手企業に賛同して、政策を作ろうとする政・官・業癒着体質をシッカリ見る必要がある。口で物作りの大切さや内需の拡大を言いながら、本質は虚業による富裕層の利益しか頭にない者どもである。そして、経済恐慌が近づけば、庶民の不満を蹴散らかせて確実な利益がとれる戦争への道である。
カネがカネを生む虚業を推し進める限り、地球環境を守れないだけではなく、物質的にも心的にも大多数の庶民を貧困に落とし込み、ワクワクさせることはない。
労働力以外に売るものを持たない庶民こそ、医療費にお金をかけられない人たちこそ健康が大事である。だから、無農薬・有機野菜や穀物、僅かな沿岸魚や放牧で育てた肉類こそ、この人たちに安全で安い食材として供給されなければならない。
経済的脱皮なしで下層はいつまでたっても下層である。決して心のもち様で解消すべきではない。これを実現しようとする人たちの
関係性を強めていきたい。

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