「新自由主義」による拝金主義は下層の汗まで吸い上げようとする金融虚業(返済能力のない下層にまで無理矢理カネを貸す)であった。そして、この虚業を基盤とした大企業による収益増大行動は壮絶な社会的差別を繰り返し、年末年始の「派遣村」として表面化した。
この「派遣村」と『カムイ伝』(白土三平の劇画)の重なりを表現する早野透氏(朝日新聞1月26日付け朝刊「ポリティカにっぽん」)や田中優子氏(朝日新聞1月28日付け朝刊「ひと」)がいる。最も底辺にいる被差別民がここに出てくる。
そして、この被差別民に対して「自己責任」論を振り回し、庶民の思考停止状態を作り出し、個々をバラバラにしてきた。これへの抵抗運動の一つが「派遣村」ではないだろうか。
「『自己責任』の土壌について」(カモブログ)を参照してください。
http://blue.ap.teacup.com/perie/
「子どもと『貧困』」(しんぶん赤旗1月26日より4回連載)で、厚生労働省資料を提示している。「大変苦しい」と訴えている全世帯は24.0%で、児童のいる世帯で26.3%、母子世帯で48.5%を示した。
この大人社会の格差と差別で、最も弱い子どもは物心両面で悲痛な叫びを上げている。親に頼れない小学生(4年生)は給食のない夏休みに、買い物袋をさげた通りすがりの人に「食べ物ちょうだい」と。授業を妨害したり暴力で人をねじ伏せようとするマサヤ君(3年生)は朝食や夕食をちゃんととっていないようである。そのマサヤ君が二泊三日の自然教室に参加して、見違えるようになって帰ってきた。三度の食事と布団と風呂がある生活。「オレ、天国だよ」と。水道やガスを止められて、校長がその子の洗髪を更衣室シャワーでやることも。
そして、校長は「子どもがおとなへのあこがれをもてるようにすること、おとな自身が夢をもって子どもに語れることが大切です。自分が勉強することが将来どのようにつながっていくのかを、子ども自身が描けるようにすることです」と。
このような状況下で4人の学者たちは「新自由主義」をどのように見ているのか。
@ デビッド・ハーベイ氏(ニューヨーク市立大学教授)の場合(朝日新聞1月28日付け朝刊「インタビュー経済危機」より)
:――あなたが批判してきた富者優先の「新自由主義」は今回の危機で終わりますか。
「個人の自由や私有財産を重んじる思想と、政府は市場に介入してはならないとする経済学が結びつき、上層階級により多くの富を分配してきたのが新自由主義だ。実際には政府の力を利用して金融機関や富裕層の利益を優先し、賃金を抑え込んできた。そういう新自由主義は終わっていない」
――(オバマ)大統領も新自由主義の影響を免れないと?
「よほど強い社会的圧力がない限り、そうなる心配がある。現に、政府資金を使って進めている金融機関の統合は、新自由主義的な支配力の再生・強化につながってゆくだろう」
――米国主導のグローバル化が挫折した後の世界像は。
「多極化し、不安定な構造になる。それでもユーロが頼りないことや、米国が強大な軍事力を維持していることから、投資家が安全な場所に資産を置こうとする限り、ドルは比類なき準備通貨としての地位を維持するだろう」
A 佐伯啓思氏(京都大学教授)の場合(朝日新聞1月26日付け朝刊「資本主義はどこへ」より)
:――佐伯さんは、保守の立場から、グローバル経済に警鐘を鳴らし続けてきました。今回の経済危機の原因をどう見ていますか。
「長期的に見ると、20世紀を通じて続けてきたアメリカ型資本主義による経済発展の行き詰まりでしょう。資本主義の本質は、物的生産力を無限に拡張していくことにある。だが先進国では70〜80年代に社会が成熟段階に達してしまい、人々がさほどモノを欲しがらなくなった。その結果、製造業に投資しても大きな利潤が出ないので、余ったカネを金融市場に集めてバブルを常に起こすことで、経済発展を主導するしかなかった」
――今後、アメリカの資本主義はどこへ向かうのでしょうか。
「同じことを繰り返すのではないかなあ。アメリカ政府は危機を乗り切るために、巨額の資金を市場に投入しているが、あれは危機の先送りでしかない。すでにカネが過剰になっているところへ、さらにカネをつぎ込むわけだから、次のバブルは規模がより大きく、危機はもっと深刻になる」
――資本主義が無限に拡張を求めるなら、資本主義経済は決して安定しないことになります。
「実体経済は、資本主義だけでは成り立たない。食料、労働力、医療、教育、資源・エネルギー、自然環境、道路や交通機関などの社会的インフラ、知識や情報といった広い意味での公共財は、市場のメカニズムに完全に組み込むべきではない。金融システムも本来は公共的なもの。銀行がなければ我々は生活できない。そうした土台の上に『ゆったりした』資本主義経済が成立する」
「構造改革や新自由主義というのは、まさにその土台を商品化・市場化しようとした。金融を過度に市場化したことでバブルが起き、労働では派遣や格差問題が起きた。資源では、原油価格が乱高下する状況を招いた」
――佐伯さんは、今後の日本経済は「脱成長型」を目指すべきだと主張されていますね。
「・・開放経済の中で、できるだけ国内で経済を循環させる。過剰な生産能力を少しずつ落とし、長期的に軟着陸させる」
「ただ、そのためには国民の意識の変化が必要。小泉政治の最大の失敗は、政治を人気投票にしてしまったことだ。自民党も民主党も、次の選挙が怖いので、景気回復を唱えざるをえない。国民がもっと長期的な視点で政治家を選ぶようにならないと、国内市場中心に低成長でやっていくという政策はとてもできない」
――しかし、グローバル企業になったトヨタやソニーを、国内市場中心に戻すのは難しいのでは。
「トヨタやソニーは、もう日本の企業ではないと考えた方がいい。グローバル企業は存在してかまわないが、日本経済がそれに依存しすぎるのはまずい。国内市場で自給的にやっていける企業を育てていく。日本的経営の再構築も必要だ。株主の利益だけでなく、多面的な利益を見て、雇用もできるかぎり守っていく。アメリカ型の株主中心の経営では、短期的に株価を上げるため、株式市場でバブルをつくるしかなくなる」
B 伊東光晴氏(京都大学名誉教授)の場合(朝日新聞1月11日付け朝刊「資本主義はどこへ」より)
:――ケインズなら現在の不況をどう見ますか。
「彼が批判してやまなかったのは、このような事態を生んだ新自由主義的な経済体制とそれを後押しした経済学です。・・」
「着目するのは、市場中心主義が生んだ投機の弊害です。投機が順調な経済の流れに乗った泡なら害はない。しかし大きな渦を巻き、経済社会を飲み込み出したら、手に負えないものになる。『一般理論』でそう書いています。・・」
――どんな不況対策を提案しますか。財政出動は。
「・・財政出動は、不況の緩和策にはなるでしょう。・・これだけ大きな不況は、すぐに手に負えるものではない。アメリカの不良債権による損失が、公共投資で補えますか」
――事態は深刻です。日本でも企業が次々と大幅減益や人員削減を発表しました。
「・・確かに財政支出を増やせば、その分だけは一時的に生産水準が上がります。しかし、その効果は減衰します。景気を回復させるためには民間投資が誘発されなければいけません。リストラ中の企業が、そんな投資をするでしょうか」
「公共投資の多くは土木建設です。新幹線を造って自動車やカメラが売れますか? (アメリカン・ケインジアンの)サムエルソンやクルーグマンが言うようにしゃにむに政府需要を増やしたら、経済はゆがんでしまいます」
――派遣労働者をはじめ、すでに不況で苦しんでいる人が大勢います。
「ケインズは派遣労働など想定していませんでした。これは日本と韓国ぐらいにしか存在しません。派遣労働を政府が認めたことは、中間搾取をなくすという戦後の労働政策の原則の崩壊です。本来、職業紹介は公的部門と学校以外はやってはいけない。それなのに政治と実業界が壊してしまった。国際競争が大変だ、コストを下げる必要がある、などとグローバル化を理由にしますが、そうなら世界中が導入しているはずです」
――では、ケインズはどんな失業対策を論じますか。
「規制緩和がこんな事態を生んだと考えるでしょう。『派遣切り』された人や失業者に対し、生活保護に相当する額、例えば月12万円程度を渡したらどうですか。100万人で年に計約1兆5千億円。ばらまきの定額給付金をやめれば実現できます。月10万円の派遣労働なんかに行くな、と。そうして派遣をやめさせていきます」
C 伊丹敬之・丹羽宇一郎共著『まずは社長がやめなさい』(四谷ラウンド2001)には、この金融不況になる以前(今から8年前)での対話が書かれている。
伊丹敬之氏はこのとき一橋大学教授で今は東京理科大教授であり、丹羽宇一郎氏はこのとき伊藤忠商事社長で今は会長になっている。
ちなみに、私は2002年の学会で『投機的・延期的在庫調整』を発表したときに、司会を伊丹敬之氏がしてくださり、尚且つ、研究室の大学院生を動員し“目の前にいる実態をしっかり見なさい”と彼らに伝えていたことを思い出す。この言葉は、夜の懇親会で一橋大学の大学院生たちから聞き、“誰かが書いた資料や統計だけを見ないで、足と眼と耳で実態を感じ取れ”と言われて中小企業のオヤジの話を聞きに来たそうだ。
(p.68―69)
伊丹:グローバルになってきた資本主義の我儘とか弊害というものをどういう形で抑えていくか、日本という国で生まれ育ってきた企業にそれができるのか、そういう我儘抑えにどういう貢献ができるのかということですが、これは非常に大切な話だと思うんです。丹羽さんが先程からおっしゃっているように、共産主義が崩壊して一番困っているのは資本主義だと(笑)。逆説的だけれどその通りだと思います。自分の反面教師として、チェックの鏡として使っていたものが、崩れてしまったということなんでしょう。それである人がチャールズディケンズ・キャピタリズムと呼んだような、本当に貧富の差が激しくなる、金儲けにみんなが走り回るような、そういう世の中になりかねない火種を今持っているわけです。実際、国際資本市場の動きというのはそういう動きだと思います。
丹羽:カウボーイ資本主義などという人もいるんですって?
伊丹:カジノとかカウボーイ資本主義とかいうんですよ。そんな世界に向かっている時に、日本のようにちょっと一風変わった資本主義をやってきている国というのは、案外貢献できるのでないかと思うんですね。
(p.71―72)
丹羽:日本はどちらかというと、組織的な部分があると思うんです。・・人間が生きているのは感動や仕事の達成感を得たいからで、金だけのためではないと日本人は思っているのです。
アメリカの一番弱いところは、その部分なのです。シリコンバレーでも実はそういう問題はもう起きているんです。アメリカの拝金主義のキャピタリズムというものの限界が当然あるわけで、なぜなら働いている人達の心のよりどころというのは本来仕事の達成感や感動を味わうことにあるはずなのですから。
伊丹:・・
丹羽:・・今の僕の経営者としての一番の喜びというのは、株主や社員に感動とか喜びを与えること。・・
伊丹:株主なんか感動してくれませんよ、社員は感動してくれるかもしれないけど。
丹羽:株主も配当を増やしたらしていただけるかな。
伊丹:文句を言わなくなるだけですよ。
丹羽:・・アメリカの資本主義の真似をして、カウボーイ・キャピタリズムのように激しくストック・オプションをするような方向に走って行くのは危険だと思うのです。
伊丹:・・グローバル資本主義との関係で言いますと、金がやたらと速いスピードでグローバルに動くようになったからこそ、日本のような一見のろまな仕組みを一方で持っておかないと、人間の社会は分解してしまうのではないかと思うんです(笑)。
(p.80―81)
伊丹:・・アメリカの投資家ジョージ・ソロスが・・言ってまして、国際グローバル資本主義というのはそのまま放っておくと、本当に利己的な金の追求に走って、それがシステム全体を極めて不安定にする。誰かが、ぽっと儲け始めるとそこにものすごいスピードでどーっとなだれ込んで、普通の人間の知恵ではとても無理なことをやるから崩壊するという話なのです。・・
丹羽:なるほど。
伊丹:・・いったい企業は誰のものかなと考えてしまうのです。株主のいいなりに、はいわかりました、と従っていては、結局最後に行き着くところは拝金主義になってしまう。
8年前に伊丹敬之氏はアメリカのカジノ資本主義に対して「日本のようにちょっと一風変わった資本主義をやってきている国というのは、案外貢献できるのでないかと思うんです」と語ったが、今では残念ながら日本資本主義もカジノ資本主義にズッポリ入り込んできたことが分かる。
同時に、伊藤忠の丹羽宇一郎氏は「日本はどちらかというと、組織的な部分があると思うんです。・・人間が生きているのは感動や仕事の達成感を得たいからで、金だけのためではないと日本人は思っているのです」とこのときに述べていたが、現在の派遣切りについて経営者として・経団連の一員としての意見をメディアで述べてもらいたい。
以上の学者さんたちは、この金融不況以前からこの事態を予測していたし、オバマ・アメリカや麻生・日本の不況対応施策を評価していない。言い換えれば、この両者の施策によって、もっと大きなバブルを作り出す可能性を示唆している。
それに、最も大事なことは経済格差を広げないこと、企業は株主のためよりも従業員のためにあることを述べている。
中でも特に、伊東光晴氏の「『派遣切り』された人や失業者に対し、生活保護に相当する額、例えば月12万円程度を渡したらどうですか。100万人で年に計約1兆5千億円。ばらまきの定額給付金をやめれば実現できます」は極めて具体的であり、それこそ景気回復に結びつく。
あくせくと働く人たちとじっとこの社会の様子を見ている学者(御用学者でない)の
関係性を増すことは大事である。

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