経営者にとって最も重要なことは、市場変化や景気変動を素早く読み取り、それに対応することである。それによって、被害を最小限に抑えるもしくは販売の機会損失がないように会社を稼動するのである。
言うまでもなく、素材仕入れから完成品の生産までにそれなりの時間がかかるため、一定の賭けも入るが、それなりの見通しを基に素材仕入を行う。
ところで、今回の金融危機はリーマン・ブラザースが昨年9月に倒産したことから始まった、とメディアは伝えている。実際に、10月の株価(日経平均)が8000円台に急落したことと合致している。
異業種交流会でも、リーマン・ブラザースをアメリカ政府が破綻させなければこんなことにはならなかったとオヤジたちは言っていた。
実際に商売をしていると、様々な変化に遭遇する。
この先、A商品は伸びるが、B商品は先行きがなさそうだ。そこでBをB’に変更した方が商品寿命は長くなる。このような感覚や決定は素材の仕入先や製品の売先との会話や取引量の変化が生み出す。だから、「
関係性」が重要になる。真実を伝え合う「
関係性」である。おべんちゃらや優しさは何の意味もない。大げさに言えば、取引を通じての命を張った情報交換である。
一昨年の12月に大手取引先から支払条件の変更のお願いが入った。残念ながら、これを拒否できる立場になく、すんなり受け入れ、資金繰りの調整に入った。
そして、昨年2月に私は次のことに気がついた。
定期的に海外から素材を仕入れているのだが、その在庫が膨れ上がってきたことに気がついた。それを社内会議で伝えたときに、社員全員から反対意見が出た。この先の売上上昇にはこれが必要だ、との意見であった。
私は、この考えを退けた。なぜなら、製品販売の速度が落ちてきているから素材の在庫が膨れ上がったと見たからだ。それに、在庫はお金であり、毎日金利がかかる。そのため、この先の資金繰りのために銀行借入を増やさなければならなくなる。私は攻めの経営の時(在庫不足)には資金投入に向けて借入を増やし、金利分も稼げる可能性を見る。ところが、その時は守りの経営をしなければならない場合で、なるべく資金投入を避けて金利経費を抑えるのが肝要であると見た。
ともかく、素材の一定部分を2ヶ月かけて仕入れ価格より安価で処分した。
昨年9月のリーマン・ブラザースの破綻以前に、市場に景気後退変化が表れていたのだ。
今思うと、この行動(損切り)をしていなければ、もっと大変なことになっていたと冷や汗を掻く思いである。
先月に商工会議所の主催で、
須田慎一郎(経済ジャーナリスト)氏の講演があった。テレビ朝日の「サンデープロジェクト」でよく見る顔である。

「いま起こっていること、これから起こること」という題目で彼は語った。
久しぶりで、考えさせられる講演であった。
統計数字を整理して語った訳ではない。経営者の見る眼に注目した講演であったことが新鮮味を感じさせた。
大枠で、今回の不況の問題点は自動車、電機、機械の輸出依存度の高さであり、これが国内不況を増幅させている、と語った。
そして、ある事件に話が入っていく。
昨年6月6日の「秋葉原無差別殺傷事件」である。
「東京・秋葉原の無差別殺傷事件で、警視庁は6月8日の事件から1カ月間の捜査により、元派遣社員加藤智大容疑者(25)=殺人容疑で再逮捕=は現実社会とネット上の双方で孤立感を深めた末、職場でのトラブルをきっかけに事件を引き起こしたとみている。
万世橋署捜査本部の調べでは、加藤容疑者は事件前、多い時で1日200回以上、携帯電話サイトの掲示板に行動や気持ちなどを書き込んでいた。しかし、事件直前は他からの反応がほとんどなくなっていたという。
事件3日前の6月5日、職場で『つなぎ(作業着)が見つからない』と主張し、そのまま帰宅する騒ぎがあった。『つなぎを隠されたと思い、会社にも必要とされないと思った。これがきっかけだった』と供述しているという(asahi.com7月8日)」。
この事件は、派遣社員の社会的現状を伝えないまま、ニュースは流れ続けていた。
これを須田氏は指摘していた。
テレビ局から須田氏への依頼が入った。非正規雇用の問題からみた場合、この事件は何を意味するのかを調べてもらいたい、というものであった。
加藤容疑者が働く自動車塗装会社は横須賀にあり、1ヶ月ほど前からリストラを強めていた。言い換えれば、少なくても昨年5月には減産指示が親会社から飛んでいたことになる。そして、この親会社はトヨタであり、報道にはこの名前がどこにも出てこない現実を須田氏は知った。トヨタからの広告収入を期待している新聞・テレビは、この事件とトヨタを結びつけない情報操作を行っていた。
そして、須田氏はトヨタのディーラーを回り、自動車の売上の減少を掴むことにより減産指示は間違いないと判断した。
しかし、この事実はテレビ局の指示で報道されないことになった。
ここには、メディアのトヨタ隠しがあり、そのことが経済の実態までも隠すことになった。
トヨタの世界売り上げトップを明確にした3月決算のニュースが大々的に流れていたときに、それと裏腹に、減産を始める状況が隠されていた。
昨年9月のリーマン・ブラザースの破綻以前に、市場に変化が表れていたことをトヨタはすでに知っていた。だが、この事実をメディアは発表させなかったのだ。
私たち経営者は、市場の動向から経済の循環を感じ取り、会社の経営が行き詰まらないように最大限努力する。今回のサブプライム・ローンは虚業=金融業の仕業であり、それを国家が容認していたことが基になっている。その意味では経済循環とは異なる異常なツケを世界に振りまいた。
現場で生きる私たちにとって、実態から離れた情報操作が最も怖い。
同業者の取引を通じての情報のやりとり、異業種交流による他愛無い会話から受け取る情報、友人たちからのウソのない身近な情報、そしてメディアからの情報等々によって、自分の生き方も含めて会社の存続をかけた行動を取ってきた。しかし、メディアの情報が最も遅い、もしくは信用できないとすると、私たち自身の個々の能力が要求される。
10年ほど前、ある国立大学の助教授が誰の話を聞いても“すばらしい”と言って反応をしていたのを思い出す。最も無責任な反応によって、誰とでも上手くやろうとする輩である。このような人間とは係わりたくない。彼はいま教授になっている。
須田氏は次の言葉で最後をまとめた。
私たちには常にちょっとした
@注意力、A積極性(ネットで調べる)、B想像力が必要であると述べた。
私もこの3点を重視して経営を続けて行きたい。ただし、Aの積極性には友人やブログの
関係性も大事だと理解している。

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