副題:デパ地下の高級品への転換、
外食での客単価上昇と対比した来客数減少、
富者の海外逃避
「経済格差」の進展は、新聞報道による
三つの現象から私たちに示唆を与えてくれる。
@ その一つが、デパ地下の食品売場での高級品化である。
ここ数年、デパート(百貨店)の売上減少に対して地下街食品売場が活況を呈しているというニュースが多く流れていた。
言うまでもなく、デパートの格式だけで価格の高さをブランドとして消費者を引き付けていたものが、長期の景気低迷で専門店が発展し、徐々に客を取られて来ていた。しかし、その中でも、地下街食品売場の威勢の良さが目立ち、住民地域周辺の○○銀座が廃れ始めてきた。これは、近所の商店の品質低下(売れ行きの悪さは新鮮さを失う)傾向を毎日大きな駅を通勤で通過する消費者は受け容れなくなってきた。結果として、大きな駅に近いデパートの地下街食品売場の活況と対応して、新鮮な食品と消費者が対となった行動が生まれた。
ここに来て、また新たな動きが見えてきた。
日本経済新聞(7月25日付け朝刊)に「『デパ地下』高級路線強化」という記事が載った。新宿での高島屋、伊勢丹、京王百貨店等による売場の大型改装の中で、高島屋新宿店は高級スーパーの紀ノ国屋(東京都国立市)と業務提携をした。
この高島屋の狙いは「デパ地下」のテコ入れである。これを追って、新宿伊勢丹も京王百貨店も食品売り場の改装をしようとしている。この大きな理由は、99年まで全国百貨店の食料品売上高は急激に伸びてきたが、それ以後、05年まで漸減状態が続いてきた。
大衆的「デパ地下」から高級「デパ地下」への転換が上記の流れである。
JR浦和駅に来年開業する浦和パルコ(仮称)が惣菜、菓子、生鮮品など食料品に特化し、ここにも同様な流れを見ることができる。
「『食』にこだわりのある消費者に向けた提案型の売場を目指す」というものである。
日経新聞はこれ以上の分析をするつもりはない。
要するに、「デパ地下」は下層も含めて、新鮮という高品質で消費者を集めてきた。しかし、2000年以降それ以上売上を上げることができなくなってきた。その理由は、「経済格差」の拡大は、単価の高い商品の売上減少傾向を生んだのだと思える。売上向上には、誰でも買える商品に加えて、高価な商品も設置することにより、全体の売上を上げる戦略を採ってきた。しかし、低価格品の売場面積の占有率が高く、結果として高価商品の品揃えの魅力を失わせる弱点を作り出したからだ。
そこで、低価格品を削減し、品揃え十分な高級品を並べて、「経済格差」で弾かれていない層(上層)を主な顧客とした戦略を繰り出した。決して混み合わないで、ゆったりと品選びができ、余裕を持った金額を払える層に満足を与えることによって、総売上の向上戦略である。
「経済格差」の深化はこのように「デパ地下」に現れている。いったい、「格差」によって生まれた下層が大量になりつつあるとき、下層はどこで生鮮食品を買えば良いのか。
A その二つ目が、外食での客単価上昇と対比した来客数減少である。
日本経済新聞(8月11日付け朝刊)で、「先読みビジネス天気B」の記事で「外食」について触れている。
日本フードサービス協会(JF)の調査で、ファストフード、ファミリーレストランなど主要五業態すべてで客単価が上昇し、97年11月以来の8年半ぶりであった。しかし、05年6月から06年6月までの統計で見ると、既存店客単価と利用客数が反比例の関係を示している。その意味で、売上は一定に推移しているが、客単価上昇分だけ利用客数を減らす傾向が表れている。
ここにも「経済格差」が浸透してきていると見た方が良い。余裕の無い人たちはファストフードやファミリーレストランからも排除されだしている。
@は、市場も上下分断の変化から、上層をターゲットにすることによって、ビジネスとしての効率の良さを追求しようとするものである。
戦後の復興期から高度経済成長に向けての時代に、野菜も魚も衣服も売っているごったがえす市場がどの町にもあった。安さ第一の庶民的市場であった。
しかし、@はそのような“場”にはしない。人間同士がこすれ、生鮮食品を取り合う“場”ではなく、優雅に、ゆったりと、一つ一つしっかり選べる品揃えを重視した高品質品である。
そのような“場”で買い物を続けられない人達が増えてきていることを同時にこの事実は語っている。
Aは、外食にお金を掛け切れない層が増え、ほんの少しの贅沢を家族や友達と楽しむ“場”へとファストフードやファミリーレストランを変えて来ている。若干金額は上がるが、行く回数を減らす対策を採る消費者が増えてきたことを意味している。
富裕層ビジネスの進展は「経済格差」の深化との
関係性を強めている。
(富裕層ビジネスの意味2につづく)