副題:デパ地下の高級品への転換、
外食での客単価上昇と対比した来客数減少、
富者の海外逃避
「経済格差」の進展は、新聞報道による
三つの現象から私たちに示唆を与えてくれる。
B その三つ目が富者の海外逃避である。
朝日新聞(7月19日〜24日付け朝刊)の「分裂にっぽん1〜5」で記事にされた「新しき富者」がある。
言うまでもなく「経済格差」は上層と下層の格差を大きくした。しかし、ここでの課題は上層に大きな資産を蓄積させ、改めて庶民に再配分される構図ではなく、節税によって上層は一層上層化し、「新しき富者」を作り出している。よって決して、下層への再配分は富者の脳裏には全く浮かばない。
ところで、財務省資料から法人税率と個人所得税の推移を見て置く。
法人税率の推移は
87年43.3%
88年42.0%
89年40.0%
90年37.5%
98年34.5%
99年以降30.0% と変化した。
個人所得税の推移は
88年70%
(15段階に分けて最上位が8775.2万円以上の場合)
89年〜94年50%
(5段階に分けて最上位が2483.6万円以上の場合)
95年以降37%
(4段階に分けて最上位が2380.0万円以上の場合) と変化した。
このような上層への
優遇税制(国家施策)が「新しき富者」を作り出した。これに加えて、資本市場の活性化のために規制緩和と株式売却益に対する大幅減税(03〜07年は20%を10%に)を小泉政権はし、この「新しき富者」をバックアップしている。
全体としての政府の思想性は、「高所得者への減税などは『豊かな層がより豊かになれば、弱者にも富が行き渡る』というシナリオだった」(
分裂にっぽん1)。
しかし、一度得た所得を弱者のために手放すような富者ではない。そんなことは官僚も政府もとっくに知っていることである。しかし少しは、と思ったかも知れない。
国家を愛する「富者」たちは、自分の利益のために国家を利用し、国民に仕立てた上げた下層に国家を守らせる。しかし、富者が巨大な富を得た後には、この国家は徴税者となり富者への敵対的関係者(税金徴収者)にもなる。ただし、得た富に比べれば低率化が進んだ法人税・個人所得税であるが。
彼らは大好きな「日本国民」を捨てようとする。それでいて、この巨大な富をより一層増やすために部分的に日本国家と係わりを持とうとする。あくなき利益の追求を忘れない。
一方で、富者になれない庶民に不可能を知った上で「再チャレンジ」を口先で応援し、他方で、既に富者になっている人達は大した努力をしないで富を重ねられる社会構造(富が富を呼ぶ)となっている。
「新しき富者」は「永遠の旅人」となり、居住国を自由に選ぶ。98年以後、海外での資産運用が原則自由となった日本は、庶民の税金は取るが、旅人を後ろから応援している。要するに、税率の低い国家に転居(原則、半年以内の日本在住)することにより、日本で国家挙げて稼がせていただいた金を減らさない工夫をしているのである。まさに、節税対策である。
ちなみに、今年稼いだ国内給与によって、翌年に住民税が徴収される。そこで、翌年は海外支店に移動(半年未満日本で生活しても良い)すると、翌年も日本から給与は支払われるが日本に住んでいないので住民税は0となる。商社で働く人達や国家公務員等々はこれができる。まさに特権階級である。
「非居住者」は救われる仕組みが出来上がっている。「富者の『さよならにっぽん』が始まっている」と記事で説明している。
世界中で、金持ちを歓迎している。その消費力を期待している。カナダ、ニュージーランド、フィリピン、台湾、マレーシアそしてタックスヘイブン(租税回避地)として名高いカリブ海や太平洋の小島への移住によって、日本より物価は安く、税率が安い生活は魅力的である。当然、このような富者は日本の膨大な借金に責任を持つ必要も無い訳である。
資産の分散によって相続税さえ払わない方法が、海外不動産や美術品へと化けさせる行為である。これらの行動は、資金をシンガポール、スイス、香港に経由させるプライベートバンキング(PB)の指導がある。「脱法」もいとわない「最高の知的ゲーム」とさえ言われている(
分裂にっぽん2)。
このように「経済格差」は間違いなく子孫に受け継がれていく。「新しき富者」の遺伝子は次世代の「新しき富者」を作り出していく。
規制緩和によって01年に、株式分割が無制限に認められ、自社株買いも原則自由となった。1株を数100株に分割し、新しい株券が行き渡るまでの「品切れ感」を狙って自社株大量買付けで利益を上げる。
「値上がり確実」と言われる上場を控えた新興企業株(IPO株)購入のために抽選に申し込む株長者を狙う人々がいる。証券会社の営業マンと密接に繋がり、営業マンのノルマにも協力する。これによって、抽選なしでIPO株を取得できる。「ITや資本市場『改革』の波に乗った人々が結び付き、ますます富をためる『インナーサークル』」が強まるが、「株価頼みの危うい歯車で回るが、参加できない人との差は広がる」と説明している(
分裂にっぽん3)。
節税用の会社を設け、個人使用のパソコンレベルから高級マンションの家賃を経費で落とすことによって、給与総額を削り、課税所得を下げる効果が見込める。
例えば、高級マンションの月100万円の家賃の年間分は1200万円となり、これを年収から差し引いて受け取れば、会社は経費で落とせて個人の年収が1200万円下がり、年600万円ほど節税できる。
また、経営者の退職金積み立ては税制で優遇され、その分を節税できる。そして退職後、数億円を手にすることができる(
分裂にっぽん4)。
まさに「強い者に有利な仕組み」である。給料の支払いに四苦八苦していたり、赤字決算が続いている中小・零細企業にはこれを利用できる「仕組み」とはなっていない。
末期の肝臓ガンで余命6ヶ月の元アパレルメーカーの役員は、香港郊外の外国人専用病棟のある大病院で手術を受けた。最高の肝臓を移植され、1週間後に帰国した。費用はおよそ2千万円。帰国後の拒絶反応を抑える薬代や転移があった部位の手術費などでまた2千万円がかかった。
まさに、金で命を買った訳だ。明日の食費に困る庶民には全く考えられないことが起こっている。
自分の息子を英国の全寮制男子校ハロウスクールに入れ、各国王族、大企業オーナー、俳優らの子供と一緒に学ばせる。これは「そこで培った人脈が生涯の宝」であり、年1千万円をつぎ込む。
相続税のかからない教育費につぎ込み、それが親が残せる最大の財産である。どこの国家からも指摘されない最も安全な相続対策である。
お金次第で、老後の過ごし方は変わる。
「英国貴族の別荘」をイメージした介護サービス付き老人ホームがある。最上階のペントハウスの入居金は3億円。ダンスホール、映画、カラオケ、陶芸、プール、何でもある(
分裂にっぽん5)。
「分裂にっぽん」の締めくくりは、「人生の充実した締めくくりを、という『富老層』向け施設の建設ブームの一方で、世田谷区だけでも特別養護老人ホームの入所を2千人以上が待ち、各地で孤独死や『老老介護』の末の事件も起きる」。
「『公助』が細る中で、命も将来も老後も、活発化する富裕層ビジネスの対象になった。これも『市場の選別』なのか」。
「富裕層ビジネスの意味1と2」での三つの記事――@デパ地下の高級品への転換、A外食での客単価上昇と対比した来客数減少、B富者の海外逃避――は、単なるビジネスの市場対応だけでは終わらない。この背後に隠された異様で恐ろしい実態「経済格差」が流れ、深化していることの表れである。
そして同時に、「富める者」は一方で国家を重視し、優遇された彼らはその国家を活用する。他方で、国家の仕組みを庶民に押し付け、庶民を国民と呼び、国の借金を官僚・政治家と共に国民に要求する。
ここで注意しなければならないことがある。「富める者」は国民の振りをして、自由人であり、どの国の人間にもなれるということである。彼らが好きなのは金儲けと節税である。金儲けには日本人であることが適し、節税には日本人であることが適さないことを行動で示している。
私たち庶民は富者をより一層富者にする役割を担うのだが、この富者は国家の膨大なる負債には
関係性を持たなくて良いシステムを持っている。結果として、国家の膨大なる負債と深い
関係性を庶民だけが持たざるを得ない。
ここに、小泉靖国参拝、憲法改正、日の丸・君が代の強制、等々による巨大化した下層庶民の国民化を浸透させ、国家の膨大なる負債を老人保健法改正、介護費の低年齢化、少子化対策費、消費税の増税で賄うシステム構築を納得させる。そして、いざ戦争となれば、コスト0の国民が喜び勇んで出兵する。
これが考え過ぎだと言えたら楽だろうが。

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