OECD(経済協力開発機構)の報告書によると主要国の中で日本とイタリアは「経済格差」が大きい部類に属すことを示した。
貧困率(所得が平均の半分以下の人の割合)を見ると、次の順位となる。
18〜25歳 26〜40歳
1位:アメリカ 19% 14%
2位:日本 17% 12%
3位:イタリア 14% 11%
4位:ドイツ 14% 8%
5位:フランス 8% 6%
アメリカはかなり先を行き、その後を日本とイタリアが貧困率で競って追っている様子が伺える。
朝日新聞(8月8日付け朝刊)の記事「
1000ユーロ世代」(1ユーロ=150円なら15万円世代)で、イタリアの若者の苦境を解説している。
「イタリアの20〜30代で、高学歴でやりがいのある仕事に就いているにもかかわらず月15万円相当以下の低賃金に甘んじる労働者が増えている」。そして、ローマの経済・社会研究所の世論調査によると、25〜40歳で月給1000ユーロ以下の労働者が65%で、90年代初めからの景気低迷で企業の終身雇用契約を避けて短期雇用に切り替え始めたのが大きいとしている。また、03年の労働法の改正で契約解除がし易い派遣労働が認められ、この記事で言う1000ユーロ世代の傾向に拍車がかかった。
イタリアでの就職のし辛さは「コネ採用」が追い討ちをかけ、不満を募らせる若者の中には自国に見切りを付け、3人に1人が他の欧州で就職希望をしている。
「18〜30歳の約8割が『経済的に独立が困難』として親と同居。低収入が人材の流出や晩婚化、少子化にもつながっている」と日本と多い共通点を示している。
山田昌弘教授(東京学芸大)は、日本もイタリアも根強い家族主義があり、低所得者の若者が親に頼る傾向がある。フランスなら激しいデモが当たり前になるが、日本とイタリアは社会に対する不満が高まらない傾向がここにあると指摘し、橋本俊詔教授(京都大)は、低所得の子孫への連鎖(注)が固定化することを警告している。
(注)7月21日付けのブログ「親から子・孫への『格差』連鎖」を参照
http://green.ap.teacup.com/passionnante/33.html
しんぶん赤旗(8月9日付け)に、大見出しで「
『非正規』青年3倍」、小見出しで「
20代年収 150万円未満2割」という記事を、厚生労働省が発表した06年版「労働経済白書」を資料に明かにしている。
82年から02年までの20年間で、20〜24歳(在学者を除く)の非正規雇用比率が8.3%から31.8%へと3.8倍に急増した。これは90年代から「構造改革」路線にそって派遣労働の自由化と労働法制の規制緩和が行われ、企業の正社員の採用を抑制して非正規に置き換えてきたからである。
所得面からは20歳代で、92年から02年の10年間で年収150万円未満の低所得層が15.3%から21.8%に増加し、500万以上層が2.9%から3.2%へと微増している。
請負や派遣労働者を生産変動の調節に使い、彼らにリスクを押付ける傾向が強化されたことを意味している。言うまでもなく20歳代の中でも「経済格差」は拡大している。しかし、もっと厳密に言うと、
中層が下層へ次から次へと押し出されている、というべきである。
同様な記事が朝日新聞(8月8日付け夕刊)でも「
広がる格差」が掲載された。
この中で、「正社員も成果主義の影響で賃金の差が広がり、40代後半では最も高い層と低い層の月収差が30万円を越えた」と述べている。
白書によると、04年の調査から、製造業で全体の3割の企業に請負労働者がおり、500人以上の規模の企業では8割に上る。05年の別の調査で見た年代は20代と30代が7割を占める。携帯電話など新製品が頻繁に開発される現場に多く、商品のライフサイクルの短期化と連動している。
以上で見てきたように、各年代層で「経済格差」が拡大していることが理解できる。
そして、朝日新聞(8月21日付け朝刊)に「
心の病 30代社員急増」という記事が載った。
社会経済生産性本部メンタル・ヘルス研究所のアンケートに対して、上場218社の回答から分かったことである。この調査で30代会社員にうつ病や神経症などの「心の病」が急増していることがわかった。
その質問事項で見る。
「心の病はどの年齢層で最も多いか」・・企業全体の61.0%が30代
「3年間で心の病は増えているか」・・企業全体の61.5%が増加傾向
「心の病で1ヶ月以上休んでいる社員がいるか」・・企業全体の約70%以上
「職場でコミュニケーションの機会が減ったか」・・企業全体の60%が減った
「職場での助け合いが少なくなったか」・・企業全体の約50%が少なくなった
以上の結果から、同研究所は「職場内の横のつながりをいかに回復していくかが課題」としている。
30代会社員の「心の病」の増加傾向は、成果主義が導入されて、先輩は自分の問題で精一杯となり、後輩への指導がなくなり、そのストレスの表れではないか。また、管理職の若返りが上司と部下との間に挟まれてうつ病に。30代前半はテレビゲーム世代で対人関係が不得意で、そのストレス発散を睡眠時間を削ってゲームに使うため、睡眠障害や「心の病」とつながる。
「経済格差」が拡大する中で、中層が下層に押し出されていく傾向が明確になるが、そこで終わらない。
請負や派遣労働者そして「ニート」(注)を急増させる中で、上場企業の社員は経済的に上層になる筈である。しかし、その上層の中から「心の病」の社員を生産し、場合によっては新たな「ニート」を生産する可能性もある。そして、上層の中での新たな「格差」が生まれ、上層から中層へと押し出している。将来の下層の生産である。
(注)8月22日付けブログ「団塊の世代のために」を参照
http://green.ap.teacup.com/passionnante/44.html
(注)8月22日付け「カモブログ」の「『若者自立塾』に見る現代の病」を参照
http://blue.ap.teacup.com/perie/33.html
社会構造としてパソコンとゲームが生活に密着している。その負の側面として、人間同士のヒモの太さが細る現象が表れている。これと連動して「経済格差」が深化し、深い「心の病」を作り出している。ブログ等による
関係性は深まっているが、肌の温もりを感じる直接的関係性は薄れている。
「再チャレンジ支援」(注)をいう安部晋三氏は、この現実―「経済格差」と「心の病」―を無視して何を見ているのか。
下層に追いやられた人間が、心の病で悩んでいる人間がどのように再チャレンジできるのか、その処方箋を私達に提示する義務がある。
(注)8月8日付け「幸せになるために」ブログの「『再チャレンジ支援』は幻想−負け組を固定化」を参照
http://blog.livedoor.jp/yyyyohko/archives/50408028.html

0