「誤魔化しの日経「地域間の所得格差は拡大していない」」
経済格差
とても面白い記事を見付けた。
日本経済新聞(9月13日付け朝刊)の「大機小機」に書かれた「
地域間の所得格差は拡大していない」である。
内容を読まなければ、「地域間格差」を世間が言うのは感覚的であり、実態はそうなっていない、と解釈できる。日経らしく、小泉政権に間違いは無かったという結論を導く記事である。
そこで、この中身を見ることにする。
「近年、経済格差の拡大を指摘する声が強い。大都市圏と地方圏といった地域間についてもマスコミなどでは所得格差の拡大を既成事実のように扱っている。確かに地域間の所得格差は大きい。しかし近年になって、そうした格差が拡大している事実はない」とこの記事は始まる。
そして「例えば、不平等の度合いを示すジニ係数を都道府県一人当たりの所得ベースで作成すると、水準自体はかなり低いほか、一人当たりの民間需要を指標にすると拡大は生じていない。また、一人当たりの所得水準の格差をみても、横ばい圏内の動きにとどまっており、所得格差の拡大はない」と統計的に説明している。
確かに、記事の見出しは「地域間の所得格差は拡大していない」であり、世に一般に言う「地域間格差」ではない。
所得ベース(「一人当たり所得水準の格差」)で見れば、ここで示した「ジニ係数」が決して高くはないだろうと予測は付くし、その意味ではこの記事は正しいと見て良い。
しかしである。
「
現状の所得格差が大きいことについては、現実の厳しさから目をそむけた気楽な生き方を良しとする風潮が強まった」ことへの、反論としてこの記事は書かれている。そして、「長期的な視野に立った人材の確保・企業の育成、あるいは経済特区制度の活用や地方への権限移譲などをテコとした地域経済の活性化の推進」としてまとめている。
結局、「地域経済の活性化」を言いつつ「地域間格差」が拡大していないを帰結しようとしている。
明らかに、
統計を用いた論理の矛盾を知りつつ言葉で誤魔化している。
各地域の平均的所得水準を比較することと、各地域の経済力(活性力)の比較(「地域間格差」)とは全く違うものである。
「地域間の所得格差は拡大していない」
(だから)→「地域間格差」は拡大していない
地方にも高所得者は存在する。そして、大都会は多くの学生や高齢者だけでなく、地方から都会に流入した非正規社員(パート、アルバイト、契約社員、派遣、請負労働者)を大量に抱えている。この事実は、政府関係者にとって、平均的所得水準の地域間格差を減ずる数値に役立つ。
この数値を利用し、論理矛盾を堂々と記事にする狙いは何処にあるのか。
「地域間格差」を端的に示している指標の一つが「高卒求人倍率」(厚生労働省の7月末調査)である。地域の活性力はこの数値に表れる。
9月14日付け朝刊の日本経済新聞と朝日新聞でこれを記事にしている。それぞれ「高卒求人倍率1倍超」「高卒求人1倍回復」の見出しであった。
前年同期を0.24上回り1.14となった。9年ぶりに1倍台を回復している。
これを地域毎に比較すると、「地域間格差」が見えてくる。
06年厚生労働省の高卒求人倍率調査(括弧内は05年)から上位と下位の3都府県を見ると、以下になる。
上位 求人数 求職者数
1位 東京 33,964(28,333) 7,700 (7,762)
2位 愛知 30,144(23,811) 11,873(11,637)
3位 大阪 19,635(15,819) 8,734 (8,495)
下位 求人数 求職者数
45位 高知 369(225) 1,558(1,603)
46位 沖縄 550(579) 2,600(2,412)
47位 青森 846(677) 4,964(5,095)
これを上位3都府県と下位3県の総平均値で算出し、それを求人倍率として表示すると、以下になる。
06 05
上位平均 2.96倍 2.44倍
比率(上位/下位) ↑(15.58倍) ↑(15.25倍)
下位平均 0.19倍 0.16倍
ここ1年間で、上位3都府県は0.52ポイント上昇し、下位3県は0.03ポイント上昇した。そして、年度毎に上位/下位を比較すると、05年は15.25倍で、06年は15.58倍となり、倍率の
格差は進んでいる。
朝日新聞の求人倍率記事の最後に「過半数の25道県で1倍を下回り、青森のほか・・で低迷した」と述べている。
単に求人倍率が1倍に満たない道県多いが「地域間格差」を説明したことにはならない。重要なのは、上記の上位3都府県と下位3県の05年から06年への変化を見たとき、「地域間格差」を説明できる訳である。もう一度言うと、上位の下位に対する比率が、05年=15.25倍から06年=15.58倍へと広がったことである。
このような事実が、経済的に活性力のある地域とない地域の差として見ることができる。平均値としての一人当たりの所得水準からこの「地域間格差」を見ている日経記事
「地域間の所得格差は拡大していない」は、政府の御用意見に過ぎない。
商売をする私達にとって日経新聞の役割は大きい筈だが、私達はダマシやゴマカシと
関係性は持ちたくない。真実や実態こそ私達の生きる糧である。

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