7月のOECD(経済協力開発機構)報告は
日本の貧困率が先進国の中で二位になったことを述べた。
これについては、8月24日付けブログ「経済格差と心の病」で整理した。
「貧困率(所得が平均の半分以下の人の割合)を見ると、次の順位となる。
18〜25歳 26〜40歳
1位:アメリカ 19% 14%
2位:日本 17% 12%
3位:イタリア 14% 11%
4位:ドイツ 14% 8%
5位:フランス 8% 6%
「アメリカはかなり先を行き、その後を日本とイタリアが貧困率で競って追っている様子が伺える」であった。
これをどのような計算で出したかを、
しんぶん赤旗(9月5日付け)は「?貧困の国際比較って?」で分かり易く解説している。OECDの言う平均とは単純平均ではなく、等価可処分所得(注)の高い人から低い人まで並べて、人数でちょうど真ん中の人(偶数人のときは真ん中に二人いるため、その二人の平均)を指す(中央値)。さらに、18歳から65歳の労働年齢人口に限って計算し、日本は17カ国中2位であったと、説明している。そして「日本の政府は格差拡大は高齢化のせい≠ネどといっていますが、労働年齢人口(18歳から65歳)でも、日本の貧困率は際立って高い」と述べている。ここで
政府のウソを明かにしている。
(注)等価可処分所得:「可処分所得は税などをひいた自由に使えるお金のこと。『等価』というのは、世帯人数の影響を修正する係数をかけたもの」と説明している。
このような中で、高齢者や入院患者はどうしているのか、そして最後のセーフティーネットである生活保護は受けられるのか、を朝日新聞の記事から整理していく。
「高齢者 負担増ドミノ」(朝日新聞8月29日付け朝刊)が掲載された。
「今年度の税制改正に伴い、65歳以上のお年寄りが二重の負担増に苦しめられるケースが出ている。・・ただ、激変緩和策に踏み切る市もあり、住んでいる自治体によって負担増の大小が生じている」として、横浜市について次のような実態を明らかにした。
06年度税制改正に伴う福祉サービスの負担増(横浜市)
バス、地下鉄の敬老パス
自己負担・年2500円→年5000円
寝たきりの人へのおむつ給付補助
年最高9万円分を補助→不適用
高齢者世帯住み替え家賃助成
月最高5万円を助成→不適用
横浜市は利用者負担をそのまま受け入れ、「激変緩和措置」は取らない方針を打ち出している。
「入院患者の35%『在宅療養 無理』」(朝日新聞9月1日付け朝刊)で、厚労省の05年受療行動調査を明らかにした。
この調査は昨年10月に全国488病院の患者17万3千人(うち入院患者約6万人)に実施したものである。
入院患者に今後の療養希望は?
完治まで入院していたい:53.8%
通院しながら療養したい:17.4%
退院の許可が出た場合は?
在宅療養できる:42.9%(30.5%)
在宅療養できない:35.4%(47.9%)
療養の必要なし:4.9%
わからない:11.6%
(括弧内の数値は高齢者などの長期療養を必要とする入院患者向けの病院123ヶ所の調査結果)
在宅療養を可能にするための条件(複数回答)は?
家族の協力:39.7%
入浴や食事などの介護サービス:30.7%
療養部屋・手すりの設置、段差の解消など:27.0%
国は医療費の削減に向けて在宅療養を進めようとしているが、入院患者の3分の1は退院許可が出ても自宅療養は困難と考えている。
医療費の無茶な削減と患者の意識には大きな隔たりがあることをこの調査で明らかとなっている。
「介護の兄 負担重く」(朝日新聞9月20日付け朝刊・神奈川版)は余りに身近で気が重くなる事件である。
パーキンソン症候群(注)の弟(55)を殴った兄(57)に、傷害罪で懲役1年6ヶ月の求刑がされた。このときは兄弟二人は横浜市内で暮していたが、それ以前には兄は寝たきりの母親(84)を介護しながら働いていた。弟の甘え(失禁や転倒を繰り返す)と思い、腹を立てた兄の行動であった。
友人らは減刑を求めて嘆願書161通を提出している。この友人男性(58)は「公判後、『本当に一生懸命介護していた。まじめな人だから一人で抱え込んでしまったのだろう』と語った。」
(注)パーキンソン症候群:「症状としては、手足の震え、動作の緩慢、筋肉の固縮、姿勢保持障害、うつ症状など。・・厚生労働省の特定疾患(難病)の認定を受けているパーキンソン病は、神経伝達物質ドーパミンの機能を促進する治療薬の効き目や、脳MRI画像でほかの疾患が見あたらないことなどが診断基準となる。これに対して、パーキンソン症候群は特定疾患の対象外のため、厚労省の医療費公費補助を受けられない。」
厚生労働省が難病認定を避けたことによって、家族さえパーキンソン症候群を理解しきれず、家庭内に軋轢を生んでいる。
このような事件が、国の医療費削減によって、一層増加する可能性が大きくなっている。特に、
在宅療養の強制は、経済的困窮家族にとっては負担が極めて多く、愛情を超えた悲しみを生み出すことになる。
「生活保護はいま」(朝日新聞8月23日・24日付け朝刊)と
「生活保護拒否『66%違法』」(朝日新聞9月1日付け朝刊)は生活保護を拒否する自治体の実態を描いている。
「生活保護の現場がいま、厳しい現実にさらされている。生活保護制度は、私たちの暮らしが立ち行かなくなったとき、憲法が保障する『最低限度の生活』を営むための『最後のセーフティーネット』だ。だが、本当に必要な人に、必要な額が支給されているのか。優しさが消え、冷たさが増しているという現場を見た」(「生活保護はいま 上」)と記事は実態に切り込んでいる。
「生活保護法では、保護の申請があった場合、福祉事務所は受理し、保護要件に該当するか否か調査しなければならない。だが最近は、窓口に来た人に申請書を渡さず、『相談』扱いにして帰してしまうケースが増えている」とする事例が次のものである。
事例1:元塗装職人(59)
建設不況で仕事が激減、全財産数千円、糖尿病が悪化するが病院に行く金なし、長時間の外出不可能、就職先がない、離婚した妻ら家族の所在も分からず。
福祉事務所「まずは就職活動を」→ハローワークで成果なし→福祉事務所「まだ50代なのに仕事が見つからないはずがない」→生活保護の申請書類すらもらえず→消費者金融から借入(220万円)→市民団体の助け→保護受給(月12万円)→借金は自己破産で整理、治療中断のため視界のぼやけ・足に水がたまり・むくみ。
支援した斉藤弁護士の弁「最初に受給が認められていれば、サラ金にも行かず、病気もひどくならずにすんだはず」と。
「生活保護法では、収入が保護費を上回った時や職があるのに働かないなど『指導義務違反』があると、福祉事務所が保護廃止にできる。だが、相談のほとんどはこうした要件に当たらないのに辞退届を書かせ『本人の意向』とするもの」とする事例が次のものである。
事例2:生活保護を受けている男性(53)
ホームレス生活から脱出→職業安定所に連日通う→福祉事務所のケースワーカー「なぜ職が見つからないのか」→生活保護の辞退を書かされる→NPOの支援で打ち切りを免れる。
事例3:生活保護を受け、福祉事務所の就労指導に悩んでいた男性(50)
指導に悩み、家にこもった→採用通知の封書を開封しなかった→「働く気がない」と保護打切り→その後、失踪
NPO「自主生活サポートセンター」の事務局長の湯浅氏は「精神的な問題を抱えた受給者は多いのに、ただ仕事へと追い立てるだけ。『就労指導』で保護廃止に追い込まれる例が増えている」と。また、吉永純助教授(花園大)は「国や自治体が保護率引き下げの圧力を強める中、生活の維持を考慮しない強引な廃止が増えている可能性がある」ことを指摘している。
「老齢加算」は「加齢による精神・肉体的機能の低下により特別の配慮が必要」とし、「母子加算」は「片親不在という社会的・心理的障害に対応する費用が必要」として生活保護費に加算されてきた。
しかし、ここに来て「加算打切り」が生活保護者を圧迫し始めてきている。
事例4:一人暮らしの男性(80)は漬物中心の食卓
(前)月収総額13万5千円→(今)11万7千円
事例5:離婚し重度のうつ病で働くことができない女性(43)
(前)月収総額20万円(児童扶養手当込み)→(今)19万円
息子の言「母さん、もう給食いらないよ」と。
事例6:骨盤骨折のケガで後遺症となり働けなくなった女性(47)が職人見習いの息子(18)と高1娘(16)とで生活
(前)月収総額9万円→(今)母子加算減と高校授業料等で減収
この女性の言「保護のおかげで何とか生きてこられた。
最後の命綱です」と。
厚生労働省の見方は、一般の低所得者の消費支出額より多い「老齢加算」や「母子加算」は全廃するという。しかし、全国生活保護裁判連絡会の事務局長の竹下弁護士は「国のいう『一般の低所得者』は最低生活費以下で暮らす人がかなりを占める。そのこと自体が問題なのに、低い方に合わせろというのは暴論だ」と述べている。
日本弁護士連合会(日弁連)が電話相談を実施し、「生活保護費拒否」の実態が明らかになっている。
北九州市を筆頭に、各自治体の対応は「親族から援助してもらうように」「若いから働くように」等々によって
、「生活保護費拒否」を強要している。
厚生労働省の指示を各自治体が受け、それを基に保護申請を拒否したり、生活保護の受給者に辞退届を出させる行動が出始めた。政府の福祉切捨てが残酷な方法で行われている。官僚の指示に従う地方公務員の行動から、「失業や病気で生活できなくなった人を支える生活保護制度」をないがしろにする姿が浮かび上がる。
生活の保障がされている公務員が保障されていない下層の庶民を冷徹にいじめ抜く姿は、国家権力の臭いがプンプンする。この冷徹な公務員と
関係性を持ちたくない。このままでは、公務員全体と庶民の対立となり、本当の姿が見えなくなる可能性がある。
国家公務員も地方公務員も官僚・政府と戦う姿勢を現場で見せなければならない。口先の「反対」に、庶民は許さないと感じるべきである。