結局、小泉政治の支持率を維持した要因は何であったのかを考えなければならない。これだけヒドイ政治をしておきながら、何故、支持率だけは高かったのだろうか、という疑問は普通持つ筈である。
「経済格差」の拡大、「地域間格差」の拡大、「大手・下請の格差」拡大、「医療費」改悪、「生活保護」の拒否・・。この現状と小泉支持率の高位安定は何だったのだろうか。ブログで扱ってきた「格差」は幻想だったのか。
みずほ総合研究所発行の『Fole』10月号で、杉浦哲郎チーフエコノミストは「
メディア報道で増幅された“幻想”が『格差意識』を煽っている」が載った。
その内容(根拠)は次のものである。
「格差」は大きくない:「統計的に見れば、格差が許容範囲を超えて拡大しているとはいえません。上層2割層と下層2割層の所得格差(5倍弱)はアメリカ(15倍)に比べてはるかに小さい。・・上位2割層の総所得が全体に占める割合も39%と、アメリカ(50%)を下回っています。」
労働と報酬の公正な関係が必要:「正規社員と非正規社員との賃金格差にみられるように、仕事内容や能力と賃金とのバランスが崩れているように感じられます。能力と意欲にあふれる人がまっとうな賃金を得られないような、働くことの価値観が崩れている状況を放置すると、本当の格差が広がりかねない。」
結論:「幻想ともいえる格差意識に煽られて、虚像の「勝ち組・負け組」観に振り回される前に、労働と報酬の公正な関係を考える必要があるのではないでしょうか。」
杉浦氏の凄い論理が「本当の格差が広がりかねない」である。「正規社員と非正規社員との賃金格差」は「本当の格差」ではないそうだ。あまりに呆れた論理である。このような「御用意見」が弱者いじめの小泉政策を後押ししてきたが、これによって小泉支持率が維持されてきたとは思えない。
この『Fole』はみずほ総合研究所の会員に配られている雑誌である。このような内容が平気で書かれる雑誌にお金を払っている企業は、政府によって守られているために、同意見なのかも知れない。
そこに、
朝日新聞(9月27日付け朝刊)に二つの記事が載った。
一つは声の欄で、
岡部義雄氏(77)の「政治感応度を問うた前政権」が書かれている。いかに安く買うかという「価格感応度」に対応して、「政治感応度」という用語を小泉政治に当てはめて整理している。
「政治感応度が高い人は、よく新聞や雑誌に目を通し、ラジオ、インターネットからも情報を得て、政策を判断する。反対に、政治感応度の低い人は、テレビからしか情報を得ないため、容姿やパフォーマンスに目を奪われ、イメージで判断してしまう」と。
この「政治感応度」の低い人と「自民党をぶっ壊す」や「郵政民営化にイエスかノーか」の小泉ワンフレーズが一致していることを述べている。
もう一つは「私の視点」で
岩本美砂子教授(三重大)が書いた「小泉人気 『おばさん心』は使い捨て」である。
この主題は「5年半続いた小泉政権は幕を閉じたが、中高年女性の人気に支えられた長期政権」である。
田中真紀子氏と4人の女性大臣から始まり、「『郵政選挙』では目を引く数の女性候補者を立てて、『刺客』として郵政民営化への造反候補のいる選挙区に送り込」み、中高年女性たちに「女性政策をきっと行ってくれる」と期待させたというもの。
そして、「ヨン様たち韓流スターには負けても、歌手の氷川きよしやマツケンブームとはいい勝負で女心を惹きつけていた。小泉氏の趣味はオペラや歌舞伎で、その観客の4分の3は中高年女性だ。どう見えを切ったら女性のハートを瞬時につかめるか、かれは学習していた。・・女性たちは劇場で、嫁姑問題とか子どもの教育費や夫のリストラといった心配を一時でも忘れたい。小泉氏がつかんだのは、そうした彼女たちの一時の浮いた心だった」が、「
中高年女性のハートは小泉氏に使い捨てにされた」と述べている。
小泉氏への安定的支持が何であったのかを論証する数値は少ないが、岡部義雄氏の「政治感応度を問うた前政権」や岩本美砂子教授(三重大)が書いた「小泉人気 『おばさん心』は使い捨て」が実態であると思われる。そして、その背後で、「御用意見」や政府によって否定されている「格差」の拡大を許してしまったのだ。
朝からテレビのワイドショーに首っきりで、自分と係わりのない芸能人のスキャンダルで現実の世界から逃避し、テレビ的ワンフレーズ小泉を毎日見せられて、
「政治感応度」の低い「中高年女性」ができあがった。それでいて社会に対して、自ら「下流」に押し出される不満が一杯にもかかわらず、その不満を小泉政治とついに結び付けなかった。中高年女性は小泉氏に「使い捨てにされた」ことさえ感じていない。その彼女たちは次のターゲットの安部氏に頭の中を切り替えてまた追っかけ回すのだろうか。
しかし、私の周りにこのような女性がいないため、よくは理解できない。勿論、そのような女性と
関係性を持ちたくないので、何時まで経っても理解できないかもしれない。岡部義雄氏は文の最後に「
人間の脳は常に、なぜ、どうしての問いを投げかけることが大切だと思う」と、締めくくっている。

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