バブル崩壊以後の景気低迷は各製造企業の競争を激化させ、固定化されてきた
親子の企業間関係が崩れてきた。その中身をここで見ていく。
「下請け企業」(「関係性」9月15日付けブログ)で、トヨタとトヨタに部品を供給している下請企業の関係について述べた。
エンジン部分を中心に部品間のすり合わせが重要であるため、自動車製造に向けた親子関係の意思統一を必要としている。そこに、トヨタイズムというものがグループ全体に意識的に浸透させ、品質(Quality)、コスト(Cost)、納期(Delivery)のそれぞれに合わない下請企業は排除される構造ができ上がっている。
必然的に、この形態から親会社の収益増大のために、子会社(下請会社)は品質(Quality)、コスト(Cost)、納期(Delivery)に奔走し、収益に係わりなく親子関係を維持することが生き残る方法であることを学ぶ。言うまでもなく、この構造の中で生きようとすれば、孫会社は子会社以上に人件費の圧縮が必然的に要求される。
「大手各メーカーが我が世の春をうたい、その従業員が高給をほしいままにしているその時に、基盤を担っているともいえる下請け企業は劣悪な作業環境、労働条件のもとで従業員を働かせ、それでもまともな利益も出せない」と、
「製造業と格差拡大」(朝日新聞8月31日付け朝刊)で述べている。
「モノ作り中小企業論FG」(日本経済新聞9月12日・13日付け朝刊)で、脱系列による取引のメッシュ化および取引先の選別が進んでいることを述べている。
要するに、旧来は親企業Aに下請企業が固定的に繋がっていたが、今では下請企業はA社にもB社にも他の下請企業にさえ部品供給する形態が生まれ、親子関係が1対多の関係から多対多の関係に移行し、これを取引のメッシュ化と説明している。同時に、上記した品質(Quality)、コスト(Cost)、納期(Delivery)のQCDによって、親企業が下請企業の選別を厳しくしている。
「モノ作り中小企業の特徴に親企業との長期安定的な系列取引があ」り、中小が親にぶら下がる分業構造が維持されてきた。
総売上の6割以上を大口取引先上位三位で占める中小企業の割合は、10年前には70%であったが、05年には35.5%に低下している(中小企業庁)。これは白物家電(冷蔵庫、洗濯機など)で、メーカー間の部品相互接続を規格化したためモジュール化が進み、取引のメッシュ化が成り立ったためである。ところが、自動車産業では64.8%から58.8%に僅かに低下しただけである。白物家電の部品が「モジュール化」されているのに反して自動車部品では「すり合わせ」が重要になっているためである。
しかし、白物家電業界でも自動車業界でも品質(Quality)、コスト(Cost)、納期(Delivery)のQCDを基準に、下請企業の選別や圧力を増している。そして、下請企業にとってこれへの対応を重視することが「生き残りの必須課題」であると、日経新聞はまとめている。
ところが、大手企業の下請から脱して、中小・零細工場の連携を志向する動きが他方で生まれている。
それが前回ブログの「地域で頑張る」でも述べた
「脱下請け 町工場連合」(朝日新聞9月15日付け朝刊)である。東京都大田区の生き残った町工場の横の連携を強め、互いに助け合うことで技術力を発揮しようという動きである。
決して大手企業との取引を蹴って自立しようとするものではなかったが、「高い技術力を持つ下請けの中小企業が大企業を支えてきた」という自負が表面化したものである。工場数も従業員数も減少する中で、「危機感を持ったリーダーを中心に結束を強めて『脱下請け』をめざす姿は、『あきらめない』という気迫がある」と述べている。
上記のトヨタを頂点とする自動車業界や白物業界で、大手製造企業と下請け企業との関係がメッシュ化に差はあるものの、親企業から下請企業への品質(Quality)、コスト(Cost)、納期(Delivery)のQCDとしての圧力が増している。
この圧力を通じて、大手と下請けの収益に「格差」が拡大している。
しかし、他方で、大手企業から自立した動きとして「町工場連携」が夢を捨てずに頑張ることを教えてくれる。ボス支配の業界組合から脱して、思想統制からも脱して、新たなネットワークが構築され、収益の「格差」への抵抗が他の業界にも広がりを持つことを期待したい。このような連携に精神的にも
関係性を持つことの重要性を感じる。