私は「マグロ消費と環境」で、マグロの割当量が減ってもそれを養殖によって賄うという思想には反対である。より一層の蛋白源を消費してマグロを育てる意味があるのか、また、多種多様な魚介類の存在が自然を守っていることを主眼に置けば、ある一種類を集中的に養殖することは環境に無理を与え、薬剤を与えなければ効率を上げられなくなり、消費者の健康にも大きな負担とならないか、と問いたい。
この問題に対して、「日本経済新聞」も「朝日新聞」も私たちに新たな視点を提示していない。旧来依然とした経済効率主義しか語られていない。
では、「しんぶん赤旗」はどうだろうか。現状はどうなっているかを示すが、マグロ問題についての主義主張はない。他の新聞と大きな差を感じない。
そして、今回。
「円安」の捉え方が不十分な「赤旗記事」に注文を付けたい。
・誰が何のために「円安」を誘導しているのか?
・その結果、庶民に何が起きているのか?
これを明白にする義務が「赤旗」にはある筈である。勿論、断定しなくてもよいが、その可能性は明示してもらいたい。
「経済 これって何?――日銀の利上げ見送り――」(しんぶん赤旗2月18日付け日曜版)は次の内容である。
日銀の利上げ見送りは、政府の圧力と国民・中小企業の長期的不況が作り出した。そして、この異常なゼロ金利が続いているために多くの問題が生じているとして三点を挙げている。
第一:大企業や富裕層はゼロコストを利用して、投機的取引や設備投資を積極的に行い、支配体制を強めている。これによって、大企業と中小企業の格差が一段と深まっている。
第二:ゼロ金利で「所得移転」が生じている。預金者の受け取るべき利子を収奪し金融機関や大企業が横取りしている。
第三:「ゼロ金利の円資金を借りてドルなどに交換し、海外で運用を行う結果、「円安」が生じ、自動車、電気関係などの輸出型大企業が大もうけをする源となっています。
このようにゼロ金利を続けているために国民生活は不安定化し、大企業と中小企業の格差も広がり、経済にゆがみを生じさせています。」
この第一と第三が曖昧な問題点である。
第一では、ゼロコストを利用できない中小企業の説明がないまま「大企業と中小企業の格差」に至っていることである。
例えば、中小企業が借入する安心できる金融機関には国金(国民生活金融公庫)がある。その返済金利を見ると、
(実質金利0%の時) 2005年7月:1.45%
(実質金利0.25%の時)2007年2月:2.50%
大企業がほぼ実質金利で借入ができるのに、中小企業は上記の金利を支払わなければならないことの説明がない。「赤旗」記事でこの「格差」を説明していない。これが銀行金利であるなら3%〜8%を要求され、「大企業と中小企業の格差」は一層拡大する。
第三では、先ず「円安」要因を説明し切れていない。
01年3月にゼロ金利政策は復活した。そして、ドル金利と円金利には大きな差が生まれた。しかし、対ドルで01年=131円 から04年=103円まで円高が進んだ。一般の金融情報でいう“金利差が「円安」を誘導”しているという論理をここで批判しなければならない。同時に、対ユーロで01年=118円 から04年=138円まで円安が進んだ。これは、世界貨幣としての危ういドルの表現であった要素が大きい。要するに、01年の同時多発テロから03年のアメリカのイラク侵攻によって、戦争経済のドルからの回避でユーロに流れたと見るべきである。
そして、03年通期で、日本は累積20兆円の資金(税金)でドルを買い支えた。この日本政府による20兆円投入の「円安」圧力がその後の心理的「円安」を支え続けている。
政府による「円安」誘導は税金による外貨買いであり、大企業優遇(「自動車、電気関係などの輸出型大企業が大もうけをする源」)を推し進めた結果がここにある。
この心理的「円安」は、金融機関(大手から中小まで、そして郵便局まで)や証券会社が外貨預金や投資信託を庶民の小銭を吸収する論理として、“ドルやユーロの金利が高いので金利の安い円では全く増えない”とお客に薦め続けてきた。そして、現実に日本政府による介入を遥かに超える71兆円が投資信託に投資され、「円安」は進んでいる。心理的「円安」は今では実態としての「円安」となっている。
04年 05年 06年 07年1月
ドル/円 103円 116円 118円 120円
ユーロ/円 138円 140円 155円 158円
結果として、金利差が「円安」を作り出したように見える。勿論、投資信託で庶民が儲けようと儲けまいと関係なく、金融機関等は莫大な手数料収入を獲得している。止められない利益である。例えば、3%の手数料を取る場合は年率ではなく、瞬時の利率(1時間で制約するなら時率ということになる)である。これは年率0.3%の庶民の定期預金とは比較にならない。
この「円安」は「赤旗」がいうように、「輸出型大企業が大もうけをする」ことになる。
ところが、その後の「このようにゼロ金利を続けているために国民生活は不安定化し、大企業と中小企業の格差も広がり、経済にゆがみを生じさせています」は意味不明である。
重要な問題はここにある。
「円安」は輸出型大企業に大きな利益を努力なしで政府が与えている。逆に見れば、「円安」は輸入企業に収益悪化を押付けていることになる。食品も含めた輸入産品は日本市場に氾濫している。言い換えれば、輸入産品は「円安」によって値上がりをしているのである。それを買わされているのが庶民である。
輸出型大企業が儲けた分を庶民が高い金を出して補填しているのである。輸出型大企業に減税をして、庶民に増税をする構造が「円安」を利用して行われているのである。
しかし、「経済格差」の拡大と「非正規雇用」の増大によって、中層から下層は高い輸入品に手は出せない。そこで、以前よりも低品質な産品で賄うことになる。支払う金額は同じだが、品質を落とすことによって生活を辛うじて維持しているのである。
残念ながら、私にはこれを説明できる数量的根拠を持たない。しかし、事実関係から推測はできる。
この「赤旗」記事で、結論の「大企業と中小企業の格差」、「預金者の受け取るべき利子を収奪」、「国民生活は不安定化」、「経済にゆがみ」が出てくる根拠が曖昧であることを説明してきた。
庶民には実態という真実とその内部に潜む本質を知る権利がある。そのために、「赤旗」記事と
関係性を深めたいのだが。

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