昨年11月に
「『外貨預金』や『投資信託』はギャンブル」(関係性ブログ06年11月23日付け)で、政府の税金投入で「円安」を作り出し、金融機関による「外貨預金」と「投資信託」というギャンブルに庶民の貯金を吸収する(食いつぶす)ことによって、その「円安」を支える構造が出来上がっている、ことを述べてきた。
この「円安」を基礎として、大手製造業も大手金融機関も大収益を上げてきた。言うまでもなく、同時に、非正規雇用の増大を進めて、賃金下落がこの収益を支えたことになる。
この06年10月以降から07年2月までの新聞報道から何を読み取るかを見ていく。
大手製造業が空前の収益を上げたニュースに加え、
「6大金融、最高益」と
「『いざなぎ超え』表明 経財省」(朝日新聞06年11月23日付け朝刊)という記事が新聞の1面に踊っていた。しかし同時に、アメリカの景気減速が語られ始めた。要するに、「円安」は必ずしも安全な収益を大手企業に保障するものではないことを示唆し始めている。海外消費に頼り、国内消費と乖離した経営がここにあるからである。
「好調米企業 光と影」(朝日新聞06年11月22日付け朝刊)で、主要企業の7〜9月期の増益を示したが、業績不振にあえぐ大手企業もある、ことを述べている。
業績不振企業
・自動車最大手ゼネラル・モーターズ(GM)→3万人の人員削減
・「ビッグ3」の一角のフォード・モーター→4.4万人の人員削減の追加
・IT業界「巨人」の半導体最大手インテル→1.05万人の人員削減
・コンピューター大手サン・マイクロシステムズ→大規模リストラ
アメリカ国内の消費を牽引してきた「住宅ブーム」がしぼみ、それに依拠してきた企業に痛手が及んでいる。業績好調な企業(エクソンモービル、コカ・コーラ、バッグブランドのコーチ、メリルリンチ等)は、海外の市場と富裕層そしてガソリンの値上がり等に依拠していたと考えられる。
「米住宅バブル 崩壊の兆しに日本の備えは」(朝日新聞06年10月2日付け朝刊)を三國陽夫(みくにあきお)氏が投稿している。
「米国人は、住宅を買うために借金をするだけではなく、住宅を担保に借金をして大きな買い物をする」と。住宅価格の上昇が個人消費を刺激し景気も良くなるという構図がここにある。しかし、いったん下がり始めると、住宅ローン破綻を招き、消費減や景気悪化にまで進む。そこで、アメリカ景気と消費に頼ってきた「円安」下の日本の大手製造業に大きな影響が出ることになる。
この事態に対して、三國氏は「強い円のもとに内需が拡大すれば、輸出の減少を相殺できる。・・その中心は住いにかかわる商品・・医療や介護などのサービスの需要・・」と、述べている。
「米国経済の失速」(朝日新聞06年11月3日付け朝刊)で次のように述べている。
「住宅投資が拡大していた背景には、家計部門の負債の増加があった。住宅ローン中心の負債が、経済成長を上回るスピードで増加していた。過去10年間で負債残高は、GDPに対して80%から120%へと上昇している。この40%の負債増加分が経済活動の拡大、と同時に住宅価格の大幅な値上がりを招来した。消費者は気が大きくなり、自動車や高額商品を買いまくった」が、「一転して住宅価格の値下がり・・過大な元利支払・・消費の切り詰め」という状況が生まれている。
このアメリカ景気の減速に対応して、
「米自動車 円安で業績低迷」(朝日新聞06年11月15日付け夕刊)という、米自動車大手3社首脳が大統領に「円安」修正要求をした記事が載った。3社首脳の主な主張は「日本の為替当局の介入などで円安ドル高が保たれ、米市場で日本メーカーの競争力が不当にかさ上げされている」そして「対米輸出で得た膨大な利益を技術開発などに使える」というものである。
「円高政策への転換」(日本経済新聞06年11月21日付け朝刊)が載り、「実質経済成長率は・・予想外の高さだった。ところが、その中身を見ると、個人消費が落ち込み、その一方で輸出とそのための設備投資が堅調」「輸出に依存する経済に明日がない」と述べている。そして、「大企業は輸出手取り金の減少をのりこえるため、技術開発に一層の拍車を掛ける。・・(円高で)輸入物価が下がるので、新たな国内の購買力が増え、抑えられていた個人消費が拡大に向う」と。
「指標に縛られ円安招く」(朝日新聞1月28日付け朝刊)で、日銀が利上げ見送りをした陰で日本政府の意図的円安誘導があると海外市場は疑っている、と述べている。
「くすぶる円安批判論 G7、強める警戒感」(朝日新聞2月11日付け朝刊)が三面に渡って述べられている。結局、EUがG7で円安懸念表明をしたが、米国は日本の政府介入が最近ないことを理由としてそれを押さえ込んだ。
この背後には、米国にとっての有り難い状況が潜んでいる。@対円ではドル高ではあるが、対ユーロではドル安で、居心地が良い。Aイラク問題や日米安保(基地問題)での日本の人的・金銭的負担に期待している。
そしてついに、
「0.25%利上げ 日銀総裁会見」日本経済新聞2月22日付け朝刊)が載った。先月、政府の圧力に屈した経緯があり、政府とは独立した機関であることを今回は表明した。しかし、「円安」はより以上に進んでいる。
以上の朝日新聞や日本経済新聞の記事から、次のことが明らかになる。
@アメリカの経済は住宅バブルが崩壊して、景気減速へと進み始めた。
Aアメリカの消費に依存してきた「円安」下の日本の大手企業は収益減速をこのままでは受け容れざるを得ない。
このことは、次に来る「円高」に対応すると称して、政府の施策にどのような行動をさせるのかを見抜かなければならない。
言うまでもなく、今平然と言われている大手企業のために企業減税をし、代わりに、消費税の増税で財政負担を軽減する。そして、人件費の削減というリストラを断行し、「残業手当」のカット、非正規社員の増大、低廉な外国人労働者の活用、製造部門の海外移転、等を進めるだろう。
そして、大手企業のマーケティングは「経済格差」によって生まれた下層庶民には期待せず、中層・高層向きの高付加価値製品の開発で利益率の高い販売を目指すことになる。まさに、自民党・公明党の進める“下層無視(置き去り、捨て去り)”の政策と合致することになる。
要するに、「円安」で大企業は収益を上げ、輸入品の高価格化を消費者に押付けてきた。そして、「円高」情報操作によって{企業収益は落ち、景気は低迷する}という論理を定着させ、政府に「企業減税」や「残業手当のカット」(ホワイトカラー・エグゼンプション)をやらせ、大企業自身は一層「非正規社員の増大」を実行している。
しかし、日銀の「利上げ」を発表しても、「円安」は一層進んでいる。それにもかかわらず、「企業減税」は進められる。
前記の
「円高政策への転換」(日経11月21日付け朝刊)で、「(円高で)輸入物価が下がるので、新たな国内の購買力が増え、抑えられていた個人消費が拡大に向う」と述べているが、食べるのにカツカツの下層庶民に企業も政府も消費を期待していない。
「円安」に、「円高」にどのように変わろうとも、今の経済界=政府の下では中層庶民は下層に、下層庶民は下層の中での新たな下層を作り出すだけである。
消費者から外された庶民との
関係性を強め、自民党・公明党の政策を覆す集団となろう。