副題:知ることからはじめよう
(beyond the nuclear age)
朝日新聞の声の欄に「原発に頼らぬ社会を作ろう」(小森千治さん4月2日付け)が載った。その全文をここに紹介する。
「もうやめませんか、原子力発電所を。数え切れないほどの事故が起きているのに、その後も『原子力発電所は安全です』の宣伝を目にしてきました。こんなうその宣伝もやめませんか。
現場の人たちのミスや不注意で事故が起きているとはとても思えないのです。『安全』の神話はなく、起きるべくして起った事故と考えます。
原発は電力をたくさん消費する都会ではなく、そこから遠く離れた自然豊かな町にあります。自治体も当初は『安全なら』と、誘致なさったのでしょう。でも、リスクが大き過ぎますよね。もう十分過ぎるほど危険と恐怖にさらされてこられたことと思います。
電力需要の3割を原発で賄っているなら、その分、ほかのものに替えられませんか。風力やソーラーシステムなどのさらなる開発で。もちろん消費電力の少ない電気製品の普及や無駄を削る生活から手をつけていきませんか。」
たまたま志賀原発の臨界事故があったのではなく、様々な原発で同様な事故が起きていたという事実は、小森さんが言う単なる「ミスや不注意」ではないと見るのが当然である。そして、実際の事故を他人事として見ない小森さんがいて、原発誘致した自治体の恐怖心を学びとっている。この根本に自らのミスとして見る姿がある。決して心から謝らないし、「安全」だと嘘を言い続ける電力会社や国に代わってお詫びをしているように読み取れる。そして、多くの人たちに省電力への意思を伝えようとしている。
私もこの意志を持とうと思う。
この声で言う「数え切れないほどの事故」や「うその宣伝」については
、「原発“不正”“隠ぺい”97件」(しんぶん赤旗3月31日付け)や
「原発 不適切事例97件」(朝日新聞3月31日付け朝刊)が伝えている。決して小森さんの主張が大げさでないことを立証している。
この両紙とも日誌やデータの改ざんを解説し、経営陣の関与の可能性(赤旗)やより一層危険なプルサーマルに住民理解を得る難しさ(朝日)についても書かれている。
ここで、次の本を紹介したい(是非、原発の概要を皆で知りましょう)。
『知ることからはじめよう(beyond the nuclear age)』(スロービジネスカンパニー2006)は、ウラン採掘から原発そしてプルサーマルまでの概説と「私にできること」を簡潔に分かり易く説明している。
要するに、次の工程からそれぞれに放射能のゴミを発生させていることを解説している。
1ウランを掘る
2ウランを燃やす(原発)
3ウランを「リサイクル」&プルトニウムをつくる(再処理)
4プルトニウムを増やす(高速炉再処理)
5プルサーマル計画
[1の解説]
ウランを掘ることで、鉱山労働者は被ばくする。現地住民は、環境汚染に苦しむ。ウランを掘り精錬するときに、膨大な量のウラン鉱滓(こうし)やウラン残土が生み出される。天然ウラン鉱石13万トンから原発の燃料に使う1トンのウランを取り出すが、天然ウラン鉱石を掘り出すためには地面の表面や周辺の土も取り除かなければならない。当然、この部分にもウラン濃度の高いものも含まれている。
結局、原発の燃料1トンに対して総採掘量は250000トン必要になる。ここに大量な放射能のゴミを残すことになる(日本でも核燃料サイクル開発機構(核燃)はウラン残土を岡山・鳥取にまたがる人形峠周辺に3000㎥の内の290㎥しか処理していない。しかし、この処理は米国の先住民居留地に搬出した)。
[2の解説]
原発は燃料ウランを燃やすときに発生する熱を使い、水を蒸気に変えて電気を作る。ウランの燃焼で放射能(死の灰)を生み出し、標準的規模の原発(100万キロワット)で広島型原爆の1200発分に相当する。そこに、原発の耐震基準を超える大地震が発生すれば、大事故といって済まされない状況になることは疑いない。
例えば、静岡県・浜岡原発の地震対策の例で見ると、震度5の地震を想定している。このとき、原子炉に制御棒が入り運転が停止する仕組みになっている。しかし、運転停止後も熱を持った原子炉を冷却しなければ爆発の危険性はなくならず、メルトダウン(燃料が熱で溶ける)や制御棒がうまく入らない場合には放射能事故は避けられない。
[3の解説]
六ヶ所村(青森県の下北半島)は人口12000人の山・海・森に囲まれた自然の美しいところである。ここに「再処理工場」が建設され、2006年3月から試験運転が開始され、2007年8月から本格稼動が始まる。
「再処理工場」では原発の使用済み核燃料をリサイクルし、プルトニウムと放射能を分離する。この稼動は事故が起きなくても多くの放射能を大気中や海水中に放出する。使用済み核燃料は金属容器に入っているが、再処理するときに切断して中の物質を分離するため大量の放射能が外に放たれる。
大気中に高さ150mの排気塔からガス状の放射能が、海には沖合3km・深さ44mの放出口から放射性廃液が放出される。この放射能規模は、原発が1年間に放出する量をおよそ1日で出すと言われている。
この被害は青森県に限定されず、近隣の農水産物への影響は多大であることは間違いない。大気中汚染だけでもチェルノブイリ事故の10倍の放射能(クリプトンで比較)を放出すると言われている。
言うまでもなく、動植物への生態濃縮が進み、放射能(ヨウ素129)が蓄積され、食物連鎖で体内に取り入れられた放射能濃度は高まっていく。このことは大都会の消費者にまで広範囲化することを意味している。
[4の解説]
プルトニウムは長崎型原爆の材料に使われた猛毒物質である。プルトニウムが出すアルファ線を体内に取り込んでしまうと排出されず肺に止まり、その後、骨に入りやすく、細胞が集中的に攻撃され肺や骨にガンが生じる。
また、六ヶ所村での「再処理」以前にすでに43トンのプルトニウムを所持し、5000発以上の核兵器所持に相当している。
[5の解説]
4まででできたプルトニウムを「高速増殖炉」という新たな原子炉で再処理を行い、夢の核燃料サイクルが成り立つはずであった。しかし、度重なる事故と莫大な費用から高速増殖炉「もんじゅ」は止まったままとなっている。
そこに、プルサーマル計画が登場した。
プルサーマルはプルトニウムとウランを混合した特別な燃料(MOX燃料)を普通の原子炉で燃やすことをいう。この方式はプルトニウムの核分裂を利用するため燃料の燃えやすさはかなり上がるが、それだけ暴走しやすくなり危険性が一層高くなる。なおかつ、MOX燃料を作るコストは通常燃料の3−5倍となり、経済的採算にも合わないことが分かっている。
このような状況の中で、日本中の原発から使用済み核燃料が溢れ、一時的な保管場所として「中間貯蔵施設」が必要となっている。危険なプルサーマル計画が実行に移されるなら一時的な保管場所になるが、実行されなければ永久的な保管場所になり得る。
これ以上、使用済み核燃料を出さないような努力が今問われている。原発を止めることに
関係性を深め、身近にできることから電気使用量を削っていこう。